キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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長らくお待たせいたしました。
最近、戦闘シーンの描写を捻りだすのが難しくなってきてしまい、結果的に投稿頻度が落ちて申し訳ありません・・・。
今回で戦闘回は一区切りなので、次からは比較的投稿頻度を上げることができると思います。

それはそうと、ブルアカPC版をインストールしました。
ぶっちゃけ投稿が遅れた理由の半分くらいはむしろこっちだったり。
スマホはスペックが足りず、PC版は出ないと聞いて諦めていたので、本当にありがたい限りです。
リリース初期にやってたデータ(コードだけ)が引き継げなかったのは少し凹みましたが、気を取り直して進めていこうと思います。
余談ですが、メモロビは通常ヒナの頭をなでなでしたり、ケイのもちもちほっぺをつまんだりしています。


アビドス編・27

「とりあえず、ここから離れた方が良さそうかな」

 

今の状態がどのようなものなのかはミラにも分からないが、普段よりも体の奥底から力が湧いていることだけは直感的に理解していた。

先生たちを巻き込まないためにも、セトの憤怒を離れた場所に移動させる必要がある。

とはいえ、どれだけの出力を出せるのかは分からない。

ならばどうするか。

 

「それじゃあ、まずは小手調べってことで」

 

軽い調子でミラが放ったのは、自身の身の丈を優に超えるサイズの雷球だった。

指向性を持って放たれたそれは、炸裂した衝撃でセトの憤怒を砂丘の向こうへと吹き飛ばした。

 

「おぉ・・・思った以上だね、これは」

 

今の一撃は、湧き上がる力に身を任せて勢いのままに放出した赤雷をまとめ上げたものだ。

たったそれだけで、普段の最大火力に匹敵するか、もしかしたらそれ以上の威力が出ていた。

とはいえ、セトの憤怒もまた雷の化身のような存在。かつてのペロロジラであれば致命的だったであろう一撃でも、セトの憤怒であれば有効打止まりになってしまう。

だが、セトの憤怒がミラを脅威とみなすには十分だったようで、石像のような面の視線がミラへと向けられた。

 

「ん~、欲を言えばもうちょっと離れたいところではあるけど、ここなら私も問題なく暴れられそうかな」

 

戦闘音が聞こえる程度に近いのは些か不安ではあるが、ミラが先生たちを背にしている間は正面だけ気を付ければ問題ないだろう。

そう判断したミラは、セトの憤怒へ右手を掲げた。

次の瞬間、無数の落雷がセトの憤怒を捉えた。

雨のように降り注ぐ赤雷、その一つ一つが雷球と同じように炸裂し、セトの憤怒を地に伏せ、砂漠に埋もれさせようとする。

だが、セトの憤怒もただされるがままでいるはずもなく、砂漠に手を突きながらも雄叫びを上げた。

次の瞬間、ミラの赤雷に劣らないほどの雷がミラを飲み込んだ。

 

「そっか。全身が雷なら、私に出来ることはそっちも出来て当然か」

 

だが、雷の中から現れたミラは火傷一つすら負っていなかった。

普段から雷をぶっぱなしているミラは、当然自身も高い電気耐性を持っている。

着弾や炸裂による衝撃は普通に食らうために自分を巻き込むような攻撃は控えていたが、どうやら覚醒状態の今はただでさえ高い耐性がさらに引き上げられているらしい。

だが、雷に対する耐性に関してはセトの憤怒も同様であり、大したダメージを負った様子を見せずに起き上がった。

 

「なるほど、これはタフな戦いになりそうだね・・・なら、もっと上げていこうかな」

 

ミラの言葉に呼応するように、さらにミラの容姿が変化していく。

ミラに赤雷が降り注ぎ、収束していくにつれて、青みがかっていた角や翼爪は真紅に染まり、さらに身に纏う赤雷は黒みがかるほどに密度を増した。

 

「それじゃあ、今度はこういうのを試してみようか」

 

ミラがそう言うと、ミラの右手に赤雷が収束していく。

花火のようにバチバチと放電している右手を振りかぶり、一足飛びでセトの憤怒へと肉薄して振り下ろした。

叩きつけた拳からは赤雷が炸裂し、連続した衝撃となってセトの憤怒に襲いかかる。

一撃一撃の威力は高くないが、瞬間的とはいえマシンガンのような連撃にセトの憤怒は動きを止めざるを得なくなる。

その隙を見逃さず、ミラは右手と同時に左手でも収束していた赤雷を閃光として放った。

放たれた閃光はセトの憤怒を呑み込み、砂丘に埋もれさせるほど大きく吹き飛ばした。

 

「おぉ、ちょっと溜めただけでこれかぁ」

 

やったことは、赤雷の収束砲撃である“神雷”とほとんど変わらない。

だが、従来よりもはるかに短いチャージ時間だったにも関わらず、今までの最大火力を軽く越えてきた。

雷球と同じような感覚で必殺技を出せるようになったという事実に、ミラ自身ですら思わず少し引いてしまった。

とはいえ、現在の状況であれば我ながら頼もしいことこの上ない。

そう思っていたのだが・・・

 

「・・・あれ、姿が消えていってる・・・?」

 

セトの憤怒の輪郭がだんだんと透けていき、周囲に渦巻いている雷雲も徐々に霧散していっている。

セトの憤怒の顕現は、ホシノのテラー化と連動していたはずだ。

となれば、

 

「向こうも向こうでいい感じに事が進んでるってことかな」

 

エネルギーの奔流は未だに治まっていないが、戦闘音は聞こえなくなっている。

シロコ*テラーもまた、己の役割を果たしたのだろう。

であれば、ここは自分もあちらに参戦するべきか。

そう考えるミラだったが、消滅寸前のセトの憤怒を見据える視界の中にある異物を捉えて動きを止めた。

 

「・・・そういえば、お前もいたんだったね」

 

セトの憤怒の傍には、ホシノがテラー化する前にも見えた異形がいた。

今回も姿ははっきりと見える。そして、実体もそこにない。

あくまで、“異形がセトの憤怒あるいはホシノ*テラーに干渉している”という事象を視覚的に捉えているに過ぎないのだろう。

だが、今の自分であれば本体の位置まで特定できるとミラは直感的に理解していた。

異形の姿を捉え、情報を手繰り寄せ、本体へと迫っていく。

そうして、ミラが異形・地下生活者の位置を正確に把握したのと同時に、顕現が止まっていたはずのセトの憤怒が雷鳴と共に復活した。

顕現途中だった先ほどまでよりも圧倒的な存在感を放っていることに驚いている暇もなく、セトの憤怒は上空で雷を収束させて狙いを定めた。

ミラの背後、先生たちが戦っている方向へと。

 

「ちっ、本当にろくでもないことばかり!」

 

執拗に先生を狙おうとする姿勢に、一瞬ミラの脳裏にどうしようもないクソババア(ベアトリーチェ)の姿が過るが、余計なことにリソースを使っている暇はないと無理やり思考の片隅に放り投げてありったけの赤雷を収束させる。

そして、同時に収束砲撃を放った。

2つの極大の閃光は空中で衝突し、数秒の拮抗の後に衝撃と共に相殺した。

衝撃波の影響でミラも大きく後ろに吹き飛ばされてしまうが、その口元には隠しきれないほどの笑みが浮かんでいた。

 

「なるほど、さすがに一筋縄じゃいかないか。ハハッ、それでこそだね」

 

今が非常事態であるのは理解しているが、それでもあのままあっさり終わるというのは面白くなかった。

どうせなら、もっとこの力を試したい。

思い付いたことは何でもできそうな気がする、今のうちに。

そういう面では、この状況は個人的に好都合だ。

戦いはまだまだ面白くなる。ここからさらにボルテージが上がっていく。

 

「っとと、あれ?」

 

そう思っていた矢先に、ミラの体に変化が現れた。

ミラが纏っていた赤雷が霧散していき、額から伸びた角や変化した部位が次第に元へと戻っていく。

ミラが困惑している数秒の内に、すっかり変化前の姿にまで戻ってしまった。

 

「あらら、さすがに時間制限付きだったかのかな・・・」

 

都合よくトドメまでいけると思っていたが、どうやらそう簡単に事は進まないらしい。

強化が解けたのも問題だが、それ以上にマズイのは変身前に受けた傷がほとんど治っていないことだ。

幸い、動ける程度には痛みも治まっているが、依然として体は重く万全の状態からは程遠い。

今の状態で戦えば、まず間違いなく負ける。

だが、悪いことばかりというわけではないらしい。

先ほどまで、戦闘の真っ只中でもひりつくほどに感じていた背後のエネルギーの奔流、その気配が消えている。

考えられるとすれば・・・

 

「ミラ!」

 

ミラの予想を裏付けるように、ミラの背後からホシノが駆け寄ってきた。

その姿は完全にテラー化前に戻っており、ひび割れたヘイローも完全に元通りになっている。

それでも何かが変わっているような違和感を覚えるが、ミラが相対した時のような危うさは少しも感じない。

どのような手段を使ったのかミラには想像もつかないが、先生は本当にテラー化したホシノの救出を成し遂げたようだ。

 

「おぉ、本当に元に戻ったんだ」

「まぁね~。おじさんよりも、ミラの方は大丈夫?」

 

現在のミラには、明らかに自分がつけた覚えのない傷がある。

テラー化していた間の記憶が朧気のため、おそらくはその時のもののはず。

気まずそうに若干目を逸らしながら尋ねたホシノに、ミラは気にする様子もなく笑いながらヒラヒラと手を振った。

 

「私も大丈夫。でもゴメン、あいつを倒しきれなかった」

「いやいや、足止めできただけでもすごいって」

「でも、頑張ればいけそうだったんだよね。いや、あのままならいけてたはずだから。たぶん、きっと」

「・・・うへぇ~、さすがだねぇ~」

 

負けず嫌いの一面を覗かせるミラに、ホシノは乾いた笑いを浮かべながらも肩から力を抜いた。

本当に勝っていたかはともかく、そこまで言えるのであれば本当に大丈夫なのだろう。

 

「ミラ!お待たせ!」

 

ホシノに続いて、先生もミラへと駆け寄ってきた。

その後ろにはシロコ*テラーも含めた他の面々も続いており、スオウらハイランダー生はいないもののアビドス組は誰一人として欠けていなかった。

 

「おー、みんな無事だったんだ」

「はい、こちらはなんとか!」

「あとは、あいつだけってことでいいのよね?」

 

ミラの問いかけにノノミが答え、セリカは少し離れたところで雷を迸らせているセトの憤怒を指差した。

 

「全員で手を組んでどうにかって感じだけど・・・先生、指揮は大丈夫?」

 

ミラの記憶では、先生が指揮していた最大人数は6人だった。

だが、ミラが戦った限りセトの憤怒と戦うには6人では心許ない。

ミラの覚醒状態が多少でも引き継がれていればどうにかなるだろうが、今の手負いの状態では何とか頭数に入るかどうかといったところ。

仮に覚醒前で万全の状態だったとしても、苦戦を強いられるかもしれない。

そう思っていたが、ミラの心配は杞憂に終わった。

 

「うん、任せて!今なら10人まで大丈夫だから!」

「・・・ははっ、頼りにしてるよ」

 

相変わらず、肝心な時であればあるほど頼もしい。

不安要素はもうない。

であれば、後はいつも通り戦うだけだ。

 

「それじゃあ、みんな、いくよ!」

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