キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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デカグラマトン編、最高でした。
それはそうと、無名の司祭をしばきまわすのはいつ頃になりますか?


アビドス編・28

「はぁ、はぁ、終わった・・・?」

 

激しい戦闘の末、ミラたちはなんとかセトの憤怒の討伐に成功した。

特にミラは負傷した体に鞭打って無理やり戦闘を継続していたため、戦闘の終わりを確信すると同時に膝をついた。

 

「雷が・・・」

「オアシス全体に・・・」

 

セトの憤怒の消滅の余波なのか、あるいは最後の抵抗なのか。

セトの憤怒の姿が消えていくと同時に、全方位に雷が放たれる。

雷はミラたちに届いてこそいないが、どちらにしても冷や冷やものである。

 

「ミラ、立てる?」

「どうにか・・・」

 

立ち上がるのも精一杯なミラに、ホシノは駆け寄って肩を貸す。

ミラも今回ばかりは意地を張らず、大人しくホシノに助けられながらどうにか立ち上がった。

次の瞬間、オアシスが雷とも違う光に包まれ始めた。

 

「これは・・・」

「・・・花火?」

「・・・雷で起爆したっぽい。私ので反応しなかったのは・・・距離が離れてたからかな」

 

炸裂しては消える様は、まさしく花火そのものだった。

だが、そこからはミラたちが知る花火とは一線を画するものだった。

 

「・・・これは」

「アレ、魚の形してない?」

「きれい・・・まるで海みたいです!」

 

オアシス全体から光の玉が浮かび上がり、空中に様々な形を成しては散っていく。

空に描かれる魚などの海の生物を模した光の海はあまりにも幻想的であり、先ほどまでの激闘の疲労すら忘れさせるほどだった。

 

「なんだっけ・・・なんかのプラズマを発生させる超高価な希少鉱物を使ってるってやつ、聞いたことがあるような・・・」

「・・・」

 

ミラの思い出すような言葉に、ホシノはかつての記憶を思い出す。

それは、まだユメと二人で生徒会を担っていた頃、一攫千金を求めて水着姿でピッケルやスコップを手に探したものだった。

あの時は、結局見つからずに断念したが・・・

 

「・・・日が昇る」

 

シロコ*テラーが呟くと同時に、砂漠の向こうから朝日が昇り始めた。

太陽の光が差し込んできたにも関わらず輝き続ける花火は、むしろ早朝特有の薄暗さや淡い明るさも相まって、さらに神秘的に空を彩っていた。

その光景を見ながら、ホシノはポツポツとこの場にいない先輩に呟きを溢す。

 

「・・・先輩の言う通りでした。見つけましたよ、お宝」

 

良くも悪くも能天気で、疑うことを知らなくて、ホシノがその尻拭いをすることも少なくなかった。

この花火を探していたあの時も、最初は自分も悪乗りしたとはいえ、考えなしに行動を起こした挙句突拍子もない空想を抱いていたユメを叱ったものだが・・・

 

「まさか、本当に見つけられるとは思いませんでしたけど。私が間違ってました・・・先輩」

「ホシノちゃん・・・」

 

今はもういないユメに語り掛けるホシノの姿に、先ほどまでの危うさはもうない。

だが、それとは別の儚さを感じさせる佇まいに、ミラはかける言葉が見つからなかった。

もう心配ないと分かっていながらも、どうしようもなく何かが変わった、何かを失ったと理解してしまった。

そんなホシノの姿に、あるいはミラの方こそ寂しさを感じたのかもしれない。

 

「う、うわっ!さっきより勢いが!」

 

そんな二人のやり取りを余所に、オアシスではさらに花火が勢いを増して広範囲に激しく炸裂し始めた。

その光景を見ながら、頭の片隅で花火のことを考えていたミラはようやく目の前の花火の詳細に思い至った。

 

「あーそうだ、思い出した。たしか、100gあたり1000万円するってやつだっけ。値段相応ってことかなぁ」

「へ!?」

「え?」

 

ミラの言葉に、セリカとシロコが反応した。

なんなら、記憶と違う情報にホシノも僅かに反応していた。

本来であればミラが欠片も興味を持たない情報だったが、アビドスのことを調べている際に過去の生徒会に関する情報として頭の片隅で記憶していた。

・・・もしかしたら、価格故にさすがのミラも少し興味をそそられた可能性も0ではないが。

 

「ここ2年で、価格が10倍に高騰したんだって」

「ちょ、ちょっと、この連鎖をどうにかして止めないと!ダメ、お金がっ!少しでも確保するわよ!アヤネちゃん、スコップは!?」

「いきなり言われても・・・」

「もう、ちゃんと持ってきておかないから!」

「いや、たぶんツルハシじゃないと・・・」

 

超高価な花火(厳密にはおそらく材料の希少鉱物)を確保しようと躍起になるセリカたちだが、シロコ*テラーは表面上は冷静にミラに問いかけた。

 

「この爆発を止める方法は?」

「無理じゃないかなぁ。どこにどれだけ埋まってるかも分からないし、この手の反応は燃え尽きるまで止まらないものだから」

 

言い換えれば、超高価なテルミット爆弾のようなものだ。

たとえ周囲を掘削して隔離しようとしても、それより早く起爆するのがオチだろう。

そもそもの話、追加で掘削作業などという重労働が出来るほどの体力が残っていないのだが。

 

「わぁ、幻想的ですね~☆」

 

この場において、ノノミの無邪気な言葉が数少ない癒しだった。

ミラとしても、できればこの光景をヒナと共有したい気持ちがあったが、自身の端末はいつものことながら戦闘の余波で故障しているため、動画に残すことはできない。

そろそろ本格的にゲヘナの技術部に耐電・耐衝撃を突き詰めた専用端末を開発してもらおうかと本気で悩み始めたミラの横で、シロコ*テラーが懐から覆面を取り出して徐に砂を入れだした。

 

「シロコ、私があげた覆面を袋にしないで」

「でも・・・」

 

(銀行強盗とはいえ)思い出の品である覆面を袋代わりにされるのは、当然シロコからすれば不本意である。

それでも未練がましそうに視線をシロコと覆面の交互に向けるシロコ*テラーだったが、ふとセリカが何かに気が付いたようにシロコに声をかけた。

 

「シロコ先輩、呼び方が一緒だと混乱するんだけど、何とかならない?」

 

シロコとシロコ*テラーは、生きていた世界が違うとはいえ元は同一人物である。

一応、反転しているかどうかで判断はできるが、まさか名前を呼ぶのに馬鹿正直に“テラー”と後ろに付けるわけにはいかないだろう。

となると、シロコ*テラーの新しい呼び方が必要になる。

それはシロコ*テラーも想定していたのか、特に悩む素振りを見せることなく案を出した。

 

「じゃあ、私は“ちびシロコ”って呼ぶよ」

「ん、すぐに大きくなる」

「なら、“よわシロコ”」

 

次の瞬間、無表情ながらも額に青筋を浮かべたシロコが躊躇なく銃口をシロコ*テラーに向けて引き金を引いた。

シロコ*テラーは特に顔色を変えずに避けたが、他のメンバーは面食らいながら慌ててシロコを止めに入る。

 

「ちょっと、危ないでしょ!」

「無駄だよ。私はあなたにはないことを経験し、知らないことを知っている。この差は・・・」

「ん、今度こそ負けない」

「もう、落ち着いてください!!」

「わぁ~、そろそろフィナーレですかね?」

 

先ほどまでのしんみりした空気はどこへやら。

あっという間に銃声と爆発音が響き渡り、落ち着いて花火を見る空気は完全にどこかへと消え去ってしまった。

 

「ありゃりゃ、後輩たちは元気だねぇ」

 

いきなり戦闘を始めたシロコたちに、ミラは呆れ笑いをこぼす。

普段なら自分も混ざるか考えるところだが、今回ばかりはミラもドンパチに加わるほどの余力は残っていない。

とはいえ、このまま放置するわけにもいかないだろう。

 

「どうする?止める?」

「う~ん・・・」

 

ミラの問いかけに、ホシノは少し考え込む。

いろいろなことがあったから、もう少し感慨に耽っていたい気持ちもあるにはあるが・・・

 

「まぁ、いっか」

 

視線を未だに炸裂する花火に向けたまま、肩の力を抜いたホシノは隣で座っているミラにもたれかかった。

 

「締まらないけど、いいの?」

「おじさんがカッコつけようとすると、いつもこんな感じなんだよね~」

「あー、なるほどね」

「・・・うへ~」

 

先ほどまでの特別な時間を噛みしめたい気持ちもないわけではないが、いろいろ変化したものがありながらも普段と変わらないいつもの日常が戻ってきたというのも悪くない。

そんなことを考えながら、2人のシロコの戦いが終わるまで、ミラとホシノは寄り添いながら花火と勝負の決着を見守り続けた。

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