キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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今回はほぼ原作の話です。
さすがにスルーできない大事なお話ですからね、仕方ないね。


エデン条約編・10

「・・・アズサ・・・」

「・・・」

 

ミサイルによって瓦礫の山と化した古聖堂。

そこでアズサとアリウススクワッドは再会を果たした。

アジトを出る時はどうにか平静を取り戻したサオリだったが、アズサが目の前に現れたことで瞳に怒りを宿し始めた。

 

「よくも、よくも姫を・・・!絶対に許さない・・・!」

「刺し違えてでも、私はサオリを止めてみせる」

「お前にそんなことができるか!私たちの怒りに、憎しみに、恨みに!耐えられると思っているのか!!」

 

激情を隠すことなく剥き出しにするサオリに対し、アズサはただただ静かに己の覚悟を短く口にするのみ。

その差がさらにサオリの心を逆撫でした。

 

「私は人殺しになる・・・たとえもう、あの世界に戻れないとしても」

「アズサァッ!」

 

サオリはユスティナ聖徒会を顕現させ、アズサへとけしかけた。

対するアズサも応戦するものの、アジトの時と違ってトラップを十分に仕掛けられなかったため圧倒的に分が悪い。

押され続けるアズサだったが、それでもなお屈さずに立ち上がり続ける。

その姿に、サオリは苛立ちが募るばかりだった。

 

「・・・何故だ、アズサ。何故そこまで足掻く。そこに何の意味がある?何を証明しようとしている?思い出せ、全ては・・・」

「たとえ虚しくとも、足掻くと決めた」

「そこに何の意味がある!!」

 

激昂と共に、サオリは引き金を引いた。

放たれた弾丸はアズサを捉え、ボロボロになった体が後ろに倒れる。

その直前、アズサは倒れることなく誰かに抱きとめられた。

 

「・・・!?ヒフ、ミ・・・?」

 

背後から現れたのは、橋の前で別れたはずのヒフミだった。

それだけではなく、後ろには他の補習授業部のメンバーに先生、さらには瓦礫の影にも何人か控えている気配を感じた。

突然の闖入者に、サオリは冷めたかのように問いかける。

 

「・・・なんだ、お前は?」

「普通の、トリニティの生徒です」

 

少しも気圧されることなく答えるヒフミに、アズサは困惑を隠せなかった。

 

「ヒフミ、ダメだ・・・どうしてこんなところに・・・ここはヒフミみたいな、普通の人が来るべきところじゃ・・・」

「・・・はい。確かに、私は普通で平凡です。先日見せてくれたガスマスクの姿が、本当のアズサちゃんの姿なのだと、そのことも理解しました。そんなアズサちゃんは、本当なら私なんかには手の届かない世界に生きているのだと・・・そう言いたいのも分かりました」

「ヒフミ・・・?」

「でも!アズサちゃんは一つ、大きな勘違いをしています!」

「・・・!?」

「今ここで、私の本当の姿をお見せします!私の正体は・・・」

 

流れについていけずに困惑しっぱなしのアズサをよそに、ヒフミはカバンから“5”と書かれた紙袋を取り出し、おもむろにそれを被って宣言した。

 

「“覆面水着団”のリーダー、ファウストです!」

「・・・え?」

「見てください、この恐ろしさ!アズサちゃんと並んだって見劣りしません!むしろ、こっちの方が恐ろしくて怖いっていう人だっているはずです!」

「ひ、ヒフミ・・・?」

「「「・・・」」」

 

一応深刻な場面のはずなのだが、アズサはいまいちヒフミのノリについていけず、アリウススクワッドすらどこか毒気を抜かれているようだった。

両者とも覆面水着団のことは噂だけとはいえ知っているし、アズサもその正体がヒフミであることに少なからず衝撃を受けている。

とはいえ、それはそれとして常識人が背伸びして悪人を演じているような様子に困惑してしまうし、何故そのことを今明かしたのかもわからない。

だが、その理由はすぐに明かされた。

 

「だから、私たちが違う世界にいるなんてことはありません!隣にだっていられます!世界が違うだなんて、一緒にいられないだなんて・・・そんなことを言わないでください!拒絶されても、すぐ近くに行ってみせます!こうやってすぐ触れられる場所に、アズサちゃんの傍にいます!」

 

何がなんでも隣にいようとするヒフミの意思にアズサは揺れ動かされるが、それでもなおヒフミを巻き込ませたくないアズサは突き放そうとする。

 

「ヒフミ・・・でも、私のためにそんな嘘を言ってくれたところで・・・」

 

「誰が嘘だって!?」

 

すると、新たな声がその場に響き渡った。

アズサの選んだ言葉が間違いだったのか、あるいは何を言おうと関係なく現れるつもりだったのか。

おそらくは後者だろうが、ここぞとばかりにアズサの言葉に乗っかって後ろに控えていた人影がぞろぞろと現れた。

 

「いや~、なんか大事なところみたいだね?」

「あの覆面、まさか・・・!?」

「!?」

「っ!?」

 

それぞれ番号が割り振られた色とりどりの覆面。

5番の紙袋のファウストと合わさればその正体は一目瞭然だった。

 

「目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く・・・」

「ん、それが私たちのモットー」

「普段はアイドルとして活動してますが、夜になると悪人を倒す副業をしてるグループ何です♧」

「別にそれ私たちのモット―じゃないから!?あと変な設定付けないで!」

「覆面水着団のリーダーであるファウストの命令で、集合しました!」

 

ここに、覆面水着団が見参した。

強盗団というよりは五人戦隊もののような登場の仕方に、現場はいよいよ敵味方問わず混沌に包まれそうになる。

 

「・・・!?」

「え、えっ!?」

「じ、実在していたんですね・・・?」

 

「あいつらは・・・」

「・・・分からない。詳細なデータはなし」

「覆面水着団・・・怪盗ファントムと並んで噂に過ぎないと思っていましたが、本当にいたんですねぇ・・・」

 

「なーにうちのリーダーを泣かせようとしてるのかな~?どこの誰か知らないけど、知らないよ?うちのファウストさんは怒ると怖い、暗黒街を支配するボスみたいなものなんだから」

「何せファウストちゃんは、カイザーの幹部を倒せちゃうようなものなんですよ♧」

「ブラックマーケットの銀行も襲える。朝飯前みたいに」

「それに、この間なんてカイザーPMCを砲撃で吹っ飛ばしたんだからね!」

 

情報を飲み込めずに困惑している補習授業部はいわずもがな、真顔で冷静に情報を整理しようとするアリウススクワッドも今回ばかりは端から見ればギャグ側に見えなくもなかった。

さらにはアビドス側が完全にノリノリでファウストを祭り上げるため、一周回って恥ずかしくなったファウスト改めヒフミは顔を赤くしながら紙袋を取った。

 

「あぁー、ファウストちゃんが紙袋を取ってしまいました!」

「あちゃー、さすがに恥ずかしかったのかなー?」

「せ、せっかく乗ってあげたのに!」

「私は何も恥ずかしくないけど」

「そういうシロコ先輩は早く覆面を取って!」

「・・・ん」

 

おそらくアビドスの中で最もノリノリだったシロコを、まだ理性が残っていたセリカが窘めて覆面を取らせる。

いまいち締まらない終わりではあったが、頼もしい援軍が現れた。

 

『ま、まぁ、とにかく改めて・・・対策委員会、今度はヒフミさんのことを助けに来ました!』

 

 

* * *

 

 

アビドスが補習授業部と合流した頃、各地では正義実現委員会と風紀委員会がそれぞれ戦力を集めて待機しているところだった。

 

「ハスミ先輩、無理しなくてもいいんすよ?」

「いえ、この状況で私だけ寝ているわけにもいきません。力になると約束しましたから」

 

未だ治りきっていない体を引きずってまで戦場に赴いたハスミを、イチカは心配そうに声をかける。

ちなみに、ツルギは本人曰く「治った」とのことでピンピンしているため、そこまで心配はしていない。

 

「とはいえ、さすがに動き回れるわけではないので後方支援に徹するつもりです」

「それならいいっすけど・・・」

 

ハスミが自分の状態をちゃんと把握しているのならイチカもとやかくは言えないが、それはそれとして無理をしてしまわないか心配してしまうのは、イチカの後輩心であり他の正義実現委員会メンバーから信頼される理由なのだろう。

 

 

「覚えてろよ、アリウス。この間の借りは高くつくからな・・・!」

 

所変わって、風紀委員会ではミサイルに吹き飛ばされて気を失っていたイオリがやる気に満ち溢れている隣で、チナツは少し不安げに周囲を見渡した。

 

「・・・委員長は?」

「・・・」

 

チナツの問いかけにアコは答えることができない。

ミラは当てにならないということで先生に一任したが、内容が分からない以上不安を拭いきることはできない。

最悪、ヒナがいない状態で戦うしかないか。

そんな考えが頭をよぎる。

だが、その可能性はすぐに否定された。

 

「待たせたわね、アコ」

 

アコとチナツの表情が少し暗くなった直後、風紀委員会の制服を着たヒナが現場に現れた。

 

『委員長・・・!』

「遅れてごめんなさい。みんなも、無事でよかった」

『いえ・・・はいっ!』

 

ヒナが戻ってきたことで、風紀委員会の士気が大いに上がる。

特にアコは目に見えてやる気が上がっていた。

その様子を確認したヒナは、自分のすべきことを見据えて指示を出した。

 

「準備は出来てるわね?先生の指示を待とう」

 

 

* * *

 

 

「包囲、されてしまいましたねぇ・・・」

「これはちょっと厳しいんじゃない、リーダー?」

「知ったことか。どちらにしろ、無限に増殖するユスティナ聖徒会がいる。むしろ好都合だ。予定通り暁ミラを足止めしつつ、この場にいる全員に知らせてやれ・・・殺意と憎悪に満ちたこの世界で、あらゆる努力は無意味なのだと。どれだけ足掻こうと、全ては無駄なのだと!」

 

もはや一触即発となった空気の中で、ヒフミはまず先生に目を向ける。

先生が頷きを返すと、今度はアズサへと向き直って座り込んだ。

 

「ヒフミ・・・」

「アズサちゃん、私は今すごく怒っています。すっごくです。ですが・・・それ以上に、無事でよかったです。それによく考えてみれば、それはアズサちゃんのせいではありません。ですから、私はもう怒っていません」

「ヒフミ・・・」

「ですが、あの方々についてはまだ怒っています」

 

そう言って、ヒフミは立ち上がって視線をアリウススクワッドに向ける。

 

「殺意ですとか、憎しみですとか、それがこの世界の真実ですとか・・・それを強要して、全ては虚しいのだと言い続けてましたが・・・

それでも、私は!

アズサちゃんが人殺しになるのは嫌です。

そんな暗くて憂鬱なお話、私は嫌なんです。

それが真実だって、この世界の本質だって言われても、私は好きじゃないんです!

私には、好きなものがあります!

平凡で、大した個性もない私ですが・・・自分が好きなものについては、絶対に譲れません!

友情で苦難を乗り越え、努力がきちんと報われて、辛いことは慰めて、お友だちと慰めあって・・・!

苦しいことがあっても・・・誰もが最後は、笑顔になれるような!

そんなハッピーエンドが、私は好きなんです!!

誰がなんと言おうとも、何度だって言い続けてみせます!

私たちの描くお話は、私たちが決めるんです!

終わりになんてさせません、まだまだ続けていくんです!

私たちの物語・・・私たちの、青春の物語(Blue Archive)を!!」

 

ヒフミが右手を天に掲げ、高らかに宣言した。

次の瞬間、空に立ち込めていた雨雲が消え去り、青空が姿を現した。

 

「あ、雨雲が・・・き、奇跡ですか?」

「っ、奇跡なんてない!何これ、気象の操作・・・?いや、これは・・・まさか、戒律が?」

 

自分たちが散々否定してきた奇跡としか思えない現象にミサキとヒヨリが混乱する中、ヒフミに続くように先生もまた一つの宣言を下した。

 

「ここに宣言する・・・私たちが、新しいエデン条約機構」

「なっ!」

 

先生の宣誓に分かりやすく顔色を変えたのはサオリだった。

そして、ミサキがいち早く変化した状況に気が付く。

 

「リーダー、ユスティナの統制がおかしくなっている」

「!!」

「こ、混乱してますね・・・」

 

先生たちに銃口を向けていたのユスティナ聖徒会が、先生がもう一つのエデン条約機構(ETO)を宣言したことでどちらの助けになればよいのか混乱状態に陥ってしまっている。

これでは当初の予定通りにゲヘナとトリニティ両陣営を物量で圧倒することができない。

だが、そんな目の前の事実以上に、サオリは先生とヒフミの言葉が認められなかった。

 

「っ、知ったことか!!ハッピーエンドだと!?ふざけるな!そんな言葉で、世界が変わるとでも!?それだけでこの憎しみが、不信の世界が変わるとでも言うつもりか!?何を夢のような話を・・・!」

「生徒たちの夢を・・・その実現を助けるのは、大人の義務だから」

 

サオリの激昂を、先生は真っ向から受けてなお自らの意思を貫き通す。

 

「私は生徒が願う夢を、生徒たち自身が心から願う夢を信じて、それを支える」

「・・・っ!」

 

先生の真っ直ぐな眼差しに、サオリは思わず言葉を失う。

サオリが知る大人にそんなことを言う者はいない。()()であればなおさら言わない。

ミラの圧倒的な存在感とも違う、いやに脳裏に焼き付く先生の在り方に、サオリはある種の未知を感じとり気圧されそうになる。

結果的に、それが開戦の狼煙となる。

補習授業部を主軸とした、反撃の時間が始まった。




最近のブルアカはマジでこっちの情緒をぶち壊しにきてますね。
なんかもう、いろいろとヤバすぎる・・・(語彙力崩壊&限界化)。
それに、臨戦ホシノとシロコテラーの実装ってマジ・・・?
今ほど自分の端末でブルアカができないことを呪うことはありませんわ。
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