ヴァルキューレ警察学校とスケバン、ヘルメット団、そしてワカモの働きにより、シャーレの襲撃を完全に乗り切った。
これによって、ようやく守護者攻略のための全ての準備が完了した。
「お時間です、リン先輩!」
「それでは、これより総攻撃のカウントダウンを開始します」
アユムによって作戦開始時間がきたことを告げられ、リンはカウントダウンを始める。
「5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・総攻撃、開始!」
そして、リンの指示によって一斉に守護者の攻略が始まり、同時撃破のためのカウントダウンも始まった。
24時間。それが事前の作戦会議によって決められたタイムリミット。
「みなさん・・・キヴォトスを、よろしくお願いします」
先生と各地で戦う生徒たちに、リンは託すように呟いた。
第1サンクトゥム アビドス砂漠 vsビナー
「うわぁ、出たわよ!」
『エネルギー反応、レーザー攻撃が来ます!回避タイミングが計算できません・・・!ホシノ先輩!』
ビナーの誘導に成功したホシノたちだったが、その途中でビナーのレーザー攻撃に狙われる。
アヤネの呼びかけに応じてホシノがセリカとノノミを庇った次の瞬間、岩をも溶かす極大のレーザーが3人を捉えた。
「うわぁ、あれ直撃?」
「アル様・・・」
「・・・ふん、あの程度でやられるわけないわ。予定通り進めるわよ」
砂漠の大地を抉り取る攻撃にムツキとハルカが狼狽えるが、アルは心配する必要はないと自分たちの役目を果たすことに集中する。
そして、アルの確信を裏付けるように、砂塵の中からほぼ無傷のホシノが現れた。
「いやぁ、なかなか痛いねぇ~。でもまぁ、セーフかな。それじゃ、ちゃちゃっと行っちゃおっか」
ビナーの最大の攻撃を防げることを確認したホシノを軸に、ビナーの攻略が始まった。
第2サンクトゥム ミレニアム郊外・工場地帯 vsケセド
「ははっ、結構やるじゃねぇか!お前、気に入った!」
「ひゃっははははぁー!」
挟み撃ちによって敵戦力の大部分を削った後、ネルとツルギが盛大に暴れることで本丸への道を切り拓こうとする。
だが、ケセドを守る最後の防衛部隊は厚く、2人で食い破ることができないでいた。
「待たせたな!諸君、戦列を整えろ!・・・これより、レッドウィンター大決戦を始める!」
そんな中、チェリノ率いるレッドウィンターの大部隊が合流したことで、戦力は完全に拮抗することになる。
これが、3校連合部隊の反撃の狼煙となった。
第3サンクトゥム D.U.郊外・テーマパーク『スランピア』 vsシロ&クロ
『だ、第3サンクトゥムの攻略準備、完了・・・!守護者への攻撃、いつでも始められます!』
シロ&クロを前に、オペレーターのユズが作戦開始の合図を出す。
そんな彼女は、プロゲーマー『UZQueen』としての腕前を遺憾なく発揮するため特製のコントローラーで
「では、今から『守護者』との戦闘を開始する」
「はい!レイドバトルを始めます!」
ミラを除けばキヴォトスでも最上位の実力を持つヒナと、キヴォトスでもトップクラスの破壊力を有するレールガンを駆使するアリス、そしてキヴォトスでも屈指の連携を誇るRABBIT小隊が攻略へと臨んだ。
第4サンクトゥム ゲヘナとトリニティの境界・カタコンベ内部 vsヒエロニムス
「第4サンクトゥムの守護者前に到達、すぐに取りかかります。誇りと信念を胸に刻み、『救護が必要な場に救護を』!」
接敵して早々、ミネがライオットシールドを構えて宣言し、その背後でマリーとヒナタもそれぞれ銃を構える。
『スクワッドの皆さん、合流をお願いします!』
「あぁ・・・しかし、防衛だけでなく攻略にも参加させられるとはな・・・まぁいい、行くぞ」
それを確認したハナコ(水着姿)の指示によって、アズサや先生のために駆けつけたアリウススクワッドが屋上からロープで降下し参戦する。
「・・・参ります」
そして、過去の因縁を断ち切るべくユスティナ聖徒会の聖徒会長の礼装(バカの角度のハイレグ)を身に纏ったサクラコもまた、覚悟を示しヒエロニムスと相対した。
第5サンクトゥム ミレニアム近郊・要塞都市エリドゥ vsホド
「ホドを地上に誘導したわよ!」
「コユキちゃん、防壁の解除をお願いします!」
「あ~もう!分かった、分かりましたって!」
セミナー会長が横領した予算で築き上げた要塞都市、その鉄壁の防衛システムが作戦の障害として立ちはだかっていたが、債券の不良発行で拘束されていたコユキが異能と評されるほどの暗号解読能力をいかんなく発揮することでホドの誘導を成功させた。
『把握している範囲すべてのタワーの破壊を確認!残っているのはホドだけ!』
『よ~し、メグ!地上に出てあいつを撤去するぞ!』
「OK!温泉開発部は、破壊が専門だからね♪」
ホドが展開したタワーを破壊するべく(ついでに破壊欲と温泉欲を満たすべく)駆けつけた温泉開発部によって物理的な障害が全て破壊されたことで、展開している全ての戦力がホドへと向けられ、戦況は佳境を迎えた。
「いや~、どこも盛り上がってるねぇ」
各地から次々と報告される戦果を聞いて、ミラは満足げに頷く。
この調子なら、5体の守護者の同時撃破も問題ないだろう。
懸念があるとするなら、
(さて、そこそこ追い詰められているように見えても動く気配はなし。何のつもりなんだか)
ここまで自分達が有利に進めているが、それでもD.U.のサンクトゥムは一向に動く気配を見せない。
いっそ不気味に感じるほどだった。
ゲマトリアの件を考えれば、何かの策を講じていると見ていいだろう。
だとすれば、いったい何を企んでいるのか。
(たしか、他の虚妄のサンクトゥムをすべて合わせてもなお凌駕するって話だったけど・・・)
具体的な数値を聞いたわけではないが、最低でも5,6本分のエネルギーを有していると考えていいだろう。
なら、現れる守護者はどのようなものなのか・・・。
そこまで考えて、ミラはようやく気が付いた。
自分達の思考が、
見た目が同じだから機能は他の5つと同じだと勝手に思っていたが、他と異なる特徴を持っているなら他と異なる役割を持っていてもなんら不思議ではないのだ。
ならば、ここのサンクトゥムの役割は何なのか。
保有しているエネルギーは6本分と仮定する。
つまり、この1本だけでキヴォトス全域のサンクトゥムのエネルギーを賄うことが可能・・・
「先生!こっちの虚妄のサンクトゥムは・・・!」
色彩の真意に気が付いたミラは急いで先生に通信をつなげるが、一歩遅く全ての守護者の攻略が告げられる。
次の瞬間、ミラの目の前でサンクトゥムが強く発光し、5つに別れた光の奔流がキヴォトスの各地へと向かっていった。
それを見て、ミラは自身が抱いた嫌な予感が確信に変わった。
「やっぱり、こっちは何かあった時のバックアップだったか!」
D.U.のものが突出していたことから失念していたが、出来るだけ最適な編成で固めて戦略を練っているとはいえ、そのどれもが一筋縄では行かない相手だ。一戦だけでも相当消耗する。
それぞれに歴戦の生徒がいるとしても厳しい戦いを強いられるだろう。
だが、相手の奥の手を一つ切らせたのもまた事実であり、何よりやることは大きく変わらないはず。
確認のために、念のためミラはヒマリに通信を繋げる。
「ヒマリ、こっちの虚妄のサンクトゥムの様子はどうなってる?」
『ミラさんのご想像通りだとは思いますが、エネルギーが急速に低下し他と同じ性質のものになりました。こちらで守護者が現れたことも確認しています』
たしかに他の守護者は復活してしまったが、そもそも撃破した後に集結してD.U.の守護者と連戦する予定だったのだ。
むしろ相手が弱くなった上に移動の手間が省けたと考えてもいい。
ならば、やることは変わらない。
ミラに関しても、そもそも単騎で撃破するつもりでいたため、なんら問題はない。
「わかった。戦闘を開始する」
『健闘を祈ります』
ヒマリと通信している間にも、ミラも守護者のものと思われる地鳴りを感じ取る。というより、ビルの間から姿が見え隠れしていた。
さっさと通信を切ったミラは、少し考えてから通信機を投げ捨てた。
どうせ全力で戦えば壊れるのだから、あってもなくても変わらない。
「さて、どんなのが現れると思ったら・・・ゲマトリアは随分と愉快なのを用意していたんだね」
ミラの目の前に現れたのは、他のサンクトゥムの守護者と比べても奇っ怪な見た目の巨大怪獣だった。
だが、ヒフミとアズサは一目でその正体に気が付いた。
あれこそが、噂でのみ存在する幻のモモフレンズ、等身大の『ペロロジラ』であると。
「思っていたのとは違うけど、せっかく出てきてくれたんだ。退屈させないでよね?」
その手の界隈に疎いミラはそんなことを知る由もないが、一筋縄では行かない相手であるということだけは直感的に理解していた。
だからこそ、先手必勝。
屋上から飛び降りたミラは、空中で体勢を整えて壁に着地し・・・ビルそのものを蹴り砕きながら跳躍した。
作戦開始の時点で溜め続けた赤雷を全解放した一撃は、一筋の赤い閃光となってペロロジラに直撃した。
完全に不意打ちの形で攻撃をくらったペロロジラは、他のビルを巻き込みながら吹き飛ばされる。
「あっはははは!これで終わりじゃないんでしょ?ほらほら、もっと私を楽しませてよ!!」
狂笑を撒き散らしながら再び突撃するミラを脅威と認識したペロロジラは、ムクリと体を起こして目からビームを放つ。
だが、巨大のせいで動きが鈍いペロロジラには空中で軌道を変えるミラを捉えることができず、一方的に攻撃を受けるがままになっていた。
「こちらでもD.U.に上陸した巨大怪獣を発見しました。ですが、すでにミラさんが圧倒しているようです」
勝手に拝借した給食部のオープンカーのフロントに腰掛けながら、ハルナは目の前で起きていることを報告する。
ペロロジラの周囲を赤い閃光が飛び回っている光景に現実感なんてものは欠片もないが、それでも何事もないように報告できるのはハルナだからこそか。
「わぁ、あの巨体が吹き飛ばされてる・・・」
「あのビュンビュン飛び回ってる赤いのがミラ?本当に同じ生き物の動き?」
建物はもちろんのこと、召喚されるペロロジラの眷属や味方によるミサイルの弾幕、果ては翼を駆使し何もない空中すら足場にして縦横無尽に暴れまわるミラに、ジュンコとアカリの視線が遠くなる。
そして、同時にキヴォトス最強と言われる所以も理解した。
たしかに、あれと同じことができる生徒に心当たりなんてあるはずもない。
「どうします?このまま様子見しますか?」
「いえ、私たちも接近します。巨大怪獣が産み出している取り巻きの注意をこちらに引きましょう。ですが、ミラさんの邪魔をしないよう接近のしすぎには注意してください。補習授業部のお二人もよろしいですか?」
「わかりました☆」
『は、はい!』
『了解した』
楽しんでいるミラの邪魔をしたくはないが、邪魔をさせたくもない。
その折衷案として、ハルナはミラが取りこぼした眷属を狙うことにする。
ペロロジラを相手することにヒフミも心が痛まないわけではないが、それはそれとして割り切って戦車をペロロジラに向ける。
まるでB級映画のような様相を呈しながら、ここにキヴォトス最強と巨大怪獣による戦いが幕を開けた。
下手しなくてもペロロジラより被害を撒き散らしながら暴れているのがミラです。
ワンチャン、終わった後に天文学的な請求を突き付けられて借金返済ルートに入る可能性が・・・?