いや本当はまだ書く予定はなくて、現在投稿している3作品のうち、せめて1作はケリをつけてから始めるつもりだったんです。
なんですけど、キャラとか設定だけ固めておこうと思って調べていたら創作意欲が湧いちゃって、つい興が乗って書き上げちゃいました。
まぁ、投稿している3作品のうち一つは3,4話くらいで切り上げる予定で、もう一つもちょっといい感じの話が思い浮かばなくて行き詰っている状態なので、息抜きにはちょうど良かったのかなと。
もし評価が良ければ、こっちを優先するかもです。
プロローグ
ゲヘナ学園。
数千の学園が存在する超巨大学園都市『キヴォトス』の中でも一二を争うほどのマンモス校。
その校風は「自由と混沌」であり、銃火器の所持が常識で銃撃戦も日常茶飯事なキヴォトスの中でも特に治安が悪く、各エリアの事故・事件数が年に100件を下回れば少ないと言われるほど。
そんなゲヘナ学園の秩序維持を一手に担っているのが風紀委員会であり、その中でも風紀委員長である空崎ヒナは別格の実力を持っているため、学園内の不良から特に恐れられている。
そんな恐怖の象徴でもあるヒナは、現在執務室で書類仕事に追われていた。
カリカリとペンを走らせる音が室内に響くが、一段落ついたのかペンを置いた。
「ふぅ・・・」
「お疲れ様です、委員長」
一息吐くヒナに、風紀委員会のNo2である行政官の天雨アコがお茶を差し出す。
「ありがとう、アコ」
「いえ、これくらい当然です・・・マコト議長も、少しは心を入れ替えてほしいものですが」
「それを言ったところでしょうがないでしょ・・・」
なぜか風紀委員会、特にヒナを敵視している生徒会長のことを考えて遠い目になるが、それを紛らわすためか首にかけているネックレスを指で弄り始める。
それに気づいたアコが以前から気になっていたことを尋ねた。
「そう言えば、委員長はいつもそのネックレスを付けていますよね。それは何ですか?」
ネックレスとは言うが、実際は白い貝殻のようなものに糸を通しただけの簡素なものであり、その物体も貝殻と言うには平べったく石と言うには生物的で板と言うには動物的な、強いて言えば“鱗”に近いものだった。
ネックレスのことを尋ねられたヒナは、昔を懐かしむような表情で答えた。
「・・・これは、私の幼馴染からもらったプレゼント」
「委員長に幼馴染がいらしたんですか?」
「うん、ゲヘナに入学する前からの付き合いだった。
「そうなんですか。たしかに、こうして見ると綺麗ですね」
事実だけを見れば自身の身体の一部をアクセサリーにして贈っているということなので、どう受け取るかは意見が分かれそうなところではあるが、ヒナの機嫌を損ねないためにも当たり障りない感想を返した。
だが、ふとアコの記憶の中に思い当たるような人物像がないことに気付いた。
「あれ?ですが、私はそのような人物と会った記憶はないのですが・・・」
「・・・ミラは、2年前に失踪した。今も行方は分かってない」
「あっ・・・」
打って変わって寂しそうな表情になったヒナを見て、地雷を踏みぬいてしまったとアコは慌てて頭を下げた。
「すっ、すみません!知らなかったとはいえ、辛いことを思い出させてしまって・・・!」
「気にしないでいい。行方不明だけど、たぶんどこかで普通に暮らしてると思う」
「ですが、その、心配とか・・・」
「無事かどうかは、そこまで心配していない。ミラなら大丈夫だから」
表情の割には絶対的な信頼を寄せているヒナに混乱しそうになるが、ここでようやくアコは『暁ミラ』という名前に心当たりがついた。
「あの、もしかしてですけど。暁ミラって、あの“白い龍”ですか?」
「そう。アコも知っていたのね」
「同世代で知らない人はほとんどいないでしょう。私が知っているのは名前と噂程度ですが・・・」
暁ミラ。
“白い龍”あるいは“赤い雷”と称される彼女は、キヴォトスの中でも最高峰に位置づけられる絶対強者として名を馳せていた。
その名前と逸話はゲヘナにとどまらず広まっており、曰く素手でビルを倒壊させた、曰くたった一人で大規模な不良連合を壊滅させた、曰くその戦力は1人でゲヘナ全生徒に匹敵するなど、いっそ誇張表現としか思えないものも数多く存在した。
「正直な話、聞いた噂もほとんどがデマだと思っていたのですが・・・」
「実際は、デマの方が少ない。まぁ、デマの噂を『なんかやれそうな気がする』って言って片っ端から実践したっていうのもあるけど」
「デマを実践、ですか・・・?」
キヴォトス全体はおろかゲヘナ基準の日常でもそうそう聞かないようなワードに、アコは思わずドン引きした。
それは発想がぶっ飛んでいるというのもそうだったが、それ以上にミラの立場によるものが大きかった。
「たしか、当時の風紀委員会で次期委員長最有力候補だったと聞いた記憶があるのですが・・・」
ミラはヒナと共にゲヘナ学園に入学して割とすぐに風紀委員会に所属し、それから日も経たないうちに数々の戦果、というより伝説を作り上げたため、『次の風紀委員長は彼女だろう』と誰もが思っていた。
入学してから1年も経たないうちに失踪するまでは。
ヒナが頭角を現し始めたのもその後で、最終的に現在の状況に落ち着くことになったのだ。
そのため、真面目に取り組んでいるヒナよりも当時はミラの方が評価されていたのなら当然ミラも真面目な性格なのだろうと勝手に思っていたのだが、どうやら違ったらしい。
だが、それよりも衝撃的な情報がヒナの口から出てきた。
「それはうん、まぁ、そう。私よりも強かったし」
「えっ、ヒナ委員長よりもですか!?」
ゲヘナ学園風紀委員長のヒナと言えば、キヴォトスの中でも五本の指に入る実力者として知られている。
その戦力は、たった一人で風紀委員会の半分に匹敵すると言われるほど。つまり、風紀委員会はヒナとその他大勢でようやく対等ということになる。
そんなヒナよりも強いというのは、にわかには信じられなかった。
「・・・実際は、一度も手合わせしたことはないんだけど。でも、もし戦ったとしても勝てるイメージが湧かないから、ミラの方が強いと思う」
「委員長よりも強い、ですか。いまいち想像が・・・いえ、噂のほとんどが事実なら、分からなくはないような気もしますが・・・」
終止困惑しっぱなしのアコに対して「まぁ、普通はそうなるよね」と仕方ないといった風に軽く肩をすくめる。
噂や武勇伝には事欠かない幼馴染だが、言葉だけではどうにも表現できない。『どのような人物なのか?』と尋ねられたら『実際に会ってみないと説明が難しい』としか言いようがなかった。
とはいえ、説明できることがないわけではない。
「“強い”って言っても、ミラは天才とかそういう次元じゃない。もちろん才能もあるんだけど、ミラは重度の戦闘好きというか、趣味が戦うことっていうくらいの戦闘狂だから、他よりもすごい勢いで経験を積んでいったの」
「もしかして、ゲヘナに入学して風紀委員会に所属したのも・・・」
「『そっちの方が退屈しなさそう』って言ってた」
イカレてますね、と口に出そうになった言葉をアコはギリギリで飲み込んだ。
風紀委員会に所属する理由は数あれど、ここまで清々しいほどバトルジャンキーを前提にした理由はそうそうない。というより、そういう類はだいたい風紀委員会の敵に回ることの方が多い。
どのような考えがあって風紀委員会に所属することを選んだのか、その内心をアコは推し量ることはできないが、仮にできたところで理解できないような気しかしなかった。
あまりにも濃すぎる情報に眩暈がしそうになっているアコを横目に、ヒナは再び首にぶら下げているネックレスに意識を戻す。
その間は、まるで昨日の出来事のようにミラとの思い出を思い出すことができるから。
同時に、いなくなってしまう直前の日のことも。
* * *
その日は、何か特別なことがあったというわけではない。
「ただいまー」
「お疲れ様、ミラ」
いつも通り、ゲヘナ学園で起きた様々なトラブルに対応し、そのほとんどをミラが力技で叩きのめした、普段と同じ日常だった。
「今日はどうだった?」
「いつもと変わんないよ。まったく、数だけ多いんだから」
この2人の馴れ初めに、何か特別な事情があったわけではない。
昔から面倒くさがりだったヒナにミラから一方的に身だしなみなどの世話を焼くようになったのがきっかけで、ゲヘナ学園に入学し風紀委員会に所属した現在も変わっていない。
「ぱっぱと殴り飛ばして終わらせたらすぐ他所の応援、その繰り返し。もうちょっと歯ごたえのある相手がいればいいんだけどねー」
「風紀委員会からすれば、すぐに終わるに越したことはないと思うけど。私もその方が楽だし」
「はぁ~、これならいっそホシノちゃんともう一回ドンパチやった方が・・・」
「ちょっと待って」
まるでなんて事のない愚痴のように軽く発せられた内容に、ヒナは思わずストップを入れた。
「ん?」
「ホシノって、あのアビドスの小鳥遊ホシノ?」
「そうだよ?」
「あの“暁のホルス”?」
「そうそう。『“暁”でお揃いだね!』って言ったら、なんかめちゃくちゃキレられた」
「何をしているの・・・?」
基本的に、他学園間でのトラブルは非常に複雑なものになる。問題を起こした生徒の罰則をどちらが与えるかなど、外交的なトラブルに発展する例も少なくない。
アビドスは砂漠化の影響で規模は著しく収縮しているものの、その中でも小鳥遊ホシノは“暁のホルス”の異名で各勢力からマークされるほどの天才だった。
そんな要注意人物と、よりにもよって相手側の学区でトラブルが起こったような報告は聞かされていない。というより、当時ヒナが所属していた情報部が把握していないはずがなかった。
「ほら、1週間くらい前だっけ?私って外泊してたのよ」
「それは聞いてる。わざわざ風紀委員会の仕事を休んでいたし」
「あの時って、天体観測がしたくてアビドスの方に行ってたのね」
「なんでそうなるの?」
「ほら、言っちゃあれだけど、アビドスってほぼほぼ砂漠でしょ?街灯とかないし、天体観測には絶好のロケーションだと思ったんだよね。あっ、思った通り星はすごい綺麗だったよ。いつかヒナも連れて行ってあげる」
「時間があればね・・・って、そうじゃなくて、もしかして無断でアビドスの学区内に入ったの?」
「どうせ人数少ないし行けるでしょって思ったんだけどね、ちょっと甘く見てた。さすがは“暁のホルス”ってところだね」
ミラは当時のことを懐かしむように言っているが、実際問題ミラがやらかしたのは外交問題に片足突っ込んでもおかしくない、というより半歩突っ込んでいる。それに、相手はよりにもよって他校の要注意人物の中でも攻撃的で特に危険視されている“暁のホルス”小鳥遊ホシノ。
もし先輩や生徒会がこのことを知れば泡を吹いて倒れそうになってもおかしくはないだろう。
というより、「あぁ、またか」で流せるのはゲヘナでもヒナくらいしかいない。
それでも額に軽く冷や汗を流す程度にはビビっていたのだが。
「よく問題にならなかったわね?」
「盛り上がってきたタイミングでホシノちゃんの先輩が間に入ってね。私が『天体観測をしに来たんです』って言ったら『じゃあ一緒に見ようよ!』ってなったんだ。トラブルもホシノちゃんの方から手を出したってことで不問になった」
「なんでそうなるの・・・?」
仮にも不法侵入者を前に、その先輩も大概おかしいのではないだろうか。
余計なトラブルを起こさないようにしてくれたのはありがたいが、年長者の対応にしてはあまりにも緩すぎる。ミラとは違う意味で頭のネジが何本か取れているとしか思えなかった。
「はぁ・・・ミラは風紀委員会なんだから、あまり問題を起こさないようにして」
「問題は起きてないでしょー?」
「・・・言い方を変えるわ。問題になりそうな行動は控えて」
「問題にならないように努力するわ」
「まったく・・・」
いっそ風紀委員会に所属しない方が生き生きしていたのではないだろうか、とは思うが口には出さない。
これでも根っこは善人寄りで、本当に問題になるようなラインは決して越えたりしないのだ。ただ、傍から見ているといつ足を踏み外すか気が気でないし、本人もまったく悪気がない辺り質は悪いのだが。
「・・・ねぇ」
いつも通りの幼馴染の様子に呆れていると、不意にミラが尋ねかけてきた。
「なに?」
「もし、自分じゃどうしようもない、でも誰にも相談できない問題が近づいているって知ったら、ヒナはどうする?」
唐突な質問だったが、ヒナは面食らうこともなく考える。というより、これもいつものことだった。
ミラは時折、考えたところで仕方ない質問を投げかけることがあった。ジェリコの七つの古則や小難しい哲学など、考えて答えを出したところでなんの益もない、そんな問い掛け。
これも、その一つだと思っていた。
「そうね・・・私は他に助けを求めるわ」
「・・・誰にも相談できないって言ったんだけどな~?」
「だって、私は風紀委員会だもの。必要なら、他の学園に掛け合えばいい」
「トリニティにも?」
「・・・場合によるわ」
「冗談よ」
からかうように笑うミラに、ヒナは思わず顔を背けてしまう。
だから、ミラがボソッと呟いた声を聞き取ることができなかった。
「・・・うん、これなら大丈夫かな」
「なに?」
「ううん、なんでもない」
はぐらかされてしまったが、ミラがそう言うなら気にしなくてもいいのだろう。
そう深く考えず、会話を切り上げた。
ミラが失踪したのは、その翌日のことだった。
当然、期待の一年生が突如として姿を消したという事件は風紀委員会に少なくない混乱を招き、学園を揺るがす事件が起きたのではないかと錯覚するほど本部は騒がしくなっていた。
そんな中、ヒナはただ一人呆然と立ち尽くしていた。
なぜ、どうして。頭の中がそんな疑問で埋め尽くされる。
『もし、自分じゃどうしようもない、でも誰にも相談できない問題が近づいているって知ったら、ヒナはどうする?』
ふと思い出すのは、昨日のミラの質問。
昨日聞いた時はいつもと同じようなものだと思っていたが、もしそうではないのだとしたら?
だが、それを踏まえてもミラが失踪するような予兆はどこにもなかった。思い詰めている様子も、何かに焦っているような様子も見られなかった。
なぜあのような質問をして、ヒナが「他者に頼る」と答えた上でこの選択をしたのか。
自分はどこで選択を誤ってしまったのか。
堂々巡りの思考が続く中、ヒナは1つの答えにたどり着いた。
(あぁ、そうか・・・後のことは私に任せる、っていうことなんだ)
おそらくは、ヒナが他者を頼ると答えたからこそ、風紀委員会はヒナに任せることができると、そういうことなのだと理解した。
そうでなければ、風紀委員会をヒナごと全部捨てるはずがない。
おそらくは、ミラが自分たちは知らない何かの情報を掴んだ。その解決のためにミラは独自で行動しなければならなかったが、日々多忙を極める風紀委員会のことが心残りだった。
だが、あの質問でヒナになら任せることができると判断して、後顧の憂いを断ったミラは行動に移した。
本人がいない以上、正確なことは分からない。
それでも“ミラが自分に後のことを託した”ということだけは直感的に理解できた。
自分にミラの代わりが務まるとは思えなかったが、それでも自分を信じてくれたミラを裏切るわけにはいかない。
「先輩、落ち着いてください」
「ヒ、ヒナさん・・・?」
「まずは、学園内の不良や危険分子の動向を調べる方が先です。もしミラがいなくなったってことがバレたら、大胆なことをするかもしれません」
「そ、それもそうね。皆!班を分けるわ!ミラさんの探索は最小限に学園内の治安維持を優先!」
「「「はっ、はい!」」」
それからは、ミラの失踪が表沙汰になったことで暴走し始めた不良たちが急増するギリギリのタイミングで、情報部が優先順に危険分子の居場所を突き止めたことでどうにか最小限の被害で事件を治めることができた。
この数週間後、ヒナは実働部隊に籍を移し、周囲からミラを思わせるような圧倒的な力で次々とトラブルを解決していき、ついには風紀委員長にまで上り詰めることになった。
* * *
風紀委員長になってからは、ただでさえ忙しかった日々がさらに忙しくなった。
というのも、ゲヘナ学園の生徒会である
被害こそ大したものではないが、しつこく絡んでくるため精神的な疲れは溜まっていく一方だった。
また、自分たちが所属していた頃よりも質が落ちていると評価されるようになったことも要因の一つにある。
実際は目に見えて弱体化しているわけではないのだが、ヒナの存在感が大きすぎるせいで不良間では『ヒナのいない風紀委員会など恐れるに足らず』と言われており、少しでも“ヒナがいない”という情報が流れると一気に暴徒化する事態すら起こるようになった。
主にこの2つの理由が原因で、ヒナはほぼ毎日風紀委員会で働かざるを得ず、さらには万魔殿から押し付けられたやる必要がないはずの書類仕事のおかげで徹夜することも珍しくなかった。
面倒くさがりのヒナがそれでも風紀委員長を続けているのは、ヒナの中にあるミラの影響が大きかったからに他ならない。
ミラから風紀委員会を託されたから。帰ってきたミラに「よく頑張ったね」と褒めてもらいたいから。
その一心で、ヒナはこの激務をこなしていた。
(・・・ミラは今、どこで何をしているのかな)
今日もまた、ヒナは行方知れずの幼馴染に思いを馳せつつも、早々に休憩を切り上げて書類仕事を再開した。
オリ主・暁ミラの情報については、おいおい紹介していきます。
今のところは、pixivにちょいちょいある美少女化ミラ様をイメージしてもらえればなと。
見た目が白髪赤目でハルナと被り気味になっちゃうのは許して・・・。
とりあえず、カプコンは禁忌古龍大集合した新作モンハンを出してもろて。
初プレイが3Gだから、せめてグラン・ミラオスはもう一度見たい。