キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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今回は軽めです。
その分、次回は盛大に重くなる、かもです。


最終編・6

「第1サンクトゥムから第6サンクトゥムまで、全エリアのスタンバイを確認。再度、『虚妄のサンクトゥム攻略戦』の作戦概要を展開します」

 

攻略準備がすべて整ったところで、リンは再び今回の作戦概要を説明した。

目標は『虚妄のサンクトゥム』の破壊。敵の防衛ラインを撃破し6つの攻略ルートを確保しつつ、守護者を直接攻撃できる位置まで接近する。

その間、防衛部隊は色彩の影響下にある軍勢からキヴォトスを守らなければならない。そのため、攻略開始と同時に主要な学区に展開している防衛部隊は敵襲に備えることになる。

すべての学区の防衛と攻略ルートの確保が完了次第、守護者攻略のカウントダウンを開始し、カウントダウン終了と同時に攻撃を開始する。

そして、5体の守護者を撃破した後に、全戦力をD.U.に集結させ最後の虚妄のサンクトゥム攻略に臨む。

それが、今回の作戦だった。

 

「ここからは、シャーレの力が必要です・・・防衛及び攻撃、全ての戦闘の指揮を先生にお願いします・・・!」

「うわぁ・・・正直、体がいくつあっても足りなそうだけど・・・ま、この作戦は先生がいないと成り立たないからさ。よろしくね~」

「先生、何かご質問はありますか?」

「ううん、大丈夫。準備ありがとね」

 

これらすべてを指揮しなければならないというブラック極まりないワンオペ作業だが、それこそが自身の役目であり責務であると先生はすでに覚悟を決めている。

 

「いえ・・・まだ終わっていません。これからが正念場ですので」

 

準備は入念にしたが、作戦そのものが失敗してしまえば元も子もない。

そして、その作戦の成否は先生にもかかっている。

だからこそ、リン自身もできることはすべてやったし、これからもそのつもりでいる。

 

「それじゃあ、みんな・・・準備はいい?」

『『『『『『はい、先生!』』』』』』

 

先生の確認の言葉に、各地で展開している生徒たちが一斉に応える。

それを確認して、先生は作戦開始の号令を下した。

 

「うん・・・それじゃあ、行こっか」

 

ここに、キヴォトスの命運を懸けた史上最大の作戦が始まった。

 

 

 

「始まったみたいだね」

 

無線の内容を確認したミラは、視線を虚妄のサンクトゥムとその上空に向けた。

 

「さて、今のところこっちは変化なし。あるとしたら、守護者到達後か、撃破後か」

 

今のところ、これといった変化は見られなず、何かが起きるという予感もない。

だが、このまま何もないなんてことはないということだけは確信していた。

 

「なんにせよ、今は目の前の敵を片づけるところからか」

 

視線を下に向ければ、色彩の影響を受けていると思われるオートマトンや機械兵、複製(ミメシス)の軍勢がシャーレへと進軍していた。

 

「木っ端しかいないのは残念だけど、メインの前のゴミ掃除はちゃんとやっておかないとね」

『いえ、それには及びません』

 

準備運動とばかりに肩を回しつつ飛び降りようとするミラだったが、ハルナが通信でそれを止めた。

 

『あれの相手は私たちがします。ミラさんは本命に備えて体力を温存してください』

「あの程度は片手間で済むけど・・・ここはお言葉に甘えようかな。でも、視線は通ってるし援護はさせてもらうよ」

 

数が多いだけの木偶の相手はどうとも思わないが、飛び降りてからわざわざ登り直すのも面倒だし、負傷する可能性も0ではない。

それに、ハルナだけでなく戦車を操縦しているヒフミとアズサもいるのであれば、戦力としては十分だろう。

自分は敵集団に適当に赤雷を落とすだけでいい。

そう判断して、ミラはより見通しのいい場所へと飛び移る。

 

「ん?あれは・・・」

 

だからだろうか。

移動してから再び視線を同じ場所に戻すと、先ほどは見えなかった集団が視界に入った。

 

「回り続けるレールはやがて・・・正義の未来へとつながる!

 

無限回転寿司戦隊・カイテンジャー!参上!」

 

それは、赤・黒・ピンク・緑・黄のスーツを身にまとい、色に対応した皿の仮面をかぶり頭にモチーフとなる寿司を乗っけた変質者集団だった。

 

「はっはっはっ!世界に危機が訪れた今、我々が知らんぷりするわけにはいくまい!」

「ああ!今こそ我々カイテンジャーの出番だ!!」

「でもさ、これ本当の危機っぽくない?大丈夫?」

「レッド、本日の業務は特別手当が出ると認識しております。念のため、リマインドさせていただきます」

「ふん、そういうことなら仕方ない。尽力してやろう」

「行くぞ!!無限回転寿司戦隊・カイテンジャー、出撃!」

 

変質者集団は、何かを話したと思ったら何か変なポーズを決めて軍勢へと突っ込んでいった。

どこかシュールな光景にミラは思わず呆れるが、良くも悪くも特徴的な姿に見覚えがあった。

 

「あれってたしか、ヴァルキューレに指名手配くらってたテロリストだっけ?」

 

失踪時代、資金確保のために賞金稼ぎをしていた時に見たことがある容姿だった。

名前をカイテンジャー。大型兵器のデータや物資、資金などの強奪を繰り返している犯罪者集団だ。

正義の味方を自称しているものの、その内容は独善的で活動のために平気で犯罪行為に手を染めるという割とどうしようもない行為に走っている。

縁がなくてミラは遭遇したことはなかったが、まさかこんなところで目にするとは思わなかった。

 

「うーん、一応こっちの味方っぽいし、このまま放置でも・・・」

 

本質的には犯罪者だが、それを言うなら美食研究会も同じであり、敵対している様子がないのなら放っておいてもいいだろうと考えて、ふとあることに気が付いた。

今、D.U.の防衛を行っているメンバーは誰だったか。

自らの正義のためなら犯罪行為も厭わないカイテンジャー。

美食のためなら水族館を襲うし気に入らない店は爆破する美食研究会。

普通を自称しながら割とアウトローな一面を覗かせるヒフミとその親友でアリウス育ちのアズサ。

 

「あれ?もしかして、こっちでまともなのって私だけ?」

 

なお、実際はミラもまともか否かと問われたらまともではない部類に入る。

というより、戦闘の余波でまき散らす被害は普通にテロと大差ないレベルだ。

幸か不幸か、それを指摘する人物はいなかったが。

 

「まぁ、うん・・・いっか」

 

何となく考えたら負けな気がしたミラは、それ以上の思考をやめて支援攻撃に意識を切り替えることにした。

 

 

 

「はっはっはっはっ!こちらも無事に片付いたな!では、皆の衆!また機会があれば会いたいものだな!回り続けるレールはやがて・・・正義の未来へと繋がる!無限回転寿司戦隊・カイテンジャー!退場!」

「・・・なんていうか、微妙に締まらないな」

 

押し寄せてきた敵を返り討ちにした後、再びポーズを決めてから去っていったカイテンジャーを、ミラは何とも言えない表情で見送る。

「ツッコんだら負け」と脳内で繰り返していると、ハルナから通信がかかってきた。

 

『ミラさん、援護ありがとうございました』

「気にしなくていいよ。他に敵影は?」

『見当たりませんね。今のところは大丈夫と考えてよろしいでしょう』

「分かった。気を付けてね」

『えぇ』

 

軽く状況確認をしてから、ミラは通信を切る。

次があるとしたら、事態が動いた時だ。

 

「さて、他も準備が出来つつあるみたいだし、私もそろそろ・・・」

 

ミラが踵を返そうとした次の瞬間、遠くから爆発音が聞こえてきた。

その方角はシャーレがある向きであり、他に敵影はないと報告を受けたタイミングでのこれにミラは嫌な予感を覚えた。

 

「何が起きてる!?」

『し、襲撃!シャーレ周辺に敵襲!』

「ちっ、直接叩きに来たか!」

 

まさかの事態にミラは舌打ちをする。

ゲマトリア襲撃の件を考えればあり得なくもないが、タイミングから考えておそらくD.U.で相手をした軍勢はシャーレ襲撃を隠すための陽動だ。

そこまで高度な戦術を駆使していることに、いよいよミラも自分たちが相手をしている色彩が本来の性質からかけ離れているという確信を深める。

間違いなく、色彩は普通ならばあり得ない何かを取り込んだ。

だが、それについて考えている暇はない。

 

「そっちの防衛戦力は?」

『正門は我々ヴァルキューレ警察学校が担当しよう。後門は余裕のある者に頼みたい』

『後門は、現在スケバンとヘルメット団が集結しています!ですが、そちらには高エネルギー反応が・・・!』

 

焦ったアユムの声音を裏付けるように、ミラの瞳にも遠目から分かるほどの神秘の波動を捉えた。

パターンで言えばエデン条約の調印式やアリウスで相手をしたアンブロジウスに酷似しているが、色彩のテコ入れによるものかそれよりも遥かに協力だった。

いくら数が多くても、不良が相手をするには荷が重すぎる。

 

「私も援護できる位置に向かう。それまでどうにか耐えるように・・・」

『その必要はありません』

 

今いる場所からでは援護できないとミラは急いでシャーレに向かおうとするが、新たに割って入った声がそれを止めた。

声の主は、ミラも久しぶりに聞いたものだった。

 

「ワカモ?」

『愛しの先生が危機に晒されているというのであれば、助けない道理はありません』

「まぁ、うん、そっか。来てないはずがないか」

 

以前ワカモと会ってから様々なことがありすぎて記憶から飛んでいたが、ワカモは先生に一目惚れをしていた。

であれば、この緊急事態に加勢しないはずがない。

ワカモがいるのであれば、戦力として十分すぎるくらいだ。

 

「任せたよ」

『えぇ、そちらもご自身の役目を果たしてください』

 

まるでこれからのミラの行動が分かっているかのような台詞を残して、ワカモは通信を切った。

 

「本当に、先生の人徳様様だね」

 

あの生粋のテロリストだったワカモがこうも絆されるとは、人生分からないものだとミラは零す。

だからこそ、先生がいればどんな危機でも乗り越えられると、改めて確信した。

ならば、ワカモに言われた通り、自分は自分の役目を果たすのみだ。

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