キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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いつもの時間(深夜0時)に予約投稿しようとしたら誤爆しました。
ぶっちゃけ、わざわざ消して再投稿しなくても良かった気はするんですけど、とりあえず決めた時間どおりの投降を優先しました。
なんか気になっちゃうんですよね、そういうの。


アリウス編・5

先生とサオリが出会うよりも少し前、先生が出ていった後のトリニティで決して小さくない騒動が起きていた。

 

「二人きりで話したいって、セイアちゃんらしくなくてちょっとビックリしたけど・・・連絡もらったから、急いで来たよ!」

「ミカ・・・」

 

聴聞会を明日に控え、大人しく自分に下される裁きを受け入れようとしていたミカをセイアが呼び出した。

だが、様子がおかしい。

まず、誰が見ても分かるほど体調が悪そうにしている。顔色は悪く、体も小刻みに震えている。

そして、そんな状態であるにも関わらず、セイアの意識は他の何かに囚われていた。

心配そうなミカを余所に、セイアは矢継ぎ早に質問を投げかける。

その内容は主にアリウスに関することだったが、今まで見たことがない食いかかるような態度にミカも困惑を隠せない。

その理由は、すぐにセイアの口から語られた。

 

「先生が・・・スクワッドに狙われている・・・」

「・・・!?」

 

それは、ミカを焦らせるには十分すぎる言葉だった。

なぜならその原因は、

 

「君が、先生を連れてきたから・・・!」

 

自分にあったから。

先生をトリニティに呼んだのも、アリウスをトリニティに手引きしたのも自分だから。

厳密には、先生に関してはナギサも同じことを考えていたが、その意見に賛成したことに変わりはない。

 

「・・・いや、君のせいではないな・・・すまない・・・ゲホゲホッ」

 

強めの語気で責めてしまったことをすぐに謝罪したセイアだったが、咳き込み始めたかと思うと急に倒れてしまう。

 

「せ、セイアちゃん!しっかりして!誰か!誰か人を呼んできて!セイアちゃんが・・・セイアちゃんがおかしいの!」

 

ミカの叫び声に扉前で待機していた正義実現委員会が中に入り、様子がおかしいセイアの姿と取り乱しているミカを見て状況を察してすぐに通信を救護騎士団に繋げる。

その間もミカは必死にセイアに声をかけ続ける中、うっすらとだが閉じていたセイアの目が開く。

 

「ああ、セイアちゃん、気が付いた?・・・私、どうすれば・・・」

 

今にも泣きそうなミカの言葉を受けてセイアも何かを話そうとするが、それも虚しくセイアは再び意識を失ってしまう。

それから周囲にいた生徒たちが集まって必死に応急処置を施そうとするが、原因不明の痙攣や吐血になすすべなく救護騎士団やシスターフッドからの連絡を待ちながら慌ただしく動き回る。

そんな中、ミカは一人呆然と危篤状態のセイアを見つめることしかできない。

 

「どうして、こんな・・・私の、私のせいで、こんなことに・・・」

 

ミカの頭の中では、常にセイアの言葉がグルグルと渦巻いていた。

 

『君が先生を連れてきたから!』『君のせいで!』

 

そう、自分が先生をトリニティに呼ばなければ、そもそもアリウスと関わらなければ、こんなことにはならなかった。

いつもセイアに言われていたように、自分は考えることが苦手だった。

自分なりに良かれと思ってしたことが、巡り巡ってこうして大切な人を傷つけることになっている。

そんな中、次第に外からセイアの危機とは関係のないことまで口走る生徒まで出始めてきた。

 

「犯人は!聖園ミカですか!?あの魔女が!!」

「待ってください!ミカ様は何も・・・」

「彼女がセイア様の部屋を訪れたからこうなってしまったのでは?あの女が何かをしたに決まっています!」

「やめなさい!今ここで争ったって・・・!?」

「この人殺し!魔女め!」

「出てきなさい、この極悪人!全部あなたのせいよ!!」

 

セイアの安否を案ずる喧騒は、次第にその原因を追究するものへと変わっていき、その矛先は無実のはずであるミカへと向けられる。

付近にいた生徒たちはミカが本当に何もやっていないことをわかっているが、それ以外の生徒からすればそんなことは関係なかった。

あるいは、真偽などどうでもいいのかもしれない。

なぜなら、“どうせあいつに決まっている”と決めつけるのが最も楽だから。

そして、ミカもまた投げつけられる罵声を一切否定していないのだから。

だから、それの何が悪いと自らの行動を止めることもない。

だが、結果としてそれらの声がとどめとなった。

 

 

 

「この魔女め!!」

 

 

 

後悔と自責。自らの中で膨らみ続けた負の感情が、外から投げかけられた言葉によって破裂した。

周囲に不幸をばらまき続ける自分は、たしかに魔女なのかもしれない。

だが、それらの結果は自分が望んでまき散らしたものではない。

ならば、すべての原因は?

 

「・・・“アリウススクワッド”の、錠前サオリ・・・」

 

自分は、本気でアリウスと仲直りしたくてサオリと接触した。

だが、最初セイアのヘイローを破壊しようとしたのも、調印式でナギサを含む大勢の人を傷つけたのも、先生を殺そうとしたのも、すべてサオリが計画したことだった。

そして、サオリによってミカの大切な人たちが多く傷ついたにも関わらず、当の本人は安穏と生きている。

 

「そんなの、不公平だよね・・・あの女の大切な人も全部、奪われなきゃ・・・」

 

その結論に至ってからは、ミカの行動は早かった。

アリウスを除けば、スクワッドの行動パターンに一番詳しいのは自分だ。だから自分が奪いにいこう。

そのためには、まず自分の武器を取り戻さないといけない。

そのため、ミカは自分の銃が押収されている保管庫へと向かうために・・・拳で壁を殴り壊した。

 

「な、なんだ!?いきなり壁が・・・!」

「うーん、私の銃どこだっけ・・・たしかあっちだったよね?それじゃあ、行くとしよっか」

 

突然の轟音と土煙に周囲が混乱する中、ミカはまるでショッピングに向かうような軽い足取りでその場から離れていった。

拳で壁を破壊したというのも驚くべきことだが、今はそれどころではないと監視をしていた生徒は至急通信で起きたことを報告する。

 

「み、聖園ミカが・・・聖園ミカが脱獄した!」

 

その報せは、あっという間にトリニティ中へと広まっていった。

 

 

* * *

 

聖園ミカの襲来。

予想だにしていなかった事態にサオリたちも困惑を隠せないが、それ以上に警戒心を露にする。

 

「・・・檻の中にいると聞いたが」

「出てきちゃった☆だって、ほら・・・お話することがあるんじゃないかなって」

 

ミカの口調は、普段と大して変わらない。

だが、それでも隠せないほどの戦意と憎悪が放たれていた。

 

「・・・先生とミラは?」

「う、後ろから来てます・・・たぶん、すぐに到着するかと・・・」

「・・・通路が閉じるまでは?」

「残り約28分・・・まさか戦うつもり?」

 

ミカはデスクワークが主体のティーパーティーの中では例外的な武闘派であり、その実力はトリニティでも最上位、それこそ剣先ツルギにも匹敵する。

さらに、サオリたちは予想外の接敵にトラップを仕掛けることもできず、相手の得意な状況である白兵による乱戦を受けざるを得ない。

ならば、最善なのは先生が到着するまで粘ることだろう。

 

「ねえねえ、私の話聞いてる?無視?無視ってひどくない?これでも一緒にクーデターを起こした仲じゃん」

 

サオリたちが作戦会議をしている間、ずっと一人で喋り続けていたミカが不意に会話の矛先をサオリたちへと向けた。

 

「それって、仲間外れじゃないの」

 

その一言と同時に、ミカが目にも止まらぬ早さでサオリたちの懐に潜り込もうとする。

 

 

 

「そこまでだよ」

 

戦闘もやむ無しかとなったその時、両者の間に割り込むように現れた白い影がミカの攻撃を受け止めた。

 

「まったく、嫌な予感がすると思ったら・・・」

 

間に割って入ったミラは、ミカを弾き飛ばしつつ僅かに浮かんだ苦い表情を押し殺しながらまっすぐに向き合った。

 

 

 

 

きっかけは、ミラが感じた些細な違和感だった。

 

「どうしたの?」

「・・・なんか、嫌なっていうか面倒な予感がする」

 

それは気のせいかと思うほどの僅かなものだったが、自分たち以外に近くで戦っているような気配を感じた。

他所であれば特に気にすることはなかっただろうが、よりによってアリウスへと繋がっているカタコンベの入り口付近となると話は変わってくる。

 

「やっぱり、私も念のために行ってくる。先生は、一応後から来て。何があるかわかんないから」

「・・・わかった。ミラも気をつけて」

 

そうして先生を置き去りにしてミラだけ急いで駆けつけたのだが、嫌な予感は当たっていた。

だが、まさかここにいるはずのないミカが襲撃してくるとまでは思わなかった。

 

「ミラ!?なぜここに・・・!」

「嫌な予感がしてね。まぁ、さすがにこれは予想の斜め上だったけど」

「ミラ・・・?もしかして、ゲヘナの暁ミラ?」

 

サオリの叫びに反応したのはミカだった。

元々反ゲヘナ筆頭のパテル分派首長であり、本人もまたゲヘナが嫌いなこともあってよく知っている名前だった。

 

「なんで行方不明扱いになってるゲヘナのあなたが、アリウススクワッドと一緒にいるの?」

「アリウス自治区に野暮用があってね。案内してもらってたところ」

「そっか。それじゃあ、そこを退いて?」

「断る」

 

後ろにいるアリウススクワッドにしか興味がないと言わんばかりのミカの要求を、ミラはバッサリと即答で切り捨てる。

ミラの返答が意外だったのか、ミカはコテンと人形のように首をかしげた。

 

「・・・なんで?あなただって、ゲヘナの風紀委員長がアリウスにひどい目に遭わされたんだから、そいつらが憎くないの?」

「生憎と、私はアリウスのことは大して恨んではいないんだよね。それとこれとは別問題っていうか」

 

ミカの質問に答えながら、ミラは内心で盛大に溜め息をこぼした。

ミカがここにいる時点でまあまあ異常事態だが、どうやらトリニティでも大概碌でもないことが起こっているらしい。

そうでなければ、ミカがここまで憎悪を剥き出しにして独房から脱走する理由が思いつかない。

鍵となるのは、矛先がスクワッド、特にサオリに向けられているということか。

 

(そりゃあ、ここしばらくはデモがひどかったけど、それだけってわけじゃないだろうし・・・本当、何が起こっているんだか・・・)

 

気になることは多いが、ひとまず優先すべきはアリウス自治区への経路の確保だ。

使おうとしている通路は、おそらくミカが立ち塞がっている先。

ミラと言えど簡単に排除できる相手ではなく、追撃を防ぐためにもできることなら通路が閉じるギリギリで通過したい。

 

(残り時間は25分ちょっと、ってところかな)

 

それまで足止めしつつ、時間になったら一気に戦闘不能まで追い込んで自治区まで駆け抜ける。

難しいが、やるしかない。

こんなことならいっそ先生も連れてこれば良かったかとも思うが、それはそれでミカの反応が分からないのが怖い。

さすがに逆上はしないと思いたいが、情緒が壊れて余計にサオリたちへの憎悪が強くなったら面倒だ。

同じ理由で、サオリたちを先生のところまで下げるのも避けたい。時間がないのもそうだが、ミカがサオリたちの後を追って先生に出くわしたらどうなることやら。

いっそのこと、ゲヘナ嫌いらしく自分のことを恨んでくれる方がよっぽど気が楽だった。

 

「・・・そっか」

 

だが、ミラの狙いという意味では不幸中の幸いというべきか、

 

「それじゃあ、無理矢理にでも退いてもらうね?」

 

ミカはミラを最優先で排除すべき障害であると認識し、襲い掛かった。




ミラルーツvsミラバルカン ROUND1 FIGHT!
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