キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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ブルアカでドラゴンボールをするな(ネタバレ)


アリウス編・6

爆発が起きたのかと思うほどの衝撃と轟音が、地下通路内に連続して響き渡る。

だが、それが素手を含む白兵戦によって引き起こされているものだということは、当事者にしかわからないことだった。

いや、当事者であるサオリたちですら、目の前で起きている光景に現実感を持てない。

それほどまでに、ミカとミラの戦闘は常軌を逸していた。

 

「ねぇ、あなたに用はないから邪魔しないでほしいんだけど!」

「それはお互い様。生憎とそっちの癇癪に付き合ってやるほど暇じゃなくてね!」

 

自身のサブマシンガンを撃ちながら距離を詰めて殴りかかり、時には隕石を召喚して豪快に吹き飛ばそうとするミカ。

銃弾と拳を翼や腕で防ぎつつ、隙さえあらば赤雷を纏った蹴りや両手のアブソリュートで反撃するミラ。

互いに射撃を交えた肉弾戦を得意とするスタイルであるため、サオリたちが援護しようにもミカとミラの距離が近すぎるせいで迂闊に手を出せない。

だが、それ以上に二人の動きが速すぎて何が起きているのか把握することすら困難だった。

得意な雷攻撃が使えない中でサオリたちを守りながら戦わなければならないハンデを圧倒的なフィジカルで補うミラと、フィジカルはやや劣るものの負けず劣らずのパワーと虚空から召喚する隕石で周囲ごと吹き飛ばすミカ。

ハンデを抱えながらトリニティ最強の一角と互角に戦っているミラに感心するべきか、ハンデ込みとはいえキヴォトス最強を相手に対等に渡り合っているミカに驚愕するべきか。

どちらにせよ、この二人の戦いに割り込むにはサオリたちも相応の覚悟が必要になる。

 

「癇癪?その一言で片付けないでくれる?私のことなんて何も知らないくせに!!」

「なんか碌でもないことが起きてるのは分かってるよ。その上で癇癪だって言ってんの!!」

 

戦いの最中に交わされる会話の中で自身の胸に燻る炎と衝動を“癇癪”の一言でミラに片付けられたミカは、逆上と共にありったけの力を込めた隕石をミラに放った。

今までで一番の威力を持っているだろう巨大な隕石を前に、ミラもまたありったけ圧縮した雷球を放つことで迎え撃つ。

互いの全力による衝突によって、今日一番の激しい爆発を巻き起こした。

サオリたちが爆発に巻き込まれないよう近くの小道に避難し、ミラとミカは爆風によって吹き飛ばされるもそれぞれの開戦前の位置で踏みとどまる。

再び距離が離れたことで状況が膠着する中、ミラは冷静に先ほどまでの戦いを分析する。

 

(スピードとタフネスはいくらか私に分があるけど、パワーは私と互角かもしれないな。何より、あの隕石。威力もそうだけど、この狭い場所でも使えるのってズルくない・・・?)

 

能力の発動条件の差に若干嫉妬しつつも、ミカ自身の戦闘力は以前トリニティで見た時よりも評価を上げる。

速度と丈夫さはミラに軍配が上がるが、攻撃力はほぼ互角と言える。なんなら、落雷が使えない現状ならミカの方が上だろう。

拳、銃撃、隕石。そのどれもが確実にミラにダメージを与えるほどの威力を持ち、特に隕石は通常の打撃や銃撃では相殺しきれない。赤雷を纏った蹴りやがっつり溜めた雷球でようやくだ。

アリウス自治区に潜入してからのことを考えれば、これ以上の消耗は避けたいところだった。

 

(アリウスの増援もそろそろ来るだろうし、いっそ巻き込んでみるのも・・・いや、私と一緒に返り討ちにしちゃいそうだな)

 

敵同士の三竦みではあるが、おそらく向かってくる増援よりもミカとミラの二人の方が戦力的に上であり、それなら先にアリウスを潰した方が早いかもしれない。

とはいえ、通路の時間制限を考えれば陽動程度には使えるだろう。

どちらにせよ、そろそろ先生に来てもらった方がいいかもしれない。

問題なのは、こちらから呼ぶ手段がないということ。この戦闘音で駆けつけてはくれるだろうが、いつ来るかは運任せだ。

 

(あぁもう、いっそのこと・・・いや、ここで面倒になったらダメだ。いやまぁ、もうだいぶ面倒になってるけど)

 

ハッキリ言って、ミカの乱入はミラにとって余計以外の何物でもなく、もはやいつものように戦いを楽しむ気すら湧かない。

さらには使える通路が閉じるまでの時間も迫っており、なおさら邪魔でしかなかった。

だが、ここで適当な対応をしたら後がなおさら面倒になるのも目に見えている。

なぜここに来てこんなメンヘラの相手をしなければならないのだと辟易しそうになる心を必死に持ち直しながら、どうにかアリウス自治区への活路を開くために頭を回す。

 

「・・・もう一度聞くけど、なんでスクワッドに肩入れしているの?敵じゃないの?」

 

その最中、ミカが再びスクワッドの味方をしていることについて尋ねてくる。

先生が来るまでの時間稼ぎのために、ミラもひとまずその話に乗ることにした。

 

「言ったでしょ。自治区に用があるからその成り行きって」

「スクワッドは先生やゲヘナの風紀委員長を殺そうとしてたでしょ?あなたにとってはその程度なの?」

「その程度で済んでるよ。結果論ではあるけど」

「そっか・・・でもね、私はそうじゃない」

 

声のトーンを落とし、ミカは俯くように目を伏せて自らの思いの丈を零していく。

ただし、それは決して青春のようなものではなかったが。

 

「私はね?私の、大切なもの・・・ぜーんぶ、なくなっちゃったんだよ?学園も、友達も、宝物も・・・帰る場所も、先生との約束だって。

明日になったら、全部元通りになるかもしれないって信じてたのに、そんなものはお話の中だけだった・・・あはは、運命はもう決まってるみたい。

だからさ・・・スクワッドの、特にサオリ。貴方たちも私と同じ苦痛を受けないと。私が失った分だけ、あなた達も失ってよ。

そうじゃないと・・・不公平でしょう?」

「・・・!!」

 

視線を向けられたサオリは、その瞳の奥に揺らめく憎悪の炎を垣間見る。

その様子は、まるで・・・。

 

(やっぱり、癇癪に違いはないじゃん・・・それにしても、これだからトリニティってのは・・・)

 

それに対し、ミラは内心でため息を吐いていた。

ミカがここにいる理由が、おおよそミラが予想した通りであると悟ってしまった。

その上で、やはり今のミカが盛大に癇癪を起こしている状態だと確信する。

一度冷静にさせてしまえば後は楽だろうが、ここまで燃え上がっているとなると鎮火はおそらく簡単にはできない。

出来ることなら無視してさっさとアリウス自治区に向かいたいが、やすやすと通してはくれないだろう。

 

「だからね?早くそこを退いてくれないかな、暁ミラ」

 

戦闘は避けられない。

そう判断したミラは、一撃で仕留めるべく今まで以上に全身に赤雷を纏う。

それを宣戦布告と捉えたミカもまた、最短でミラを倒すために銃を構える。

もはや一触即発状態の緊迫した空気の中、決着をつけるべく同時に踏み出そうとする。

 

「ちょっと待った!!」

 

その直前、サオリ達の後ろから慌てて走ってきた先生が大声で2人を引き止めた。

 

「せ、せ、先生・・・!?」

 

思わぬ登場に、ミカは構えを解いて狼狽してしまう。

先生もまた、予想外の邂逅に慎重に言葉を選びながら問いかける。

 

「ミカ・・・ここで何をしているの?」

「わ、私は・・・えっと、その・・・それより、どうして・・・?どうして、先生がスクワッドと・・・」

「ごめん」

 

だが、それを決定的な隙と捉えたミラは謝罪の言葉を一言口にしながら、ミカの無防備な胴体に掌底を叩き込んで吹き飛ばした。

 

「先生、時間があまりない!急いで!」

 

「こっちだ!」

「聖園ミカもいたぞ!撃て!」

 

突然の攻撃に先生も苦言を呈そうとするが、アリウスの増援が到着したことでそれを飲み込んだ。

増援の到着と通路の期限、2つの制限時間が同時に迫ったことでミラも方針を撃退から逃走に変更し、先生とサオリたちも迷わずそれに従う。

 

「ミカ!トリニティで待ってて!すぐに帰るから!」

 

ミラの誘導で通路の先に進む直前、先生はミラの一撃で行動不能になっているミカに声をかけながら、サオリ達と共に奥へと進んでいった。

殿に残ったミラは、続々と現れるアリウスの生徒を前に軽く息を吐いた。

 

「さすがにのんびりは出来なさそうか。それじゃ、これでも喰らっておいて!」

 

そう言って、ミラは懐からありったけの手榴弾を取り出して放り投げた。

倒したアリウスの生徒から拝借したそれらは通常のものよりも威力の高い特別製(悪く言えば違法品)であり、自爆覚悟の連鎖爆撃によって足止めを余儀なくされる。

最低限の成果を確認したミラは、そのまま閉じ始めてきた通路を通って先生たちの後を追っていった。

 

「・・・無事だったか」

「なに、まさか心配してくれたの?」

 

ミラが先生たちと合流すると、サオリが開口一番に安堵したかのような声を漏らした。

それを受けたミラはからかうように返すが、手榴弾の自爆によって少なからず服がボロボロになっているため心配しているのは先生も同じだった。

とはいえ、本人にダメージを気にする様子はないため、大丈夫なのだろうと納得するしかなかった。

元より、その異常な耐久力は身をもって体験しているのだ。納得する以外の選択肢はない。

 

「いや、お前はそういう奴だったと再認識させられたところだ」

「そっか。それより、自治区はこの先なんだよね?」

「・・・あぁ。追手に追い付かれる前に移動しよう」

 

なんとなく気にしたら負けな気がしたサオリは、気を取り直して道案内を再開した。

その途中で頭の中に思い浮かぶのは、先ほどのミカだった。

あのミカの怒りは正当なものであり、自分にはそれを受け止める責任があった。

だが、実際は突然の事態だったとはいえミラにすべて押し付けるような形になってしまった。

ならば次こそはと、サオリは一人内心で決意を固める。

そして、先生もまたこの場に現れたミカの身とトリニティに何が起こっているのか案じながら、チラリと後ろを振り返った。

ミラはその様子を意味ありげに見つめたが、すぐに何もなかったように奥へと進んでいった。




書いてる最中に“ミラ“と”ミカ”でゲシュタルト崩壊を起こしそうになりました。
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