キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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セイア実装おめでとう!
散々擦られ続けていたとはいえ、前話で出させてからのこの発表は縁起がいいですね。
声もピッタリでいいんですけど、それはそれとしてずっとユニちゃんボイスで再生されていた影響で少しだけ違和感を感じてしまうのはもう病気ですかね・・・?

若干のネタバレというか注意事項ですが、最終編のシャーレ奪還作戦はほとんどすっ飛ばします。
具体的に言うと、次話でもう虚妄のサンクトゥム攻略戦に半分くらい突入します。
本編部分をいくらか端折って垂れ流しにしようかとも思ったんですが、それをやるには長い上に切り取るのに良いタイミングが少なかったので・・・。


最終編・2

「ペロロジラ・・・実物を見たかった・・・」

 

とある日、トリニティにてアズサは肩を落としながらとぼとぼと帰路についていた。

きっかけは、アズサがペロロジラの情報を入手したところから始まった。

ペロロジラはモモフレンズのキャラクターであるペロロのバリエーションの一つなのだが、運送中に貨物船が沈んでしまったことで姿を消した幻のキャラクターだった。

そのため、1000分の1スケールでも極めて稀少であり一目見るためにハナコとコハルも巻き込んで噂の持ち主のところに突撃した。

だが、実際にあったのはペロロサウルスというペロロジラとは似て非なるもの(ヒフミからすればまったくの別物)だった。

 

「元気を出してください、アズサちゃん・・・たとえペロロジラに会えなくても、私たちの心の中に生きています」

「うふふ・・・元気を出してください、二人とも」

 

落ち込んでいるアズサをヒフミとハナコが慰めている道中では、聴聞会におけるミカの処遇に異議を唱えるデモが発生していたり、巻き込まれた放課後スイーツ部が暴れたり、それを顔を青くしたイチカが対処したりもしたが、いたっていつも通りの日常であった。

 

 

 

「ふぅ・・・」

 

ゲヘナ学園、風紀委員会本部で書類と格闘していたヒナは、区切りをつけるためにペンを置いてコーヒーを口に含んだ。

今日もまた問題児の騒動やら万魔殿から(というより議長のマコト)の嫌がらせやらがあったが、それはいつものことだ。

一息吐きながら、ヒナは仕事のものとは別の資料に目を向ける。

 

(ミラ・・・)

 

それは、情報部から寄せられたミラの動向に関する情報だった。

エデン条約の調印式でようやくミラをまともに捕捉した情報部は、最低限の少人数ながらもミラの動向を追跡した。

何度か見失いそうになりながらも追跡を続けていたが、ついにミラの姿を見失ってしまった。

その最後の目撃地点は、トリニティの郊外の中でも特に寂れている一角。

そこではアリウスの生徒も度々目撃されており、不確定だがその中にはスクワッドの姿もあったという。

ミラとアリウスが邂逅したという情報はないが、何もなかったと考えるのは楽観が過ぎるだろう。

トリニティのティーパーティーが正義実現委員会、救護騎士団、シスターフッドを連れてアリウスが潜伏しているとされているカタコンベに乗り込んだのであれば尚更。

とはいえ、ミラの身に何かあったのではという不安はなく、むしろアリウスで何かやらかしていないか心配になった。

動機はともかく、実力的には単騎で壊滅させてもおかしくはない。

一応、スクワッドの行方は分からないもののカタコンベからティーパーティーと共に先生も出てきたということから、そこまで悪いことにはなっていないのだろう。おそらく。

 

(ミラ・・・今、どこで何をしているの?)

 

毎日のように考えている疑問を頭に浮かべながら、ヒナはそれを振り払うように作業を再開しようとした。

 

「委員長、少しよろしいでしょうか」

 

その直前、困惑気味の表情を浮かべているアコがヒナに話しかけた。

アコがこのような表情をしている時は、何かしら面倒なことが起きたということだろう。

 

「どうかしたの?」

「先ほど、連邦生徒会がキヴォトス非常対策委員会の発足を知らせました」

 

アコの報告を聞いて、ヒナは思わず動きを止めた。

非常対策委員会とは、キヴォトス全体に甚大な被害をもたらす現象、あるいは可能性を発見した際に発足されるものだ。

 

「現在、各学園のトップが緊急召集を受けており、万魔殿も移動の準備をしています。私たちに召集はかかっていませんが・・・」

「・・・念のため、風紀委員会の全メンバーを警戒体勢に入らせて」

 

ヒナの出した指示に、アコはほんの僅かにだが眉を潜めた。

 

「よろしいのですか?」

「正直、私も今の連邦生徒会はあまり信用していない。代行の七神リンは優秀で真面目だけど、今回の緊急招集をまとめれるとは思えない」

 

人格面で言えば、連邦生徒会の中でも頼りになる人物なのは間違いない。

だが、能力面ではかつて“超人”と言われた連邦生徒会長と比べて劣るのは否めないし、何よりそんなリンが代行を務めていることに不満を持っている生徒も少なくないのだ。

それこそ、『七神リンは代行としての権力を不正に乱用している』という噂が流れている程度には。

少なくとも、リンだけで今回の非常対策委員会をまとめることはできないだろう。

それでも、リンの要請を無視することができないのは、

 

「だけど、先生がいるなら話は変わる」

「それは、そうですね」

 

あの生徒のためなら何でもする先生が、キヴォトスの危機と聞いて何もしないはずがない。

先生が動くのであれば、キヴォトスの主要学園同士が手を取り合って協力することも可能だろう。

少なくとも、自分達は先生の要請があれば迷うことなく動くつもりだ。

だが、それはそれとして気になることもある。

 

(ミラ・・・)

 

果たして、ミラはこのことを知っているのか。あるいは、すでに核心に迫る何かを把握しているのか。

そんなことを考えながら、ヒナは視線を窓の外に向けてどこかにいるのだろうミラに想いを馳せた。

 

 

 

「・・・先輩・・・リン先輩・・・大丈夫ですか?」

 

非常対策委員会の発足が発表される少し前、リンは連邦生徒会の執務室でうたた寝していたところをアユムに起こされた。

懐かしい夢を見ていたような気もするが、仕事時間だからと意識を切り替える。

 

「アユム?・・・すみません、少し眠っておりました」

「お疲れの所すみません。至急確認をお願いしたい事項が・・・」

「大丈夫です。行きましょう」

 

リンはアユムの案内でデータベースに向かうと、そこでは桃毛の少女のモモカがお菓子を食べながら待っていた。

 

「お、リン先輩にアユム先輩、お疲れ~」

「モモカちゃん・・・例のあれを・・・」

「はーい、こっちこっち」

 

アユムに促され、モモカがコンソールを操作してとある画面を映し出す。

 

「これ、2時間前に検出したデータ」

 

画面には6つの赤いサークルが表示されており、それは異常なエネルギーの検出を表していた。

 

「キヴォトス全域で、超高濃度のエネルギー体がいくつか観測されたの。場所は・・・アビドス砂漠、D.U.(連邦生徒会管理区域)近郊の廃墟化した遊園地、ミレニアム郊外の閉鎖地域、トリニティとゲヘナの境界付近、ミレニアム近郊の新しい都市と・・・あと、()()()()()()()()()()()()()()

 

機器が正常に機能しているのなら、今まさにこの場で異常が起こっているということになる。

だが、サンクトゥムタワーの内部はもちろん、外のどこを見てもこれといって変わったところは確認できない。

つまり、普通に考えれば機材の誤作動ということになる。

だが、リンはそれを気のせいで片付けるつもりはなかった。

 

「・・・実際に確認するしかなさそうですね。それと、各自治区の生徒会代表を緊急招集します」

「・・・!?」

「えっ?」

 

リンの指示に、アユムとモモカはそれぞれ驚きを露にする。

実態のないデータにそこまでするなど、正気とは思えない。

だが、リンは自身が周囲からどのように思われているか自覚した上で、すでな徹底的に対処することを決断していた。

 

「連邦生徒会長代行の権限により、緊急プロトコルを発動。キヴォトス非常対策委員会を発足します」

「非常対策委員会?・・・そ、そこまでする?ただの機械の故障かもしれないよ?」

「・・・それならそれでいいのです。杞憂で済みますから」

 

リンが気にしているのは、トリニティから戻ってきた先生との会話の内容だった。

先生が言うには、予知夢の能力を持っているセイアがキヴォトスの終焉を見たのだという。

その時は眉唾物と対して気に留めなかったが、現状を目の当たりにして本能が警鐘を鳴らし続けていた。

とれる手段はすべて使う必要があると、リンはアユムにある人物の所在を尋ねた。

 

「それと、暁ミラさんの行方はつかめていますか?」

「えっと、トリニティ郊外での目撃情報が最後で、それ以降はわかりません」

「そうですか・・・彼女の力を借りることができれば心強かったですが、いないならいないで仕方ありませんね」

 

戦力としても抑止力としても、ミラの存在は大きい。

本人が受け入れるかはともかく、今回の問題解決の旗頭としてはこれ以上ない。

故に存在をまともに確認できたエデン条約の調印式から少人数で追跡させていたのだが、それも無駄に終わってしまったようだ。

 

「ねぇ、その暁ミラってそんなに強いの?たしかにエデン条約の調印式の時はすごいことになってたけど」

「連邦生徒会長も一目置いていた方です。単純な武力なら間違いなくキヴォトスで最強。一人で数百人、あるいは1000人に匹敵する戦力の持ち主、と言えば分かりやすいでしょうか」

「いや、分かる分からない以前に分かりたくないというか・・・」

 

およそ現実的とは思えない表現に、モモカは思わず顔をひきつらせる。

それにかまわず、リンはテキパキと非常対策委員会に向けて準備を始めた。

 

 

 

「失礼、少々遅れました・・・それでは、会議を始めましょうか」

 

ゲマトリアの本拠地、その会議室にて定例会議のために集まった4人はさっそく議題について話し始めた。

最初に黒服が取り上げたのは、“方舟”の観測だった。

方舟とは、かつて“名もなき神々”とそれを信奉する“司祭”によって残された遺産の一つであり、詳細は不明ながらも未知の技術が使われているロストテクノロジーだった。

ただし、()()という表現が使われたように実物を発見したわけではなく、あくまでデータとして観測されたにすぎない。

さらには概念的な要素も組み込まれているため、本来であればそもそも観測すらできない代物のはずだった。

それでも、その存在を確認してしまったのは、それに足るきっかけがあったからに他ならなかった。

 

「“色彩”がここを発見してしまった。ベアトリーチェ、貴下が行った儀式のせいでな」

 

マエストロが放った鋭い指摘が、ベアトリーチェに突き刺さる。

具体的な関係性が分からないにしても、方舟を観測するに足るイレギュラーなどそれしかない。

怒りをぶつけるマエストロにベアトリーチェは冷ややかな視線を返し、仲裁に入ろうとするゴルコンダにすら攻撃的な姿勢を緩めようとしない。

 

「皆さん、大人になりましょう。ベアトリーチェは色彩を利用しようとしただけであって、キヴォトスに呼び寄せる予定ではなかったはずです。夢の中で起きた出来事である以上、まだ色彩がこちらを発見したと断定できません」

「えぇ、すべてはシャーレの先生が現れてから起こったこと。あの存在がすべての元凶であるというのは、皆さんもよくご存知でしょう?」

 

さすがに見かねた黒服がベアトリーチェを擁護するが、ベアトリーチェの矛先が先生に向いたことで場の空気が僅かに変化する。

 

「・・・マダム」

「何度も申し上げた通り、あの者は一刻も早く始末するべきでした」

 

黒服とマエストロが微妙な沈黙を返し、諫めようとするゴルコンダの言葉に耳を傾けずベアトリーチェは断言する。

だが、先生のことを認めている身としてはこのまま引き下がることはできなかった。

 

「・・・ここが学園都市という概念で存在する限り、先生の存在は私たちの存在を凌駕して当然です。それこそがこの物語のジャンル、つまりこの世界のルール()です。私たちがこの世界に留まる限り、ルールに逆らうことなど・・・」

「物語の作法など、どうでも良いでしょうに!!」

 

ゴルコンダの指摘に、ベアトリーチェが耐えかねたように声を荒立てる。

自分が重視しているものをないがしろに扱われてゴルコンダも徐々に不快感を募らせるが、ベアトリーチェにはそんなことは関係なかった。

 

「分かりました。私が、皆さんに解を示して差し上げます・・・すべての問題を一度に解決することができる、究極の解を」

 

そして、ベアトリーチェは自らが得た答え、それがもたらした結果を告げた。

 

「“色彩”はすでに此処を発見しております。えぇ、より正確に申し上げるのであれば、私が伝えました」

 

ベアトリーチェの言葉に、黒服たちは大きな衝撃を受ける。

ただ色彩がキヴォトスに向かっているというだけなら、最悪の事態が起こってしまったと割りきることもできただろう。

だが、それが身内の裏切りに等しい行為によって引き起こされたとなると話は変わってくる。

なにせ、ベアトリーチェが寝返った相手はすべてを無に還す災害なのだ。

 

「“色彩”は今、キヴォトスに向かっております」

「・・・“色彩”がこちらに向かっている・・・?」

 

茫然と呟くマエストロの言葉を、ベアトリーチェは当然のように肯定する。

 

「えぇ。そうしたら、“シャーレ”も“名もなき神”も“箱舟”もすべて消え失せる。いかがでしょうか?これが最も確実な方法かと」

「その場合、“色彩”はこのキヴォトスをも消し去るだろうな」

「・・・マダムは、私たちの探求を台無しにするおつもりで?」

 

“色彩”の襲来によって訪れる結末を想像したマエストロはため息を吐き、ゴルコンダは静かにベアトリーチェを問い詰める。

今までの成果をすべて無駄にする暴挙だと指摘されて、それでもなおベアトリーチェは少しも悪びれる様子を見せなかった。

 

「えぇ、探求など、どうなっても構いません。私が求めていたものは、別のものだと言うことに気が付いたのです。

私の求める偉大なる存在に至るためには、世界の滅亡と、創世の権限を所有しなくては・・・そう、『破壊』し、『想像』する絶対者になるのです。

これこそが、唯一の方策・・・そう、それこそが・・・あの先生を消し去る方法・・・」

「何という体たらく。理性を失ったか、ベアトリーチェ」

「・・・そうですか。マダム、あなたは自分の憎悪に飲み込まれてしまったのですね・・・とても残念です。ゲマトリアは探求者であり求道者・・・狂気こそ、我々が打破すべき宿敵なのですが・・・ベアトリーチェ、あなたはゲマトリアの資格を失いました」

 

まるで陶酔したかのように語るベアトリーチェに、マエストロは呆れ混じりに唾棄し、黒服は失望しながらも淡々と決定事項を口にした。

その余裕とも受け取れる態度に、ベアトリーチェは再び苛立ちを露にする。

 

「口を慎みなさい・・・私には“色彩”の力が宿っているのですよ?」

「そのようですね。ゴルコンダ、彼女を送り届けてください」

「はい・・・楽しい時間でしたよ、マダム」

 

ベアトリーチェの脅しを軽く流し、黒服に促されたゴルコンダは別れの挨拶を告げて手元のスイッチを押した。

次の瞬間、ベアトリーチェの傍の円卓の下から光の爆発が襲いかかった。

 

「くっ、ぐぁぁあああああっ!?」

「ふむ、ヘイロー破壊の爆弾より確実なようですね」

「えぇ、神秘は解析ができないからこそ神秘ですが、彼女は分かりやすい存在ですので」

 

ベアトリーチェの儀式の内容を知った黒服たちは、万が一に備えてヘイロー破壊爆弾の改良型など対策を準備していた。

一応は同じ組織に属する者として情けをかける選択肢もなくはなかったが、ゲマトリアの理念に反する選択をしキヴォトスの滅亡を促したのであれば是非もない。

 

「貴下とは異なる世界観を持っているがゆえに、何かと衝突が多かったな。だが、貴下の野望には敬意を露わそう、ベアトリーチェ」

「・・・・・・!!」

 

マエストロの手向けの言葉にベアトリーチェは何かを言い返そうとしたが、ほとんど崩壊しかかった体では言葉を発することも叶わず、ついに虚空へと消え去ってしまった。

 

「さて、空いてしまった席を埋める人員については、後ほど議論するといたしましょう。ひとまずは次の議題を・・・」

 

ベアトリーチェが消えたことで、気を取り直して会議を再開しようとしたところで、コツコツと足音が鳴り響いた。

だが、それはおかしい。

この本拠地はゲマトリアのみが知る場所であり、出入りできるのは一人の例外と消滅したベアトリーチェを除けばこの場にいる3人のみ。

ならば、ここに近づいているのはいったい誰なのか。

 

「ようやく会えたね、ゲマトリア」

 

巨大な赤い拳銃“アブソリュート”を両手に持つ白い少女、ミラが無慈悲な笑みを浮かべながら告げた。

 

「初めまして、なんて言う間柄でもないし・・・何か言い残すことはある?」

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