キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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投稿が一日遅れてすみません・・・!
ぼーっと前回の投稿の日付見て「あっ、投稿明日か」と思ったのが昨日の話。
10日の1週間後は16日だよ何を考えてたんだ・・・。


トリニティ編・16

「聖園、ミカさん・・・」

「まぁ簡単に言うと、“黒幕登場☆”ってところかな?私が本当の『トリニティの裏切者』」

 

真の裏切者の正体がミカであるという事実は、補習授業部の面々に少なからずショックを与え、共犯者であったはずのアズサでさえ動揺を隠せなかった。

なにせ、ミカはアリウスに騙されている、利用されているという前提で考えていた。そうでなければ、セイアの殺害を目論むはずがないと。

対するミカは、どこまでもいつもの軽い調子で種明かしを始めた。

とはいえ、きっかけそのものは大それたようなものではなかった。

すなわち、『ゲヘナが嫌い』だから。

その理由だって、別に復讐のためだとかそういうものでもない。角が気持ち悪いだとか、絶対に裏切るに決まっているだとか、その程度。

アリウスを共闘仲間として引き入れたのは、同じくゲヘナを恨んでいるから。

もちろんトリニティを恨んでいるのも事実だろうが、ゲヘナに対して向けているものの方がより強力なら一時的にでも手を取り合える。

すなわち、『トリニティとゲヘナの和平』のために用意されたエデン条約を『トリニティとアリウスの和平』にすり替え、再編されたトリニティの戦力でゲヘナに全面戦争を仕掛けることこそがミカの目的だった。

そしてそれを聞いた先生の表情は今まで生徒に向けたことがないような険しいものへと変わった。

 

「わっ、びっくりしたー・・・先生、そんなに怖い眼もできるんだね・・・うん、先生がすごく怒ってることはよく分かった。ごめんね、説明もなんだか急いじゃったし、雑だったよね?」

 

申し訳なさそうな表情を浮かべるミカだったが、そんなことは関係ないと言わんばかりにアリウスの兵が前へと出てきた。

 

「もっと丁寧にお話したいところだけど・・・まずはいろいろと邪魔なのを片付けてからにしよっか?」

「・・・気を付けて、先生。こうして見ただけで分かる・・・かなり強い」

 

先生の前に出たアズサは、最大限の警戒を込めてそう口にした。

ひたすらトリニティとゲヘナへの復讐のために訓練をさせられてきたからこそ、アズサには理解できた。

ミカの戦闘能力は、少なくとも白兵戦であればアリウスでも並ぶ者はいない。それどころか、あの正義実現委員会の剣先ツルギにも匹敵しうるほどの武力の持ち主であると。

 

「ふふっ、そうだよ。先生には前に言ったけど、私けっこう強いんだから。はい、じゃあ・・・」

 

『補習授業部を片づけてくれる?』とミカがアリウスに命令しようとしたその時、ミカのすぐ傍にいたアリウス兵の1人が破砕音と共に横っ飛びに吹き飛ばされた。

 

「なに!?」

「伏兵?いや違う、壁越しに狙撃してきたのか!?」

 

壁に空いた穴からすぐに攻撃方法を割り出したアリウス兵の練度はたしかなものだったが、それゆえに起きた非常識を受け入れるのに少なからず時間を要してしまった。

それは決定的な隙となり、さらに壁越しから飛来してくる銃弾によって次々と倒れていく。

だが、ミカはアリウス兵たちとはまた別のことに困惑を隠せなかった。

 

「まさか増援?いったいどこから・・・」

 

今回の作戦を実行するために、周囲一帯はあらゆる伝手や権力を使って戒厳令を敷いているため、正義実現委員会を含めて誰も増援には来ないはず。

にも関わらず、今の狙撃は明らかにアリウスを狙い撃ちにしたものだった。

 

「増援、とは少し違います」

 

その答えを明かしたのは、ハナコだった。

 

「どういうこと?」

「実は、他にも裏切者の正体を探っている方がいたので、個人的に手を組ませていただきました」

「そういえば、ハナコちゃんは思ったより驚いてなかったね?そいつから私のことを聞かされてたってことかな」

 

ミカは協力者が誰なのか問いかけようとしたが、咄嗟に振り上げた腕で銃弾を防いですぐに考えを改めた。

 

「まぁ、どのみち放っておけないし捕まえた方が早いか。早く捕まえに行って」

 

ミカの命令を受けたアリウス兵は謎の狙撃手を捕らえるべく部隊を分けて狙撃地点へと向かっていき、ミカも改めて先生と補習授業部へと向き直って残っているアリウス兵に命令を下す。

 

「それじゃあ、補習授業部を片づけて?」

 

ここから、この場にいる全員にとって長い夜が始まろうとしていた。

 

 

* * *

 

 

「うわっ・・・本当にミカ様が引き連れてるっすね・・・ちょっとショックかも」

 

ミラが狙撃している建物の屋上で、イチカは端末に写っている映像を見て軽くショックを受けていた。

 

『え?ミカ様が裏切り者!?ちょっ、それって本当っすか!?』

 

ミラから裏切り者の正体を明かされたとき、イチカはとてもではないがその言葉を素直に受け入れることができなかった。

ティーパーティーの聖園ミカと言えば、ティーパーティーのホストの中でも最も社交的で、一般生徒からしても距離感の近い存在だ。そのため良くも悪くも注目されやすい。

たしかに、ティーパーティーの三派閥の中でも反ゲヘナ感情の強いパテル分派の首長で、なおかつ理知的なセイアとは仲が良くなかったという話はあったが、だからといって本当に二人の殺害を企むとは思えない。

さらに言えば、ナギサとは幼馴染みの関係だ。なおさら手を出そうとはしないはず。

そんなイチカの動揺を、ミラは否定しなかった。

 

『まぁ、実際はそこまで単純な話じゃないだろうけどね。あくまで状況証拠や推測を重ね合わせただけだけど、だいたい合ってると思うよ』

 

そう前置きして、ミラは自分なりに組み立てた仮説を説明し始めた。

 

『まずミカはパテル分派らしく反ゲヘナ気質で、言うことが180°変わることもあるくらいの気分屋だよね?だとしたら、その場では話を合わせて反対しなかったけど、やっぱりエデン条約には反対だとしてもおかしくはない』

『それはそうっすけど、それだけじゃ裏切り者にはならないっすよね?』

『そう。だからこれはあくまで前提条件。次に、補習授業部のアズサの正体はアリウスのスパイ。学園に登録されている情報を証明できるものは何もなくて、でも他学園に在籍していた痕跡もない。そもそも白い羽の有翼って基本的にトリニティでしか見ないし。つまり、アズサはトリニティ内の存在しないどこかからぽっと出で現れた生徒の可能性が高いってわけ』

 

現状、トリニティの敷地内で行方不明になっている勢力の最有力候補はアリウスしかない。

彼女の学力が低いのは、現在のアリウスに学園としての機能がほとんど存在しないから。

彼女の戦闘力、特にゲリラ戦の技術が優れているのは、自分たちを追放したトリニティを憎み復讐を企んでいるアリウスに叩き込まれたから。

そう考えれば、いろいろと辻褄は合う。

だが、そこで一つの疑問が生じる。

 

『だったら、誰がアズサさんを手引きしたんすか?学生情報を誰にも知られずに改竄するなんて、それこそティーパーティーのホストでもないと・・・』

 

そこまで言って、イチカは最初のミラが言ったことに思い至った。

学生情報の改竄はティーパーティーのホストでもないとできないが、逆を言えばティーパーティーのホストなら可能ということ。

そして、襲撃されたセイアと裏切り者探しに躍起になっているナギサを除けば、残された人物は一人しかいない。

 

『っ、で、でも、他に協力者がいたって可能性もあるんじゃないすか?』

『かもしれない。だから次に重要なのは、パテル分派の動き。ここ最近、正義実現委員会に警備を依頼して遺跡を調査することが多かったよね?』

『それはまぁ、そうっすね』

『それがアリウスの兵を率いれるための隠れ蓑だとしたら?』

『・・・どういうことっすか?』

『実際に現地で確認したんだけど、正義実現委員会が警備をした遺跡には必ず地下空間があって、なおかつ隠し部屋や隠し通路らしき痕跡や集団が出入りしただろう足跡が残っていた。さすがに正義実現委員会がいるところで出てきたりはしないだろうけど、警備の目が外れたタイミングで、他多数に手一杯で様子を確認する余裕がないときに敷地内に潜入したとしたら?大軍勢は無理でも、斥候や連絡係を匿う場所を用意できたとしたら?』

『・・・クーデターの準備くらいはできそうっすね』

 

というより、実際にやったのだろう。現に実行可能な程度には状況が整っている。

ミラの推測には確たる証拠はないし穴も多い。

だが、否定する材料を見つけようとするほど穴が塞がっていくような不思議な感覚を覚えた。

 

『・・・わかったっす。とにもかくにも、話は現場を見てからっすね』

『そういうこと・・・準備して。そろそろ始まるみたい』

 

ミラがそう言うと同時に、合宿棟から銃声と爆発音が響き始めた。

それからしばらくは先生の指揮と補習授業部の奮闘を眺めていたが、第一陣を退けてそれほど時間が経たないうちに増援が到着した。

そして、その増援を率いていたミカの姿を見たイチカが凹んだところで現在に至る。

 

「さて、証拠映像と証人を用意できたところで、こっちも始めようか」

「それはいいんすけど、具体的にどうするんすか?ここからだと壁越しで完全に姿が見えない・・・」

 

イチカが言い切るよりも早く、ミラはすぐ傍に立て掛けている端末の映像をチラッと見てから対物ライフルの引き金を引いた。

放たれた銃弾は壁を貫通し、当たり前のように体育館の中にいたアリウス兵を撃ち抜いた様子が映像で確認できた。

 

「・・・お見事っすね」

 

その様子を傍らで見ていたイチカは、もはや驚くのも疲れたといった様子で呟いた。

ミラが何をしたのか、一応は理解できていた。

ミラが対物ライフルを構える横に置いてあるタブレットの画面には、体育館内部の映像が四分割で映されている。

これは作戦決行前にミラがハナコに頼んだものによるものだった。

 

『監視カメラのアクセス権がほしい。それと、主戦場になりそうな場所にも最低で4つは用意しておいて』

 

このミラの頼みをハナコはすぐに了承、ミラの頼みを完璧に遂行した。そのおかげで主戦場となっている体育館内部の様子は筒抜けになっている。

複数の映像から割り出した座標に向かって撃てば、たしかに目視できなくても当てれるだろう。

そのために必要な技量は常軌を逸しているが。

 

「得物はでかい拳銃って聞いたんすけど、狙撃もできるんすか?」

「狙撃はそこまで得意じゃないかなー。距離が200mを越えてくると当たらなくなってくるし、そもそもスコープが苦手だし」

 

たしかに言われてみれば、今の場所から合宿棟の体育館までの距離はおよそ150mほど、狙撃というには距離が短い。

それでも100m以上の距離を裸眼で狙う技術の感覚が狂っているとしか思えないが、射程を犠牲にして得た能力と考えればそんなものなのかもしれない。

 

「それよりも、そろそろアリウスの連中が私たちを抑えようと動くはずだから、そっちの相手はよろしく」

「いやまぁ、できる限りは頑張るっすけど、さすがに数が多いんで撃ち漏らしても文句は言わないでくださいよ?」

「大丈夫大丈夫、ちょっとくらいはっちゃけても私は何も言わないから」

「そういう問題じゃないんすけど!」

 

たしかに自分には秘めている本性というか、あまり見せたくない一面がある。当然のようにそのことを見抜いてきたミラに思うところがないわけではないが、それをさらけ出せば十分相手できるかもしれない。

だが、それ以前に敵の数が多すぎる。

現れた増援はざっと見ただけでも数個大隊、下手したら一個連隊はいるかもしれない。

その全てが自分達のところに来るわけではないだろうが、だとしても相手するには圧倒的に弾薬が足りない。どれだけ頑張っても一個大隊が限界だ。

そんなイチカを励ますように、ミラは予測している展開を口にした。

 

「問題ないよ、少し粘れば楽になるはずだからね」




イベントの戦いぶりを見た感じ、バーサーカーイチカならこれくらいはいけると信じてみました。
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