キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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今回のミラは盛大に荒ぶります。
キャラ崩壊とは少し違いますが、すごい楽しんでるので大目に見てあげてください。


アビドス編・19

次に仕掛けたのは、ビナーだった。

急速接近してきたミラを検知したビナーは、側部からミサイルポッドを展開してミラに向けて掃射した。

先ほどの落雷のお返しのつもりなのか、その数はゆうに100を越えている。

 

「あっはは!ずいぶんと派手なお出迎えだね!」

 

そんなミサイルの雨を前にして、尚もミラは笑みを浮かべたまま一切速度を落とさずに突っ込んでいく。

 

「なら私も、はりきって応えないと、ね!」

 

そう言って、ミラは飛び上がってから帯電した右腕を横に薙ぎ払う。

次の瞬間、一拍置いてからミラの動きに呼応するように極大の赤雷が横向きで発生し、迫っていたミサイル群をすべて迎撃した。

 

「ほらほら!まだまだ始まったばっかりなんだから!今度は私の番!」

 

まさかの事態に困惑するビナーだったが、そんな暇は許さないと言わんばかりに一気に接近したミラは、射程圏内に捉えた瞬間に銃口をビナーに向け、躊躇なく発砲した。

拳銃の銃声というにはあまりにも大きすぎる発砲音を轟かせながら発射した銃弾は、容易くミサイルポッドをひしゃげさせ、たった2発で爆発と共に破壊された。

 

「グォオオオオオ!」

「へぇ、機械のくせに痛覚でもあったりするのかな?何にせよ、目に見えてダメージが分かりやすいのはありがたいね・・・って、あれ?」

 

爆発の衝撃で身悶えするビナーを注意深く観察していたミラだったが、ここでビナーの動きが変わる。

まっすぐにミラの方を見据え、おもむろに口を開けた。

口内を覗いてみれば、中に存在する発射機構から眩いほどの光が漏れており、心なしか周囲の温度も上がり始めている。

 

「あっ、これやばそう」

 

ミラの直感が今までにないレベルで警鐘を鳴らす。

その本能に従って、ミラは全力でビナーの正面から退避する。

次の瞬間、ミラの背後を超高温と共に極大のレーザーが通りすぎた。

放たれた閃光は容易く地面を抉り、熱によって溶けた砂がガラスと化していく。

ビナーの切り札である、岩をも溶かす超高温の熱線『アツィルトの光』。

その圧倒的かつデタラメな攻撃を前に・・・それでもなお、ミラの表情から笑みが消えることはない。

それどころか、その笑みはさらに深く、鋭くなっていた。

 

「ふっ、ふふっ・・・ふっふふふあっははっははははは!!!あぁ、いいね!すごくいい!!まさかこんな素敵なサプライズを用意してくれるなんて!今この瞬間だけは感謝してあげるよ黒服!!」

 

ミラを知らない10人が見れば10人全員が思わず“気持ち悪い”と後退りしてもおかしくないほど、今のミラは昂っていた。

当然、周りに人がいないと分かっているミラが遠慮する理由などどこにもないのだが。

 

「情報が正しければ、預言者は全部で10体!つまり、あと9体は同じような存在がいるってこと!まだまだ楽しみが控えているなんて、本当に素敵な場所だねキヴォトス(ここ)は!」

 

もちろん、こんなことを知っているのはキヴォトスの中でも一握りであり、ミラ以外のほぼ全員が「できれば相手したくないし関わりたくもねぇよこんなもん」と思っているのは言うまでもない。

もし他にいるとすれば、それはミラと同じ戦闘狂か、飽くなき知識欲を持つ探求者くらいだろう。

 

「さぁ、続きを始めよう!もっと私を楽しませてみせてよ!!」

 

そのつもりは一切ないしAIなのに軽く恐怖を覚えそうになっているビナーと、そんなこと関係ないと言わんばかりに限界突破したテンションに身を委ねて襲いかかるミラによる戦いは、佳境を迎えようとしていた。

 

 

* * *

 

 

ミラとビナーが戦闘を繰り広げている様子を、ゲヘナ風紀委員組は少し離れた場所で確認していた。

どうにか視認できるというレベルで距離が離れているにも関わらず、ミラの「アハハハ!」という狂笑が聞こえてきそうな戦いぶりに、ヒナ以外の面々は思わず目を逸らしたくなった。

ついでに、目を逸らした先でヒナが微笑ましそうに見ているのを目撃してしまい、余計に視線のやり場に困ってしまう。

 

『それで、その・・・どうしますか?』

 

地獄みたいな空気になりかける中、口を開いたのは通信のアコだった。

自分たちの目的はカイザーPMCの足止めだったわけだが、最大の脅威になり得た北の大隊はミラが壊滅させた。

他から援軍が出る可能性も十分あるが、どういうわけかトリニティからも兵が出ている。牽引式榴弾砲を基地に数発撃ち込んだだけだったが、トリニティの戦力がそこにいるという事実だけでも混乱が起きるだろうことから、ヒナたちにもそれなりに余裕がある。

ならばミラの援軍に向かうべきかとも思うが、あまり近づきたくないというのがアコとイオリ、チナツの正直な意見だった。

遠目に見える怪物と戦いたくないという意味にしろ、出来るだけ今のミラに関わりたくないという意味にしろ。

そして、理由は違えど今回はヒナも手出しするつもりはなかった。

 

「ひとまずは様子見ね。ミラが楽しんでるところに水を差すのも悪いし。他のカイザーPMCの部隊に動きがあったら、そっちに向かうわ」

「楽しんで・・・いやまぁ、たしかにそう見えるけど・・・」

「多分ですけど、本来はミラさんが壊滅させた大隊規模で対処する相手ですよね・・・?」

『そこまでの戦力で、ようやく遊び相手ってことですか・・・』

 

あまりにも大きすぎるスケールの話に、アコたちはもはや驚く気力も湧かなかった。

というより、自分たちも実際にそれだけの兵力を用意した上で一方的にボコされたことから、むしろ妙な納得感すら覚えていた。

冗談でもなんでもなく、今の風紀委員会の戦力でまともに戦おうと思ったら、ヒナを含んだ全戦力で立ち向かわないと話にならない。

あるいは、状況が違えばあのときのミラもまた今と同じような表情で風紀委員会を蹂躙していたのだろう。それはそれで怖いが。

 

「それよりもアコ、カイザーPMCの動向は?」

『えぇと、全体的に動きは鈍いです。北方大隊の壊滅とトリニティの砲撃による混乱が大きいのでしょう。それと・・・癪ではありますが、便利屋も出ているようです』

「そう」

 

ヒナは軽く流したが、他の3人、特にアコとイオリは複雑そうな表情を浮かべる。

以前の戦闘で逃してしまった問題児たち。

できればこの機会にでも捕まえたいところだが、今回の目的はあくまでアビドスの援護。便利屋もそのために来ているのだとすれば、その邪魔をする理由はない。

 

「それなら、いったんここを離れる。念のため、トリニティが展開している場所とは逆の方角に・・・」

 

ヒナがこの後の動きについて指示を出した、次の瞬間、

 

 

 

先ほどまでの雷鳴とは比較にならない衝撃音と共に、赤い閃光が天を貫いた。

 

 

* * *

 

 

「はぁ、はぁ・・・っハハ、ここまで傷を負ったのは、いつ以来かなぁ・・・!」

 

岩をも溶かす熱線を放つ機械の大蛇との戦闘。

さしものミラも、まったくの無傷とはいかなかった。

衣服はいつも以上に焼き焦げ、ボロボロになった服の隙間からはいくつか火傷の痕が見え隠れしている。

だが、それ以上にビナーの姿が凄惨だった。

前部に見えるミサイルポッドは全損し、目のような4つのカメラも全て破損、分厚い装甲のあちこちが凹み、あるいは撃ち抜かれて火花を散らしている。

図体の差からまだビナーの方がダメージに余裕があるように見えなくもないが、実際の消耗度合いで言えば五分五分といったところだった。

ダメージレースで言えば、ミラが圧倒的に勝っている。

故に、ビナーはようやく目の前の存在を何がなんでも排除すべき対象と認識した。

口を開けて放とうとするのは『アツィルトの光』。ただし、漏れる光と込められる熱量は今までの比ではなく、余波だけでもただでは済まないことが窺える。

だからこそ、ミラもまた回避ではなく迎撃を選択した。

 

「アハッ、最後の一撃ってところかな?それなら、ここまで楽しませてくれたお礼ってことで、特別に新技を披露してあげる」

 

ミラがそう言った次の瞬間、ミラの体から直視するのも難しいほどの赤い雷光があふれでてきた。

赤雷の本流は指鉄砲で構えているミラの指先に集まっていき、ビー玉程度の大きさに収束されていく。

暁ミラの赤雷には、主に4つのパターンが存在する。

射程と連射に優れ、閉所以外なら幅広い状況で使えるオーソドックスな“落雷”。

赤雷を上から落とすのではなく横方向に発生させ、広範囲を攻撃する“薙払い”。

赤雷を球状にまとめて相手にぶつける、溜めが必要だが単発火力の高い“雷球”。

そして、雷球をさらに圧縮し、発射せずその場で爆発させて生じる衝撃波で周囲を根こそぎ吹き飛ばす“天罰”。

今回ミラが放つ新技は、ビナーの熱線を見て思いついた“天罰”の派生系。

自爆攻撃でもある通常の“天罰”よりもさらに赤雷を高密度で圧縮させ、ただ全方位に爆発させるのではなく指向性を持たせて解放させる。

名付けて、

 

 

 

「“神雷”」

 

 

ビナーから熱線が放たれるのとほぼ同時に、ミラからも赤い閃光が放たれた。

ビナーの熱線を見てから圧縮し続けていたミラの渾身の一撃は、一瞬の膠着の後に熱線を引き裂き、ビナーの口内を装甲ごと貫いた。

 

「グギャアアアアアァァァ!?!?」

 

構造上丈夫にできない弱点とも言える場所を大破させられたビナーは、今までで一番の悲鳴をあげながら悶え苦しみ、天を衝くように直立してから自らが作った穴に倒れこんで姿を消した。

その様子を最後まで確認したミラは、すっきりとした表情で大の字になりながら仰向けで寝転がった。

 

「はぁ~・・・満足した!」

 

未だに熱が冷めてないのか、そのまま右に左にとゴロゴロ転がりながら、今回の戦闘で得た収穫について想いを馳せる。

 

「思い付きでやってみたにしては、なかなか良かったんじゃない?圧縮率と解放量を調節すれば威力とか攻撃範囲もいい感じに変えれそうだし、まだまだ改良の余地も・・・」

 

ここでようやく冷静さを取り戻してきたミラは、ピタリと動きを止めて肝心なことを思い出した。

 

「・・・いっけね、ホシノちゃんのことすっかり忘れてた」

 

最初は先生とアビドスの援護を兼ねた足止めのつもりだったが、途中から我欲を満たす方向にシフトしてしまっていた。

というか、割と早い段階でホシノのことが完全に頭から抜け落ちてしまっていた。

 

「今さら向かっても・・・間に合わなさそう。ていうか、こんなボロボロの姿なんて見せられないか・・・まぁ、最低限足止めはできたし、それで良しってことにしよう」

 

おそらくは、そろそろホシノの奪還が完了している頃合いだろう。ホシノと後輩たちの感動の再会に水を差すのも申し訳ない。

それなら、他に出来ることをするとしよう。

ミラは疲労とダメージで重くなった体に鞭を打ち、立ち上がってどこかへと姿を消していった。




黒服「喜んでいただけたのなら、まぁ、それはよかったです・・・」
たぶん黒服もここまでミラが荒ぶるとは思ってなかったやろなぁ。

モンハン風に技名を付けてみましたが、たぶん今後使う機会はないと思います。
こんな感じの種類があるよとだけ思ってもらえれば。
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