最近、仕事が忙しすぎたので、ちょっと息抜きをば・・・。
ミラがユスティナ聖徒会の中に突っ込み、サオリたちが後ろから先生を護衛しつつ援護する。
それだけで、ユスティナ聖徒会の軍勢は易々と崩れていく。
調印式の時よりも弱体化しているとはいえ、ミラがいる時点で当然といえば当然の結果だった。
だが、現在の状況に対してミラの表情にはそれほど余裕があるわけではなかった。
(さて、ここまで蹴散らして何もしないことはないと思うけど・・・)
ミラの中でベアトリーチェの評価は『年増の小物』であらかた定まっているが、それでもこの状況を見逃すような間抜けだと見下しているわけではない。
気にくわないとはいえ、アリウス自治区を平定した手腕はたしかに本物なのだ。
であれば、何かしらミラを止めるための策を用意しているに違いない。
考えられるのは、主に二つ。
一つは、戦術兵器“アンブロジウス”を越えるような強力な個体。
さすがにヒエロニムスより強いのがいるとは思えないが、同じくらいの戦闘力であればあり得なくはないだろう。
そして、もう一つ。
(何もせずとも勝手に襲ってくる、ベアトリーチェの手から離れているイレギュラー。それに当てはまるのは・・・)
そう考えた次の瞬間、ミラの横の建物の壁が爆発したかのように弾けとんだ。
サオリたちが瓦礫を防ごうと顔の前を腕で覆う中、ミラは瞬きもせずスローモーションで流れる視界で粉塵から飛び出してきた拳を確認した。
迫ってくる拳を片腕で受け止めると、爆発にも引けを取らないほどの衝撃が全身を駆け抜けるように襲いかかってくる。
これほどの膂力の持ち主はそうそういない。先ほどまでの状況も加味すれば、それが誰かは一目瞭然だった。
「来たね、聖園ミカ・・・!」
そう言いながら、ミラは先生たちから遠ざけるようにミカを弾き飛ばした。
翼を使って空中で体勢を立て直しながら着地したミカは、信じられないような眼差しをミラに向ける。
「えっ、なんであれに反応できたの?完全に不意打ちだったと思うんだけど」
「生憎と、あれくらいはゲヘナにいた時は日常茶飯事だったからね。まぁ、さすがに生身でやってくるのはいなかったけど」
これくらいは慣れないとやっていけないと語るが、他に風紀委員会で同じことができるのはヒナくらいしかいない。そもそもを言えば、爆風をもろにくらって平然としていられる存在自体がキヴォトスの中でもかなり稀にしかいないが。
そんな軽口をたたく程度には余裕を見せるミラだが、後ろにいる先生たちからすれば笑いごとでは済まない。
「ミカ・・・!?」
「・・・まさか、ここまで追いかけてきたのか」
ミカの執念を甘く見ていたと歯噛みするサオリだが、そのためにカタコンベやアリウスの追撃部隊を攻略してまで追いかけてくることを想定しろというのも酷な話だろう。
先生とサオリの動揺の声に気が付いたミカは、視線をミラから外して後ろの方へと向けた。
「久しぶり・・・ってほどでもないか。また会えて嬉しいよ、サオリ。先生とミラがいるスクワッドにどうやったら勝てるか考えて、まずはミラを片づけてからって思ったんだけど、上手くいかなかったね。まぁ、先生が指揮するスクワッドに勝てるアイデアも浮かばなかったけど」
いつもと変わらない軽い口調で、今まで以上の敵意を口にするミカに先生は必死にミカに語りかける。
「やめて、ミカ!今はこうしてる場合じゃ・・・!」
「・・・ごめんね、先生。私、元々言うことを聞かない“悪い子”だったでしょう?先生が今、どういう状況なのかはだいたいわかるけど・・・その言葉には従えないの」
そう語るミカの瞳の奥は、先ほど会ったときと変わらずどろどろに濁っている。
だからこそ、ミカが本気であると悟らざるを得なかった。
そして、それが分かって手加減を考える彼女ではなかった。
「そっか。それじゃあ、ちょっとばかり痛い目を見ても文句は言えないよね?」
そう言って、ミラはアブソリュートをリロードして前に出る。
地下通路で会った時にも増してやる気を漲らせているミラに、ミカは目を白黒させた。
「あれ、私が怒られる流れ?」
「さて、どうだろうね。荒療治なのは確かだろうけど」
実際、ミラはミカに対してそこまで怒りを抱いてはいない。せいぜい、『ここに来てまで邪魔しやがって』と多少鬱陶しがっている程度だ。
だが、この場でミカに最も対抗できるのがミラであるのならば、先生やスクワッドが抱いている感情の分まで戦うのが自分の務めだと考えていた。
「サオリたちは先生の傍で援護に徹して。ミカの相手は私がやる」
引き続き、ミラがここは自分が請け負うと断言する。
だが、突発的な遭遇だった地下通路ならまだしも、ミカの思惑が分かった上で真正面から相対しているこの場で全てを押し付けるつもりはサオリにはなかった。
「ミラ!彼女の狙いは・・・!」
「わかってる。けど、ここは譲らないよ」
その上で、ミラは強い口調でサオリの申し出を切り捨てた。
「私たちの目的はアツコの救出。それを履き違えたらダメだよ。万全の状態で行くためにも、ここは私が引き受ける」
だから、大人しく後ろに下がっていろと視線で促す。
これ以上の抗議はむしろ自分の身が危なくなりそうな気配を感じ、サオリは渋々ながらも引き下がった。
だが、ある意味で自分の身よりも他の誰かを優先しているような姿に、ミカは既視感を覚えた。
「ふぅん・・・まるで先生みたいなことをするんだね?」
「まぁ、参考までにね」
何の参考かと問われたら、当然ヒナと再会したときのためだ。
どうすればヒナを傷つけずにすむか。先生と同じようには出来ずとも、よい結果に繋がる可能性は高いだろう。
「それはさておき・・・さっきは加減したけど、今度はちょっときつめにいくよ」
地下通路では途中で先生が現れた都合で手加減したが、ここにきて再び襲ってくるというのであれば是非もない。
対するミカも、何かを決心したような、しょうがないと諦念を感じるさせるような目でミラを見つめた。
「うん、そうだね・・・もう、あなたは関係ないなんて言わないよ。私の邪魔をするなら・・・無理やりにでも退いてもらうから」
ミカもまた、ミラの排除をスクワッドへの復讐の次、あるいは同等の優先順位として再認識する。
「私もモテるようになったなぁ」と内心で軽口を溢しつつ、戦意を漲らせるミカを真正面から見据える。
そして、ミカの注意をさらに自分へと引き付けるために、とどめの台詞を吐いた。
「かかってきな、聖園ミカ。私は、あなたの敵だ」
「そっか・・・それなら、私も容赦しないから」
ミラルーツvsミラバルカン ROUND2 FIGHT!