それと、『トリニティ編・1』でエデン条約に関して盛大な認識違いがあったので書き直しました。
最近疲れ気味なのか、復習のためにストーリーを見返したりしても内容がすっぽ抜けるようになっちゃって・・・。
不思議な光景を見た。
白亜のテラスに様々な茶菓子とティーセットが置かれたテーブル。
ミラはその場所に心当たりなどなかったが、どこなのかは直感的に理解できた。
「ふぅん?ここが噂のティーパーティー?こんな形で足を踏み入れるとはね」
足下はふわふわと覚束なく現実感を感じられないが、ミラは今いる場所が夢の中であるとはっきり認識していた。
そもそも、直近で覚えている最後の記憶はエデン条約に関する有益な情報を得られないまま古書館を後にして不貞寝したのが最後なのだ。
実は自分の記憶にないだけでティーパーティーに目を付けられて呼び出されたという可能性もなくはないが、自分の他には誰の気配も感じないことからそれも違う。
「つまり、そういうことでいいのかな?私と話すつもりでここに呼んだってことで」
いや、一人だけミラの他にこの空間に誰かが存在していた。
振り向いた先にいたのは、ミラよりも小柄な狐耳の少女。どこか浮世離れした空気を纏う生徒の正体を、ミラは一目で看破した。
「まさか、そっちから接触してくるとは思っていなかったよ、百合園セイア」
「ふむ、君はこの状況について少しも狼狽えないのだな」
「いやいや、ちょっとは驚いてるよ?それよりも面白いが上回ってるってだけで」
百合園セイアについて、ミラは容姿などの基本的な情報は持っていた。
だからこそ目の前の少女がセイアであると断言できたのだが、さすがにこのような明晰夢の中で会うことになるとは思ってもいなかった。
だが、噂レベルの事前情報と今置かれている状況から、この摩訶不思議な現象について見当をつけることができた。
「“百合園セイアは未来を予知することができる”なんて話、眉唾ものだと思ってたけど、なるほどね。予知夢・・・いや、夢を介した時間軸への干渉ってところかな?明晰夢を通じて過去・現在・未来を観測することができる。病弱なのも、その能力の反動ってところかな?」
「元から体が弱いのは否定しないがね。しかし驚いた。まさか初対面で見破られるとは思わなかったな」
「なんとなく、こっちに来てから誰かに見られているような感覚はあったからね。まさか夢越しとは思わなかったけど、そういうのがあるってわかっただけでも収穫かな」
「・・・なるほど、やはり“白い龍”などと呼ばれることはあるな。常人はおろか、天才ともまた違う感覚を持っているようだ」
「それで?わざわざトリニティに嫌われてるゲヘナの中でも特に警戒されてそうな私に、何を話しに来たのかな?」
1人で何か納得したかのように頷くセイアの言葉には反応せず、さっさとミラをこの場に呼んだ本題について尋ねる。
セイアも、こうしていられる時間は長くないのか素直に応じた。
「あぁ。まず聞くが、君はいつまでトリニティに滞在するつもりだ?」
「さぁ?探し物が見つかるか次第だけど、長くても1週間はかからないかな」
「なら、それを無期限まで伸ばすことはできるか?具体的には、そうだな・・・1,2か月ほどだ」
「やろうと思えばできなくはない、と思うけど・・・なんのつもり?」
「近々、トリニティにシャーレの先生が来る」
セイアの言葉に、ミラはピクリと反応する。
何故とか何のためにとか気になることはあるが、断言したセイアの言葉は疑わずに続きを促した。
「・・・詳しく聞かせて」
「先生はティーパーティーのホストであるナギサから“補習授業部”の顧問を頼まれる。まぁ、内容からして担任と言った方が良いかもしれない。表向きは単純に試験を落第した者を集めただけの部活だが、実際は『トリニティの裏切者』を排除するためにナギサが用意したものだ」
「炙り出しじゃないんだ?」
「最初はそのつもりだったようだが、思ったように事が進まず疑心暗鬼に囚われてしまったようだ。4人まで候補を絞ったはいいが、最後の最後で大雑把になるのは彼女の悪い癖だな」
やれやれと肩を竦めるあたり、今までにも何度か同じことがあったのだろうか。
その辺りの事情に興味はないが、そこまで聞いてなんとなくセイアが言いたいことを察した。
「つまり、私にそれとなく先生のサポートをしてもらいたいってこと?」
「出来ることなら、代わりに裏切者の正体を暴いてもらいたいところだが・・・まぁ、それを君に頼むのは様々な意味で酷というものだ」
「セイアは知らないの?」
「凡そであれば把握している。何なら襲撃してきた彼女と取引したことで今も生きている。だが、事は複雑だ。すべて説明するには時間が足りない」
なるほど、それはさぞ非常に面倒なことになっているのだろうと、ミラは思わず嫌そうな表情を浮かべた。
だが、それと断るかどうかはまた別の話だ。
「まぁ、いいよ。『運命アン』として出来る範疇なら手伝ってあげる」
「すまない。君にとって不本意なことだろうが・・・」
「先生絡みのことだし、これくらいはね。ていうか、それを分かって巻き込みにきたんでしょ?」
夢を通じてあらゆる時巻軸を観測できるセイアのことだ。先生を引き合いに出せばミラは断らないと分かっていた上で頼んだであろうことは容易に想像できた。
「正直、トリニティのゴタゴタになんて関わりたくもないんだけど・・・まぁ、ヒナも関わってるエデン条約絡みのことだし、それを考えれば吝かでもないかな」
「頼む、この問題をどうにか出来るのは、おそらく君か先生だけだ」
その言葉を最後に、ミラの視界は急速にティーパーティーから遠のいていった。
目を覚ませば、視界に入ったのはトリニティでの活動拠点にしている部屋の天井だった。
ムクリと体を起こし、先ほどまで見た夢の内容を反芻する。
「・・・まったく、私も先生のことになると甘くなるようになっちゃったね」
ここまで何でもしようと思えるのは、他にはヒナくらいしかいないのではないだろうか。
それが悪いことだと言うつもりはないが、ある程度は自制を覚えないと行くところまで行ってしまいそうだ。
「まぁ、今日は部屋で大人しくしてる予定だし、長期滞在に備えて準備しておこっと。それと、できるだけ補習授業部についての情報も掴んでおきたいかな」
その場のノリ、というほど軽くはないが、先生が関わるからと頷いてしまった安請け合い。大幅に狂ってしまった予定の調整は苦労するだろうが、それでも請けたからには相応の働きをしなければならないだろう。
あの時、連邦生徒会長から先生のことを頼まれたのと同じように。
「さて、それじゃあ天国の皮を被った伏魔殿の中身を暴く準備を始めようか」
* * *
長期滞在の準備については、ミラが思っていたよりもスムーズに進んだ。
というのも、ラルに予定変更の旨の連絡をしたところ「はいはいそうなる気はしてましたよ」とあらかじめ物資の用意をしてくれていたのだ。
その代わりに相場よりも倍近い金額をふっかけられたが、幸いにも資金面は潤沢に用意していたため許容できる範囲だった。
それよりも難航したのは補習授業部についてだった。
当然と言えば当然なのだが、ティーパーティーの思惑がかかっている部活の内部資料など簡単に入手できるものではなく、そもそもが未来の出来事でセイアと話した時点では成績が返っていなかったため補習授業部は設立すらされてすらいない。
事前調査もひったくれもなかった。
ただ、成績が発表されてからは割とすんなり面子は捕捉できた。
というより、その4人くらいしか怪しい生徒がいなかったと言うべきか。
下江コハル。
正義実現委員会に所属する一年生。本人はエリートを自称しているらしいが試験の成績はかなり悪く、試験でも3回連続で赤点をとったほどの落第生。補修授業部行きになったのも当然のことだ。ただし当人の人格にそこまで問題はなさそうなことから、コハル自身が裏切者というよりは正義実現委員会への牽制が目的か。
浦和ハナコ。
1年生の時点で3学年の試験を受けすべて満点を叩きだしたというまごうことなき傑物の2年生。の、はずなのだが、しばらくしてから水着姿で校内を歩き回るなどの奇行が目立ち始め、同時に成績も低迷。今回の試験でも最低クラスの点数を叩き出して再試験の対象となった。頭がおかしい、何を考えているかわからないという点で言えば、裏切者候補になるのも無理はないのだろう。
白洲アズサ。
トリニティでは珍しい転校生であり、素性がよく分かっていない謎の人物として注目されている。が、それ以前に世間知らずなところや学生らしくない軍人気質な一面を見せるらしく、一部からは『氷の魔女』と呼ばれる問題児。素の学力が低いというわけではないのだろうが、何かしらの理由で勉強が遅れているようで、2年生でありながら1年生のカリキュラムを受けているらしい。素性不明の転校生という時点で疑われるのは当然と言えば当然だった。
阿慈谷ヒフミ。
ブラックマーケットでアビドスと交流した、当人に特筆すべきところはこれといってないような2年生の一般生徒。なぜかナギサからの寵愛を受けているようで部長にも任命されているが、それでも“凶悪な犯罪者集団を指揮した”という噂が流れてからは疑いの目をかけられるようになったのだろう。ちなみに、ももフレンズのゲリラライブを優先して試験をすっぽかしたことが補習授業部行きになった表向きの理由らしい。
この4人が補習授業部に所属することになった生徒たちなのだが、それはそれとしてとりあえず言いたいことがあった。
(誰一人としてまともなのがいないじゃん。ていうか、ヒフミは平凡な一般生徒だって聞いたはずなんだけどな・・・?)
他の3人はともかく、ヒフミについて実はホシノからの連絡で話は聞いていた。
アビドスが扮した水着強盗団のリーダーであるファウストに仕立て上げたこともそうだが、囚われたホシノを助けるためにファウストの名前で支援砲撃をしてくれたということも。
水着強盗団のリーダーに仕立て上げられたのは、まぁアビドスが全面的に悪いのだからまだいいし、支援砲撃もおそらくはナギサから戦力を借りて行ったものなのだろうと推測できる。
だから、一般トリニティ生なのに単身でブラックマーケットに乗り込んだことに目を瞑れば根は優しい少女なのだろうと理解できるし、絶妙に否定しづらい噂が流れているのも大半はアビドスのせいだと考えれば被害者と言えなくもない。
だが、私用を優先して試験をサボるのはさすがにミラも擁護できなかった。頭ゲヘナなのだろうか。
裏の事情を考えれば完全にアビドスのとばっちりの被害者だが、表の事情だけで考えれば他と負けず劣らずの問題児だ。
思わず『平凡な一般生徒』の定義について考えそうになってしまうが、頭を振って余計な思考を排除する。
(ま、まぁ、この中で一番怪しいのはアズサだけど・・・そういう単純な話じゃないんだろうね。彼女はあくまで兵士の一人、黒幕は別にいるってところかな)
そうでなければ、わざわざセイアが接触してきた理由にならない。
あるいは、彼女こそがセイアを襲撃しながらも死を偽装してミネに託した張本人の可能性すらある。
(ひとまず、アズサの出自について探るのが当面の目標かな。黒幕の捜索はその後ってことで)
今後の予定があらかた決まった、その翌日。
トリニティにやってきたシャーレの先生が、正式に補習授業部の担任を務めることが決まった。
地味にセイアの話し方がプリコネのユニ先輩とごっちゃになりそうなのをなんとか堪えながら書いてました。
それはそうと、二周年でも来なかったセイアの実装はいつですか・・・?