忌み子の僕を拾ってくれた魔女の師匠、ハレンチな修行ばかりしてくるけどおかげで最強になれました   作:青ヤギ

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Last Lesson 新しい修行も、師匠と一緒に

 

    * * *

 

 

 ひとまず姉さんには魔王城に帰ってもらい、必要がない限り関わりを避ける形で話は落ち着いた。

 まさか魔人族を……それも魔王の娘を使い魔として連れ回すワケにはいかない。

 なので、姉さんと使い魔契約を交わしたことは、現場にいた僕たちだけの秘密となった。

 

『そうか……この感情がお父様が言っていた愛なのね♡ 私も理解(わか)っちゃった♡ ご主人様♡ お姉ちゃんはあなたの都合のいいメス奴隷だから、いつでも呼んでね♡』

 

 瞳にハートマークを浮かべて帰って行った姉さんの様子が不穏ではあったが、使い魔の契約上、彼女はもう人間に危害を加えることはできないはずだ。

 そのことできっと魔人側は揉めるだろうし、また何かひと悶着が起こるかもしれないが……そのときはまた戦うまでだ。

 

「じゃあ、今回のことはギルドにも報告しないんだね?」

「うん。さすがに世界を揺るがすレベルのニュースだからね。もう少し、様子が見たいんだ。……僕が、魔王の息子だってことも」

 

 フィーユと肩を合わせながら、夕日を眺め、今後のことを話す。

 

「ボクも賛成。もしもローくんが魔王の息子だってわかったら、きっと悪い大人たちがローくんを一方的に悪者にして、またあんな戦争を引き起こすかもしれない」

「そうだね……でも……いつまでも隠せるわけじゃないと思う。魔人たちも、このまま黙っているとは思えない」

 

 なにせ、魔人の現トップである姉さんが使い魔になってしまったのだ。

 魔人たちの中には、僕を新たな魔王にすべく、何か悪巧みを仕掛けてこないとも限らない。

 僕を魔王の血族であることを暴露し、人間世界で孤立させるとか……。

 もしも、そんな事態になったときは。

 

「そのときは、僕はちゃんと自分の試練と向き合うよ。時間はすごくかかるかもしれないけれど、皆に僕を受け入れてもらえるように頑張る」

「そっか……わかった! じゃあ、そのときはボクもローくんを手伝うからね!」

「……ありがとう、フィーユ。本当に」

 

 お互いに握手を交わす。

 僕は、本当に素晴らしい友を持った。

 彼女はきっと、間違わない。

 新たな勇者として、きっと正しい道を見いだすだろう。

 だからこそ信頼して、こんなお願いもできる。

 

「あのさ、フィーユ。もしも僕が、道を踏み外しそうになったら……そのときは、君が僕を……」

「ば~か! そんなことにはならないよ!」

「え?」

「にしし。ボクは勇者になるんだぜ? その相棒が悪いヤツになるはずがないだろ?」

「フィーユ……ああ、そうだね!」

 

 太陽みたいな子だ。

 彼女と一緒なら、たとえ辛い現実が立ちはだかっても、僕は光の側にいられるような気がする。

 

 

    * * *

 

 

 世間にはまだ僕の秘密を明かさないと決めた。

 でも……友人であるリィムさんだけには、話すのが筋だと思った。

 彼女が聖女であるならば、尚更。

 

「そういうわけで……僕は、魔王と人間のハーフなんです」

 

 緊張でこわばりながらも、何とか打ち明ける。

 リィムさんは、いったいどんな反応を見せるだろうか?

 

「……よく、勇気を出してくれましたね」

「リィムさん? わっ!」

 

 リィムさんは、いつもと変わらず、僕を深く抱擁してくれた。

 

「ここに来るまで、さぞ不安だったでしょ? でも大丈夫。あなたが魔王の血を引いているからと言って、嫌ったりしません。恐れたりしません。だってはわたくしは……あなたがとても良い子であることしか知らないのですから♪」

「リィムさん……でも、きっと教会は僕の存在を許しません」

「確かに、誰もが魔王の血を恐れないわけではないでしょう……だからこそ、わたくしは決めました。大切なローエンス君のために、わたくしも戦うことにします」

「戦う?」

「もちろん、わたくしなりの戦いです。世界には、まだ根強い偏見や悪習が残っています。教義や信念を盾にとって甘い汁を啜ろうとする輩も……。聖女という立場だからこそ、そういうものを変えていけるはずです。ローエンス君を悲しませるような世界には、絶対にいたしません」

 

 強い決意を宿したリィムさんがそこにいた。

 なんて、気高く、美しいのだろう……。

 

「だからローエンス君も、どうか己の生まれを悲観なさらないで? ありのままのあなたを愛する者が、ここにいるのですから」

「リィムさん……はい、ありがとうございます! こんな僕を、愛してくれて……」

「うふふ♪ もちろん聖女としても、ひとりの女としても、という意味ですよ♡」

「え? ……あ」

 

 頬にキスをされた。

 心臓がドクンドクンと跳ねる。

 

「どうやら、お心に決めた人がいらっしゃるようだけど……うふふ♪ わたくし、これでも諦めの悪い女なんです♪ 気が変わったら、いつでもわたくしに鞍替えしてくださって構いませんからね?」

「リリリ、リィムさん?」

「『聖女は清廉潔白であれ』……そういう風習とも、わたくしは全力で戦う所存です♡」

 

 耳元に「ふーっ」と息を吹きかけられる。

 官能的な快感にゾクゾクと甘い痺れが走った。

 

「うふふ♪ ローエンス君と出会えたおかげで、わたくし心がとても自由になれた気がします♪ イケナイ遊びも、どんどん覚えちゃいます♡」

 

 むにゅっと大きな胸を押し当てながら、リィムさんは色っぽい声で囁く。

 

「これからも一緒に、影でいっぱいイケナイことしましょうね? はい、いつもの魔法薬をどうぞ♡」

「あ、ありがとうございましゅ……」

「……いつか、直接飲ませてあげますからね♡」

「え?」

 

 ……師匠、ごめんなさい。

 ちょっとだけ、リィムさんに浮気してしまいそうになりました。

 

 

    * * *

 

 

 すべてが落ち着いた後、僕は師匠と共に故郷の地に帰った。

 師匠の言うとおり、村はモンスターの襲撃を受けて滅んでいたので、僕に石を投げる存在はいなかった。

 我ながら残酷だとは思ったが……村が滅んだことに何も感じない。

 それよりも、母の墓が無事であることに深く安堵した。

 

「……ただいま、母さん。ごめんね? 八年も待たせて」

 

 花を添えて、祈りを捧げる。

 これで、本当にやっと母を弔うことができた。

 

「お義母様。どうか息子さんのことは私に任せてください。私が責任を持って男にします。性癖を歪ませてしまった罪を文字通り体で払います」

「師匠。さすがに母の前では空気を読んでくれませんか?」

「ゴメンナサイ」

 

 まったく、本当に痴女なんだから師匠は。

 まあ、そういう人に僕は惚れてしまったわけだけど。

 

「ここがローエンス様の生まれた場所ですか~。ものの見事に何もありませんね~?」

 

 キャディが興味深そうにかつて村だった土地を飛び回る。

 あまり良い思い出がない土地だ。

 こうしてサッパリ何もなくなって、逆に呪縛から解き放たれた気持ちになる。

 むしろ、もっと思い出深い場所は別にあるんだ。

 

「キャディ、こっちにおいで。森の奥に行こう。師匠も是非」

 

 僕と母さんは、ほとんどの時間を家よりも森の中で過ごした。

 そこのほうが、ずっと静かで、穏やかだったからだ。

 そして……夢によれば、ここは母さんが父さんと出会った思い出の場所だ。

 荒れ果てた村と違い、森の中はまるで時間が止まったかのように自然豊かな姿を維持していた。

 懐かしいな……ここは、ちっとも変わらない。

 

「わぁ! 木の実がいっぱいですね! キャディが集めてきてあげます!」

 

 キャディはきゃっきゃっとはしゃぎながら木の実を集め始めた。

 

「空気が澄んだ場所ね。ここだけ、あの醜い村とは別世界みたい」

「ええ。僕にとって、大切な場所です」

 

 森の中でも一番大きな大木に手を触れる。

 この木陰の下で、よく母さんに童話を話してもらったり、子守歌を歌ってもらった。

 母さんの墓は別の場所にあるけど……母さんの魂も、そして父さんの魂も、ここに眠っているような気がした。

 

「母さん……父さん……僕は、この世界で生きるよ。大切な人や、守りたい人がたくさんできたんだ。自分にできることを、精一杯やってみるよ。だから……もう少し、待っていて?」

 

 村に追い出されたときは、もう死んでもいいと思っていた。

 でも師匠と出会えたから、生きることの楽しさを知れた。

 ……誰か愛するという感情も。

 

「ありがとうございます師匠。ひとりだけじゃ、ここに来る勇気が湧きませんでした」

「いいのよ。ところでローエンス」

「何ですか?」

「えっと……その師匠って呼び名、まだ続けるの?」

「え?」

 

 師匠は顔を真っ赤にして、指先同士をチョンチョンとくっつけながら僕をチラ見してくる。

 

「一応、私たちその……りょ、両思いってことになったのよね? そろそろ名前で呼んで欲しいかな~なんて……」

「ああ。でも……師匠は師匠ですし、すっかりこっちの呼び名が染みついてしまったというか……」

 

 何か、いまさら名前で呼ぶのも照れくさい……。

 

「そ、それでもよ! というか、もう今更師匠も弟子もないでしょ! ハッキリ言うけど、もうローエンスのほうが私よりも遙かに強いわよ! ぶっちゃけ私、もう何も教えることないと思うわよ?」

「……いいえ。ありますよ。まだ教わってないこと」

「そう? 魔法薬の調合は教えたし、箒や魔法人形の作り方も……」

「いえ、魔法に関することじゃなくて……」

「ん?」

 

 ああ、もう! 肝心なところは鈍い人だな!

 

「だから、その……こ、恋の修行です。僕、そういうの全然知らないし、未熟者ですから」

「っ!?」

 

 お互いの顔が真っ赤になる。

 

「だから師匠と……クレアさんと、もっと修行がしたいです!」

「そ、そう……こほん。わかったわ。じゃあ、恋人として一番大切な基礎をやりましょう」

 

 スッと腰を落として、僕に唇を差し出すクレアさん。

 

「……というか、こっちはローエンスのほうが経験者だけどね」

「好きな人とは、初めてです」

「私もよ。だから……最初はうまくいかなくても、気にしないでね?」

 

 木漏れ日が差し込む。

 その光に引き寄せられるように、僕らの影は重なった。

 温かなものが、唇に広がる。

 ……生まれてきて良かった。

 そう思える心地だった。

 

 真っ赤になった師匠と向き合う。

 

「……ローエンス」

「はい」

「……ちょっとヤバいわね」

「ヤバいですね」

「八年間抑え込んでいたものが爆発しそうになってるわ」

「実は僕もそうです」

「……ヤルか?」

「いや、でもさすがに外では……」

「あなたのお父さんとお母さんもきっとここで燃え上がったのよ。じゃないとあなたが生まれるタイミングがないでしょ?」

「やめてくださいよ、生々しい」

「そんなこと言っている間にもう脱いでしまったわ。どう、私の体?」

「すごく、エッチです……」

「我慢できる?」

「できません」

「うん。じゃあ……次のレッスン、始めましょ♡」

 

 ガサガサと……草木が激しく揺れ始めた。

 

「むむむ! いつのまにかサキュバスとして見過ごせない展開になってるじゃねえですか!? うおおおお! 散れ、愛のパウダー! 敬愛するお二人をもっと燃え上がらせてやるです! ふぅ! これでハッピーエンドですね!」

 

 桃色に染まった空間で、僕らは激しく修行をした。

 師匠とのハレンチな修行の日々は、まだまだ続きそうだ。

 

 ……空耳か、森のどこからか「血は争えませんね、あなた?」「幸せそうで何よりだ」と男女の声が聞こえた気がした。

 

 

END

 

 





 ここまで、ご愛読ありがとうございました!
 ファンタジー作品で10万字以上を書いたのはこれが初でしたので、良い経験になりました!
 魔法って本当に何でもアリだな~と、もうエロネタが湧き出すこと。
 今回もいろいろとお勉強させていただきました。

 最後に小ネタ。
 ヒロインたちの名前は皆お菓子の名前が由来だったりします。

 クレア→エクレア
 リィム→クリーム
 キャディ→キャンディ
 ビスケ→ビスケット
 フィーユ→ミルフィーユ
 ルト→タルト

 皆さんはどれくらい気づけたかな!
 ちなみに主人公のローエンス君は。

 ローエンス→エロス

 です。
 木陰でローエンス君が泣いてらっしゃる。

 改めて、ここまで読んで頂きありがとうございます!
 また別の作品や新作でお会いしましょう!
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