振動スペシャルのコスト回復枠がいないなら水着ナギサ一択ですかね?
「まぁ、大人しくくたばるつもりはないけどね・・・!」
そう言って、暁ミラは両手の銃を上空の火山弾へと向けて、赤雷と共に引き金を引いた。
最初の鍔競り合いの時からこっそり溜めていた赤雷が着弾と同時に炸裂し、銃弾が直撃した2つの火山弾が無数の破片になり、残り3つも余波によって砕かれる。
だが、人の丈ほどある巨大な岩を砕くには余波だけでは足りず、大小の欠片となってより広範囲に襲いかかってきた。
(これは、ちょっとキツいかもしれないかな)
直撃をもらうよりは遥かにマシとはいえ、拳ほどのサイズでも痛みを覚えるし、顔ほどともなれば十分なダメージになる。
さらに言えば、暁ミラは迎撃のために長い溜め時間が必要になるが、黄昏ミラの火山弾はインターバルは不明にしても発動自体は上空に一発の銃弾を放つだけで済む。
幸い、銃そのもののリーチと重量によって行動にワンテンポの隙が生まれるため、発動さえさせなければ勝機は十分にある。
問題は、それが現実的に可能かどうか、ということだが。
「オオォォォ!!」
降り注ぐ火山弾などお構いなしと言わんばかりに黄昏ミラは雄叫びを上げながら突撃し、ブレードを横薙ぎに振るう。
暁ミラは後ろに跳躍することで避けたが、火山弾がカモフラージュになり僅かに回避が遅れてしまい切っ先が制服にかすってしまう。
直接的なダメージは無かったが、切り裂かれた部分が僅かに焦げたのが見えて暁ミラは冷や汗を流す。
(溶岩に浸したから高熱化しましたって?さすがにそれはふざけすぎでしょ・・・!)
アブソリュートの銃身を焼き斬るほどではなかったのは不幸中の幸いだったが、今後も同じだとは限らないだろう。
何せ、黄昏ミラから放たれている熱気は時間を経るごとに増しているのだから。
コクマーと戦っている時からそうだったのか、あるいは暁ミラが現れたからこその変化なのかまでは分からないが、あまり悠長はしていられない。
(臨界で爆発しないことを祈りつつ、あの火山弾を撃たせないようにしながら、先生たちに近づけないように立ち回る。考えることが多いなぁ、もう)
いっそ先生たちが決着をつけるまでのらりくらりと躱し続けようかとも考えるが、先生たちが連戦できる保証はないと即座に切り捨てる。
むしろ、自分がさっさと片付ける方がまだ現実的だ。
それにしたって、実現可能か定かではないのだが。
「って危なっ!」
思考が明後日の方向に向きそうになった暁ミラの鼻先にブレードが迫る。
咄嗟に体を反らして回避しつつ、ようやく暁ミラも腹を括った。
あれこれ考える暇はない。であれば、考えるのは戦いを終わらせてからだ。
思考リソースは目の前の戦闘、特に火山弾の阻止に集中する。
迎撃はできなくもないが、それには赤雷の溜め時間以外にも問題がある。
すなわち、残弾だ。
アブソリュートはリボルバー銃であるが故に、カートリッジよりも装填数は少なくリロードにも時間がかかる。
現在の残弾は両方とも5発。つまり、リロード無しで防げるのは最大で5回まで。それだって、完全に無効化できるわけではない。
やはり、火山弾は使わせないのが大前提。欲を言えば弾を残した状態で倒したいが、そこまで気にする余裕はないだろう。
「仕方ない、後のこととか細かいことは無視でいこう」
元より余裕なんてものはない。
使えるものは何でも使い、出せるものは出し尽くす。
終わった後のことは、先生に丸投げすればいい。
なればこそ、
「お前は必ずここで倒す・・・!」
* * *
「何やら、向こうは向こうで随分派手に戦っているようだねぇ」
一際大きくなった地響きに呆れ半分恐れ半分の声を漏らしたのはカスミだ。
淡々と弾幕を張って有無を言わさず問題児たちを処理する
火山弾が落ちてきた時はさすがに自身の目と正気を疑ったが、目の前の存在も大概なためすぐ諦め半分で受け入れた。
余波や流れ弾がこちらに来ないかとか、もし暁ミラが負けたらとか、気になることはいろいろあるが、そればかり気にしてもいられない。
なにせ、自分たちが戦っている相手もまた、常識の埒外の存在なのだから。
「硬いっていうかデカい!変形する船の弱点ってどこだよ!?」
「爆弾も思った以上に効果が無いんだけど!どこに投げればいいの〜!?」
「負傷者は遮蔽物の裏に!すぐに治療します!」
「遮蔽物の設置急げー!班長以上の火炎放射はさすがにむーりー!」
「先生の合図を逃すな!離脱のタイミングを間違えたら全滅するぞ!」
阿鼻叫喚の修羅場といった光景に、裏でイソイソと仕掛けの用意をしているカスミの視線が遠くなる。
だが、それでもまだ地獄絵図一歩手前で踏ん張りつつ戦線を保てているのは、先生の指揮のおかげだった。
「イオリとメグは関節を狙って!でも無理はしないように!温泉開発部は壁の設置を優先しつつ空いたタイミングでメグに爆弾を渡して!風紀委員会は5秒後に攻撃開始!攻撃後は散開しつつ遮蔽に隠れて、負傷してたらチナツの治療を受けて!」
アビドスでの事件以降、シッテムの箱に追加された新機能である『制限解除による多人数指揮』を駆使して獅子奮迅の活躍を見せていた。
一進一退の攻防を繰り広げながらも少しずつ押しているのは先生たちだが、それでもあと一歩が足りない。
というのも、
「カスミ、修理はあとどれくらい?」
「8割がた完了している。だが、性能を100%発揮させるのは難しそうだ」
今回の作戦で連邦生徒会から支給されたバリスタが、あらかじめ投下していたのが災いしコクマーと黄昏ミラとの戦闘で大半が破損してしまったのだ。
カスミが主導となって解析と修理を行なっていたのだが、現状の手持ちの資材では完全復旧とまではいかなかった。
「目安は、そうだな···2回だけ10秒間拘束できると考えてくれたまえ。修理が完了次第報告する」
「わかった。ありがとう、カスミ」
10秒。2回拘束できるとしても合計20秒。
通常の戦闘の最中としては十分すぎるほど長いが、巨大怪獣のような相手を仕留めるには短すぎる。
であれば、使うべきタイミングは足止めだ。
壊滅的な被害が出そうなタイミングで拘束し、立て直しを図るために使う。
そのタイミングは、すぐに来た。
「先生!修理が完了したぞ!」
「うわー!遮蔽が壊れたー!?」
カスミの合図と同時に、温泉開発部が設置し続けた遮蔽物がすべて破壊されてしまった。
そして、好機とばかりにコクマーの口に炎が溢れ出したのを見て、即座に指示を出した。
「カスミ、撃って!」
「いきなりかい!?だが了解した!」
いきなりの指示にカスミも若干面食らうが、危険な状態であるとすぐに察して迷わずバリスタを起動させる。
コクマーが口内の炎を吐き出そうとした直前、あらかじめ照準されていたバリスタから射出されたワイヤー付きの矢がコクマーへと突き刺さり、地面に縫い止められた。
「助かったー!」
「気を抜くな!これすぐに解けそうだぞ!」
「みんな、今のうちに立て直して!イオリとメグ、風紀委員会はそのまま攻撃!温泉開発部は遮蔽物の設置急いで」
ギシギシとワイヤーとバリスタの軋む音と先生の指示が聞こえたことで、この拘束は長く続かないと理解した生徒たちは大急ぎでそれぞれの役割を果たす。
そして、きっかり10秒。
複数の遮蔽物の設置が完了するのと同時に、コクマーが拘束を振りほどいた。
追い打ちをかけるには不十分だったが、態勢は崩れる前まで立て直すことができた。
仕切り直しも完了し、戦闘を再開しようとしたところで、不意にコクマーの視線が横にズレる。
次の瞬間、ガアァン!!と金属同士がぶつかったかのような衝撃音と共に、コクマーの上半身が大きくのけぞった。
一瞬、援軍が来たのかと考えるが、そのような報せは届いてないし、何よりコクマーが見ようとした先、攻撃が飛んできた方向は2人のミラが戦っている場所だった。
だが、まさかという不安に駆られて飛んできた方向を振り向くよりも早く、落下していく飛んできたものの正体を認識した。
「ミラ!!」「「副委員長!?」」
コクマーに直撃したのは、戦闘によって吹き飛ばされた暁ミラ本人であり、
その左腕は、あらぬ方向に折れ曲がっていた。
ここ1ヶ月いろいろとあってまぁまぁ消耗していたので、今回は短めになりました。
それはそれとして、最近SNSばっかだったのも原因の一つでしょうけど。
面白そうなネタを探して疲れることが多々あったので、しばらく距離を置いたほうがいいか・・・。