キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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ユメ先輩と過去ホシノの立ち絵を見ただけでほぼイきました。
まぁ、ここから曇るのは確定事項なんですが。
てか、おじさんは昔からうへうへ言ってたのか・・・。
まぁミラと会った時は完全に“暁のホルス”モードだったんで、そこまで影響はないですけど。


アビドス編・17

ホシノが残した手紙には、突然姿を消すことになってしまったことと隠し事をしていたことに対する謝罪、最後の生徒会としての責任を負って借金の大半を肩代わりしてもらうこと、そして、本当は大人が嫌いだったが、先生にはシロコのことを見ていてほしいという頼みが記されていた。

もちろん、残された側からすれば納得できるものではなかったし、どうにかホシノを取り戻そうと画策する。

だが、間髪いれずに市街地の方面から爆発音が響いてきた。

侵攻してきたのは、カイザーPMCの兵士たち。

大隊規模の戦力で住人を追い出しにかかっていた。

 

「な、なんで・・・どうして、どうしてアビドスを、街を攻撃しているんだ!」

 

アビドス砂漠に存在するカイザーPMCの軍事基地・・・ではなく、それとは別にある研究施設の地下室。

そこに両手を繋がれ拘束されているホシノは、目の前にいる黒服に吠えかかる。

 

「どうしてと言われましても・・・何もおかしいことなどありませんよ、ホシノさん」

 

かつて“暁のホルス”と呼ばれていた頃の攻撃的な性格の片鱗が出ているホシノを前に、それでも黒服は少しも怖じ気づくことはなく、むしろ諭すように今起きていることについて説明した。

今回の契約では、たしかにアビドスの借金の大半を肩代わりすると書類にも書かれていた。

だが、ホシノには誤算が二つあった。

一つ目は、書類には『借金の肩代わり』を約束する旨が書いてあったが、『アビドスに手を出さない』とは一言もなかったし、黒服も口にしなかった点。

たしかに借金の肩代わりはする。だが、それはそれとして最後の生徒会であるホシノがいなくなったことで実質的に実権を失ったアビドスをカイザーが見逃すかどうかは別問題だったのだ。

そして二つ目が、黒服がカイザーの幹部であると勘違いしていた点。

たしかに黒服はカイザーで活動しており、顔も幅も利かせている。だが、実際は黒服がカイザーを利用しているようなものであり、黒服本来の所属は別にあった。

そして、ホシノは知るよしもないが、その黒服の所属先こそがミラが追っている組織だった。

黒服がホシノを欲していた目的は、戦力ではなく神秘。ホシノが有するキヴォトス最高の神秘を実験体として研究し、分析し、理解するため。カイザーと違い兵士として使い潰すつもりは少しもなかった。

黒服は一つとして嘘をつかなかった。だが、重要な情報は全て伏せ、都合のいい言葉で惑わし、そうしてホシノを騙してアビドスごと手に入れたというわけだ。

黒服からすれば、本命はホシノでアビドスはついでのようなものだったが、ホシノからすればカイザーの手にわたる以上黒服に奪われるのと大して変わらない。

 

「今から行う興味深い実験こそが、私たちが観測を渇望していたもの。つまりは、そういうことです」

 

そう言って、黒服は部屋から出ていった。

 

「・・・ごめん、みんな。私のせいで、全部・・・」

 

部屋に一人残されたホシノは、小さく懺悔と後悔を呟き項垂れることしかできなかった。

 

 

* * *

 

 

圧倒的なまでの戦力の差。孤立無援の状態。

アビドス4人に対してカイザーPMCは数百。増援を頼もうにも、落ちぶれてしまった弱小校を救う学園はなく、連邦生徒会ですら当てにすることができない。

なぜ、どうして自分たちがこんな目にあってしまうのか。

絶望的な状況に、さしものアビドスも心が折れそうになる。

次の瞬間、

 

ドゴォン!

 

「なっ!?き、北の方で大きな爆発を確認!」

「合流予定のブラボー小隊が巻き込まれて・・・!」

「何っ!?何が起きている!」

 

兵士たちが待機していた場所の近くの建物が、突如として大規模な爆発が起こった。爆発は一回におさまらず、連鎖するように連続して発生して次々と兵士たちを巻き込んでいく。

いったい何が起こっているのかアビドスの面々も困惑する中、砂煙の中から下手人が姿を現した。

 

「まったく・・・大人しく聞いていれば、何を泣き言ばっかり言っているのかしら・・・目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く・・・それが、あなたたち覆面水着団のモットーじゃなかったの?」

『あ、あなたは・・・!?』

「何をすればいいのかわからない。ここを潜り抜けた先にも逆境と苦難しかない・・・だから何なのよっ!!くだらないことばかり考えて、全部奪われそうになってるのに何もしようとしない!あなた達は、そんなに情けない集団だったの!?」

 

爆発を引き起こした犯人は、アルを始めとした便利屋68だった。

元々は対アビドスを想定して仕掛けた数多のC4爆弾、対風紀委員会を想定して考案した爆発による増援の遮断と指揮官の無力化を、カイザーPMCの兵士たちに向けて容赦なく発揮させる。

 

「き、貴様ら!飼い犬の分際でよくも・・・っ!」

「うるさいわね、そんなの知ったこっちゃないわよ!」

 

威勢よく啖呵を切るアルだが、実際は『どうせ向こうから狙われるくらいなら自分たちから仕掛けてやろう』というやけっぱちもないわけではない。

あとは、自分の憧憬に正直になっただけ、というのもある。

 

「それにね、暁ミラから頼まれた依頼、先生の護衛はまだ続いているわ。だったら、先生が顧問をしているアビドスを守るのも、アビドスに手を出そうとしてるカイザーPMCに喧嘩を売るのも一緒でしょう!」

 

暁ミラならきっとそうするという確信が、アルにはあった。

それこそが、自分が目指しているハードボイルドなアウトローだから。

それに何より、あの時柴関ラーメンでブチギレたミラの姿を見ているのだ。

あの時のミラに比べれば、目の前のカイザーPMCなんてそこらの不良と大して変わらない。

 

『便利屋の皆さん・・・』

「そうだね。たしかに悪党としては正解。それに、これでむざむざやられたら、ミラに顔見せできない」

「・・・おかげさまで目が覚めました。私たちに今、こうして迷っている時間はありません」

「そうよ!何よりもまず、ホシノ先輩を取り戻さないと!」

 

アルの発破によって、心が折れかけていたアビドスの面々が次々と目に光を宿していく。

 

「・・・クククッ、お前たちは知らないのだったな。暁ミラは・・・」

「問答無用!これ以上あんたたちの言葉を聞く必要なんてないわ!それに、この程度私たちだけで返り討ちにできなくて、何がアウトローよ!」

 

カイザーPMC理事は、今度こそアビドスの心を折るべくミラも捕縛している事実を突きつけようとするが、それよりも先にアルが口を開いてカイザーPMC理事の言葉を封殺する。

改めて言おうとしても、その前にアビドスと便利屋68はそれぞれ戦意に満ちた表情で武器を構える。

 

「・・・よくも、私の大事な生徒を」

 

とどめに、先生が怒りを孕んだ声音でカイザーPMC理事に宣戦布告を叩きつけた。

 

「ホシノのこと、返してもらうよ」

 

 

 

「クッ、一度退却だ!兵力の再整備にかかれ!」

「おのれ!覚えておけ、この代償高くつくぞ・・・!」

 

便利屋が参戦してからも戦闘を続けたカイザーPMCだったが、完全に覚悟を決めたアビドスとノリに乗っている便利屋68に先生の指揮が加わった勢いにはなす術がなく、全軍アビドスの市街地から撤退していった。

そして、アビドスと便利屋68もまた、次の戦いに備えるために帰路についた。

 

 

* * *

 

 

その日の夜、生徒たちがそれぞれホシノを助けるための作戦を考えている中、先生は一人でとあるビルを訪れていた。

目的は、とある人物と話をするため。

護衛や見張りの類いはおらず、それどころか他の人影すら見当たらないまま通路を進んでいけば、何事もなく指定された部屋にたどり着いた。

扉を開ければ、中にいたのは来ているスーツだけでなく手も顔も全身が黒く、だがひび割れているように漏れている光が顔の形を作っている異形。

 

「お待ちしておりました、先生。あなたとは一度こうして、顔を合わせてお話してみたかったのですよ」

 

ホシノが黒服と呼んでいる人物だった。

その姿を見て、先生はホシノから聞いた通り油断できない相手だと悟った。

そして、自分とは致命的なレベルで相容れない人物であるとも。

 

「あなたのことは知っています。連邦生徒会長が呼び出した不可解な存在、あのオーパーツ『シッテムの箱』の主であり、連邦捜査部“シャーレ”の先生・・・まず、はっきりさせておきましょう。私たちは、あなたと敵対するつもりはありません。むしろ、協力したいと考えています」

 

どの口で、と思わなくもないが、事実なのだろう。そうでなければ、敵対しているはずの先生をここまで案内させるとも思えない。

 

「おっと、そう言えば自己紹介をしていませんでしたか?・・・適切な名前がありましたので、今はそれを拝借して使っております。私たちのことは『ゲマトリア』とお呼びください。そして私のことは“黒服”とでも。この名前が気に入っていましてね」

 

ゲマトリア、と黒服はそう名乗った。

先生と同じくキヴォトスの外部から来た者であり、だが先生とは違う領域にいる存在。

観察者であり、探求者であり、研究者でもある『不可解な存在』。

 

「一応お聞きしますが、私達と協力するつもりはありませんか?」

「断る」

「・・・そうですか。だとすれば、あなたはキヴォトスで何を追求するおつもりなのですか?」

「私はただ、ホシノとミラを返してもらいに来ただけ」

「・・・くっくっく」

 

先生の提案に、黒服は笑いを零す。

 

「暁ミラのことはともかく、小鳥遊ホシノのことについて正当性がないことにお気づきですか?今のあなたに、いったい何の権利があってそんな要求をされるのでしょう?ホシノはもうアビドスの生徒ではありません。届け出を確認されていないのですか?」

「・・・まだだよ」

「・・・ほう?」

 

先生の反撃に、黒服は首を傾げる。

たしかにホシノは、自分の名前を書いた退会・退部届を残してからやってきた。すでに新しい契約書にもサインはされており、ホシノの全ての権利は黒服が有している。

いったい、どんな手があるのだと言うのか。

その答えは、いたってシンプルだった。

 

「顧問である私が、まだサインをしていない」

 

そう、ホシノは退会・退部届を残して去っていったが、正式に受理されるには顧問のサインが必要になる。

アビドス廃校対策委員会の場合、顧問は臨時だが先生が担当している。

つまり、先生がサインをしなければホシノはアビドスに所属したままであり、先生の生徒であり続ける、ということだ。

屁理屈にも近いが、それは相手もやっていること。

それに何より、これこそが大人の戦い方でもあった。

そして、黒服もこの一連のやり取りで目の前にいる先生の在り方を理解する。

“学園都市の先生”。一見単純に見えて、実際は敵に回すと非常に厄介な概念である、と。

それこそ、時には自分たちが用意したルールを覆すほどの。

自分の損害よりも生徒の幸福を優先する先生と、生徒の不幸よりも自分たちの利益を優先するゲマトリア。

だからこそ、理解するしかなかった。

どうあがいても、先生とゲマトリア(自分たち)は相容れない存在であると。

 

「・・・私はあなたのことを気に入っていたのですが・・・仕方ありませんね」

 

最終的に折れたのは黒服だった。心の底から残念がるようにため息を吐く。

だから、せめてもの餞別として先生が求めている情報を与えることにした。

 

「先生、彼女を助けたいですか?・・・ホシノは、アビドス砂漠のPMC基地の中央にある、実験室にいます」

「ミラは?」

「ミラはホシノがいる基地とは別の簡易基地でカイザーPMCが拘束しています・・・ですが、いずれ脱出されてしまうでしょう。彼女もまた確保しておきたい対象ではありますが、ホシノと違いそれができるだけの準備はまだ整ってませんし、今後できるかもわかりません。今回はカイザーPMCの精鋭にこちらで用意した麻酔と拘束器具を使ってもらいましたが、それでも目的はあくまで実験の邪魔をされないための時間稼ぎです。ですので、遠くの場所に移送すると誤魔化して離れた簡易基地のどこかに運ばせました。カイザーPMCに一任しているので、詳しい場所までは存じ上げませんが」

 

ずいぶんミラのことを高く買っていると感じさせる口振りだった。

黒服が用意したものがいったいどれほどの物かまではわからないが、カイザーPMC理事のあの自信からそれなり以上に手間をかけたはず。

それでも黒服が時間稼ぎになればいいと断言している辺り、やはりミラはキヴォトスの中でも規格外なのだろう。

とはいえ、これで聞くべきことは全て聞いた。

これ以上ここに留まる必要はないと判断した先生はさっさと踵を返して黒服に背を向ける。

 

「・・・先生。ゲマトリアはいつでも、あなたを見ていますよ」

「帰る」

 

最後に発せられた黒服の不穏な言葉も意に介さず、先生はそのまま部屋から出て行った。




前回と今回は割とアレな超すっ飛ばし原作垂れ流し回でしたが、次から本気出します。
って言うとフラグとか言い訳にしか聞こえないので、ちゃんと汚名返上できるよう頑張ります。

それと、軽く問題になった「アビドス編・15」を少し書き直しました。
展開は変わらないですが、一部のミラの台詞を出来るだけ株を下げすぎないような感じに変えました。
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