キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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キサキ実装はまだ全然理解できる範疇なんですけど、ロリルミってどういうこと・・・?


アリウス編・4

思わぬ対峙に、双方ともに戦闘態勢のまま動きが止まってしまう。

この中で余裕がないのは、やはりスクワッドの方だ。

ユスティナ聖徒会抜きでは絶対に敵う相手ではないというのもそうだが、何よりスクワッドにはアツコの救出とそのためのアリウス自治区への帰還という2つの時間制限が存在する。

ここでミラから足止めを食らってしまえば、確実にアリウス自治区には戻れなくなる。

だが、だからといって自分達を大人しく見逃してくれるような甘い相手でもない。

 

「えっと、ミラ。これは・・・」

「あ~、うん、そういう感じね・・・そっかぁ・・・」

 

だが、先生が状況を説明しようとする前に、ミラは脱力するように構えを解いた。

 

「まぁ、何となく事情は分かったけど・・・どうする?必要なら私も手伝おっか?」

 

それどころか、自分からスクワッドの手助けをするという申し出に、逆にスクワッドの方が警戒心を強める。

 

「・・・我々が先生を脅しているとは思わないのか?」

「仲間が一人欠けている状態で?それなら脅す前に殺そうとするでしょ」

 

ミラのストレートな物言いにスクワッドはぐうの音も出なくなり、先生もどう言葉を掛けるべきかわからず目を泳がせる。

かなり物騒かつ大雑把な推測だが、あながち間違いではない(むしろ唆されている分、半ば事実でもある)ため、否定の言葉も出てこない。

それに、ミラの方にも根拠はあった。

 

「姫ちゃん、だっけ?大方、その子が連れ去られたから助けるために力を貸してほしかったとか、そういう感じでしょ」

 

スクワッドの中でもアツコが他の3人から特に大事にされているらしいことは、調印式で戦った際に見当がついていた。

そのくくりは、仲間というよりは家族に近い。

だからこそ、何がなんでも助けたいと思うのは不思議ではない。

だが、それでもスクワッドから先生に助けを求めるとは思っていなかった。

なにせ、悪意を持って殺そうとした相手だ。

そんな人物に助けを求めるなど、面の皮が厚いどころの話ではない。

スクワッドがその類いかと聞かれたら、ミラの印象では“No”だった。

一応、アツコの誘拐はミラの想定の範囲内のため、ミラとしては頼まれたら引き受けるつもりではあった。

ボコボコにされたトラウマはあるだろうが、加害者側の立場よりかは被害者側の立場の方がまだ頼みやすいだろう、と。

にも関わらず、偶然かそうでないかはともかくとして、こうして先生を頼っている。

その手段を選ばせる段階にまで追い詰められていたのか、あるいはそれだけアツコがスクワッドにとって大事な人物であると見るべきか。

どちらにせよ、相当な覚悟があったに違いない。

だが、一人で勝手に納得するミラとは裏腹に、スクワッドの不信感は募り続けるばかりだった。

自業自得とはいえ、自分達がしてきたことを考えればミラの態度は先生に負けず劣らず不可解なものだ。

 

「だが・・・」

「その辺の話は後にしよう。増援が来た」

 

口を開きかけたサオリを遮るように、ミラは足下に転がっていたアリウスの生徒を蹴り飛ばした。

蹴り飛ばされた先では、僅かだがいくつかの悲鳴や怒号が響いてくる。

どうやら異変を感じ取った舞台が続々と集結しつつあるらしい。

 

「続きは道中かカタコンベに入ってからってことで」

「・・・わかった。それと、私たちが知っている通路はあと90分で使えなくなる」

「日付が変わる前ね。それなら急いだ方がいいか。先生、指揮をお願い」

「うん、わかった」

 

ひとまずは目の前の敵の対処を優先する。

先生の指揮の下、かつて敵対していた4人は同じ目的のためアリウスの追手に立ち向かった。

 

 

* * *

 

 

当然と言うべきか、アリウスの追手はすべて返り討ちにした。

ミラがいる以上当然と言えば当然なのだろうが、理由はそれだけではなかった。

 

「暁ミラがいるとはいえ、あんなに苦戦させられた相手が、こんな簡単に・・・」

「これが、大人の力・・・」

 

ミラがいるのと同等か、あるいはそれ以上に先生の存在が大きかった。

先生の指揮がもたらす影響を身をもって体感し、ベアトリーチェが最優先で排除させようとした理由にも改めて納得がいった。

 

「けど、進むにつれて敵も多くなってる。たぶん、こっちの狙いに気づいているかもね」

 

だが、ミラの忠告を聞いてサオリたちも気を引き締め直す。

 

「たしかにな・・・おそらく、迎え撃つ準備もされているだろう」

「どれだけ数を揃えても意味はないけど、最悪爆弾で生き埋めにしようとしてる可能性も考えた方がいいかな?」

「いや、向かっている場所は地下道だ。比較的丈夫な構造だし、1,2箇所の爆発程度なら崩壊はしないだろう」

「どっちにせよ、不意打ちには気を付けた方がいいかな。私たちはともかく、先生が危ない」

「・・・その・・・あの時私たちに使った雷があれば、すぐに終わるんじゃないんですか?」

 

サオリたちの脳裏に蘇るのは、アリウスとユスティナ聖徒会の大軍勢を蹴散らした赤い雷の雨。

あれを使えばちょっとやそっとの防衛陣地は意味を成さないのではというヒヨリの指摘に、ミラは微妙な表情を浮かべた。

 

「あ~、あれっていろいろ条件があるから、そっちが思ってるよりも使い勝手悪いんだよね」

「そうなのか?」

「まず、落雷や薙ぎ払いは始点が私の視界の外じゃないと発動しない。だから、屋内だと当然使えないし、こういう裏路地も厳しい。帯電と雷球はどこでもできるけど、帯電しても指先から放電とかはできないし、雷球は撃つのに溜めが必要な上に落雷の制御が碌にできなく・・・どうしたの?」

 

自身に向けられる微妙な視線を感じて、ミラは解説を中断する。

尋ねた張本人であるサオリたちは、なんだか聞いてはいけないことを聞いてしまったかのような表情で別の質問を投げ掛けた。

 

「その、聞いた私たちが言うのもなんだが、そこまで答えて大丈夫なのか?弱点も含めてかなり暴露しているが・・・」

「あぁ、そういう」

 

サオリの言葉に、ミラも納得の表情を浮かべた。

たしかに、自分の手の内をペラペラと話す人間はそうそういないだろう。それが戦闘に関することなら尚更。

その疑問に対する答えは、非常に単純だった。

 

「べつに、それくらいで負けるほど軟じゃないからね」

「・・・!」

 

『信頼しているから』ではなく、『もし裏切られても問題ないから』。

そうとも受け取れる返答に、サオリたちはミラの精神性を垣間見る。

自分以外は全て敵だとか、敵と味方の2つで区別しているわけではなく、その場で協力できるかどうか、言葉を選ばずに言うなら使()()()()()()()を合理的に判断する。必要なら情報などの提供を惜しまないが、それはそれとして裏切る可能性も常に頭の片隅に置いておくことを忘れない。

無条件で相手を信じるわけではなく、かといって自分以外の全てが敵などと疑心暗鬼に囚われることもない、寒気すら感じさせるほどの合理性。

その思考回路が、無慈悲なまでに敵を殲滅するミラの戦い方と自身の実力に対する圧倒的な自負に奇跡的なバランスで噛み合っている。

なお、実際は入念な下調べと下準備を重ねたカイザー(参謀・黒服)相手に油断して一時的に無力化されたりもしているが、そんなことをサオリ達が知る由もない。ちなみに、ミラの中ではあの一件はノーカンになっているためミラから話すこともない。

 

「まぁ、おしゃべりはこれくらいにしてさっさと進もう。時間もあまりないし、さっさと強行突破で・・・」

「いや、この先は訓練されたエリート兵が待ち受けているはずだ。私たちが先を行くから、暁ミラは安全を確保するまで後ろで先生を守ってほしい」

 

再び突破口を切り開こうと前に出るミラをサオリが引き留める。

まさかの申し出に目を白黒させるミラだが、すぐに理由を察して引き下がった。

 

「そう。それならここは頼もうかな」

「あぁ。先生、指揮を頼む」

「・・・だね、よろしく」

「へへ・・・よろしくお願いします・・・」

「え?あ、うん、こちらこそ・・・?」

 

ミサキとヒヨリもやる気を見せながらサオリに続いていき、二人きりになったところで先生は小さな声でミラに問いかけた。

 

「ねぇ、今のだけど・・・」

「やる気があるのはいいことだよね。私に任せきりにしようとしないのもえらいし」

 

聞かれるまでもなく、ミラもサオリの真意に気がついていた。

万が一のための先生の護衛という目的ももちろんあるのだろうが、一番の理由はおそらく『これは自分たちの戦い』という意識が強いからだろう。

元々は自分たちの身内を助けるために始めた戦い。だからこそ自分たちの手でケジメをつけたいのだろうというのはミラにも理解できた。

ちゃんとサオリ達のことを理解している、あるいはしようとしているミラに、先生は安堵の息を零した。

この調子なら、割と早いうちにヒナとも打ち解けるようになるかもしれない。

調印式以来気になっていたことも確認してから、サオリ達への指示へと意識を集中させた。

 

 

先生の指示によって、サオリ達は順調に待ち伏せを倒していき目的の場所まであと少しというところまで近づいた。

 

「よし、あとはこいつらを倒せば・・・!」

 

ここが踏ん張りどころだと気合を入れなおした次の瞬間、唐突な横からの爆発によって展開していたアリウスの部隊がまとめて薙ぎ倒された。

 

「な、何が起こったんですか・・・・?」

「わからない。いったい誰が・・・」

 

「ふふっ、やっぱりここに来ると思ってたよ。大当たり!」

 

突然のことに困惑を隠せないサオリたちだったが、爆炎の奥から浮かび上がった人物に驚きを隠せなかった。

なぜなら、現れたのは本来であればここにいるはずのない、トリニティの囚われの姫であった。

 

「聖園ミカ・・・」

「悪役登場☆ってところかな!まだ覚えててくれたんだね?会えて嬉しい・・・って顔じゃなさそうだけど、どうしたの?」

 

だが、サオリ達に向けられる表情は、以前までの天真爛漫でも楽観的でもない、

 

「そんな、魔女でも見たみたいな顔をしちゃって」

 

復讐に取り憑かれた魔女のようだった。

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