まぁ、内容が例のアレなんで・・・。
「5体の守護者の撃破を確認!ですが、これは・・・!」
「6つ目のサンクトゥムのエネルギーがどんどん大きくなってる!どういうことー!?」
シャーレの作戦本部で、第1から第5サンクトゥムの消滅を確認したアユムとモモカは増大する第6サンクトゥムのエネルギーを見て悲鳴を上げる。
ハルナからの報告が正しければ、第6サンクトゥムの守護者はミラが一方的にボコしていたという。
実際、第6サンクトゥムのエネルギーも消滅間近まで減っていたはずだった。
にも関わらず、さらに強化されるという悪夢のような復活を遂げようとしている。
同じくその状況を確認していたヒマリは、即座に今起きている現象を看破した。
『全てのサンクトゥムからエネルギーが一か所に集中していることを確認しました。どうやら、これから本当の“最後の”サンクトゥムタワーが生成されているようです』
つまり、これが本当の最終手段。色彩が用意していた最後の手札ということだ。
第6サンクトゥムから放出したエネルギーを再吸収し、新たに強力な守護者を生み出す。
その個体は、まさしくどのサンクトゥムに現れたものよりも強力だろう。
だが、それでもヒマリに動揺はなかった。
『ですが・・・ふふっ、どうやら私の秘密兵器の出番のようです』
『部長、秘密兵器なんて用意してたの?今まで隠してたってこと?』
『隠してたと言いますか・・・正確には、今完成したと言いますか』
そう前置きして、ヒマリは得意げに秘密兵器の詳細を説明した。
現在のキヴォトスは虚妄のサンクトゥムが出現したことで莫大なエネルギーが発生しているのだが、それを部分的にだが流用することに成功した、かもしれない。
エネルギーそのものは既存のどれにも当てはまらない不可思議なものだが、それゆえに限定的だが物理法則を超越した現象を起こすことができる。
有り体に言えば、『物質の巨大化』が可能となった。
ただし、制限時間は3分。そのため、出来ることなら3分以内に強化されたペロロジラを倒せるようなものを巨大化させたい。
『さて、何を巨大化させましょうか。無難に戦車かヘリか、いっそミラさんを巨大化させるというのも・・・』
今回限りということで、割とウキウキしながらヒマリは頭の中でリストを思い浮かべる。
ロマンの塊である巨大兵器は言わずもがな、巨大怪獣vs巨人と言うのもSF味が強くていいだろう。
そんな割と趣味が入り混じっているのを感じ取った先生は、手を挙げてヒマリに告げた。
「だったら、ピッタリの候補があるよ」
続いて先生の口から出てきた提案を聞いて、リンやエイミはもちろん、ヒマリも思わずキョトンとするのだった。
「へぇ、まだ奥の手を隠してたんだ」
D.U.でエネルギーが流れ込んでさらに強大化しているペロロジラを目の当たりにして、ミラはさらに唇を吊り上げた。
「ハハッ、いいね、すごくいい。本当に素敵。まさか、もっと楽しませてくれるなんてね」
正直に言って、先ほどまでのペロロジラとの戦闘は不完全燃焼な部分があった。
もちろん、ペロロジラが弱いわけではないのだが、相性の問題もあってビナーやヒエロニムスあたりと比べれば圧倒的にミラ優位で戦いが進んでいた。
もっと磨り減るようなギリギリの戦いを期待していたミラからすれば肩透かしもいいところで、このまま終わってしまうのかと落胆すら覚えるところだった。
そう思っていた矢先に、この唐突な強化だ。
ミラのテンションは天井知らずに上がろうとしていた。
「こうなったら、とことん付き合ってあげる・・・!」
昂る戦意に身をゆだね、迸る赤雷を抑えることなく放出する。
周囲に落ちる赤雷がアスファルトにヒビを入れるが、今のミラは周囲の被害など思考の片隅にも残っていなかった。
「さぁ、今度こそ決着を・・・!」
「無限回転寿司戦隊カイテンジャー!再び参上!」
最終決戦に臨もうと一歩踏み出そうとした瞬間、唐突に響き渡った場違いな声にミラは足下が滑りそうになる。
「えっ?な、何っ?」
どうにか体勢を立て直して声のした方を振り向くと、商業ビルの屋上にカイテンジャーが再び姿を現していた。
いったい何のつもりなのかと混乱するミラを余所に、カイテンジャーのリーダーであるカイテンレッドが通信で先生に呼びかけた。
「それでは、あのセリフを頼むぞ、先生!!」
『行くよ!!無限回転寿司戦隊・カイテンFX Mk.
先生が勢いよく掛け声をかけた次の瞬間、カイテンジャーの背後から巨大な光の柱が立ち昇る。
その中から現れたのは、様々な寿司をパーツとして象った巨大ロボだった。
「え、えぇ・・・?」
出現した巨大ロボットがペロロジラに対して飛び蹴りを決めて吹き飛ばす様子を、ミラはただただ呆然と眺めることしか出来なかった。
相手の強化に対抗して急ごしらえの秘密兵器を持ちだしたのは、分かる。
その内容が巨大化というのも、まだ分かる。いや理解しているわけではないが、割り切ることは出来なくもない。
だが、とはいえだ。
なぜ、その結果生まれたのがよりによって巨大ロボなのか。
なぜ、先生がノリノリになっているのか。
「あー、うん、これはあれか。私がでしゃばる方が野暮なやつか」
しばらく考えたミラは、諦念と共に自分をそう納得させることにした。
巨大怪獣vs巨大ロボ。なるほど、たしかに映画の中でしか存在しないロマンだ。
先生が若干興奮気味なのも、なんだかんだ“男の子”だったということなのだろう。
ただし、盛大に出鼻を挫かれたことに変わりはないが。
「・・・なんか摘まむものでも探そ」
急速に熱が冷めてしまったミラは、いっそ開き直って目の前のB級映画のような光景を楽しむことにした。
「な、何でしょうか、あれは・・・!」
「この前、映画で見たぞ、ヒフミ!」
「うっ、うわぁああああっ!?」
「すっごーい!お寿司ロボットだー!!」
「ふふ・・・これは本当に、何が何やら・・・」
「ドガーンガシャーン☆ってことですよね?分かりやすくていいと思います!」
一方、D.U.の高速道路の上でヒフミたちも場違いな光景を目の当たりにしていた。
ペロロジラがさらに強くなったと思ったら、いきなり巨大ロボが現れたことに戸惑い半分興奮半分になっている。
「あっ、いたいた。みんな、おつかれー」
自分たちはどうすべきか悩んでいると、ミラがビルの残骸を蹴り上がってヒフミたちの前に現れた。
その両腕には大量のポップコーンを抱えていて、すでに一つ開けて器用に口の中に運んでいたが。
「あら、ミラさん。そちらのポップコーンは?」
「瓦礫に埋もれる直前のコンビニからもらった。B級映画には安いポップコーンでしょ」
「なるほど。私たちにもよろしいですか?」
「いいよー。何味にする?」
「では、塩バターを」
「あっ、私はキャラメル味!」
「うす塩でお願いします☆」
「えっと、私は・・・」
「え、えっ?放っておいていいんですか?」
流れるように鑑賞会が始まろうとしていることに、ヒフミが戸惑いながら問いかける。
ポップコーンの窃盗はこの際置いておくことにしても、さすがに自分たちが何もしないわけにはいかないのではないだろうか。
それに対するミラの回答は、非常にシンプルだった。
「まぁ、いいんじゃない?」
ふざけた光景に反して状況はかなり深刻だというのは、ミラも忘れてはいない。
ただ、珍しくはしゃぎ気味な先生に水を差すというのも、なんとなく悪い気がする。
そのため、ひとまずは様子見にとどめて、本格的に拙い状況になったら介入すればいいという結論に至った。
とはいえ、ポップコーンを頬張って完全に観戦ムードになっている姿に説得力なんて欠片もないが。
「ほら、ちょうどいい感じになってるよ」
ミラが促した先では、カイテンFX Mk.∞がガトリングやミサイルといった武装を展開してペロロジラに攻勢を仕掛けているところだった。
巨大化はロボ本体だけでなく内部にあるすべての物に作用しているようで、巨大になった銃弾やミサイルは着実にペロロジラにダメージを与えていた。
「あぁっ、ペロロジラが!いやでも、キヴォトスが危ないですし、私はどうしたら・・・」
「好きな方を応援すればいいんじゃない?もしくは、いっそ両方応援するとか」
「そっ、そうですよね!頑張れ、ペロロジラー!負けるな、カイテンジャー!」
「受け入れるのが早いなぁ・・・」
先ほどまで良心の呵責を見せていたとは思えない変わり身に、ミラは思わず苦笑を浮かべる。
この切り替えの早さは、やはり根っからのアウトローとでも言うべきか。
「にしても、ただ巨大化させた割には丈夫だね。これも秘密兵器の効果の一端なのかな?」
「どうでしょう、そこまでは分かりませんが・・・元の時点で良い造りをしているのかもしれませんし」
「そう?外装はパッと見た感じダンボールとプラスチックに見えるけど」
とはいえ、最初から切り替える必要がなかったミラと美食委員会も大概なのだが。
意識が戦闘ではなく秘密兵器の方に向いているあたり、かなり気を抜いている。
だが、終始戦いを優勢に進めていたカイテンFX Mk.∞だったが、攻撃後の隙を突いたペロロジラの攻撃によって体勢を崩され反撃を許してしまう。
「あっ、形勢逆転した」
「そこです、ペロロジラー!」
「ちょっとは隠しな~?」
とうとう本音を隠さなくなってきたヒフミに、ミラの苦笑も若干引きつり気味になる。
ミサイルとガトリングの弾を撃ち切ってしまったのか、左手の小盾で反撃しようとするなどカイテンFX Mk.∞の攻撃手段が乏しくなっている。
それに対し、ペロロジラは目からビームを放つことでカイテンFX Mk.∞の接近を許さない。
さすがに形勢が不利になったかと、ミラは参戦するべきかと思考を切り替える。
「いや、まだだ。まだ終わっていない・・・!」
だが、カイテンレッドはまだ諦めていなかった。
たしかに遠距離武装の弾は尽きているが、攻撃手段がなくなったわけではない。
カイテンFX Mk.∞が吹き飛ばされた先、その近くには、最初の攻防で弾き飛ばされた剣が突き刺さっていた。
ペロロジラのビームによって満身創痍になりながらも剣をつかみ取ったカイテンFX Mk.∞は、右手に持った剣を垂直に構えてペロロジラと対峙する。
「あの構えは・・・!」
「どうやら、ここで決めるつもりみたいだね」
攻撃のみを考えたその姿勢に、ミラたちはその意図を察した。
カイテンFX Mk.∞の最後の一撃が届くか、届かないか。
結末はその二つに絞られた。
「喰らえ!必殺!!無限回転・FINAL鯖スラッシューーーー!!!」
カイテンレッドの掛け声と共に、カイテンFX Mk.∞がペロロジラへと駆け出す。
ペロロジラも近づけさせまいと怪光線を放ち・・・だが、カイテンFX Mk.∞は最低限の回避行動で右肩が吹き飛びながらもペロロジラの懐へと潜り込み、渾身の力で横一閃に剣を振り切る。
カイテンFX Mk.∞がペロロジラの脇を通り抜けた次の瞬間、ペロロジラは全身から溢れた光の奔流に吞み込まれ、次第に姿が消えていった。
つまり、カイテンFX Mk.∞の勝利である。
「あぁ!ペロロジラが・・・」
「だが、どちらもいい戦いだった」
ペロロジラが消えていく瞬間を目の当たりにしたヒフミは思わず手を伸ばし、アズサは両者の健闘を称える。
だが、カイテンFX Mk.∞もまた制限時間を迎え、光を放ちながら空へと消えていった。
勝者も敗者も姿を消して、激闘の後の残骸のみが残る中、空の色が次第に赤から青へと変わったことで、ようやく決着がついたと確信したミラは肩から力を抜いた。
「これで、ひとまずは終わりかぁ」
「ひとまず、ということは、まだ終わりではないと?ここまで大掛かりなことをして?」
先生の指揮の下、全戦力を投じた一大作戦だとハルナは認識していたが、まだこれが序の口であるかのようなミラの口ぶりにハルナは首を傾げる。
それに対し、ミラは軽く肩をすくめながらこの作戦の唯一の穴を指摘した。
「まぁ、元凶がまだ残ってるからね」
今回倒したのは“色彩”の尖兵であり、本体にはノータッチだ。
そもそも、この戦闘で色彩の嚮導者と恐怖に反転したと考えられるシロコ両名の姿を確認していない。
これで向こうの手札が尽きたのなら話は早いが、それは楽観的すぎるというものだろう。
「向こうでもそろそろ動きがあるだろうし、私はシャーレに行くよ」
「ゲヘナには行かれないのですか?」
「戻るのは全部終わってから・・・自分で決めたことだからね」
今まで理由をつけて自分から会いに行くことはなかったが、いよいよその時が近づいているのをミラも実感する。
だが、浮かれる前にしなければならないことがあると気を引き締め直したミラは、先生に会うべくシャーレへと向かった。