キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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ウマ娘の新シナリオに興奮しながらオルフェ実装を待ちわびているのが自分です。
推定とはいえ、セントライトとスピードシンボリ、ハイセイコーのウマ娘化は熱すぎません?
いつかシンザンも来るんですかね。


最終編・4

現在、キヴォトスの空が赤く染まっていた。

今から数時間前、各学園のトップを招集して非常対策委員会を開いたリンだったが、結果的に会議は上手くいかなかった。

というのも、会議をまとめてくれるだろうと当てにしていた先生が音信不通となったのだ。

その元凶はカイザーPMCの特殊部隊によるもので、先生は拘束されシャーレのビルはおろかサンクトゥムタワーすら占領された。

一時はサンクトゥムタワーを占拠したカイザーによって行政制御権を奪われたが、ヴァルキューレ警察学校の生活安全局と公安局長のカンナ、SRT特殊学園のRABBIT小隊の助力によってシャーレを奪還、その地下に幽閉されたリンを救出し、カイザーによって公布されていた戒厳令を解除することに成功した。

だがその直後、前触れもなく空が赤く染まり、キヴォトスの各地に黒いサンクトゥムタワーのような構造物が上空から飛来、その一つはサンクトゥムタワーを押し潰した。

 

「先生よ・・・これは、今までのような物語ですらない。脈絡も、構成も、必然性もなくなり、果てには意味を失い、力が暴れ回るだけの、理解不能で不条理な世界へと変貌した・・・学園と青春の物語は、幕を下ろしたのだ」

 

突然の事態に驚く先生の前に現れたのは、“フランシス”を名乗るゴルコンダが変質した男。

今まで先生であったからこそ通用した物語は、これから先は無意味であるという現実を突きつける。

 

「そんなことはどうでもいい。どんなジャンルであっても構わない。どんな未来だろうと、私たちは乗り越えていくのだから」

 

だが、先生はフランシスの言葉に一切臆することなく、突然現れた災厄に立ち向かう覚悟を示した。

 

「・・・であれば、それを見守るとしよう。先生、いや、()()()よ。絶望を、破局を迎え・・・そうして、結末へと走り出すエンディングを!」

 

それを受けたフランシスは、先生の言葉を否定せず、その意志に敬意を表してから姿を消した。

それを見届けた先生は、シッテムの箱のOSであるアロナに話しかける。

 

「アロナ、みんなに連絡をとってほしい」

『あっ、はい!“みんな”とは、えっと、つまり・・・誰に連絡を?』

 

アロナの問いに、先生は笑みを浮かべて答えた。

 

()()()に、お願い」

 

こうして、突如現れた絶望に立ち向かうべく、先生は準備を始めた。

 

 

* * *

 

 

アロナによって先生と連絡先を交換している生徒()()に連絡を送った後、先生はシャーレの屋上へと向かった。

その行動に理由があるわけではなく、強いて言うなら直感のようなものが、そこに行くべきだと告げていた。

そして、それは正解であり、予想を超えるものもあった。

 

「クックックッ・・・お見苦しい姿で失礼します、先生」

「先生、久しぶり・・・ってほどじゃないか。アリウス以来だし」

 

屋上には、黒服とミラが揃って座って待っていた。

だが、2人共ボロボロで立っているのもやっとといった風体だった。

 

「黒服・・・と、ミラ!?その怪我は!?」

「ちょっとしくじっちゃってね。あっ、隣のこいつに何かされたわけじゃないから。まぁ、私としてはそっちの方が話が早かったんだけど」

「本来であれば敵対していたのですが、やむにやまれぬ事情がありまして・・・それを話すために、共にここに参りました」

 

そう前置きして、黒服は色彩の襲来とゲマトリアの壊滅、反転した『狼の神』の襲撃を明かした。

 

「本来なら災害の括りに収まっていたはずだったけど、今回のこれは明らかにその範疇を越えている。まず間違いなく、私たちが想定していたよりも苦しい状況になるよ。ていうか、すでになってる。こいつらが用意していたもの根こそぎ奪われたし」

「それに関しては言い訳のしようもありませんが・・・それ以外にもいろいろと用意していたようです。あの黒い構造物も、その一つ。あれは反転したサンクトゥムタワーの一種、太古の昔に“名もなき神”が築き上げた技術の一つです。あれが“色彩”の光を世界中に伝播させ、キヴォトスに存在する全ての神秘を恐怖に反転させることでしょう」

「なら、私たちはそれを止めるだけだよ」

 

元より、セイアからキヴォトスの終焉に関する予知夢の話は聞いていた。

その時からそんな未来を迎えさせないという決意は固めていたし、それが目に見えるところまで迫っているというのなら今さら考えるまでもない。

躊躇いなく自身の意思を示した先生にミラは笑みを浮かべ、黒服も先生がそのような人物であったと改めて納得しながら現状の説明を再開した。

 

「・・・ミラさんが仰ったように、色彩は我々の研究成果の全てを奪い去りました。これらを手にした“色彩の嚮導者”は・・・」

「“色彩の嚮導者”?」

「えぇ。色彩の意思を代弁する存在であり、計画を遂行する実行者。その名を“プレナパテス”。これから、ヤツと対面することになるでしょう」

「正直、全てが未知数。私でも、ここから全部巻き返せるビジョンが浮かばないんだけど・・・」

 

黒服が話している間でも、キヴォトスの各地は混乱に包まれている。

色彩がもたらす被害の規模を考えれば、まずはそれを治めなければ話が進まない。

そして、立ち向かうにしても全員が一丸とならなければいけないだろう。

お世辞にも仲良しとは言えない関係の学園が多い中、そんなことができるのか。

 

「大丈夫。ここからは大人(シャーレ)に任せて」

 

そんな初めてかもしれないミラの弱音を聞いて、先生は勇気づけるように笑みを浮かべながら懐から大人のカードを取り出した。

幾度も窮地を切り抜けた切り札(ジョーカー)を見て、ミラも釣られたように笑みを浮かべる。

だが、それに対し黒服の反応はある種の憂いを含んでいた。

 

「・・・一つ、忠告をしましょう。そのカードを乱用すれば、あなたは私たちと同じ結末を迎えることになりますよ、先生」

 

いつになく真剣な声音で警告した黒服は、その後すぐにいつもの含み笑いを零して姿を消した。

事態が事態なだけに仕方のないことではあるが、ようやく宿敵である黒服がいなくなって肩の力を抜いたミラは痛む体に鞭を打って立ち上がった。

 

「さて、救急セットと横になれる場所を貸してくれるとありがたいんだけど・・・」

「うん、ミラはゆっくり休んでて」

「それと、作戦会議は私も参加するよ。私もある程度は事情を把握してるし、情報は少しでも多い方がいいでしょ」

「・・・わかった。でも無理はしないでね」

「わかってる」

 

ひとまず先生はやらなければいけないことをするため、ビルの中へと走って行った。

ミラもまた先生から使っていいと言われた仮眠室へと向かい、服を脱いで慣れたように応急処置を始めながら通信機を起動した。

 

「さーて、通信越しだけど今は大丈夫?」

『その声は・・・』

「ご存知かは知らないけど、暁ミラだよ。そっちは、リンちゃんだっけ?」

『・・・一応、元連邦生徒会長代行の七神リンではありますが、ちゃん付けはやめてください、暁ミラさん』

 

互いに名前しか知らないだけの相手にまでちゃん付けで呼ばれたことにリンは盛大に溜め息を吐きたくなったが、相手が状況に対して必須レベルの人材なのでどうにか飲み込んだ。

 

『今はどちらに?』

「シャーレの仮眠室だよ。ただ、今はちょっと人前に出れる状態じゃなくてね。後で作戦会議に参加するけどいいよね?」

『それはそれで一悶着起きそうですが・・・今は少しでも情報が欲しいので、よろしくお願いします。作戦会議の場所と開始時間は・・・』

 

場所と時間を伝えたリンは、会議の準備に忙しいのかさっさと通信を切った。

実際、リンが伝えた時間は余裕があるとは言い難いため、本当に時間がないのだろう。

ミラもさっさと処置を終えると、少しだけ横になって体を休めてから指定された会議室へと向かった。

 

「うげっ!?暁ミラさん・・・!」

「あら、ミラさん」

「ミラさん!お久しぶりです!」

「暁ミラ、来てたんだ・・・」

「あっ!あなた、先生が赴任してきた時の!」

 

中に入ると、アコ、ハナコ、アヤネ、カヨコ、ユウカがそれぞれ驚きの表情を見せた。

ミラの方も、この場にいる全員が顔見知りだったため、緊張していたわけではないが思ったより気が抜けそうなことに安堵した。

 

「あっはは。サプライズ、ってわけじゃないけど、私も参戦するよ。まぁ、それはさておいて、さっさと始めよっか。リンちゃん、お願い」

「ですから、ちゃん付けはやめてくださいと・・・いえ、今はもういいです。これから作戦会議を始めます」

 

咳払いをしつつ、リンは作戦会議を始めた。

作戦内容は、現在キヴォトスの各地に現れた6本の黒い塔、“虚妄のサンクトゥム”と命名したそれらを2週間以内に破壊すること。

それが出来なければキヴォトスは滅びるとリンから告げられると少なからず動揺が広がるが、ある程度分かっていたミラは今起きていることについて話し始めた。

 

「今起きている現象の元凶の名前は“色彩”。まぁざっくり言うと、私たちを別の存在に変質させて取り込もうとする災害の類い。ゲヘナとトリニティ、両方の古書館にある預言書にその存在が示唆されていた、人々を狂気に陥れる光だね」

『ミラの言った通りだ。シスターフッドが所有する書物にも同じ内容が記載されており、何より私自身が体験した話でもあると証言しよう』

「色彩?・・・狂気に陥れる?・・・いったい、何の話?」

『ユウカちゃん。信じがたいのは分かりますが、これらは全て事実です』

 

疑問符を浮かべるユウカに通信に割って入ってきたのは、ユウカの同僚であるノアだった。

現在、ミレニアムでも技術屋集団であるエンジニア部と非公認ハッカー集団であるヴェリタスが中心となって“虚妄のサンクトゥム”を解析していた。

判明していることは少ないものの、黒い塔から人の精神を狂わせる波形が検出されていること、それらのエネルギーが臨界に達するのがおよそ300時間後であることがデータから推測されていた。

未だ情報が不足しているため確たることは言えないが、2週間以内に“虚妄のサンクトゥム”を破壊しなくてはならないという点については確定事項と言ってもいいだろう。

 

「まぁ、あくまで精神波は効果の一端だろうね。とはいえ、計6カ所に存在する虚妄のサンクトゥム、これを全部破壊すればひとまず解決ってところかな。まぁ、2週間って時間制限込みでも簡単にはいかなさそうだけど」

『えぇ、ミラさんが仰る通りです』

 

ミラの言葉に同調するように、新たな声が通信に入った。

新たな乱入者に驚きの声を挙げたのはユウカだった。

 

「ヒマリ先輩・・・!?」

『ふふふっ、えぇ・・・ミレニアムの超天才病弱美少女ハッカー、満を持しての登場です♪』

「・・・天才?」

「病弱美少女・・・?」

(あぁ、自己肯定感が限界突破してるタイプね)

 

流れるように出てきた自賛にアコは死んだ目を浮かべ、ハナコも思わず困惑してしまう。

ミラは一応、方向性は違えど似たようなタイプに心当たりがないわけではないため、多少呆れる程度で済んでいた。

それはともかくとして、ヴェリタスの元部長で現在は特異現象捜査部に所属しているヒマリはすでに“虚妄のサンクトゥム”への干渉を試みていた。

だが、様子見程度とはいえそれらは全て守護者とも言える存在によって阻まれ失敗した。

守護者の存在は、“虚妄のサンクトゥム”1本につきおよそ1体。

アビドス砂漠には、デカグラマトン3番目の預言者、ビナー。

ミレニアム郊外の閉鎖地域の工場地帯には、デカグラマトン4番目の預言者、ケセド。

D.U.郊外の遊園地であるスランピアには、複製(ミメシス)されたアミューズドール、シロ&クロ。

トリニティとゲヘナの境界付近、カタコンベが存在するエリアには、聖徒の交わり、ヒエロニムス。

ミレニアム近郊の都市には、デカグラマトン8番目の預言者、ホド。

そして、D.U.は守護者こそ顕現していないものの、観測されているエネルギーは他5つと比較にならないほどの規模。

これらの存在が、“虚妄のサンクトゥム”の周囲を守っている。

 

(ビナーに、ヒエロニムス・・・他にもいろいろと、よくもまぁ・・・)

 

ミラが戦ったものもあるが、よくもこれだけの戦力を揃えたものだとミラは内心でゲマトリアの手腕に感心する。今となっては戦犯もいいところだが。

たしかに、これらすべてをぶつけられたらミラでも厳しかっただろう。色彩の手が加えられている現在の状態なら尚更。

だが、今はミラ一人だけではない。

先生の下に集まったあらゆる学園、生徒の力があればどうにかなるかもしれない。

 

「どちらにせよ、虚妄のサンクトゥム破壊の前に守護者の撃破が追加されただけ。やることは変わらないね」

「ミラさんに賛同するのもアレですが、確かにその通りですね。時間もないですから、すぐにでも準備を。6つのエリアを同時攻撃・・・連合作戦を想定して動きましょう」

「そうだね、時間も限られてるし」

「みんな一旦落ち着いてよ~。やる気があるのは分かったけどさ~ちょっと話聞いて?」

 

方針が定まったことでやる気を見せるゲヘナ組だが、モモカがそれに待ったをかけた。

たしかに目下の目標は「虚妄のサンクトゥムの破壊」だが、守護者以外の敵もキヴォトス各地に現れている。

これらの対処や住民の避難なども行わなければならないとなると、とてもではないが人手がいくらあっても足りない。

そこからさらに攻略の準備も並行して進めるとなると、圧倒的に足りない。

だが、そこは各学園の生徒会や治安維持組織が担当することになり、攻略準備も合同で始めることとなった。

結果として、それらすべての指揮を執ることになる先生の負担は計り知れないものになってしまったが、それもまた役目だと先生は気合いを入れ直す。

 

「それでは・・・これより、『虚妄のサンクトゥム』攻略作戦を始めます」

 

こうして、リンの号令の下、史上最大規模の作戦の準備が幕を上げた。

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