キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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最近忙しくて上手く書けない日が続いているので、休養期間を挟みつつ投稿ペースを少し落とそうと思います。
ひとまずの目安は週に一回くらいの感じです。

エイプリルフールの麻雀動画で暴れまくったと思ったらマジで雀魂とコラボすることになってて草生えました。
でも、どうせだったら柴関ラーメンを商品化してくれても良かったと思うの・・・。


トリニティ編・10

「どうやら苦労しているようだな」

「そっちは寝たきりなだけあって暇でもしてるの?」

 

あれから数日、活路を見出だすことができずに悩んでいる中、再び夢の中で接触してきたセイアにミラは辛辣な言葉を返した。

セイアはセイアで大変な目に遭っているため言いがかりもいいところなのはミラも薄々気づいていたが、それはそれとして余裕な態度のセイアが気に食わなかったため敢えてそれは無視した。

 

「たしかに、あちこちに行って慣れないことをしている君と比べれば、私は暇をもて余しているのかもしれない。だからこそ、こうして君に情報を渡しに来たのだがね」

「・・・ちゃんと使える情報なんだろうね?」

 

だが、ちょうど今ほしいものを渡されるというのなら、さすがのミラも大人しくならざるを得なかった。

対するセイアは、特にしてやったりみたいな表情は浮かべずに淡々と必要なことだけを伝える。

 

「明後日から、補習授業部は活動場所を合宿棟に移す。3つある内の試験の一つ目で不合格ならばそうするという条件のようだ」

「合宿棟か・・・」

「場所は知っているのか?」

「まぁね。今となっては人もいないから、こそこそするのにちょうど良かったし」

 

合宿棟は本館から少し離れた場所に存在し、通常の教室やプールなどの施設だけでなく宿泊部屋も存在している場所になってある。

とはいえ、ここ最近の使用記録が存在しない程度には寂れており、埃が積もっているところも少なくない。

そのため、拠点ほどではないにしろちょっとした作業や人目を避けるために何度か無断で使用したことがあった。

 

「そうか。なら私からこれ以上言うことはない。あとは君で頑張れ」

「押し付けもいいところだね・・・まぁいいや。私はこれで失礼するよ」

「ん?あ、あぁ、そうか」

「じゃあね」

 

本人にそのつもりはなかったのだが、たった二回目の夢の世界の訪問で勝手に出ていける程度には馴染んでいるのを目の当たりにして、結果的に先程の意趣返しのような形になった。

姿が消えて本当に自分で夢の世界から出ていったのだと理解せざるを得なかったセイアは、目の前の光景を受け入れるために一度大きく息を吐いた。

 

「なるほど・・・君は私たちとは違う存在だと思っていたが、まさか言葉通りとは思わなかったな。“龍”などと呼ばれているのも、あながち間違いではなさそうだ」

 

あの赤い瞳孔に縦に割れた瞳を向けられた時に感じた、全てを見透かされているような感覚。

自分は夢の中でもドラゴンなどのような超存在に会ったことはないが、もし目の前に現れたら似たようなことを思うのだろう。

 

「彼女が味方で良かったと思うべきか、悩ましいところだ。少なくとも、敵にならないことを祈るばかりだな」

 

虎や熊にとってのじゃれあいが人間からすれば襲われるのと大差ないように、彼女にとって遊び相手でもこちら側からすれば命懸けの戦いになりかねない。少なくとも飛び抜けた個が存在しなければ大軍を差し向けても返り討ちにされるだろう。

今のところのそのような未来は見ておらず、できるなら今後も見ることがないのを望むことしかセイアにはできなかった。

 

 

 

「合宿棟か。手が出しづらくなったと見るか、こっそり接触しやすくなったと見るか、難しいところだね」

 

夢から覚めたミラはセイアから聞いた情報を基に今後の予定を組み立てる。

同じ場所で寝泊まりするとなると一人の時間は格段に減るだろうが、場所やタイミングに気を付ければ一人だけ釣り出すことも出来なくはない。

ただし、その分先生にバレる可能性も高くなるわけだが、そこは立ち回り次第だろう。

あるいは、ハナコが話に聞いた通りの才媛であれば、割りと簡単に接触できるかもしれない。

 

 

* * *

 

 

「お掃除、しませんか♡」

 

きっかけはハナコからの提案だった。

とはいえ、提案そのものに深い意味はなく、単純にこれから世話になる場所だから綺麗にしておこうという至極尤もな理由からだ。

普段のハナコからは想像できないような真面目な提案にヒフミも面食らう部分がないわけではなかったが、案そのものは真っ当でありはねのける理由もないため、部長を務めるヒフミはハナコの案を採用して大掃除を始めることになった。

合宿棟は広く、限られた場所しか使わないとはいえ4人で手分けしても非常に手間がかかる。

だからこそ、ハナコが()()に気付いたのは偶然だった。

 

「あら・・・?」

 

合宿棟は使う機会が非常に限られているため、どこもかしこも埃を被っていた。

だが、ハナコは他と比べて積もっている埃が少ない部分が何ヵ所かあることに気がついた。

風の流れで偶然そうなった、という可能性もないわけではないが、それよりは明らかに他の誰かが出入りしていたと推測する方が自然な残り方だった。

 

(誰かが無断で合宿棟を利用していた?ですが、なんのために?)

 

言ってはなんだが、合宿棟は悪巧みのために使えるほど便利な場所ではないし、わざわざ無許可で使うリスクを犯すほどの利点はない。

ならば自分たち補習授業部に関連する何かなのかとも思うが、それにしては使った形跡は最低限かつまばらで何かを仕掛けた様子もない。

分かるのは、誰かが何かのために使っていたということだけ。

 

(・・・情報が少なすぎますし、今は気にしたところでどうしようもなさそうですね)

 

自分たちが使っている時にやって来る、なんてことはまずないだろう。でなければ隠れながら無断で使う理由がない。

もし、もしそんなことがあるのなら、それはまた別の目的があるということだろう。

もちろん、今のハナコがそれを知る術はないのだが。

 

「ちょっと!なにサボってるのよ!」

 

実際にハナコが思案に耽っていた時間は長くなかったのだが、手が止まっているタイミングでコハルに見つかってしまった。

 

「あら、コハルちゃんはどうしたんですか?」

「わっ、私は水を入れに来ただけだからいいの!」

 

そう言うコハルの手元にはバケツが握られているため、嘘ではないのだろう。

なぜかわざわざ遠回りになるハナコが担当している廊下を通っているのは別として。

 

「少し想いを馳せていました。今までどのような方たちがここを使っていたのでしょうか、と」

「そう?こんなに埃を被ってたんだから、誰も使ってないんじゃないの?」

「今はそうでも、以前はもっと大勢の生徒で賑わっていたかもしれないじゃないですか」

「それは、そうかも・・・」

 

ひとまずこの場は適当に誤魔化にことにしたハナコの言葉をコハルは特に疑う様子もなく受け入れた。

本人はエリートを自称しているが、なんだかんだこの中で唯一の一年生で素直な後輩なのだ。

ついでに、からかい甲斐のある可愛いおもちゃでもある。

 

「想像してみてください。時には勉強会、時には部活のためにこの合宿棟に集まり、それぞれの目標のため互いに切磋琢磨しあう青春」

「うんうん」

「一日が終わりご飯を食べてから、汗を流すため、疲れを癒すために浴場で一息吐き」

「うん・・・?」

「それぞれの寝床へ戻りながら、それでも火照りが収まらない体を治めるためベッドの中で・・・」

「ちょっ、なにバカみたいなこと言ってるの!?学校でエッチなのはダメ!変態!死刑!!」

 

だんだんと話の流れを卑猥な方向に持っていこうとするハナコに、コハルは顔を真っ赤にしながら大声で遮った。

これがもし他のトリニティの生徒であれば、大半が軽蔑の視線を向けるかヒソヒソと小声で話しながら距離をとる。良心を持つ少数派は戸惑いながら諫めるだろう。

そのため、コハルの反応はある意味新鮮でもあった。

 

(そうですね。せっかくですし、プール掃除で親睦を深めましょうか♡)

 

今日もまた、ハナコは優秀な頭脳をくだらない思考回路のためにフル回転させる。

これが、3回行われる特別試験の一回目で最低点の2点を叩き出したハナコの平常運転だった。

 

 

* * *

 

 

「うんうん、楽しそうで何より」

 

プール掃除で楽しそうにはしゃいでいる補習授業部の様子を、ミラは離れたところから眺めていた。

果たしてあの4人の中に真実を知っている生徒がいるかどうか。あるいは知らない方が素直でいられるのかもしれない。

なんにせよ、

 

「あの子達を問答無用で退学ってのは、ちょっと違うよねぇ」

 

セイアの話が事実であれば、ナギサから見たあの4人は裏切り者の容疑者で、確実に解決するためにまとめて排除しようとしているのだろう。

ミラとて2,3回見ただけで人の本質を理解できるなどと言うつもりはないが、それでもナギサの疑念は見当違いであると断言できる。

同時に、自らの勝手な思い込みで無実の生徒を追放しようとしているナギサに対して思うところもでてきた。

疑心暗鬼に囚われているときほど、自分にとって都合のいいこと、信じたいことしか信じられなくなるのは道理だが、なまじ持っている権力と後に控えている事柄が大きいのが質が悪い。

元よりトリニティのことが好きではないミラだが、その理由がまた一つ増えてしまいそうだった。

 

「う~ん、いけないなぁ・・・そのつもりはなかったのに、どんどん深入りしたくなる理由が増えてきちゃう」

 

今までは目的意識からくる理性で線引き出来ていたが、今になって私情がそれを上回り始めていた。

今はまだそこまで衝動に駆られるようなことはないが、これからのティーパーティー、というより桐藤ナギサの出方次第ではその限りではないかもしれない。

いっそのこと黒幕の炙り出しに専念できる状況になれば、その心配もいらないのだが。

 

「うん、まずはハナコに渡してあげる情報集めから専念した方がいいかな。とりあえず、イチカが言ってた古跡郡に向かうとしよっか」

 

出来ないことを辛抱するよりは、出来ることから順番に片付けた方が精神衛生的にいいだろう。

ひとまずはイチカからもらった情報を基に、正義実現委員会が警備をしているという古跡郡に忍び込むことにした。




ハナコとかいうブルアカで扱いの匙加減が難しい生徒No1。
一番下ネタを口にしてるのに、同人誌とか二次創作でそれを全面に押し出すと解釈違いが頻発するってバグか何かですか?
となると、ハナコを使いこなせる公式は一流の変態だった・・・?
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