キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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switch2を買う気満々になってるのが自分です。
準PS5が5万って考えたら破格すぎません・・・?


最終編・13

「おぉ、速い速い」

 

加速Gに耐えながら、ミラはチラリと窓の外を覗く。

窓の外は次々と雲が流れ、あっという間に雲の上に抜けていった。

現行の飛行可能な搭乗機体では成し得ないだろう速度に、ミラにしては珍しくワクワクしていた。

 

「上空75,000mって話だったけど、これなら割とすぐに到着しそうだね」

「だね~。もしこれで遅かったら、いよいよ宇宙戦艦って何だろうって思うところだったよ~」

 

それはホシノも同じだったようで、今だけは子供のようにピョンピョンと跳びながら窓の外を覗こうとしていた。

ただ、そんな二人と違って楽しむ余裕が無い者もいる。

 

「いや、こっちは頭ぶつけたんだけど」

「私たちでこれだと、先生が心配ですね・・・」

 

手すりに掴み損なったセリカは思い切り転んで頭を打ち、何とかしがみついたノノミも背負ったミニガンの重量も相まって踏ん張りきれずに尻餅をついてしまった。

二人とも身体能力はそれなりに優れているにも関わらずこれなのだから、ひ弱な先生が無事なのかどうか心配になってしまう。

そんなノノミの心配を宥めるように、ミラとホシノは軽く肩を竦めた。

 

「ブリッジの方から緊急連絡がないってことは、大丈夫ってことでしょ」

「心配なのはおじさんも同じだけど、あまり心配しすぎても仕方ないからね」

 

先生が今回の作戦の要であることは言うまでもない。

その先生に何かあれば、リンならすぐに引き返すか速度を緩める指示を出すだろう。

その様子がないということは、少なくとも命に別状はないと見てもいい。

ならば、自分たちが気にするべきことは別にある。

 

「とりあえず、このままたどり着けるといいんだけど・・・」

 

そう言って、ミラが視線を再び窓の外に移そうとした次の瞬間、すぐそばの壁が轟音と共に破裂した。

 

「うわぁ!?なに、爆発!?」

「まさか、すでに攻撃されて・・・!?」

「いや、今のは外側から攻撃されたんじゃなくて、中で勝手に爆発した!外部からのハッキング・・・いや、システム的に出来ないはず。となると・・・」

 

突然の事態に狼狽えず、ミラは目の前で起きたことを冷静に分析する。

先ほど爆発した区画は演算装置が存在する一角だった。

爆発したのは装置で間違いないだろうが、物理的にも電子的にも干渉を受けたようには見えない。

そもそも起動するにはコンソールに直接接触して認証を受けなければならないため、外部からのハッキングは実質不可能と言っても過言ではない。

では、なぜ爆発したのか。

その謎の答えは、悲鳴のように鳴り響く駆動音だった。

 

「まさか、オーバーヒート・・・?本船の演算能力を超えた・・・?」

 

箱舟と同じ状態を維持しようと、爆発してもなお演算装置が稼働し続けようとしている。

冷却装置の効果を貫通するレベルの稼働でもなお足りないとなると、答えはかなり絞られる。

その中でも最悪のパターンとなると・・・

 

「これは、かなりマズいかも・・・」

「どういうこと?」

「たぶん、箱舟が本船で演算できない次元に逃げ込んだ。言ってしまえば、二次元が三次元に干渉できないようなもの。このままバリアに衝突したら、良くて木っ端微塵。最悪、未知の次元に取り込まれるかも」

 

端的なミラの説明に、周囲が思わず顔を青ざめる。

今回の作戦は、本船が箱舟に通用することが大前提で、途中までは上手くいっていた。

だが、箱舟はこちらの想定を遥かに越え、前提を根底から覆してきた。

このままでは、どのような結末にしろただではすまないだろう。

 

「それなら、早く船を止めないと・・・!」

「この本船の性能がどの程度かは分からないけど・・・距離もそれなりに近いし、何よりスピードが出過ぎてる。止まりきれない可能性の方が高いんじゃないかな」

「そ、そんな・・・!?」

 

もし地上で車に乗っていたのであれば、タイヤのグリップを効かせるなどしていくらでも方向転換できただろう。

だが、空気摩擦すら少ない上空では急カーブも急ブレーキもできやしない。

さらに顔を青くするセリカの肩をポンポンと叩きながら、ホシノが何かを期待するように視線をミラに向ける。

 

「ここはほら、ミラならなんとかできるんじゃない?いつもみたいに、赤い雷とかで・・・」

「いや、私じゃあのバリアに干渉できないし、そもそも外に出ることすらままならないんだけど・・・」

 

ミラの赤雷を操る力は神秘由来の超常的なものだが、赤雷自体は物理現象の範疇に収まっているため多次元バリアに干渉することはできない。

仮にそんなこと関係ないレベルまで出力を高めた一撃を放てれば可能性は0ではないが、そもそも現在地は上空75,000mの遥か上空である。8,000mくらいならまだしも、その10倍近い高さとなるとミラでも生命維持すらできない領域だ。

もはやどうにもできないと頭を抱え始めた四人だったが、そこで後ろから声をかけられた。

 

「いえ、ここはアリスに任せてください」

 

現れたのは、ゲーム開発部のアリスだった。

だが、その表情は何か覚悟を決めたように真剣で、後ろにいる他部員も心配や不安の色こそあれど同じようなものだった。

 

「えーと、ゲーム開発部の、勇者ちゃん、だっけ?それってどういう・・」

 

前部ハッチに向かおうとしているアリスをホシノは止めようとしたが、ミラがそれを片手をあげて遮った。

 

「あれ、ミラ?」

「それが、君の選択ってことでいいんだね?」

「はい」

「この後、どうなるか分からないわけじゃないと思うけど」

「それでもです」

「そう・・・」

 

いくつかの質問に躊躇いなく答えるアリスに、ミラは小さくため息を吐く。

自分の中で答え合わせを兼ねたものだったが、自身の推測が当たっていたことに納得すると同時に、この後にアリスがしようとしていることも結末含めて思い当たってしまってかなり複雑な心境だった。

だが、当のアリスが覚悟を決めていて、先生や他のメンバーが送り出しているのなら、自分にとやかく言う権利はないだろう。

 

「なら、私から止めはしない。だけど、無事に戻ってくるように」

「・・・あなたは、アリスのことを知っているんですか?」

「なんとなくだけどね。ほら、早く行って。時間もあまり残ってないんだから」

「っ、はい!」

 

ミラに促されたアリスは、勢い良く頷いてからミラたちの横を駆け抜けてハッチへと向かっていった。

その後ろ姿を見送ってから、ホシノはミラに気になることを問いかけた。

 

「ちょっと、ミラ。どういうことなのか、おじさんたちにも説明してもらえると助かるんだけど?」

「ざっくり言うと、天童アリスはあの箱舟と同質の存在。つまり、本船以外で唯一あの箱舟に干渉できるってこと」

「本当!?」

 

ミラの言葉に、希望の光が見えたとセリカの表情が明るくなる。

だが、先ほどまでの問答を怪訝に思ったホシノは真剣な表情を崩さないまま再び問いかけた。

 

「それじゃあ、なんであそこで試すようなことを言ったのかな?」

「・・・アリスと箱舟が性質として同じでも、本体のスペックはそうじゃない。今アリスがしようとしているのは、スパコンが必要な計算を市販のPCでするようなもの。まず間違いなくシステムは焼き切れる・・・負荷っていうより、もはや代償に近い」

「そ、それなら止めた方が・・・!」

 

焦った表情を浮かべて後を追おうとするノノミだったが、ミラに肩を掴まれ動きを止めざるを得なかった。

 

「あの子も、それは分かってる。分かった上で、選んだ。それに、あの子の友達もそれを受け入れている。私たちがあれこれ口を出すべきじゃない。それに、ここであのバリアをどうにかしないと危ないのは先生や私たちだよ」

 

ミラにそう諭されて、ノノミとセリカはアリスを止めたい衝動をグッと堪えて踏みとどまった。

ならばせめてとアリスの姿が見える位置まで移動すると、そこでは手を水平に掲げたアリスの周囲がバラバラに分解されていき、やがて一つの巨大な武器を象っていくところだった。

 

「あれは・・・」

「大きい、レールガン・・・?」

「たしか、あの子が持ってたやつだよね?」

「うん。“光の剣”って呼んでたっけ?それなら、あれを名付けるなら“光の剣:アトラ・ハシースのスーパーノヴァ”ってところかな」

 

人の丈を優に越えていたレールガンよりもさらに巨大なレールキャノンを目にしたノノミとセリカは思わず言葉を失い、それを本船から分解して再構築している光景にホシノとミラは目を離せなくなる。

やがてレールキャノンの砲身から漏れる光が臨界に達し、ついに巨大な閃光が多次元バリアに向かって放たれた。

 

「撃った!」

「あれが、本当にバリアを破壊できるのでしょうか・・・」

「もし出来なかったら、覚悟を決めるしかないねぇ~」

「まぁ、その必要はなさそうだけど」

 

この攻撃が通用しなければもう終わりだとノノミは不安げな表情を浮かべるが、対照的にミラの表情は確信に満ち溢れていた。

それを証明するように、巨大な閃光はバリアへと突き刺さり・・・ガラスのようにバリアを粉々に粉砕した。

 

「す、すごいです!本当にあのバリアを破壊しました!」

「やるじゃない、あのアリスって子!」

 

バリアを破壊できたことにノノミは手を叩きながらはしゃぎ、セリカもそれを成し遂げたアリスを称賛する。

だが、その余韻に浸っている暇もなく、本船は全速力で箱舟へと突撃していった。

 

「って、うわっ!?急に加速した!?」

「バリアを修復して態勢を立て直される前に突撃しようって魂胆だね~。今はそれが正しいかな」

「なんにせよ、どこかに掴まった方が良さそうだね。衝撃に備えて!」

 

出発時の反省を踏まえ、セリカはいち早くミラの警告に反応して手すりにしがみつき、ノノミも先ほどより掴む力を強くして衝撃に備える。

そして、出発時の加速Gとは比較にならない衝撃が本船の内部を襲った。

 

「ふぅ・・・みんな、無事?」

「おじさんは平気だよ~」

「こ、こっちも何とか・・・」

「うぅ、ひどい目に遭ったわ・・・」

 

衝撃が治まったところで、ようやく本船が停止したと認識した4人は手を離して立ち上がった。

ミラとホシノは平然としていたが、セリカとノノミは消耗しているのか少し肩で息をしていた。

だが、一息ついている暇もないとミラは鋭い目で窓の外に目を向けた。

 

「まぁ、ここからが本番だけどね」

 

そう言うミラの視線の先では、虚妄のサンクトゥム攻略戦の時にもいたオートマトンや複製(ミメシス)の軍勢が押し寄せているところだった。

 

「あいつら!」

「ずいぶんと対応が早いね。突破されるのも想定内、ってことかな?」

 

ずいぶん用意周到なことだと、ミラは内心で顔をしかめる。

今まで戦ってきた敵は、どこかしら作戦の穴や慢心があったからこそ少ない被害で乗りきれたり逆転劇を披露することができたが、今回の相手はそれが見当たらない。

今までと比較にならないほど苦しいと感じると同時に、どこか既視感のようなものも覚える。

だが、それを考えるのは後だと目の前の敵に集中する。

 

「なんにせよ、ここからは私たちの出番だね。準備はいい?」

「はい!いつでも行けます!」

「アヤネちゃーん、サポートお願~い」

『はい!先輩方は東側の通路の防衛をお願いします!』

 

ホシノの要望に答えるように、アヤネがオペレーターとして通信に参加する。

だが、敵は全方位から集まっており、当然ながらミラたちだけでは人手が足りない。

 

『では、こちらは私たちにお任せください』

『はぁ・・・なんでまた私が・・・』

『なんで美食研究会が・・・まぁ、今は猫の手も借りたい状態ですし、私がサポートします』

 

他方の防衛には美食研究会が名乗りを上げ、フウカも死んだ目を浮かべながらも状況が状況だからと仕方なく参加する。

オペレーターには嫌々ながらも同じ学園の腐れ縁でそれなりに美食研究会の戦いを知っているアコがつくことになった、

 

『こ、ここは私たちが守ります・・・』

『ゲーム開発部!?い、いつからそこにいたの?』

『えっと・・・アリスちゃんは寝てるけど、私たちが力になれたらと思って・・・』

『そう!私たちと先生なら、なんとかなるって!』

『あーもう、分かったわよ!私がサポートに回るけど、くれぐれも無茶はしないでよね?』

 

さらに別の方面には、意識を失っているアリスを抱えながらもゲーム開発部が負けじと参戦し、ユウカが心配な気持ちをグッと堪えて支援に入った。

頼もしさはともかくとして、ここには戦う意思のある生徒が十二分にいる。

 

『それじゃあ、みんな!行こう!』

 

先生の号令と共に、『アトラ・ハシースの箱舟占領戦』が幕を開けた。

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