次は早めに投稿するので許して・・・。
今回は短めです。
先に仕掛けたのはミラだった。
というより、先生の妨害による影響を受けている可能性も0ではないことから、無理やり意識を自分に向けさせるためちょっかい程度にアブソリュートをぶっぱなす。
放たれた銃弾は異形の頭部に直撃し、盛大に仰け反らせた。
そして、異形は目も鼻も口もない顔をミラに向け、
「ァ――――――!!」
次の瞬間、この世のものとは思えないような雄叫びをあげた。
普段聞くことがないような奇声にミラは思わず顔をしかめつつ、相手の動き出しを観察する。
(パッと見の攻撃手段は爪くらい。でも元があんな不思議存在だし、他に何かあっても不思議じゃないかな・・・?)
見た目からして、ある意味ではビナーよりも理解するのが難しい不思議の塊だ。
自分の知識にない攻撃手段があってもおかしくはないだろう。
その予想は、間違っていなかった。
異形が腕を横薙ぎに振るうと、その手から複数のエネルギー弾が放たれた。
人の丈ほどある青白い炎のような弾を、ミラは落雷で撃ち落とす。
「なるほど?まぁボチボチってところかな」
思ったよりあっさり迎撃できたことに一抹の落胆を覚えながら、今度は直接異形に雷を当ててみる。
「ッア˝――――――!!」
銃弾よりもよほど効果があったのか、異形は先ほどよりも大きく体をよじらせ、苦悶に満ちた絶叫をあげる。
「ふむ、こっちの方が効きがいいのか。じゃあ、こういうのはどうかな?」
そう呟いて、ミラは一度アブソリュートを背中のホルスターにしまう。
そして、全身に雷を纏わせ、瞬く間に距離を詰めて胴体を殴り飛ばした。
「ッ―――――!」
ミラの一撃によって、異形は大きく後ろに吹き飛ばされた。
だが、打撃によるダメージはそれほど見られず、膝(?)はつかずにミラを見据える。
「なるほど、物理攻撃に大して意味はない、と。まぁ、ユスティナ聖徒会もそんなんだったし、そりゃそうか」
対するミラは、大して動揺することもなく実験結果を観察するように様子を確認する。
「うん、もういいかな」
そして、確かめることはもうないとばかりに呟いた。
その呟きが届いたのか、あるいはミラが纏う気配が変わったことに気がついたのか。
アンブロジウスの背後で陽炎のように立ち上るオーラが、よりいっそう勢いを増した。
人形であるはずの異形は全力でミラを排除するべく、渾身の力を込めて右腕を振るう。
「遅い」
否、振るおうとした。
腕を振り切るよりも早く懐に入り込んだミラが異形の手首を掴むことで攻撃を中断される。
負けじと異形も押し潰すように左腕を叩きつけようとするが、今度は中指のつけ根を掴まれて完全に拘束されてしまう。
「力比べ・・・は、するまでもないか」
必死に拘束を解こうともがく異形に対し、顔色一つ変えず握り潰す勢いで力を加え続けるミラ。
実力の差は、もはや比べるまでもなかった。
「それじゃあね」
とどめの一撃は、異形を拘束してから圧縮し続けた赤雷。
それを最低限の指向性だけ持たせて、解放した。
「――――ッ!!!」
異形は悲鳴を上げることもできずに紅い閃光に飲み込まれ、光が収まった頃にはミラが掴んでいる両腕と下半身しか残らなかった。
「なんというか、あっけないなぁ」
周囲を見渡してみれば、他には誰もいない。
ユスティナ聖徒会くらいは残っているものとばかり思っていたが、想像以上に機能不全が深刻だったらしい。
結果を見れば、ミラによる一方的な蹂躙という形で幕が閉じた。
楽しめないことはなかったが、それでもミラとしては物足りないというのが正直な感想だった。
これなら、アビドスで対峙したビナーの方がよっぽどやり応えがあった。
「・・・まぁ、こんなものかな」
いくらゲマトリアから支援を受けているとはいえ、元々は大昔の敗残兵が寄せ集まったテロリスト。
命令を遂行するだけの人形が相手なら、なおさら期待しすぎるのも酷な話だった。
ならば、なぜ昨日はあれだけ楽しめたのか。
「いや・・・あの子達がいれば別だったかもね」
言わずもがな、アリウススクワッドの存在だろう。
最精鋭に違わぬ実力を有している、というだけではない。
あの4人は、他の雑兵と違ってミラを楽しませるだけのものを持っていた。
特に、リーダーであるサオリには。
(この世界は何もかも虚しい、だっけ?その割にはずいぶん必死にしがみついてるじゃん)
ミラにはわかる。
彼女は捨てようとして捨てきれなかった、諦めようとして諦めきれなかった類いの人間だ。
本人がそれを認めようとしないのは、上にいる大人の教育による影響か、それとも他に理由があるからなのか。
それほど興味があるわけでもないが、他のアリウスよりも戦い甲斐があるのは確かだった。
(あまり他人の戦いに水を差したくはないけど、観戦くらいはさせてもらうか)
すでに展開していた戦力は殲滅した。追加の足止め戦力が送られてくる気配もない。
であれば、もうこの場を離れてもいいだろう。
なんなら、遊撃ついでに補習授業部とアリウススクワッドの戦いを見守るのもありだ。
崩れ去っていく異形を一瞥してから、ミラは誰もいなくなった戦場を去っていった。
* * *
(アンブロジウスがやられた?この短時間で?)
古聖堂にて先生と補習授業部との戦闘を繰り広げているサオリは、通信でミラの足止め用戦力が全滅したことを知らされて戦慄した。
(失敗作とはいえ、戦術兵器として用いるには十分だと姫は言っていた。それでも足止めにすらならないというのか!?)
本来はある程度消耗させてから出すつもりだった異形・アンブロジウスだが、先生の妨害によってユスティナ聖徒会の統制が効かなくなり想定よりも早いペースで蹂躙されていることからすぐに投入することにした。
だが、実際はものの数分でアンブロジウスは撃破され、もののついでのように他戦力も全滅してしまった。
そして何より、足止め戦力を喪失したことで古聖堂に向かってくる可能性が一気に高くなった。
そうでなくとも、周囲で抵抗している勢力と合流されるだけでも壊滅状態に陥るだろう。その上で相手の全戦力が古聖堂に向かうようなことがあればさらに最悪。
それ以前に、先生が指揮する補習授業部によってこの場の戦況すらすでに傾きつつある。
それは、サオリ以外も認識せざるを得なかった。
「リーダー・・・」
「サオリさん・・・」
ミサキとヒヨリがそれぞれサオリに呼び掛ける。
その瞳は、この先の結果が分かってしまったかのように揺れていた。
「もうユスティナ聖徒会はまともに動作していない。エデン条約機構が2つになった時点で、戒律は意味をなくしつつある・・・」
「残った聖徒会とアンブロジウスも、もう・・・」
「手札がないし、暁ミラもこっちに向かいつつある・・・私たちの負けだ」
ミサキの言葉が、今のアリウスの状況を物語っていた。
このタイミングを逃さまいと、アズサは再度降伏を呼び掛ける。
「サオリ・・・もう諦めて」
「ふざけるなっ!!」
それでも、サオリだけは一切の衰えなく激情を迸らせる。
むしろ、今までで最も怨嗟を振り撒いていた。
「どうして、どうしてお前だけ・・・!私たちは一緒に苦しんだ、絶望した!この灰色の世界に!すべてが虚しいこの世界で、お前だけが意味を持つのか!お前だけが、そんな青空の下に残るのか!」
サオリは気づいていない。
自分が振り撒く憎悪の中に、けっして少なくない羨望が混じっていることを。
それを指摘する者もいなかったが、元スクワッドとして共に過ごしたアズサはなんとなくそれを感じ取った。
「全て否定してやる!お前がトリニティで学んだこと、経験したこと、気づいたこと!全て、その全てを!すべては虚しいのだから!!」
「いえ、そんなことはできません」
サオリの怨嗟を真っ先に否定したのはハナコだった。
コハルとアズサもそれに続くように覚悟を示す。
「私たちが合格したのも、そこまで頑張ったのも、無かったことにはならない!」
「たとえ虚しくても、私はそこからまた足掻いてみせる・・・サオリ。私は、もう負けない」
それぞれの想いを胸に、決着をつけるべく補習授業部とアリウススクワッドは衝突した。
圧倒的相性ゲーにより、アンブロジウスあっさりダウン。
さすがに相手が悪すぎました。