まさか1話で橙帯になるとは・・・。
やっぱり禁忌古龍がライズやサンブレに参戦しなくて恋しくなってたんですかね。ミラルーツも本編はXXが最後ですし。(Fはノーカン)
今回は本編のプロローグの時間軸です。
前回もプロローグだった?あ、あれはプロローグのプロローグみたいなものだったから・・・。
「あぁもう!いったい何がどうなっているんですか!?」
風紀委員会本部の執務室。
その中で、アコが頭を抱えながら悲鳴に近い絶叫を上げていた。
というのも、2週間前からキヴォトスの全行政を担っている連邦生徒会が突如として機能不全の状態に陥り、各地で問題が発生していた。
ただでさえ事件・事故が日常茶飯事になっているゲヘナもその煽りを受け、さらに悪化している治安をどうにか治めるべく風紀委員会が奮闘しているのだが、それから2週間経った現在も鎮静の目途は立っておらず、連邦生徒会からの通達もないままだった。
「まったく、連邦生徒会は何をしているんですか!」
「少し落ち着いて。それが分からないから、チナツを送ったんでしょ」
「・・・そうでした」
これに対して、ヒナは風紀委員会から使者を送って現在の状況を把握してもらうことを決め、そのために1年生だが風紀委員会の中では特に真面目な火宮チナツを向かわせた。
現在は、激務に追われながらその報告を待っているところである。
「それにしても、本当に何が起こっているのでしょうか?一部では『連邦生徒会長が失踪した』などという噂が流れているようですが・・・」
「ここまで来ると、あり得なくはない。今回の件は組織の機能不全の域を超えている」
「そうなると、今の連邦生徒会は“サンクトゥムタワー”の最終管理者がいなくなったことで行政制御権が喪失しているということになりますが、その場合後継者はどうなるのでしょうか」
「そこまではわからない。さすがに、何も対策していないわけじゃないとは思うけど・・・」
数千の学園から成るキヴォトス、その全行政を担う連邦生徒会のトップともなれば、必要となる能力は計り知れないものとなる。
そして、それだけの能力があった現生徒会長が本当に失踪したとして、その穴を埋めることができるだけの人物など、少なくともヒナには心当たりがなかった。
そこで、生徒会長の失踪と聞いて頭の中に思い浮かぶのは、同じく2年前に失踪した幼馴染であるミラのこと。
ミラも唐突に失踪したが、それは自分がいなくなっても大丈夫だと確信した上での行動だった。
であれば、行政能力においてはキヴォトスで右に出る者がいないだろう生徒会長も、その確信に足る何かを用意した上で失踪した可能性がある。
だが、仮にそうだとしてもそこまでして姿を消した理由までは考察できない。
(いったい、何が起こっているというの・・・?)
まさかミラの失踪と何か関係があるというわけでもないだろうが、それでも立て続けに起こった失踪について一抹の不安を感じずにはいられなかった。
* * *
その頃、連邦生徒会にはチナツの他にも何人かの生徒が送られており、首席行政官の七神リンに詰め寄っているところだった。
他にいたのは、ミレニアムからセミナー所属の早瀬ユウカ、トリニティから正義実現委員会所属の羽川ハスミとトリニティ自警団所属の守月スズミ。
チナツも含めた4人から詰め寄られたリンから、現状とこれからのことについて説明がされた。
現在、連邦生徒会長が行方不明の状態で行政制御権が失われていること。
制御権については、生徒会長が設立したとある部活の担当顧問として生徒会長が直接指名した“先生”がフィクサーとなることで解決すること。
その先生が担当顧問となる部活の名前は“連邦捜査部S.C.H.A.L.E”通称・シャーレと言い、キヴォトスの学生を制限なく加入させることが出来る他、各学園で制限なしに戦闘活動ができる一種の超法規的機関であること。
制御権の回復にも関わる生徒会長から託された重要な“とあるもの”が部室となる建物の地下に存在するが、現在その周囲を矯正局から脱出した停学中の生徒たちによって囲まれているらしいこと。
どうせこの場にいるということは暇だろうから、ここにいる4人でさっさと取り返してこいということ。
後2つについてはどちらかと言えば面倒ごとを一方的に押し付けただけなのだが、割とキレそうになったリンが半ば強引に巻き込む形でシャーレのオフィス奪還作戦を行うことになった。
その4人の生徒たちは、先生の指揮に従って戦闘をしていたのだが・・・
「なんだか、戦闘がいつもよりやりやすかった気がします・・・」
「・・・やっぱりそうよね?」
「先生の指揮のおかげで、普段よりずっと戦いやすかったです」
「なるほど・・・これが先生の力・・・」
生徒会長に指名されただけあってその指揮能力は非常に高く、各学園の実力者たちもその恩恵を肌身で感じていた。
先生の指揮のおかげで難なくシャーレの部室は目前まで迫っていた。
とはいえ、この騒動を起こした生徒もまた只者ではなかった。
狐坂ワカモ。矯正局に収監されていた停学中の生徒の中でもトップクラスの危険度を持つ七囚人の1人にして、無差別かつ大規模な破壊行為を行う“災厄の狐”。
「! 騒動の中心人物を発見!対処します!」
「フフ。連邦生徒会の子犬が現れましたか。お可愛らしいこと」
そんな危険人物は、たった4人で大勢の不良たちを蹴散らして進むほどの戦力を前にしてもなお不敵な態度を崩さない。
「こんな騒動を引き起こして、とっつかまえてやるわ!」
「あら、それがあなたたちに出来て?ここで確かめて・・・」
ドゴォンッ!!
息巻くユウカにワカモが余裕で返そうとした次の瞬間、ワカモの後方からひと際大きな爆発音が鳴り響いた。
ただの銃声や手榴弾の爆発と言うには大きすぎる規模に、ユウカたちは思わずたたらを踏む。
「今のなに!?」
「わかりません。シャーレに近い位置で起きたようですが・・・」
「あらあら、これはさすがに予想外ですね・・・少し早いですが、後は任せます」
「あっ、待ちなさい!」
ユウカたちは今の爆発がワカモによるものだと思っていたが、どうやらワカモにとっても想定外の事態だったらしく、不良たちに足止めを命じてさっさと後ろに下がっていった。
「ちょっ、逃げられてるじゃない!?早く追うわよ!」
「いえ、私たちの目標はあくまでシャーレの奪還。先ほどの爆発の影響も気になりますし、このままシャーレのビルまで前進すべきです」
「・・・あいつを追うのは私たちの役目じゃないってことね」
「えぇ、罠かもしれませんし」
この場ではワカモの追跡を断念し、引き続きシャーレのビルへと進んでいった。
道中も先生の指揮のおかげでなんなく不良たちを突破していくユウカたちは、シャーレの入り口を目前にして衝撃的な光景を目の当たりにすることとなった。
「何が、起こったっていうのよ・・・?」
「これは・・・」
そこでは、シャーレの占領を目論んでいたであろう不良たちがボロボロになりながらそこら中に転がっている光景が広がっていた。
先ほどの爆発音の正体は不法に流通されたのだろう巡航戦車が大破したことによるものであり、エンジン部から凄まじい勢いで火を噴いていた。
そして、何よりも異様だったのは、その中心に無傷で立っているこの惨状を作り出したであろう人物が、純白に身を包んだ丸腰の少女ということだった。
純白のドレスに身を包み、素顔は白い外套で隠されているものの白髪や白い肌が見え隠れしている。後頭部に浮かぶヘイローもまた白であり、怪我人や爆炎が蔓延るこの場においてとてもではないが似つかわしくないものだった。
そんな少女は、駆けつけてきたユウカ達に気が付いたのかそちらに視線を向ける。
そして、その後ろにいる先生の姿を確認したかと思うと、その場から跳びあがって戦車の残骸へと姿を消した。
「待ちなさい!って、もう行っちゃった・・・」
「この巡行戦車・・・間違いありません。
「まさか、素手で戦車を破壊したってことですか?」
「いえ、さすがにそれは・・・銃や手榴弾くらいは持っていると思いますし、手榴弾で内部から破壊したんじゃないでしょうか」
「それはそれでぶっ飛んでいるわね・・・」
結局、謎の闖入者の正体は分からなかったものの、任務は無事達成したということでこの場ではこれ以上詮索することはなかった。
* * *
「・・・以上が、連邦生徒会で起こっていたことの全貌です」
「そう・・・だいたいわかったわ」
連邦生徒会での問題を解決した後、ヒナは報告書だけでなくチナツ本人からも一連の騒動について報告を聞いた。
生徒会長の失踪に、その生徒会長が指定した先生が顧問を担当する連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの設立。
いろいろと思うところはあるが、ヒナからすれば面倒な部分は生徒会である万魔殿が対処すべきことのため深くは考えないことにした。
だが、それよりも気になることがあった。
「それで、シャーレのビルの前で会った正体不明の白いドレスの生徒についてだけど、顔は見えなかったの?」
「はい。外套を目深に被っていたので・・・」
「けど、ヘイローは見えたんでしょう?」
「はい、服装と色が被って見えづらかったですけど・・・ドラゴンの顔のように見えました」
「そう・・・」
気になっていた情報を聞いたヒナは、大きく息を吐いて椅子にもたれかかる。
チナツはそのことを聞く理由がわからず僅かに狼狽えるが、ヒナからミラのことについて聞いていたアコはまさかと思いながらもこの場では口に出さずにヒナの反応を待つ。
「・・・報告ありがとう。下がっても大丈夫」
「わかりました。では、失礼します」
そう言って、チナツは部屋から出て行った。
それを見計らって、アコはヒナに話しかける。
「委員長、もしかして・・・」
「たぶん、ミラで間違いない。今まで連邦生徒会からも目撃情報の報告はなかったのに・・・」
ミラの失踪は連邦生徒会にも報告しており、ミラらしき目撃情報が届けばすぐに連絡すると伝えられていたものの、今までそのようなものは1つもなかった。
だというのに、正体を隠していたとはいえ今になっていきなり現れた。
まさか今回の件と直接関係があるわけではないだろうが、だからと言って無関係というわけでもないだろう
きっかけがあるとすれば、連邦生徒会長の失踪か、“先生”を担当顧問とするシャーレの設立のどれか。
(ミラ、いったいどうして・・・?)
* * *
「なるほど、あれが先生か」
サンクトゥムタワーが機能を回復したころ、シャーレのビルからほど近い建物の屋上で白い少女がシャーレのビルを眺めていた。
「うん、あの会長が選ぶだけあるね。たしかにいろんなことを任せても大丈夫そう」
「あら、一目見ただけというのに随分とあのお方を信頼されているようですね、暁ミラさん?」
屋上で一人呟いていると、不意に後ろからワカモに声をかけられる。
名前を呼ばれた少女、暁ミラはフードを下ろして白髪赤目にこめかみから後ろに伸びる二対の角を晒し、外套の下でドレスのように折りたたんでいた白い翼を広げる。
正体を現したミラは、口元に笑みを浮かべながら返事をした。
「そういうワカモは、シャーレのビルに忍び込んだわりに大人しかったね?てっきり派手に暴れると思ってたんだけど。なんなら、邪魔をした私に襲い掛かるくらいのことはしてくるものだと思ってた」
「私は『会長がシャーレのビルに何かを運び込んでいた』と聞いて、それを破壊しようと思っただけです。ですが、どこにどのような物があるかまでは知りませんでしたので探していたのですが、地下で先生に見つかってしまったのです」
「それでも、そのまま素直に撤退するなんて珍しい。仮に見つかってもワカモならどうとでもなったでしょ。それともまさか、先生に一目惚れしちゃったり?」
「・・・えぇ、えぇ、そうですね、その通りです」
完全にからかうつもりで放った言葉に、ワカモのボルテージが上がっていく。
素顔は狐面で見えないままだが、それでもだんだん赤くなっていく表情を幻視したような気がした。
「一目見た瞬間、私は確信したのです。このお方が運命の殿方だと!大人なんてろくでもない人しかいないと思っておりましたが、あのようなお方もおられるのですね!あぁ、こうしているだけでも胸の高鳴りを抑えられないというのに、先生と添い遂げることができればいったいどれほど・・・!」
「お、おぉぅ。ずいぶんとお熱なようで・・・」
思った以上にハッスルし始めたワカモに、ミラは思わず距離を取る。
ミラの知るワカモは、それこそ羽虫を潰すかのごとく淡々と無差別に破壊をもたらす“災厄の狐”なのだが、友愛にしろ恋愛にしろ、こうも年頃の乙女のようなリアクションをするとは思っていなかった。あるいは、今までの言動故にここまで拗らせたとも言えるかもしれないが。
「・・・それにしても、ミラさんは会長のことを知っているようで。何かご縁でも?」
「いや、大した縁なんてないって。向こうが勝手に私のことを見つけて、勝手に『先生を頼みます』って押し付けてきただけ。いきなり失踪したのは私も驚いたよ。まさか私をリスペクトしたわけでもあるまいし」
「なるほど。生徒会長からずいぶんと信頼されているようですね」
「伊達に『キヴォトス最強』なんて自負してないよ」
普通に考えれば大言壮語ともとれるミラの言葉を、ワカモは否定しなかった。
ゲヘナにいた頃の活動期間の短さから、ミラは学園の自治区内では名を広げてたものの、キヴォトス全体に名前が広がる前に姿を消したため、キヴォトス全体で見れば知名度はそこまで高くない。
それでも一部の学園の同期からは一目置かれているし、ミラ自身も自分の実力に絶対の自信を持っていた。
「まぁ、先生の性格とかを聞いて私が追ってる連中とどっかで関わりそうだったから、そのついででOKしただけなんだけど、実際に会ってみるとなかなか良い人だね」
「先生に手を出されるのであれば、私が許しませんよ?」
「それはそれで魅力的だけど、今は遠慮しとく。まだ大っぴらに表に出るつもりはないからね。さすがにここだと目立っちゃうし」
逆に言えば「タイミングがいい時にドンパチやろう」とも受け取れる辺り、根が善性とは言われつつもやはりゲヘナでも屈指の戦闘狂なのだろう。ワカモの威圧を間近で受けながらも余裕の表情を崩さず、逆に戦意をちらつかせる。
とはいえ、ワカモもこの場でミラと戦うつもりは大してなかったため、軽く流す程度にとどめた。
「それじゃあ、私もそろそろ行くよ」
「どちらへ?」
「ちょっとアビドスに。いろいろときな臭くてね」
「そうですか。では、私もこれで」
「それと、先生に嫌われたくないなら破壊活動はほどほどにした方がいいと思うよ」
「・・・」
聞こえないふりをしたのか、あるいは単に図星だったのか、ミラの指摘にだんまりを決め込んだワカモはそのまま屋上から飛び降りて姿を消した。
それを見届けてから、ミラは翼を折りたたみながら外套を被って立ち上がった。
「さて、それじゃあ行くとしようか。いつかぶりのアビドスに」
先生、今回一言も台詞をあげられなくてごめんね・・・。
できるだけ早いうちに喋らせてあげるから・・・。
風紀委員会は連邦生徒会と違ってマジで捜索に人手を割く余裕がないので、基本的に下級生にミラの情報は出回ってません。下級生で知っているのは風紀委員会の中でも情報部で機会があった人くらいです。
他校、特にトリニティも失踪当初は警戒していたものの、いつまで経っても目撃情報が出てこなかったことからマークを外されています。