キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

49 / 114
待望の足舐めシーンでしたけど、舐めるっていうかもはや咥えてませんでした?
思ったよりディープじゃんか先生・・・。

今回は二話連続投稿になります。
これを書くために本作を始めたシーンの一つなので、いつもよりもテンション上がり気味で書きました。


エデン条約編・3

「けほっ、けほっ。うわぁ、すごいことになってる」

 

古聖堂の屋根の上から飛び降り空中で爆風に巻き込まれ吹き飛ばされたミラは、瓦礫を退かしながらミサイルの着弾地点に戻った。

そこは見るも無惨に崩れ落ちた古聖堂にヘイローを明滅させる生徒があちこちに転がっている。

上空を見上げてみれば、案の定万魔殿の飛行船は炎を噴き上げながら墜落しているところだった。

まさに死屍累々の地獄絵図といった有り様にミラは僅かに顔をしかめつつ、先ほどのミサイルについて思考を巡らせた。

 

(まさか、防空網を真正面から突っ切る速度のミサイルを用意してるとはね。速度と構造からして、ラムジェットエンジンあたりかな?それを用意できるのは・・・)

「・・・当たり、だったか」

 

ここまできたら間違いない。

アリウスの背後には、ゲマトリアがいる。

ミサイルの技術を提供したのは、おそらく黒服だろう。とはいえ、最近までホシノに執心していた黒服がアリウスのすべてを管轄しているとも思えない。

アリウスを支配しているのは、おそらく別の誰か。

新たなゲマトリアのメンバーに接触する絶好の機会ではあるが、状況が悪すぎる。

 

(体はあちこち痛むけど、戦闘に支障は無し。銃と弾薬も問題なし。気になるのは敵兵力だけど・・・)

「生存者を発見!いや待て、まさかこいつ・・・!」

 

ミラが思考を巡らせていると、瓦礫の向こうからアリウスの兵たちが現れた。

アリウスの反応を見て、ミラはようやく先ほどまで被っていた外套が爆風でどこかに吹き飛んでいることに気づいた。

だがまぁ、ここで顔がバレたところで不都合はないだろう。

連絡される前に落とせばいいし、何よりこれから否応でも目立つくらい暴れるのだから。

 

「さて、私の前に出たのが運の尽きってことで、ちょっと寝ててね」

 

 

***

 

 

(何が起きた・・・?爆発、攻撃された?状況は?)

 

崩れ落ち、燃え盛る古聖堂の敷地内で、ヒナは傷ついた体に鞭を打って立ち上がる。

 

(巡行ミサイル、それも対空防御システムが迎撃できないほどの速さ・・・ラムジェットエンジン?キヴォトスで、そこまでの技術を持っているとなると・・・)

 

ヒナもまた、ミラと同じく今の攻撃についてすぐに当たりをつけた。

問題は、誰が仕掛けてきたものなのか。

 

(トリニティ、シスターフッド・・・たぶん、違う)

 

一瞬トリニティが頭に浮かぶが、賛成派が自陣営を巻き込んでまで攻撃するとも思えず、反対派はそもそもあのミサイルを用意する技術も資金もないはず。

ならばどこかと思考を巡らせるが、それよりも先に優先すべき問題があることに気が付いた。

 

「・・・っ!先生・・・!?」

 

先生は確か、中立とはいえトリニティ側で今回の調印式に参加していたはず。

先生の安否を確かめるために、すぐにその場から動こうとする。

 

「ひ、ヒナさん、まだ立ってますねぇ・・・ど、どうしましょう・・・あれを受けて、まだ立っているなんて、すごいですねぇ・・・痛いはずなのに、苦しいはずなのに・・・」

『やれ、特にヒナだけは逃がすな』

「は、はいっ!」

 

すると、今回の襲撃者と思わしき人物が姿を現してきた。

トリニティを思わせるような白い制服に不釣り合いなガスマスクを被っている、異質な集団。指揮官らしき狙撃銃を背負った気弱そうな少女・ヒヨリはガスマスクは身につけていなかったが、一目で手練れだと分かる。

直接見るのは初めてだが、情報部の報告通りの格好からすぐに正体を把握した。

 

「・・・アリウス、分校」

「あ、あなたを先に行かせないようにと言われてるので・・・すみませんが、これも命令でして・・・」

 

どうやら、調印式を狙ってゲヘナとトリニティ両方を滅ぼすつもりらしい。

それも問題だが、それよりも今の爆発に巻き込まれた可能性が高い先生の確認と安全確保が最優先だ。

 

「・・・邪魔」

「へっ・・・!?」

 

まともに相手にする時間すら惜しい。

そのため、ヒナは殲滅ではなく突破を選択する。

一呼吸の内に懐に潜り込んだヒナは、すれ違いざまに無理やり体を回転させてわき腹に後ろ回し蹴りを叩き込んだ。

見た目以上の破壊力を持った一撃に、ヒヨリはギリギリ防御を間に合わせたものの踏ん張りきれずに部下ごと吹き飛ばされた。

他のアリウス兵も咄嗟に銃を構えるが、ヒナは回し蹴りの勢いのまま銃口を蹴飛ばした方向とは逆のアリウス兵に向け後ろに飛びずさりながら引き金を引いた。

不安定な体勢から放たれた射撃は精度こそ悪いものの、咄嗟に回避行動をとらせるには十分な弾幕を張ることで追撃を遅らせる。

そのままアリウスの追手を振り切ったヒナは瓦礫と化した古聖堂を疾駆する。

目指すのは正義実現委員会が集まっている場所。この事態で先生の安全を確保するならそこしかない。

戦闘音を頼りに走り抜けるが、さらなる異変が発生する。

どこからともなく、ガスマスクをつけた修道女が出現し始めた。

 

(なに、これ・・・?)

 

さすがのヒナも、目の前の存在に心当たりはない。

が、自分に銃口を向けてきたことで敵と判断し即座に引き金を引いた。

ハチの巣にされた修道女の身体はあっけなく崩れ、そして次第に元の姿に戻っていく。

 

(攻撃が効かない・・・!?)

 

想定外の事態に、ヒナは一度足を止めてしまう。

その隙を突くように、修道女は手に持っている銃をヒナに向けて引き金を引いた。

 

「ぐっ・・・!」

 

その威力はヒナも思わず呻き声が漏れてしまうほど重く、どうにか射線から逃れることで難を逃れた。

自分にダメージを与えれる攻撃力といくら攻撃しても倒れそうにない再生力を持った謎の修道女の実体、それが少なくとも10体以上ヒナの周囲を取り囲んでいる。

 

「そこを、どいて・・・!」

 

それでも、ヒナのやることは変わらない。

目の前の修道女を倒すのは不可能と判断し、攻撃を最低限に包囲からの脱出を最優先にする。

ひと際激しい戦闘音が響いている場所はすぐそこであり、うっすらとだが正義実現委員会の制服も見えた。

そこを目指してヒナはただひたすら戦場を駆け抜け、ついにはっきりと正義実現委員会と先生の姿を捉えた。

先生はパッと見怪我はないようだが、正義実現委員会もまたアリウスと修道女との戦闘でジリ貧になっていた。

予断を許さない状況と判断し、ヒナは近くの修道女をハチの巣にして声を張り上げた。

 

「こっち!」

「ヒナ・・・!」

「ヒヨリ、もしかしてヒナを止められなかった?」

『げほっ、けほっ・・・す、すみません、ダメでした・・・一瞬で薙ぎ倒されてしまって・・・』

 

視界の隅ではロケットランチャーを構えたアリウスの少女・ミサキがヒヨリと通信しているが、それに構わずヒナは正義実現委員会に先生を引き渡すように申し出る。

 

「正義実現委員会、先生をこっちに!今は時間がない!」

「・・・分かりました。先生、私たちがここで敵を止めます。後はあの風紀委員長が何とかしますから、急いでください!」

 

ハスミの判断は迅速だった。

すぐに先生をヒナに任せることを決め、退路を確保するため先生を庇うように再展開する。

 

「ハスミたちは!?」

「・・・私たちは、先生の退路を守ります」

「はい・・・あらかじめ、ツルギと話して決めてありました。最悪の状況になった時、必要なら風紀委員長に先生を任せると。事実、今はそれしか方法がありません」

「でも・・・!」

「先生、今トリニティの首脳陣はほぼ壊滅状態です。おそらくゲヘナも同様でしょう。今先生の身に何かあっては、本当に収集がつかなくなってしまいます!」

 

ハスミの言葉に、先生も思わず口を閉ざす。

先生としてはここに残りたいが、ハスミの言うように肝心な時に自分が動けないようであれば責任を果たすことすらできない。

 

「先生の無事を祈ります。その道は、私たちが守ってみせますから!」

「先生、急いで!」

「・・・先生!」

「お、お願いします、先生・・・!」

 

今と未来を天秤にかけ、生徒たちから背中を押された先生は、言われた通りここから撤退することを選んでヒナの元へと走りだした。

 

「風紀委員長・・・!先生を、よろしくお願いします!」

「・・・任せて」

 

ハスミからの懇願を受け、ヒナは怪我で傷む体に鞭を打って先生を戦場から逃がすべく駆け出した。

その道中では当然修道女、先生曰く“ユスティナ聖徒会”による妨害を受けたが、そのすべてを蹴散らしていく。

負傷した体で機関銃をぶっぱなしているにも関わらず、ヒナの動きは重さを感じさせない。

むしろ中・遠距離向きの銃でありながら、時には先生を遮蔽物に隠れさせてから近接戦も積極的に仕掛けてユスティナ聖徒会を蹴散らしていく。

その動きに、先生は見覚えがあった。

まったく同じというわけではないが、ヒナの戦い方はどこかミラを連想させるものだった。

銃での戦闘が一般的なキヴォトスにおいて、格闘戦も行う生徒はそこまで多くない。取り回しの良くない機関銃を使っているのなら尚更。

おそらくは、ヒナなりにミラに追い付くために頑張った努力の一つなのだろう。

ヒナの戦いぶりのおかげで、どうにかアリウスの包囲の一部を崩して脱出することができた。

 

「はぁ、はぁ・・・くっ・・・!」

「ヒナっ!」

 

だが、それでも無限に現れ続けるユスティナ聖徒会を相手にするには限界があった。

古聖堂からある程度離れた辺りで、ヒナの体が崩れ落ちてしまう。

 

「ゲヘナの風紀委員長、ようやく倒れた」

「や、やっとですか・・・」

「・・・」

「トリニティとゲヘナの主要人物は全部片付いた。残りはもう貴様だけだ、シャーレの先生」

 

そのタイミングで、新たな人影が4つ現れた。

一人は、古聖堂で襲撃してきたヒヨリ。もう一人は正義実現委員会と交戦していたミサキ。

真ん中にいる生徒がその中のリーダーなのだろうと当たりをつけた。

 

「君たちが、アリウススクワッド?」

「・・・あぁ、そうだ。私たちが“アリウススクワッド”。ようやく会えたな、先生」

「・・・!」

 

先生がアズサから聞いた名前を口にすると、真ん中に立っていたリーダー・サオリが頷きを返した。

そこで、サオリは先ほど現れたユスティナ聖徒会について種明かしをした。

トリニティとゲヘナの間で結ばれるはずだったエデン条約、それをアリウスの名前で調印し、それによって生まれた『戒律の守護者』たる“ユスティナ聖徒会”によって二校をエデン条約に反する鎮圧対象としたことで滅ぼす、と。

 

「・・・だがその前に、貴様を処理しておくとしようか」

 

サオリの銃口が先生に向けられる。

ヒナはどうにか先生との間に割り込もうと体を動かすが、先ほどまでの近接を交えた無茶な戦闘が祟って体に力が入らない。

ヒナが間に入るよりも、サオリが引き金を引く方が早い。

 

「せんせ・・・!」

「シャーレの先生・・・貴様がこの計画の一番の支障になりそうだと、()()は言っていたからな」

 

ヒナの叫びも空しく、サオリは引き金を引いた。

 

 

 

 

「ごめん、待たせたね」

 

それよりも一瞬早く、白い影がアスファルトを砕く勢いで上空から間に割り込んだ。

白髪赤目に純白の衣装、そして全身に纏う赤い雷。

その姿を、ヒナが見紛うはずがなかった。

 

「ミラ・・・!!」




「待たせたな」とか「私が来た!」よりかは「少し痩せたか!?」のポーズです。

ニコニコ&KADOKAWAといい今回といい、立て続けにサイバー攻撃とか先行きが不安すぎる。
創作者から創作の機会を奪って何が楽しいんだか。
同一犯とは思いたくないですけど、早いうちにどうにかなってほしいですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。