キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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お気に入り登録者1000人達成ありがとうございます!
正直、まさかここまでいけるとは思っていませんでした。
これからも大勢の人に読んでもらえるよう頑張りますので、応援のほどよろしくお願いします。

閑話はひとまず今回で終了です。
次からはまた本編に戻ります。


閑話・ミラのとある一日編

AM7:00

「ふぁ~、よく寝れたかな」

 

セーフハウス内で起床。

場所は数日おきに変わり、たまにラルの店でも寝泊まりする。今回はゲヘナの自治区付近のセーフハウスを使用した。

その後、顔だけ洗っていつもの服装に着替える。

 

「今日のメニューは・・・レーションしか残ってないな。補給するか放棄するか悩ましいけど・・・ゲヘナに近いのはここくらいだしなぁ」

 

食事はできるだけ栄養バランスを気にして摂るようにしているが、物資や資金の状況によっては1、2食抜くこともある。

ちなみに、ゲヘナ付近のセーフハウスはいくつか用意していたものの、現在使っている場所以外は軒並み温泉開発部に潰された。幸いにも顔は見られていないが、ゲヘナに復帰したら徹底的に潰すと決めている。

 

「他に良さそうな場所は見つかってないし、今日はブラックマーケットで買い出しかな。ついでに資金調達もしておこっと」

 

お湯を沸かして食事の準備をしながら、今日の予定を組み立てる。

厳密に一日の予定が決まっているわけではないが、基本的に物資補給、資金調達、情報収集の3つをこなすことが多い。

 

「・・・ヒナはちゃんとご飯を食べれてるかなぁ」

 

風紀委員会の仕事で多忙を極めているであろう幼馴染みの食事状況を気にしながら、出来上がった食事をさっさと口に運んで外に出ていった。

 

 

AM9:30

ブラックマーケットに向かったミラは、たっぷり時間をかけて敷地を巡って必要な物資の価格を比べ、時に喧騒の中で聞こえる会話や掲示板に載っている以来から情報を読み取っていく。

 

「なるほど、さすがにあそこの銀行を潰すところまではいかなかったか。規模が大きすぎるのも考えものだね。でも盗難品を押収できた辺り、時間をかけて解体するつもりかな?」

 

ミラが遠目で眺めているのは、以前覆面水着団(アビドス+α)と怪盗(ミラ)に襲われた、例のブラックマーケット最大規模の闇銀行だった。

そこには取り締まりのために来ているのであろうヴァルキューレの生徒が出入りしており、中から持ってきたダンボールを車に積み込んでいる。

だが、店員が拘束・尋問されている様子はない。外ですることではないのも確かだが、それを抜きにしても店員にそれほど焦燥や落胆の色が見られない。

まだ続けられる当てがあるのか、あるいは運が悪かったと割りきっているのか。

とはいえ、連邦生徒会が半ば機能しておらず、ヴァルキューレに良くない噂が流れていることからも、大して問題にならないと高を括っている可能性の方が高そうだった。

 

「まぁ、カイザーがあそこから手を引いたかも分からないし、ひとまず様子見か」

 

そもそも黒服がどこまでブラックマーケットに干渉しているのかも分からないのだからと、ミラは一度黒服を意識から外すことにした。

 

 

PM0:30

ひとまず目的の物資の相場をおおよそ把握したミラは、適当に見つけた店で昼食をとることにした。

入った店はハンバーガー店で、多少割高なことを除けば普通に良い店だった。

片手でハンバーガーを食べながら、もう片方の手でタブレットを操作して何かを調べている。

 

「これは、しょっぱい。これも、しょっぱい。こっちは・・・お、良い感じに稼げそう」

 

ミラが調べているのは、不良組織やギャングの取引予想をまとめた資料だった。なお資料を提供したのはラルである。

ブラックマーケットの中では比較的穏やかな店内の中で、穏やかそうにハンバーガーを頬張っているミラが、実は欠片も穏やかではないことを調べていると店が知ったら卒倒していただろう。

良くも悪くも“白づくめ”の噂を聞いていたため、誰も近づこうとしなかったのが不幸中の幸いだろうか。

 

「それじゃ、さっさと買うもの買って準備しとこっと。ごちそうさまでした~」

 

あっという間にハンバーガーを平らげたミラは、一言礼を言って店を出ていった。

その軽い足取りで略奪に向かおうとしていると、誰にも気付かれないまま。

 

 

PM5:00

「ふぅ、買った買った」

 

ブラックマーケットでの買い物を終えたミラは、ホクホク顔で今回買った食料の備蓄を並べ始めた。

 

「肉に魚に、野菜系も良いのがあったし、クラッカーも思ったより安かったね。少し買いすぎたかもだけど、賞味期限的に問題はなさそうかな」

 

まるで主婦のようなノリのミラの姿は、ミラを知る者からすれば違和感の塊でしかない。

だが、ゲヘナにいた頃は毎朝自分とヒナの分の弁当を作り、献立も食料もすべて自分で管理していたため、ヒナからすればそこまで違和感のある光景ではなかった。

ちなみに、現在ヒナが自分用に作っている弁当のレシピはミラ譲りのものだったりする。

 

「さて、それじゃあそろそろ計画をたてないとか」

 

物資を整頓してしまい終えると、一転してミラの浮かべる笑みが獰猛なものへと変化した。

タンスから地図を取り出して、今回襲撃する場所の情報を確かめる。

 

「場所は、海の近くの倉庫か。まぁ、この時間なら人もいないだろうし、そんなものかな。護衛の配置は・・・いるとしたら、こことここ、ここら辺か」

 

淡々と、だがどこか生き生きとした様子で襲撃の計画を立てていく。

それから一時間後、計画を立て終えたミラはセーフハウスを出て目的の場所へと向かった。

 

 

PM9:00

とある学区に存在する海沿いの倉庫。

その中で、とあるギャングと不良組織の幹部が顔を合わせていた。

一見すると釣り合っていないようにも見えるが、この2つの勢力がここにいる理由はとてもシンプルなものだった。

 

「ほら、言われた通りの金を持ってきたぞ」

「ふむ・・・たしかに指定した通りの金額だ。約束通り、報酬を渡そう」

 

そう言って、不良から金を受け取ったギャングのボスは後ろの部下にいくつかのアタッシュケースを持ってこさせた。

言ってしまえば、キヴォトスでは特別珍しいことではない武器取引の一つだ。

ただし、不良が用意した金はカツアゲや強盗で手に入れたもので、ギャングが用意した銃は表に出回っていない違法品だが。

 

「・・・意外だな。てっきり有耶無耶にされるものだと思っていたが」

「たまたま我々に金が必要な事情があって、たまたま売ろうと思っていた銃をお前たちが買った、それだけだ」

「そうかよ」

「さて、もう用事は済んだ。さっさと・・・」

「ぐぁあ!?」

 

取引は終わったと帰らせようとした次の瞬間、扉を破壊しながら砲弾のような勢いで外に配置していた部下が吹き飛ばされてきた。

 

「なっ、何だ!?」

「敵襲!敵襲だ!ボスを守れ!」

「チッ!いったい誰が・・・」

 

扉の奥から現れた姿を見て、この場にいる全員が動きを止めた。

入ってきたのは、一切の穢れがない純白の少女。

顔は目深に被った外套でよく見えないが、その容姿には心当たりがありすぎた。

 

「なっ、“白づくめ”だと!?クソッ、嗅ぎつけられていたか!」

 

ブラックマーケットに置いてアンタッチャブルとされており、多くの同業がその被害に遭っているとされている少女が、目の前に現れる。

その意味が分からないほど、ボスは間抜けではなかった。

 

「さっさと逃げるぞ!おいっ、お前たちも俺を守れ!俺を逃がしたら追加で・・・」

「ガッ!」

「ぎゃあ!?」

 

だが、半ば伝説にもなっている“白づくめ”を前にしてのその行動はどうしようもなく手遅れで、指示を出す間にも不良は殴り飛ばされて全滅、他の部下は吹き飛ばされた不良に巻き込まれて半壊、何とか巻き添えから免れた生き残りも容赦なく刈り取られて壊滅。

残ったのは、白づくめに踏みつけられて身動きが取れないボスだけだった。

 

「ぐぇっ!く、クソッ、俺を誰だと・・・」

「ただのカモでしょ?銃はぼちぼち、現金もまあまあ、転がってる奴らの武器も合わせればそれなりの足しにはなるかな。追加報酬の内容や在処なんかも気になるけど・・・うっかりやり過ぎて資金源を減らしたくないし、今回はこれで勘弁してあげる」

 

背中から踏みつけられているボスは白づくめの顔を見ることができないが、ギャングのボスとしての意地がこれで終わってたまるかと一矢報いるため、どうにか顔を動かしてミラに拳銃の銃口を向けようとする。

だが、ボスはそこで見てしまった。

フードの奥で輝く、深紅の瞳を。

 

「ひ、ひっ・・・!?」

「ん?私の顔が見えちゃった?そこまで頑張る気概は褒めてあげてもいいけど、私としては不都合なんだよね、それ」

 

幸か不幸か、ボスは目の前の白づくめの少女がキヴォトス最強と謳われている暁ミラであることと結びつかなかったが、ミラからすればそんなことは関係ない。

ボスは単純に妖しく輝く深紅の瞳に対して本能的に恐怖を抱いただけだが、顔を知られたくないミラはそっとボスの顔に手を添えて、

 

「上手くいくかは分からないけど、出来ればこれで忘れてね」

「ガバッ!?」

 

床に小さくクレーターができるほどの圧力で瞬間的にボスの顔を圧迫した。

頭全体を激しく揺さぶられたボスはその衝撃に耐えることができず、あっさりと寸前の記憶もろとも意識を手放した。

 

「さて、より取り見取りだけど巡回に引っかかりたくないし、もらえるものは適当にもらってさっさと帰らないと」

 

そう言って、ミラはあらかじめ用意していた袋にできるだけその場に落ちている武器を入れていき、袋が満タンになった辺りで倉庫から去っていった。

 

 

PM11:00

「ふぅ、今日の収穫はそれなりだったかな」

 

戦利品をラルの店に預けたミラは、ブラックマーケットの郊外に存在するセーフハウスに戻った。

今ミラがいるセーフハウスはいくつか用意したものの中でも使用回数が最も多い場所でもある。

その理由は、単純なものだった。

 

「はぁ~、やっぱ簡易とはいえ一仕事終えた後のシャワーは格別だね」

 

ここにだけ唯一、簡易シャワーを設置してあるのだ。

他のセーフハウスにも設置したいのは山々なのだが、排水の関係で用意したくてもできないのが実情だった。

だからこそ、このセーフハウスは他の場所よりも大切に使っている。

ミラの数少ない戦闘以外の至福の時間でもあるが、ここ最近はシャワーを浴びていると少し表情が曇るようになった。

 

「・・・でも、たぶんヒナはお風呂に入る時間も多く取れてないよね」

 

この前アビドスで会った、幼馴染みのヒナ。

あの時会ったヒナの髪は、ミラが姿を消した前よりも傷んでいるように見えた。

おそらくは、それだけ仕事に忙殺されているのだろう。

そんなヒナを思うと、自分がこうしてシャワーを浴びていることが少しだけ申し訳なく思った。

ちなみに、ヒナが風呂に入る時間すらないほど忙しい時があるのも事実だが、実際は姿を消しながら過ごしているミラの方がよっぽどシャワーを浴びる時間を取れておらず、ヒナもヒナでそんなミラを心配している日々を過ごしている。

 

「さっさとゲマトリアを潰して、早くヒナのところに戻りたいところだね」

 

身体についた水滴を拭き取りながら、ミラは改めてヒナのためにもできるだけ手早くゲマトリアを潰す決意を固める。

 

「とはいえ、カイザーの黒服はしばらく私の近くで派手なことはしないだろうし、また一から探さないとか・・・」

 

やはり安易な博打をするべきではなかったと、あの時の選択を後悔する。

だが、不幸中の幸いと言うべきか、次の手がかりがまったくないというわけではなかった。

 

「トリニティとゲヘナ間で結ばれるエデン条約、それに伴うトリニティ内のごたごた・・・はてさて、何が起きることやら」




書いてて「あれ?ミラって実はかなり邪悪では?」と思いそうになりましたが、銀行強盗をしたがる誰かや無差別に破壊したがる誰かやペロロ狂いのファウストがいる時点で今さらかと思い直しました。
どっちにしろキヴォトスの治安は終わってんなぁ。
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