キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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現在モンハンは来年発売のワイルズで盛り上がっている中、自分はハードがなくて出来ないのでサンブレイクにこもりつつダブルクロスに回帰することにしました。
なんか思い切り時代から逆行してんな・・・。


アリウス編・12

「こっちだ」

 

サオリの案内で進むことしばらく、裏路地から開けた場所に出ると一際大きな建物が視界に入った。

途中で見てきたどの建物よりも大きく古びたそれは、荘厳であると同時に馴染み深い形状をしていた。

 

「ここがアリウス分校の、昔の校舎・・・」

「長いこと使われてない、って割に原型は残ってるんだ」

 

一目見てそれが数百年前から存在しているとわかるほどに老朽化しているが、かつて学舎として機能していたときの光景が目に浮かぶほど原型を留めていた。

何より、放っている気配は廃墟より冷えきっているにも関わらず、存在感は廃屋や廃ビルとは比較にならない。

 

「中に入ったのは初めてです・・・」

「そうだね。ここは廃墟というより、もはや遺跡に近いところだから」

「あぁ、なんか納得」

 

ミサキの言葉で、ミラは納得感を覚えた。

たしかに、年代で言えばミサキの言うように遺跡と言うべきだろう。

例えるなら、生物の骨と化石の違いだろうか。同じ死骸だとしても、年月の差がガラッと印象を変えさせる。

 

「昔はここでアリウス生が勉強していたのでしょうか・・・ど、どんなことを学んでいたんでしょう?」

「う~ん、まともに機能してた可能性は低そうだけど・・・」

「どちらにしろ・・・それを覚えている人は、もういないだろうね」

「急ぐぞ・・・回廊は地下にある」

 

かつての光景を想像するヒヨリに、ミラとミサキが現実的な返答をする中、サオリが先を促したことで話を切り上げて旧校舎の中へと入っていった。

校内も見かけ通りかなりの広さを誇っているが、目的は地下回廊へと続く隠し通路であることから探索箇所を地下と一階に絞って調べ始めた。

 

「み、見つけました!こっちです!」

 

それが功を奏し、さほど時間もかからず地下回廊を見つけることができた。

ヒヨリの呼びかけを聞いて、先生たちもすぐに駆け付けた。

ミラが回廊を覗き込んでみると、旧校舎と同じく構造は丈夫なのかしっかり残っていた。

見える範囲の構造はそこまで入り組んでいないため、迷って出られなくなる可能性も低いだろう。

 

「そうか」

「・・・待って」

 

いよいよアツコが手の届きそうなところまで近づいたことでさっそく先に進もうとするサオリだったが、ミサキがそれを引き止めた。

 

「リーダーの言葉通り、ここがバシリカまで一直線に繋がっている通路なら・・・この地形は危ない」

「まぁ、待ち伏せされたら面倒なやつだね、これ」

 

サオリたちの狙いはベアトリーチェにはすでにバレているため、伏兵を用意する可能性は非常に高い。

回廊とはいえ柱などの遮蔽物もそれなりに多いため、潜伏場所には事欠かないだろう。

とはいえ、サオリもそれを想定していないわけではない。

 

「待ち伏せの可能性なら私も考えている。だが、むしろ一直線なら・・・」

「いや、聖園ミカの話」

 

だが、ミサキが言及したのはベアトリーチェではなくミカについてだった。

たしかにミカはミラとの戦闘で少なからずダメージを受けたが、それでも走って逃げれる程度には余力を残していた。

あの時のミカと同等、あるいはそれ以上のダメージを受けたミラがすでに回復していることを考えれば、ミカもまた再度襲撃ができるくらい回復していてもおかしくないだろう。

 

「私が彼女ならどうするか、考えたの。彼女にとって一番の障害はたぶん、先生とミラの存在。ミカと互角以上に戦えるミラは言わずもがな、先生は怪我をさせたくもないし、指揮も厄介だろうから。ならきっと・・・」

 

ミサキが言葉を続けようとしたところで、不意に足元が揺れ始めた。

地震かと考えるが、揺れているのは地面というよりは建物全体のようだった。

 

「これは・・・」

「き、気を付けてください、先生!後ろから柱が・・・!」

 

後ろを振り向けば、ヒヨリの警告通り建物を支えていた巨大な柱が先生たちに向かって倒れているところだった。

それを認識したミラは、声を出す間も惜しんで先生の服を掴んで階段側に向かって引き寄せる。

ミサキとヒヨリは反射的に先生の方へと駆け出しているため問題ないが、サオリはミサキが忠告と同時に階段から引き離したこともあって反対側に飛び出し取り残されそうになっている。

先生とサオリ、どちらの側に残るか。

 

「ちっ・・・!」

 

傷が完治していない上に階段の方に重心が寄っている状態でサオリの方に行くのは難しいと判断したミラは、舌打ちしながら自分も先生たちの方へと転がり込んだ。

 

「先生、大丈夫?」

「うん、ミラとミサキのおかげで、何とか・・・」

 

埃を払って立ち上がりつつ様子を確認すると、先生がミサキに抱きとめられているところだった。

咄嗟のことだったとはいえ、つい力を入れすぎてしまって先生が転びそうになってしまいそうになったのを、ミサキが後から追いついて支えたのだろう。

 

「よ、良かったです・・・急に柱が壊れるなんて、いったい・・・」

「考えるかぎり、元凶は一人くらいしか考えられないけどね」

 

厳密に言えば候補は二人いるのだが、柱の倒壊が先生を巻き込まないようなタイミングと位置で起こっており、さらに今の状況が目論み通りなのだとすらば、犯人は一人しかいない。

 

「やられた・・・サオリが分断された」

「っ、そ、そう言えばリーダーがいません!?」

「まさか、柱の反対側に?リーダー、怪我は?」

『あぁ、大丈夫だ』

 

ミサキが柱の向こうに声をかけると、反対側から返事が返ってきた。

サオリの方も上手く避けたのか、どこか怪我をしている様子はなさそうだった。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいね、リーダー!柱をどかして・・・」

「いや、離れた方がいい」

 

どうにかサオリを助けに行こうと柱に近づこうとするヒヨリを、ミラが肩を掴んで止めた。

「なんでですか!?」とヒヨリが反論するよりも先に、新たな振動と共に次々と柱が倒れこんできた。

 

「あ、ああっ、まだ終わらないんですか!?もっと倒れてくるっ!?」

「もたもたしない!急ぐよ!」

 

これ以上ここにいるのは危ないと判断したミラは、ヒヨリの首根っこを掴んでさらに奥へと退避していった。

そうして振動と柱の倒壊が治まった頃には、完全にサオリと分断されてしまった。

 

「ダメだ・・・完全に塞がれてる」

「この量を無理やり、ってのは難しいかな。私たちにしろ向こう側にしろ、安全を保証できない」

 

瓦礫を退かすにしても他がさらに倒壊する恐れがあり、瓦礫を吹き飛ばすとなると破片のせいでサオリが負傷しかねない。

瓦礫と天井の間に隙間がないわけではないが、途中で生き埋めになろうものならさらに事態が悪化してしまう。

 

「か、完全に終わりですね!?リーダーは大丈夫なんですか!?」

「微かだけど足音が離れるのが聞こえたから、瓦礫の下敷きになってることはないはず」

「リーダー、聞こえる?そっちに戻る道が塞がってないなら、合流地点を探すよ」

『・・・いや、それは厳しそうだ』

 

構造が不明で時間に余裕がないとはいえ、なぜ諦めたような声音で合流を断念するのか。

その答えは、サオリの声と同じ柱の向こう側からもたらされた。

 

『良かった!暁ミラがいるとはいえ、先生が巻き込まれるかもって思って、威力を下げたんだけどさ。それでも不安だったから』

「! やっぱり、聖園ミカか・・・!」

 

状況から犯人は予測できていた。

だが、まさかここまでサオリだけに執着するとまでは思っていなかった。

あの戦いで少しでも肩代わりできればと思ったが、どうやら足りなかったらしい。

 

「ミカ!やめて!!」

『・・・ごめんね、先生。それはできないよ』

 

先生が必死に呼びかけるが、ミカの意志は固い。

最悪に近い状況になってきたことで余裕がなくなってきたのを感じ始めたミラは、ミサキに小声で尋ねかけた。

 

「日の出まで、あとどれくらい?」

「・・・1時間、ってところかな」

 

1時間。長いように聞こえて、実際はかなり短い。

ベアトリーチェが行う儀式がどういう類かはわからないが、生贄を使う以上のんびりはできないだろう。

 

『来るな!先生!』

「・・・」

「!?」

 

そんなことを考えていると、柱の向こうからサオリが大きく声を上げた。

増援を拒むのは、おそらくミラやミサキと同じことを考えていたからだろう。

 

『時間がない・・・そのままアツコのところに行ってくれ!

・・・姫を、頼む』

「り、リーダー・・・!」

「・・・!!」

 

最後の頼みの言葉を最後に、サオリから言葉が返ってこなくなった。

おそらく、自身の全霊をもってミカと戦うつもりなのだろう。

どうすべきか迷う先生に、ミサキが諭すように口を開いた。

 

「・・・リーダーの言う通りだよ。あるのかもわからない道を探す時間はない。それに・・・もし道を見つけたとしても、手遅れだよ」

 

少なくとも、見える範囲に横道の類はない。

避難経路を兼ねた回廊なら他に繋がる道もあるかもしれないが、あったところでそれが旧校舎に繋がっている確証もなく、むしろアツコの救出が間に合わなくなる可能性が高くなってしまう。

それに何より、サオリがどれだけの手段を用意していて、ミカに多少なりともダメージと疲労が残っているにしても、長くはもたないだろう。

 

「先生、どうする?」

「・・・・・・」

 

ミラの最後の確認に、先生は僅かに考え込む。

自分は、何をするべきか。

言われるまでもなく、先生としての務めを果たすだけだ。

 

「・・・行こう」

 

覚悟を決めた先生は、ミラたちを連れて回廊の奥へと進んでいった。

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