キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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新キャラと新衣装が立て続けに出て、ちょっと置いてけぼりをくらいそうになってます。
言っちゃあなんですが、鉄道学園の2人はともかくは百鬼夜行組はいまいち性癖に刺さらなかったので・・・。


トリニティ編・9

「さて、そろそろ本気で対ティーパーティーと補習授業部について真面目に考えないとだね」

 

気分転換のおかげで幾分かリフレッシュしたミラは、改めて今後の方針について思考を巡らせることにした。

現在の目標は補習授業部、あわよくばティーパーティーの内情を探れる状況を作ること。

そのために、補習授業部の浦和ハナコと接触したいところだった。

だが、相手が相手なだけにどのような交渉材料を用意するべきか悩ましいところだった。

脅迫の類いは論外だろう。普段の行動はともかく、頭の回転が早い人物の報復は何をされるかわかったものではない。

なら飴になるような報酬か互いにとって利益になる取り引きができればいいのだろうが、相手が何を求めるのかまったく想像がつかないし、何を用意すればのってくれるのかもわからない。

そもそも自分から退学しようとしているかもしれないため、何を用意しても無駄になる可能性すら存在する。

詰んでいる、とまでは言わないが、かなり前途多難な状態だった。

とはいえ、礼拝にスクール水着で参加する生徒に有効な取り引きを考えろというのも酷な話ではあるのだが。

 

「いっそ周囲から攻略して・・・先生にバレるリスクが高いか。そもそも使えそうな知り合いもいなさそうだし。やっぱりいっそ先生を頼って・・・いや、それはしないって決めたじゃん」

 

久しぶりにリフレッシュできたのは事実だったが、それでもなお相手の癖が強すぎて思考が堂々巡りを起こしてしまい案が出せないままでいた。

ミラとて頭の良い生徒や癖のある生徒と関わったことは何度もあるが、その中でもハナコは飛び抜けて極端で前例がない。

早い話、ミラはハナコの真意を図りかねていた。

ハナコを理解するためにも、ひとまずは一目だけでも見てみたい。できれば二人で話をしておきたい。

だが、それを先生にバレないように行うというのが難易度を大きく引き上げていた。

 

「はぁ~・・・ひとまず、行動パターンを模索して隙を探すしかないかな。せっかく気分転換できたんだし、少しくらいのんびりでもいいか。でも、できれば補習授業部の日程とかは知りたいな~」

 

補習授業部とは言っても、さすがに休憩や休日も無しでぶっ通しなんてことはないだろう。まずはそこを探る。

遠巻きに様子を見ながらハナコと接触する機会を伺う。あるいは、そうしている内にハナコの方から近づいてくるかもしれない。

リフレッシュした今であれば十分待てる範疇だ。

 

「ん~、ストーキングは趣味じゃないけど、これはもう割りきるしかないか」

 

やりたくないとぐちぐち文句を言っても仕方ないと、ミラは腹を括って立ち上がった。

 

 

* * *

 

 

「たしか、あの校舎でやってるんだっけ?」

 

トリニティに限った話ではないが、規模の大きい学園になると校舎を複数建てている学園も中には存在する。過去のアビドスもその一つだ。

ちなみにゲヘナにも校舎が二つあるのだが、授業に参加する生徒が少なすぎるため意味を成していない。そもそもの増設の理由も、第一校舎が生徒たちの暴れすぎてボロボロになってしまったからという良くも悪くもゲヘナらしいものだ。

ミラは周囲に生徒がいないことを確認してから、ちょうど近くに生えていた木に飛び乗る。

そして、あらかじめ用意していた迷彩シートを被って校舎の中を監視し始めた。

 

「まさか、私がトリニティでこんなことをすることになるなんてね」

 

このような潜伏は経験がないわけではないが、それでもトリニティでやろうと思ったことはない。そもそもやる機会がなかっただけとも言えるが。

反射光を出さないために肉眼で窓ガラスを一つずつ確認していき、先生と補習授業部の生徒の姿を探していく。

 

「見つけた」

 

よく知っている顔だったからか、先生の姿はすぐに発見できた。

そして、同じ教室にいる4人が補習授業部に所属している生徒なのだろう。メンバーはミラが予想した通りの面子だった。

そして、浦和ハナコの容姿を直接確認する。

 

「・・・でっけ」

 

何がとは言わないが、知り合いの中にハナコと匹敵する生徒はいないほどだった。一応、アンとしてならシスターフッドに一人心当たりはあるが。

横道に逸れそうになる思考をどうにか矯正しつつ、ひとまず他の生徒とまとめて様子を観察し始める。

黒い正義実現委員会の制服を着ている生徒は下江コハル。補習授業部で唯一の一年生だが、それにしてもずいぶん小柄だ。自称エリートややる気はあるという評価もあって背伸びをしたがる子供のようにも見える。

鳥のような翼にアクセサリーをつけている少女は白洲アズサ。たしかに他とは違う雰囲気を纏っているが、ミラは直感的にそれが訓練された兵士と似たものだと感じ取った。それはそれとしてどこか天然なようにも見えなくはないが。

キャラクターもののバッグを背負っているのは阿慈谷ヒフミ。キャラクターの名前はたしか“ペロロ”だったか。一度だけブラックマーケットでアビドスと一緒にいたところを目撃したことがあるが、やはりどこか特徴的なものがあるようには見えない。とはいえ、人は見かけによらないとも言うし油断は禁物だろう。

そして、桃色の長髪で豊満な少女が浦和ハナコ。今のところの目標だが、やはりどうにも彼女の人間性が掴めない。今表に出しているのが素なのか、あるいは隠している方が本性なのか、それともその両方か。まずはそれを見極めるところからだろう。

それにしても、コハルが顔を真っ赤にしてハナコに突っかかっているように見えるのは、果たしてどのようなやり取りをしているのか。

まぁ、プールでもない場所の公衆の面前でスク水姿を晒す生徒の感性など触れないに越したことはないだろう。

あるいは、真正面から受けた結果が今のコハルなのだろうか。

 

「これはまた難儀というか・・・カイザーと全面戦争する方がまだ簡単だったね」

 

改めて自分の得意分野を再認識するが、苦手だからといってやらない理由にはならない。

ひとまず自分の目で補習授業部のメンバーを確認するという今日の最低限の目標は達成した。あとは機を見てハナコと接触できれば御の字だが、様子を見る限りは難しいかもしれない。

とはいえ、活動はまだ始まったばかり。まだ焦ることはない。

 

「もう少し粘ってもいいけど・・・さすがに動きが無さそうだし、一旦切り上げてもいいかな」

 

ストーキングと言えど、まさか本当に一日中張り付いているわけにもいかない。活動終了の時間を見計らってまた様子を見に来ればいいだろう。

再び周囲に人影がないことを確認してから、シートをしまって飛び降りた。

 

「さて、それじゃあ時間になるまで暇潰しでもしようかな」

 

そう言って、ミラは飲食店が多く並んでいるエリアに足を向けた。

 

 

* * *

 

 

「ねぇ、見て。あれ・・・」

「あっ、アンさんですわ!ここにいらしたんですね」

「今はお一人のようですし、話しかけない方がよろしいでしょうね・・・」

 

オープンテラスの喫茶店で紅茶とお菓子を楽しんでいると、時折そんな声が近くから聞こえてくる。

おそらく、ミラと同等以上でトリニティに紛れ込めるゲヘナ生は存在しないだろう。

ちなみに、今は紅茶を飲んでいるが普段はどちらかと言えばコーヒー党であり、ゲヘナ全体でもそのような傾向が見られる。コーヒーを“泥水”と侮蔑したトリニティにぶちギレて紛争に発展したことも一度や二度ではない。

とはいえ、ゲヘナからも『紅茶を飲んでる奴は頭お花畑』と煽って紛争に発展したことがあるため、どっちもどっちではあるのだが。

 

(ミルクを入れれば飲めなくもないけど、いい加減ヒナの淹れたコーヒーが恋しくなってきたな・・・)

 

まだゲヘナ学園で風紀委員会に所属していたとき、休憩や仕事終わりにヒナがいつもコーヒーを淹れて持ってきてくれたことを思い出す。

特別美味しいというのとは違うが、いつも仕事を頑張っている(どちらかと言えば“楽しんでいる”が正しいが)ミラのためにと頑張って淹れ方を覚えてくれたヒナのコーヒーの味がミラは好きだった。

 

(って、ホームシックになってる場合じゃないね。これからどうするか考えておかないと・・・)

「あれ、アンさんじゃないっすか」

 

今後の予定を組み立てていると、テーブルを挟んだ向かい側からイチカに声をかけられた。

 

「イチカさん、ごきげんよう。今日も正実の見回りですか?」

「はいっす。相席いいっすか?」

「私は構いませんが・・・仕事中なのでは?」

「あはは、ちょっと休憩するだけなんで大丈夫っすよ・・・まぁ、本当はいろいろと忙しいんで、あまりのんびりはしてられないんすけど」

「そうなのですか?」

 

おそらくは情報交換をしに来たのだろう。

瞬時にそう察したミラはイチカに先を促した。

 

「そうなんすよ。ティーパーティーからの要請であちこちに行くことが多くなって、ちょっと人手不足なんすよね」

「あちこちというと、どの辺りですか?」

「本当にあちこちっすね。トリニティ郊外の見回りだったり、古跡郡付近の閉鎖だったり」

「なるほど・・・」

 

正義実現委員会も治安維持を務める都合で学区外に赴くことは無くもないが、今になってその頻度が増えたということにミラはどこかキナ臭さを感じた。

 

「エデン条約の調印に備えて、ということでしょうか?」

「そこまではなんとも。まぁ、私みたいな下っ端が詳しい事情を考えたところでどうにもならないっすけどね」

「そういえば、補習授業部も最近になって活動が始まったそうですし、ティーパーティーも大変でしょうね」

「あー、そういえばもうそんな時期でしたっけ。うちの後輩も頑張っているんすかねぇ」

 

(古跡郡、か。わざわざ隠すようなものがあるとなると、時間があればそっちを調べてみるのもありかな)

(そういえば、その手の仕事が増えたのもそれくらいだったっけ?たしかに気になると言えば気になるタイミングっすね)

 

ミラはイチカの証言から次の狙いを絞り、イチカもミラの情報から今のティーパーティーの不審な点をさらっていく。

ミラと違って大事に巻き込まれたくないイチカだが、今となってはもう一周回って諦念と共に協力することにしている。そこまで盛大に巻き込まれることはないだろうという希望的観測もないわけではないが。

 

「あっと、あまりのんびりしてられないっすね。それじゃ、私はこれで失礼するっす」

「はい、イチカさんも頑張ってください」

「了解っす!」

 

快活な返事と共に、イチカは正実の見回りへと戻っていった。

そこで改めて耳を澄ませてみれば、周囲からのひそひそ声が先程よりも多くなっていた。

イチカは面倒見が良いことで年下、特に同じ正義実現委員会の後輩から人気があり、ミラもまた“運命アン”として相談事にのったりしたことから交流のあるトリニティ生から根強い支持を受けている。

そんな二人はプライベートでも仲良くしているということから、一部からはそのような需要も生まれている。イチカの容姿が男装が似合いそうな麗人寄りで、アンが(傍から見れば)典型的な深窓の令嬢であることも要因の一つだろう。

 

(変に目立つのは避けたいんだけどな・・・)

 

かといって何もしなさすぎるというのも不自然に見えてしまう。

やはり潜入調査とは難しいものだと、ミラは内心でため息を吐きながらその場を後にした。




補足ですが、ミラはかなり目が良いです。いろいろな意味で普通の人には見えないものが見えたりします。
それにしても、ヤバい生き物の目を抉って装備の素材にするとか、そりゃ呪われて当然ですよね。
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