キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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お隣の天使様を見ていたので、うっかりやり過ぎないよう気を付けながらの執筆になりました。
疲れた体には糖分補給が一番ですね。


日常編・7

「まさか、先生まで尾行してるなんて思わなかったわ」

「事情があって、ね・・・」

「それって、風紀委員会絡み?」

「まぁ、私がいればそうなるか」

 

自分のことを棚に上げたセリカの発言に、先生は曖昧な笑みを浮かべながら返す。

現在、アビドス組と合流した先生とイオリは、シロコとセリカに事情を説明していた。

ノノミとアヤネは尾行を続けているが、あらかじめ用意していたらしいトランシーバーで会話に参加している。

 

『つまり、風紀委員長さんに頼まれてきた、ということですか』

「そうなるかな」

「・・・なんというか、ちょっと意外かも」

「ね、しっかりしてる人だし」

 

アビドス組の知っているヒナとは、職務に勤勉で真面目な生徒であり、ホシノにも見習ってほしいと思ったことも少なくない。

そんなヒナが先生に尾行を頼むというのは、あまり想像できなかった。

 

『あ、ホシノ先輩とミラさんが手を繋ぎました~☆』

 

だが、呑気なノノミの報告を聞いて、その場の空気が固まった。

同時に、何となくヒナの思うところも察した。

なるほど、こういう疑惑があるから、わざわざ尾行を頼んだのか、と。

 

「・・・あの二人って、そんなに仲良かったかしら?」

「昔、一度戦ったって聞いた」

「いや、でも合流した時は繋がなかったよな?」

 

シェマタ絡みの件でホシノの過去を知ったとはいえ、それでも知らないことはある。ミラとの関係もその一つだ。

いや、二人が一年生の時に戦ったことは知っているが、そこからどのようにして今の関係に落ち着いているのかが分からない。

そもそも、一度戦ってからアビドスで偶然再会するまで顔を合わせることもなかったため、間の段階がいろいろすっ飛んでいる時点で考察のしようもないのだが。

だが、集まった者たちの心はだいたい一つになった。

 

「確かめましょう」

「ん。調べるしかない」

「委員長の頼まれ事と大して変わらないか」

「・・・そうだね」

 

動機が単なる好奇心から強烈な出歯亀精神に変わったことを先生は指摘しようか悩み、止めることにした。

イオリの言う通り、それを確かめることが今回の目的というかヒナからの依頼なのだ。

あまり羽目を外さないように見守ればいいだろう・・・きっと、おそらく。

そんなこんなで、6人による追跡劇が幕を開けた。

 

 

* * *

 

 

「そう言えば、二人はどこに行くつもりなんだろうな?」

 

イオリの純粋な疑問に、全員が「そういえば」と首を傾げる。

今している尾行自体は、ほぼほぼ行き当たりばったりで始めたもので、計画性なんてものは欠片もない。

唯一、先生とイオリはヒナからだいたいの行き先を聞いていたため、待ち合わせ場所に見当をつけることができたが、その後の予定までは知らない。

どちらがエスコートしているかにもよるだろうが、見た限りではミラが主導権を握っているようだ。

イオリとアビドス組からすれば、戦闘一辺倒のミラが考えるデート(?)プランなど想像もつかない。まさか、銃器関連の店に連れていくのではないのかとすら疑ってしまう。

だが、ハルナの紹介とはいえ、以前に一度高級レストランに連れて行ってもらったことがある先生としてはその辺りの心配はあまりしていなかった。

あれこれ予想しながら追跡を続けることしばらく、ミラとホシノが喫茶店へと入っていった。

 

「あそこは・・・」

「先生はご存じなのですか?」

「たしか、最近トリニティから出店してきたって話題のお店かな?当番の生徒が話してたのを聞いたような・・・」

 

先生の考察通り、2人が入ったのはトリニティで経営している喫茶店の支店だった。

トリニティの中でも高級店が並ぶエリアに存在するため、トリニティ外の生徒が訪れにくい状況が続いていたのだが、客層を増やすために思い切ってシラトリ区に出店することにしたのだ。

本店よりも値段が抑え目なメニューが揃っている分、気軽に行きやすい喫茶店として現在軽くバズっている。

 

「なんというか、意外だな。副委員長がそういう店を選ぶなんて」

「なんか、ハルナからおすすめの店を聞いたりするって言ってたよ」

「あ~、なんかやたら親しげに話しかけてると思ったら・・・」

 

捕まってるのに何故か嬉々としてミラに話しかけるハルナの姿は、イオリも何度か目撃したことがある。

「なんかハルナの方が勝手に私の姉を自称してるんだよね」とミラから聞かされてドン引きしたのは記憶に新しい。

そう言えば、つい最近もトリニティで捕まった美食研究会をミラが引き取りに行ったことがあったか。あるいは、この店もその時に聞いたのかもしれない。

 

「情報の出所はともかく、そういうのも調べたりするんだな」

「ん、興味ないと思ってた」

「き、気持ちは分からなくもないですが、さすがに偏見では・・・?」

「こう言うのもなんだけど、人は見かけによらないこともあるよ」

 

先生が知っている中でも、そういう生徒はそれなりにいる。

例えば、目付きで怖がられることが多い『便利屋68』のカヨコがネコ好きであったり、もっぱら語彙や顔が崩壊することが多い“トリニティの戦術兵器”ことツルギの内面は乙女チックであったり。

ホシノにしたって、ただぐーたらしてることが多いだけかと思ったら、最近になっていろいろなものを抱え込んでいたことを知ったばかりだ。

先生の指摘に納得の声をあげる一方で、それはそれとして喫茶店の中で行われているやり取りに対して言いたいことはあるのだが。

 

「・・・あんな楽しそうにメニューを選んでるの、本当なら委員長とやるべきじゃ?」

「それはまぁ、うん」

 

イオリの指摘に、先生は思わずといったように頷く。

喫茶店の中では、ミラとホシノが軽くはしゃぎながらメニューを見ている。

その様子は、さすがに恋人同士のようとは言わずとも、ただの友達と呼ぶにはやたら距離感が近い。

ヒナが落ち着いた空気を好むから、という理由があるにしても、あそこまでじゃれ合うような姿を見た覚えはない。

それだからヒナに要らぬ心配をさせているのではと指摘されたら、あまり否定できない絵面だった。

 

「ホシノ先輩って、喧嘩で友情が芽生えるタイプだったっけ?」

「喧嘩で立場を分からせることはあっても、そういうのはなかった、かも」

「万全のホシノ先輩相手だと、私たちでは相手にもならなかったですからね~」

「その理論だと、駆けつけたのが風紀委員長だったらそちらと友情が芽生えることになりますが・・・」

 

想像できるか地味に微妙なラインだった。

ヒナとホシノが仲良くなれるかで言えば、おそらくなれるだろう。

それこそミラが架け橋になれば、案外容易に友達同士になるかもしれない。

だが、この二人が喧嘩で仲良くなる不良ムーブができるかと問われると、首を傾げることになる。

そんな議論を続けていると、ミラとホシノのテーブルに2つのケーキが置かれた。

それぞれミラが断面がチェック柄のようになっているチョコケーキを、ホシノがクリームたっぷりのパンケーキを頬張っているのを見て、シロコが僅かによだれを垂らす。

 

「・・・美味しそう」

「ですけど、高いんですよね・・・?」

「調べてみたけど、安くて700円だって」

「やすくてななひゃくえん?あれいっこで・・・?」

 

普段であれば聞かないような値段を聞いて、セリカの脳がバグる。

現在、借金の利子の緩和や学区の復興が進み始めていることで精神的にも金銭的にも余裕が生まれ始めたアビドスだが、さすがに贅沢出来るほどではない。

一つ700円のケーキなど、何か特別な日に買うかどうかといったところだ。

ちなみに、安くて700円というのはミラが食べているようなカットされたケーキの話であり、ホシノのパンケーキは2000円を越えている。

もしその事を知れば、セリカが店に突入してホシノの胸ぐらを掴むことになるだろう。

とはいえ、()()()()であれば単に羨ましいというだけの話で収まるのだが。

そこから先に進むとなると、話は変わってくる。

 

「あっ!二人が“あーん”をしてるぞ!」

 

イオリが叫んで指をさした方を見れば、ミラとホシノがそれぞれフォークに刺したケーキを互いの口に運んでいた。

いわゆる食べさせあいっこ、同時アーンであり、その光景を目の当たりにしたアビドス組はうっすらと顔が赤くなった。

 

「ちょ、ちょっと!いくら仲良くても、普通あんなことはしないわよね!?」

「うーん、私はホシノ先輩に“あーん”をしたことはありますけど・・・」

「ノノミ先輩の場合は介護じゃない!!」

 

女子高生相手にあんまりな言い方だが、セリカの言うこともあながち間違っているとは言い切れない。

なにせ、ノノミがしている“あーん”とは、だらけてノノミの膝の上で寝ているホシノの口元に食べ物を運ぶ作業のことを指しているのだから。

どれだけオブラートに包んだとしても“ペットの餌やり”が精々だろう。

 

「介護疑惑は置いとくとして、実際どうなんだ?私は連れだって喫茶店に行くことがないからわからないんだけど」

「そんなの私たちだって変わらないわよ」

「そもそも、私たち以外の方と遊びに行くこと自体、ほとんどないですし・・・」

「私からも、一般論以上のことは言えないかな。なくはない、としか・・・」

 

イオリはヒナほどではないにしても仕事人間なため、休日に友人と遊びに行くという感覚が薄い。そもそも友人=仕事仲間なため、“あーん”をする発想すら浮かばない。

アビドスはコミュニティが著しく狭く、ただの同級生や先輩後輩に当てはまらないような絆はあるが、どちらかと言えば『身内』や『戦友』に近い感情のため、やはり“あーん”をする発想は浮かびづらい。

先生はそもそも男性のため、どう足掻いても女子高生の友人同士のノリは想像の範疇をでない。少なくとも先生は男同士でやろうとは思わないが、だからなんだという話である。

 

「ん。二人が会計を済ませた」

 

あーでもないこーでもないと議論を重ねていたが、その手の議論に然程興味がなく監視を続けていたシロコの報告でようやく我に返る。

あくまで主目的はミラとホシノの追跡であり、横道に逸れた議題に囚われて見失ってしまっては元も子もない。

 

「この事は後で追及するわよ!」

「「「異議なし」」」

 

セリカの提案に全員が同意したことで、ひとまずは議論を中断して尾行を続けることになった。

とはいえ、最初からこの調子では、終わる頃にはどうなってしまうのか。

そんな一抹の不安を抱きながら、先生は尾行を再開した生徒たちの後を追っていった。

 

 

次にミラとホシノが訪れたのはショッピングモールだった。

当たり前のように手を繋いでいるのは、ひとまず置いておくことにして。

現在の二人はウインドウショッピングと洒落込んでいた。

 

「いやまぁ、それ自体は別に普通のはずなんだけどな?」

「あのお二人が揃うと、急にイメージが出来なくなりますからね・・・」

 

ミラとホシノがそれぞれ一人で楽しんでいるなら、まだわかる。

ホシノが後輩と一緒にいるならまったく違和感はないし、現実的な問題は別としてミラもヒナと一緒であれば納得できる範疇だ。

それなのに、いざあの二人が揃うと、途端に違和感が主張し始める。

おそらくは、直接的な交流が少ないからだろう。

それこそ、初対面とつい最近はむしろバチバチに戦ったのだから、尚更仲良くなる光景が見えない。

だが、現実に手を繋いで楽しそうにあちこち覗いているため、その光景を受け入れるのに少しばかり時間を要してしまっていた。

ついでに、アビドス組はホシノがあそこまで心を開いているという事実に対して微妙にやきもきしたりもしている。

 

「・・・本当、委員長が来なくてよかったな」

「だね・・・」

 

責任感が強くて繊細なヒナのことだ。ショックを受けてしばらく寝込んでいたかもしれない。

同時に、後でどのように報告すればいいのか悩ましいところでもあるが。

そんなこんなで観察を続けていると、ふとノノミがあることに気が付いた。

 

「そう言えば、今のところホシノ先輩がよく服を選んでいますね~?」

 

ノノミの言う通り、二人とも時折服を手にとって合わせていたりするのだが、ホシノがミラに服を見繕っている頻度が高いように見えた。

 

「小鳥遊ホシノって、意外と着道楽だったり・・・しないか。聞かなくても態度で分かる」

「ん。いつも自堕落だし、制服以外の服を着てるところはあまり見ない」

 

ホシノは基本的に後輩の前ではグータラし、後輩の知らないところでは制服を着て自治区内をパトロールしている。

そのため、実はホシノが私服を着る機会はヒナとほぼ変わらないレベルで少ない。

そんなホシノが、わざわざミラのために服を選んでいる。

ということは、

 

「まさか、ホシノ先輩やっぱり・・・!?」

「いやいやいや!さすがにそんなのあるわけないでしょ!?」

「でも、可能性はある」

 

キヴォトスの生徒同士による禁断の恋・・・という話も、ないわけではないが。

生徒が全部で5,6人しかいないアビドスでは、あまり恋ばなのしようがない。精々想像上でするか、先生とあったあれこれの話をするくらいだ。

そんな中で、ホシノが誰かのために服を選んでいるとなったら?

 

「いや、別にあれくらいなら普通だろ」

「まぁ、友達同士なら十分あり得るんじゃない?」

 

その辺りの機微を察するには、アビドスの後輩たちは経験が足りなかった。ホシノが経験豊富かどうかは別として。

 

「私としては、むしろ副委員長が委員長の服を選ばせてないか心配なんだけど」

「いや、さすがにそれは・・・」

 

もしそうだとしたら、デリカシーがなさすぎる。

同時に、ミラならやりかねないという負の信頼も、またあった。

放ったらかしにしてしまったヒナへのお土産として服を買おうと言うのは、まぁ分かる。

だが、それをデート(仮)相手に選ばせるというのは、事前に承諾があったとしても、あまりに礼儀に欠けている。

逆説的にミラとホシノがしているのがデートではないという証明の材料にもなるが、ミラの性格のせいで余計にややこしいことになっていた。

結局、ミラとホシノは何も買うことなくその場を後にした。

選んでいた服の謎を残したまま。

 

 

それから歩くことしばらく、次に二人が入ったのは書店だった。

 

「ど、どうする?」

「うーん、さすがにお店の邪魔をするわけにはいかないかな・・・」

 

書店であれば本棚で身を隠せるだろうが、その分狭いため大人数で動いては店の迷惑になりかねない。

店内と店外で班を分ける手もあるが、悩んでいる間に二人の姿を見失ってしまった。

探している最中にばったり出くわす可能性を考慮して、今回は店から少し離れた生け垣の影で待機することにした。

そうして待つことしばし、二人が店から出てきた。

ミラに変化はなかったが、ホシノがラッピングされた紙袋を嬉しそうに両手で抱えているのを見て、先生たちは生け垣の影に隠れながら顔を合わせた。

 

「ホシノ先輩が持ってるのって、まさかミラさんからのプレゼント?」

「ん、そうとしか思えない」

「ですけど、ホシノ先輩の誕生日はまだ先ですよね?」

「つまり、特別な日じゃなくてもプレゼントを贈る関係、ってこと?!」

「委員長にも時折やってるし、さすがに穿ちすぎだろ。いや、あの様子的にありえなくもない、のか?」

「あの紙袋の中が何なのかによるよね」

 

女子高生相手にプレゼントとして本を贈るというのは、微妙に色気がないように思えるが、最近の本屋は様々な雑貨も置いていたりする。

もしかしたらその類かもしれないと、プレゼントの考察に議論が熱くなる。

だからこそ、気が付かなかったのも当然と言えば当然かもしれなかった。

 

「みんな、何をやってるのかな~?」

 

上から投げかけられた声に、動きと議論が止まる。

錆びついた機械のようにギギギと視線を上に向ければ、いい笑顔をしたホシノが生垣の向こうから覗き込んでいた。

 

「駄目だよ~、尾行するのに大人数で一塊になるのは」

「そうそう、ちゃんと人数を分けないと目立っちゃうよ?まぁ、どのみち視線があからさま過ぎてバレバレだったけど」

 

ホシノの後ろからは、余裕の笑みを浮かべたミラもいる。

かくして、先生たちによる集団尾行は終わりを迎えた。

 

 

「それで、いつから・・・?」

 

歩行者の邪魔にならないよう、場所を近くの公園に移してから先生はミラとホシノに問いかけた。

余談だが、先生たちは現在ベンチに座るミラとホシノの前で正座をしていた。

地面が芝生とはいえ目立つしそこまでしなくていいと二人から言われたものの、一般から見て悪いことをしていた自覚があった後ろめたさから自然と今の形に収まっている。

それはともかく、先生の質問にミラとホシノは顔を見合わせながらなんて事のないように答えた。

 

「割と早い段階で気付いてた」

「ね~。ミラとおじさんが合流した時にはもういたよね?」

「先生までいることに気付いたときは、さすがにビックリしたけど」

 

つまり、ほぼ最初からお見通しだった、ということだ。

突発的な部分もあるとはいえ、計画が根本から破綻していたという事実を突きつけられ、先生たちは思わずうなだれてしまう。

 

「そ、それじゃあ、やたら距離感が近かったのは・・・」

「反応が面白そうだったからだよ~」

「ちなみに提案したのはホシノね。さすがにヒナが来てたら弁えたけど、いないならあれくらいはしてもいいかなって。リアルタイムで様子を伝えてるわけでもなさそうだったし」

 

何から何まで二人の掌の上だったらしい。

ちなみに、ホシノが抱えていた紙袋の中身は“海の生き物図鑑セット”であり、本当に色気のないものだった。

とはいえ、ホシノは遠方までアクア関連のホビー雑誌を買いに行くほどの魚好きであるため、嬉しいプレゼントには違いない。

先ほどまでの議論が無駄だったことにそこはかとない脱力感に襲われつつ、それでもなんとか気力を振り絞ってイオリが本題を切り出した。

 

「それで、結局二人はなんで一緒に出かけることになったんだ?」

「・・・内緒だよ?」

 

そう前置きして、ミラは今回のデート(仮)の真相を話し始めた。

 

 

* * *

 

 

「おはよう、ヒナ」

「ミラ、おはよう」

 

翌日、風紀委員会本部の執務室に現れたミラは普段通りの様子でヒナに挨拶をした。

結局、昨日先生とイオリから聞いたのは「喫茶店と本屋に行ったくらいで普通のお出かけだった」という当たり障りのない報告のみ。

別に、二人の言っていることが嘘なのではと勘繰っているわけではない。

だが、それはそれとして何か別のことを含んでいるように感じてしまうのは、むしろ自分が浅ましいのか。

 

「ヒナ、ちょっと相談っていうか、話しておきたいことがあるんだけど」

「・・・なに?」

 

ちょっとした自己嫌悪に陥っていると、ミラの方からヒナに話しかけてきた。

昨日のお出かけに関することか、あるいはそれとは別でホシノに関することか。

そう思っていたヒナだったが、ミラから告げられたのは予想の斜め上を行くものだった。

 

「月末のお休み、一緒にお出かけに行こっか」

「え・・・?」

 

ミラの言葉に、ヒナは思わずといったようにミラの顔を凝視した。

ミラからの誘い自体は嬉しいものだし、むしろ行けるなら行きたい。

だが、ゲヘナの抑止力が二人とも不在なことがバレてしまえば、どれ程の混乱が起きるのか。

それが分からないミラではないはずだが、その表情は至って大真面目だった。

 

「で、でも、私たちが一緒に休むのは・・・」

「その辺の情報工作はアコにしてもらうし、代役も頼んだから大丈夫」

「もしかして、小鳥遊ホシノ?」

「うん」

 

ミラとヒナのお出かけにあたって、一番の問題は代わりの戦力だ。

同等の実力なのは当然のこと、問題児に不在を悟らせないために内々で頼まなければならない。

そこで白羽の矢が立ったのがホシノだった。

ミラとは個人的に親しく、実力も申し分もない。その上、知名度も高くないため替え玉だと比較的バレにくい。

そのため、ミラが直接ホシノに頼み込み、報酬として『美味しいもの』と『海の生き物に関する本』を提供することで交渉が成立したのだ。

ついでに、偶然とはいえ先生と残りのアビドス組の協力も取り付けることができたため、ミラとヒナがいなくても恙無く治安維持ができるだろう。

全ては、ヒナと過ごすささやかな一時のために。

 

「そういうわけだから、一緒に遊びに行こう?」

「・・・ありがとう」

 

そんなミラからの申し出を断るはずもなく、ヒナははにかみながら頷いた。




なお全部ではないにしろデートコースは使い回す模様。
人の心を学んでいるって話は何処・・・?
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