イベントストーリーは、久しぶりに腹を抱えるレベルで笑い転げました。
それでいて匂わせや新情報もあったりと、なかなか満足感が高い良イベでしたね。
ひとまず全ての問題が解決し、シロコ*テラーともいったん別れた先生たちは、アビドス高校へと戻った。
本来であれば諸々の後処理があるのだが、全員が激闘の後で疲労困憊であり、なにより服が盛大に汚れてしまった。
そのため、現在は先生以外は体操服に着替えて、制服を洗濯していた。
そうして、洗濯が終わった制服を持ってきたノノミがあることを尋ねた。
「あれ、そういえばホシノ先輩は?」
「保健室に向かいました。おそらく、ミラさんも一緒かと」
洗濯していた制服の中には、もちろんミラのものも含まれている。
制服の仕分け作業から追い出された先生が様子を見るために保健室へと向かい、扉をノックした。
「ミラ、ホシノ。入ってもいいかな?」
「あっ、ちょうど良かった。先生、ちょっと来て」
先生が中に入ると、アビドス指定の体操服を着たミラがソファーに座っており、その膝の上で同じく体操服を着ているホシノが寝息をたてていた。
俗に言う膝枕をしている状態で、ミラはホシノの頭を撫でながら先生に話しかけた。
「なかなかホシノが起きてくれなくてさ。放っておくわけにもいかないし」
困った素振りを見せる割にはミラの手つきは優しく、なんだかんだ満更でもないのかもしれない。
“ちょっとヒナが妬きそうかな”なんてことを思った先生だったが、ふと気になることがあった。
「あれ、そういえば、前まで“ホシノちゃん”って呼んでたよね?」
先生の記憶の限り、ミラはホシノのことを“ちゃん”付けで呼んでいたが、今は呼び捨てだった。
このタイミングで変えたということは、何かしら意味があってのことだろう。
「あー・・・なんて言うか、気分の問題、かな?」
先生に指摘されたミラは、僅かに視線を泳がせながら答えた。
『言いづらいことなら無理に話さなくてもいい』と先生は気を遣おうとしたが、先生が止める前にミラは理由を話した。
「私も一晩だけだけど、ユメ先輩と会ったことがあってね」
「! そうだったんだ」
ミラの告白に驚いた先生だったが、考えてみれば昔のホシノを知っているのならユメと面識があってもおかしくない。
あるいは、以前アビドスで会ったときに見せてくれた写真を撮ったのが、おそらくユメなのだろう。
過去を懐かしむように、ミラは視線を遠くしながら話を続ける。
「あの時、ユメ先輩が“ホシノちゃん”って呼んでたから、私も同じように呼んでみたんだよね。あの時のホシノ、いじるといい反応してたし」
たった一晩だけの出来事であれど、あの時間はミラにとって確かに記憶に刻まれている青春の思い出の一つだった。
だが、当時のことを知っているのは、もう2人しかいない。
「ユメ先輩がいなくなった今、せめてあの時のことを知っている私だけでも呼んであげようって思ってたんだけど・・・どんな形であれ、ホシノが過去にケリをつけたなら、私がずっと引っ張っているのも違うかな、って」
それは、ミラなりの気遣いであり優しさなのだろう。
同時に、先生にはそんなミラの在り方が『写し鏡』のように見えた。
友愛には親しみを、復讐には力を、感傷には思い出を。
望む望まないは別として、ふとした時に自分と向き合わされるような何かが、ミラにはあるのかもしれない。
「まぁ、ホシノから頼まれたら、いつでも“ホシノちゃん”って呼んであげるつもりだけどね」
冗談めいた口調と同時に、先ほどまでの雰囲気が霧散する。
顔を合わせる度に異なる側面が見えてあれこれ考えさせられてしまうが、なんだかんだ言って今の状態が素なのだろう。
ミラほど多様な側面を見せる生徒もなかなかいないが、おそらくそれは鏡に写るものがコロコロ変わるからであり、鏡に写るものがなくなれば、それが鏡にとっての素の姿になる、のかもしれない。
「さて、それじゃあ私もそろそろ帰らないと。ヒナを待たせちゃってるからね」
「う~ん・・・もったいないような」
「だったら先生が代わりにしてあげればいいじゃん」
「そういうことじゃ・・・」
なんだかんだ言いつつ、先生もミラを困らせるわけにはいかないため、仕方なくホシノを起こすことにした。
結局目を覚まさなかったホシノに苦戦しつつ、制服に着替えたミラはアビドス高校の校門前でホシノ以外の面々に見送られていた。
「今日はありがとうね」
「まだ、ホシノ先輩が・・・」
「さすがに、これ以上長居するのはちょっとね。それに、諸々の後処理のためにまた来ると思うから、挨拶とかはその時でいいよ」
列車砲シェマタは先生たちが破壊したが、カイザーグループが残骸を漁らないとも限らないし、他に“雷帝の遺産”が存在する可能性も高い。
それらの調査のためにも、しばらくアビドスを訪れるつもりだった。
その時は、おそらくヒナと交代しながらになるだろう。
とはいえ、このまま何も言わずに帰らせるわけにはいかないと、揃って一歩前に出て頭を下げた。
「あの・・・助けていただき、ありがとうございます」
「ミラさんがいなかったら、ホシノ先輩を止められませんでした」
「ん、助かった」
「ホシノ先輩と戦った時の話、今度教えてね」
「私も知りたい」
「あはは、たぶん参考にならないと思うけど、それでもよければね」
特に、自爆したあたりのことはあまり聞かせていいものではない。
話す時は適当に誤魔化さないとなぁ、と考えるミラだったが、そこに先生が頭を下げた。
「私からも・・・ありがとう、ミラ」
「気にしなくていいよ、私も昔の続きが出来て満足したし」
いろいろと大変な目に遭いはしたが、なんだかんだ言って全体的に見れば心残りもなく大団円で終わった。
そのため、ミラから気にすることは何もなく、むしろホシノと戦う機会をくれたことに感謝したいくらいだった。
とはいえ、それを言うとカイザーやらネフティスやらで話が拗れるため、決して直接口には出さないが。
「それじゃあ、そろそろ帰るから。また近いうちにね」
それだけ言って、ミラはあっさりとゲヘナへと帰っていった。
「ただいまー、帰ったよっとっとっと」
ミラが執務室の扉を開けると、座って書類仕事をしていたヒナがバッ!と立ち上がり、回り込む時間すら惜しいとばかりに机越しに跳躍してミラへと抱き着いた。
ミラは不意打ちで思いきり飛びついてきたヒナをたたらを踏みつつ受け止めたが、それに構わずヒナは何かを確かめるかのようにミラの翼や全身をペタペタと触りつつ至近距離でジッと見つめる。
あまりにも唐突な行動に、ミラは困惑しながら問いかけた。
「えっと、なに?どうしたの?」
「何があったのか、先生からいろいろと聞いた」
「あ~・・・」
ヒナの返答で、ミラは察した。
本当に、いろいろと包み隠さず話したのだろう。
少なくとも、大怪我をしたことと、色彩と接触して一時的に変身したことは。
先生としてもヒナを不安にさせるような情報を渡すのは不本意だったかもしれないが、だからと言って何も知らせないのは不誠実だし、隠したら隠したでヒナも何かを察するに違いない。
そもそも自分がへまをしたのが悪いのだから、ミラは観念してヒナにされるがまま大人しく待つことにした。
しばらくして、ようやく離れたヒナは今度はジッとミラの目を見つめて問いかけた。
「本当に、何も問題ないのよね?」
「うん、大丈夫。これは本当」
少なくとも、外見的変化がないのは先生たちが確認済みで、内面的な違和感も感じていない。
もしかしたら、自覚がないだけで本当は何かあるかもしれないが、それを言うのは野暮だろう。
ミラの言葉を信じたヒナは、ようやく納得してミラから離れた。
「そう・・・ならよかった」
心からの安堵の息を吐くヒナに、ミラは内心罪悪感を覚える。
ヒナを安心させるため、ヒナの力になるために戻ってきたはずなのに、結局余計な心配をかけさせてしまった。
自身の未熟を恥じていると、アコが呆れた声で話しかけた。
「まったく、なに風紀委員長を心配させているんですか」
「いろいろと想定外が重なった結果だから、さすがに勘弁してほしいんだけど・・・」
今後同じような展開があるかと聞かれたら、ミラとしてもさすがに無いと答えたいところだ。
ただ、言い切れない程度にはここ直近は重大な事件が起こりすぎている。
そもそも色彩の襲来からそこまで経っていない中で起きてしまったのだから、説得力はほぼ皆無と言っていい。
「それよりも、まずは他のやるべきことを片付けよう。“雷帝”の遺産の場所は分かったし、処分の協力も話をつけた。今後の予定をマコトとも話し合わないと」
「そうね。アコ、マコトに連絡して」
「はい、分かりました」
ひとまず目の前の問題は片付いたが、やらなければならないことはまだ山積みになっている。
それらを片付けるべく、帰りの挨拶もそこそこにミラたちはそれぞれ動き出した。
その後、ヒナの自室にて。
「・・・ミラ、その体操服と下着は?」
「あぁ、これ?戦ってる時にボロボロになっちゃったから、ホシノから借りたんだよね。後で洗って返さないと・・・」
「・・・呼び方、変えた?たしか、前は“ちゃん”を付けてたと思うけど」
「あ~、ちょっといろいろあってね」
「・・・そう」
「えっと、どうしたの?なんでちょっと拗ねて・・・」
「拗ねてない」
「あーうん、そうだね、ごめんね。ほら、こっちにおいで?」
「・・・・・・うん」
ヒナが膝枕の現場を見たところで露骨に嫉妬したりはしませんが、それはそれとして二人きりの時に膝枕を要求したりします。
ついでに、膝枕をしてあげたら「角、痛くない?」と上目遣いで聞いてきます。
それはそれとして、下着シェアは気になりますし、距離感の変化には敏感になりますが。