キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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仕事が忙しくていやー辛いっす。
それはそれとして、ようやく終わりが見えてきたってところですかね。
書きたい話もようやく書けそうですし、それまでだれないように頑張ります。


最終編・14

「ふぅ、ひとまずこれで終わりかな」

 

敵の残骸を蹴り飛ばしながら、ミラは周囲を見渡して一息吐いた。

それなりに広いとはいえ、箱舟という限られた範囲だったからか比較的すぐに敵を制圧できた。

進行方向が限定されていたこともあって消耗も少なく、ホシノたちも含めて余裕をもって対処することができた。

 

「でも、突入しただけでこれって考えたら、奥に進むほど敵がいっぱい出てきて大変ってことじゃない?」

「だからって怖じ気づく理由にはならないでしょ。とにかく、一回先生のところに行って今後の方針を・・・」

 

「聞いておこう」とミラが続けようとした次の瞬間、船内に衝撃と轟音が響きわたる。

戦闘終了のタイミングというのも問題だが、何よりマズイのは響いてきた方向だった。

 

「っ、今の爆発はブリッジからだ!」

「まさか・・・!」

 

嫌な予感がしたミラたちは、急いでブリッジへと向かう。

ブリッジにたどり着くと、先生たちがシロコと相対しているところだった。

 

「ワープ出来るんだもんなぁ、そりゃあ来れるなら直接来るか・・・!」

「止まれ!!」

「シロコ、ちゃん・・・!?」

「し、シロコ先輩、なのよね・・・!?」

 

ミラとホシノは即座に戦闘態勢に入り、ノノミとセリカは銃を構えながらシロコに呼び掛ける。

だが、シロコは興味がないとばかりに視線を切り、背後に現れたゲートに向かおうとする。

 

「ダメです!し、シロコちゃん・・・!」

「待って、シロコちゃん・・・!」

「簡単に逃がすとでも・・・」

 

ホシノが即座にシロコとゲートの間に割り込もうとし、ミラもシロコをホシノと挟み込むように飛び出そうとする。

しかし、シロコが懐から取り出して放り投げたものを見て動きを変えざるを得なくなった。

 

「しゅ、手榴弾・・・!?」

「くっ・・・!」

 

シロコが投げたものを即座に看破したホシノは距離をとるように飛びずさり、ミラは軌道を強引に変えて先生の前に飛び出た。

その直後、手榴弾が起爆し、先生を庇うために前に出たミラと至近距離で爆発を受けたホシノが爆煙に飲み込まれた。

 

「ミラ!ホシノ!」

 

先生が爆発に巻き込まれた二人の名前を叫ぶが、程なくして晴れた煙の中から現れた二人は大した負傷を見せずに立ち上がった。

 

「げほっ、げほっ・・・先生、ミラ、大丈夫?」

「いてて・・・こっちはどうにか。先生は?」

「うん。ミラのおかげで大丈夫だよ」

 

ホシノは後ろに飛び退いたことで衝撃を最小限に抑え、ミラは空中で受けたため吹き飛ばされてしまったものの、爆風は翼で防ぎ受け身もとれたため大したダメージは受けていない。

他のメンバーは多少距離が離れていたため被害はほとんどなかった。

 

「ゲホゲホ・・・シロコ先輩は?」

「いなくなりました・・・」

 

しかし、シロコは爆発に乗じて姿を消してしまった。

後を追えればよかったのだが、転移で逃げられてしまっては追跡のしようもない。

 

「やっぱりシロコちゃんはここにいたんだね」

「でも・・・どうして、こんな・・・」

 

シロコが明確に敵対しているという事実を前に、アヤネの表情が暗くなり、ノノミも心配そうにシロコが消えた空間を見つめていた。

その時、セリカがふと虚妄のサンクトゥム攻略戦が終わった直後のミラとの会話を思い出した。

 

「そう言えば、ミラは“あのシロコ先輩は何かが違う、ホシノ先輩ならそれが何か分かるかも”みたいなことを言ってたわよね?実際、どうだったの?」

「う~ん・・・申し訳ないけど、おじさんにはまだ分かんないかな~」

 

ホシノたちが到着したらシロコがさっさと去ろうとしたことと、先生が直接襲撃されかねなかった状況というのもあって、ホシノもミラが言ってた違和感がどのようなものなのか観察する余裕はほとんどなかった。

だが、

 

「・・・でも、ミラの言いたいことはなんとなく分かる気がする」

 

たしかにミラが言った通り、あのシロコにはどこか違和感があった。

自分が知っているシロコとどこかが違う。

だが、その正体まではわからない。記憶の底を除けば何かが分かるような気がするが、具体的な答えにたどり着くまでにはそれなりに時間がかかりそうな予感がした。

 

「多分、シロコちゃんとは今後の戦闘でも会うだろうし、その時にでも捕まえて確かめてみるよ」

「戦いながらじゃダメなの?」

「そこまでの余裕はないかな~・・・」

 

違和感の正体は分からなかったが、シロコの戦闘力は一目見て理解した。

不意打ちとはいえ、やはりミラに重傷を負わせたのは伊達ではない。考え事をしながら戦ったら、下手をしなくても負けかねない。

まずは勝って無力化することを優先すべきだろう。

それから、シロコのことについてはひとまず置いておいて本船の状態を確認したが、芳しくはなかった。

ただでさえ突入時の衝撃で不具合が多発していたところに、さらに手榴弾の追い打ちを喰らったことでシステムはダウン寸前だった。

だが、それでもどうにか再起動までこぎつけることは可能で、そちらの対処はエンジニア部とカヨコが行うことになった。

そんな状況ではあるが、収穫がないわけではなかった。

リオの解析によって、シロコの空間移動は箱舟の次元を計算する演算能力を利用している可能性が高いことが明らかになった。

それだけシロコかプレナパテスが箱舟の機能に精通している事実は無視できないが、逆に言えば箱舟の制御権を奪うことができれば自分たちも同じことができるということでもある。

仮に本船の機能に異常が発生したとしても帰れる保証があるというのは、精神的にもかなり楽になるだろう。

それらの作業の間に、箱舟占領戦について改めて確認をとることにした。

作戦目標は“アトラ・ハシースの箱舟の制御権を奪う”こと。

箱舟は本船と同じく構造の大部分が多次元解釈のための量子コンピュータになっている。

そのためヴェリタスであっても一度のハッキングで管制システムの制御権を奪うことはできず、区画ごとに徐々に制御権を掌握していかなければならない。

箱舟に存在するエリアは外郭の円周上に3つ、中心に1つの計4つ。

最初に外郭のエリアに存在する次元エンジンを破壊した後に中心に向かい、最後のエリアの次元エンジンを破壊した後に自爆シーケンスを発動させることが勝利条件になる。

後の問題は脱出だが、こちらは本船がダメでも先ほどのリオの空間移動が利用できれば成功の可能性は飛躍的に上昇する。

 

「懸念があるとすれば、やっぱり向こうの防衛戦力かなぁ」

 

作戦の確認が一通り終わった後、思わずといったようにぼやいたのはミラだった。

 

「シロコが出てくるのはほぼ確定として、他に何が出てくるかだけど」

「何か不安が?」

「いや、ちょっとした予感っていうか、半分くらいただの疑心暗鬼っていうか。ここまで入念だとまだ何かあるんじゃないかって疑いたくなっちゃうんだよね」

 

虚妄のサンクトゥムタワーのバックアップといい、突入時のバリア切り替えといい、伏せた手札の使い方が異様に上手い。

結果的に何とかなっているものの、今後のことを考えたらやはり不確定要素はできるだけ潰しておきたい。

それに、

 

「さすがに虚妄のサンクトゥムの守護者レベルのは出てこないだろうけど、それでも私の対策がないとも思えない」

 

今いるメンバーの中で最高戦力はミラだが、赤雷を使えない狭い船内のため全力を出せる状態ではない。

あのシロコとタイマンで戦おうと思ったら、不意打ち抜きでも状況次第では五分五分に持ち込まれる可能性も十分にあるだろう。

逆に言えば、ホシノがいる今なら優位な状況に持ち込める可能性が非常に高いとも言える。

だが、だからこそ先を読んで自分たちを潰そうとしてきたプレナパテスがその状況を放置するとは思えなかった。

 

「相手に、まだ何か隠し玉があると?」

「何もないって割り切るより、何かあると疑った方がいいような気がするだけ・・・まぁ、考えすぎても仕方ないからやっぱり割り切るけど。戦闘面は私たちに任せればいいし、そっちの働きも期待してるから」

 

リンの表情が少し暗くなったのを見て、ミラは励ますようにリンの方を叩いてから箱舟内部へと向かっていった。

その背中を見送るリンの表情は、それでもまだ晴れないままだった。

 

「期待、ですか・・・」

 

ミラの後ろ姿に重なるのは、未だに足取りがまったく掴めない連邦生徒会長の背中。

ベクトルは違えど“人”の枠を超えた能力を持っている2人が、自分の何を期待しているというのか、リンには分からない。

ただ、託されたものを無駄にしたくないだけ。そのために、出来る限り最善を尽くしているだけ。

未だに連邦生徒会長の代わりを務められているとは思っていない。

・・・実際は、その姿勢とそれに足る実力を持っているからこそミラも認めているのだが、本人はそのことに気付いていない。

それはそれとして、一周回って『いつもとやることは変わらない』と改めて踏ん切りをつけたリンは深呼吸を一つしてからコンソールの前に立ち、作戦の開始を宣言した。

 

「それでは・・・『アトラ・ハシースの箱舟』占領戦を、開始します!」

 

 

* * *

 

 

作戦の都合上、占領のための攻勢と本船の防衛を同時にこなす必要があるため、明確に役割が分担されているわけではない。

その上で、最高の突破力を持つミラは基本的に先生に同行して次元エンジンの破壊を優先することになった。

 

『そちらが次元エンジンです!』

 

敵の防衛網を食い破り、ついに一つ目の制圧ポイントに到着する。

敵にとって重要な施設の一つであるため敵も相当な数が存在するが、ミラからすれば虚妄のサンクトゥム攻略と比べて質も量もお粗末なものでしかなかった。

 

「なるほど、ずいぶん立派な防衛システムだけど、これくらいなら・・・」

「そんなことをしても、無駄」

 

ミラの言葉を遮るように、新たな声が割り込んできた。

 

「さっそくかぁ・・・」

『・・・先生、ミラさん、お気をつけて。()()です』

 

分かりきっていた襲撃にミラは軽くため息を吐きつつも銃を構え、リンが警戒を促す。

コツコツと足音を響かせながら、シロコが二人の前に現れた。

 

「シロコ・・・!!いったい何をするつもり!?」

「・・・ん、単純なこと。先生が、箱舟を壊すのを阻止する。そうすれば、予定通り・・・キヴォトスは終焉を迎える・・・それが、私の“役割”だから」

 

先生の問いかけに、シロコは当たり前のように返す。

もはやこの場において話し合いの余地はないと判断したミラは、通信でアヤネに尋ねる。

 

「・・・ホシノたちは来れそうにない?」

『は、はい!今は防衛にかかりきりで・・・!』

「そっか・・・なら、ここは私が頑張らないとだね」

 

ホシノがいれば話は早かったかもしれないが、来れないのであれば仕方がない。

どうせなら、自分がここで捕縛できたらさらに話は早いと考えを改めることにした。

 

『先生、ミラさん!お願いします!シロコ先輩を・・・止めてください!』

「了解!」

 

アヤネの要望を受け、ミラは獰猛な笑みを浮かべて銃口をシロコに向ける。

 

「ゲマトリアのところではしてやられたけど、今回はどうだろうね?」

 

ミラの挑発にシロコは何も答えず、同じように銃口をミラに向ける。

キヴォトスを救うため、というよりも個人的に雪辱を晴らすべく、ミラは引き金を引いた。

それが、開戦の合図となった。

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