忌み子の僕を拾ってくれた魔女の師匠、ハレンチな修行ばかりしてくるけどおかげで最強になれました 作:青ヤギ
サキュバスを懲らしめるべく師匠直伝の拷問をしていたら、どうやら使い魔の契約を交わしてしまったようだ。
なぜこんなことに!?
使い魔の契約方法はまだ師匠から教わっていないはずなのに!
「ローエンス! これはどういうことなの!? 説明を要求するわ!」
「師匠!?」
いつ帰ってきたのか、怒り顔の師匠が部屋に入ってきた。
なぜか下着姿で。
「師匠! なぜ下着姿なんですか!?」
「そんなことはどうでもいいでしょ! それよりもソコの泥棒猫……じゃなくてサキュバスと羨ましけしからんプレイした上に使い魔契約までしちゃうだなんて何を考えて……」
「……あああああっ♡♡♡」
「うっさいわねサキュバス! 人が真面目な話をしようとしている横で喘ぐんじゃないわよ!」
「も、もうダメぇ♡ げ、限界♡ ご主人様の調教が良すぎて、これ以上我慢できない~♡」
「ああ、もう! これだからサキュバスってイヤなのよ! 年がら年中四六時中発情しちゃって、はしたないったらありゃしないわ!」
恥じらいもなく下着姿でいる人に言われたくないと思う。
それにしても、さっきからサキュバスの様子がおかしい。
自分の体を抑えつけて、ブルブルと震えている。
「ああっ! ダメ! 戻っちゃううううう!」
高い声が上がった瞬間、サキュバスの周りに桃色の煙が立ち昇り、思わずむせる。
「うわっ! 何だこの煙!? けほけほっ!」
「はっ!? サキュバスの催淫魔法かもしれないわ! この煙を吸ってはダメよローエンス! 私のおっぱいに顔をうずめて口鼻を塞ぎなさい!」
「やめてください師匠! それだと窒息します!」
それにしても、何だこの煙?
まるで何かが爆ぜたような音がしたけど……。
「あぅ~……」
煙の中から幼い声がする。
徐々に煙が晴れていく。
「え?」
僕は驚きの声を上げた。
さっきまでサキュバスがいたはずの場所。
そこに大人びた女性ではなく、小さな少女がいたのだ。
「ふええ、元の姿に戻っちゃいました~」
薄紫色の髪と紅色の瞳をした少女は、イタズラがバレた子どものように涙目を浮かべていた。
まるで、あのサキュバスを幼くしたような姿……まさか、これがサキュバスの本来の姿なのか!?
嘘だろ! 僕よりもずっと幼い子どもじゃないか!
そう、幼いのだが……。
だっぷるるるん♡♡♡
おっぱいだけは、大人のときと同じ特大サイズだった。
「よ、幼女爆乳サキュバスですって~!? ローエンスの性癖が歪んでしまうわ~!」
横で師匠が危機感を募らせるように叫んだ。
* * *
「え、ええと。あたし、キャディって言います。実はあたし……まだ新米のサキュバスなんです」
場所を居間に移し、僕と師匠は詳しい事情を聞き出していた。
サキュバスのキャディは、モジモジと恥ずかしそうにしながら、たどたどしく言葉を並べている。最初の淫蕩な印象とはまるで大違いだった。
「いち早く立派なサキュバスになるためにも『早く狩りをしろ』って仲間に言われたんですけど……あ、あたし大人の男の人が怖くて、なかなか勇気が出せなくて……でも、あたしとそんなに歳が変わらないローエンス様なら大丈夫そうだと思ったんです。ただ子どもの姿のままじゃきっとなめられてしまうと思って、ああして大人の姿に化けました」
そういうことだったのか。
拷問中に「初めての狩りだ」と言っていたけど、あれは嘘ではなく本当のことだったんだ。
「ほ、本当にごめんなさい! ちょっとだけ精気と魔力を貰ったら帰るつもりだったんです!」
「ああ、いや……僕のほうこそひどいことを……」
まさかこんな幼い子ども相手に拷問をしていただなんて。
相手がサキュバスといえど、少し良心が痛む。
「でも、これからは使い魔としてローエンス様にお仕えします! 我々魔族は自分よりも強い御方には絶対服従なんです! 主であるローエンス様が望まれるのなら、もう人間に決して危害は加えません!」
「そのことなんだけど……なんで君と使い魔の契約が成立しちゃったのかな?」
「ちょっと待ってなさいローエンス。魔力のラインを辿って調べてあげるわ」
師匠は瞳に魔力を込めて、なぜ使い魔契約が成立してしまったのか調べてくれた。
「……なるほど。どうやら、ローエンスがサキュバスに拷問をしているときに勢い余って使い魔契約の術式が起動しちゃったみたいね」
「ええ!? そんな魔法、まだ習ってもいないのに!?」
「恐ろしいことに、無意識に成立させちゃったのよ。『このサキュバスを服従させてやる~』とか、そんな強い感情をぶつけていたんじゃないかしら?」
た、確かに。
あのときはとにかくキャディを無力化させることで頭がいっぱいだった。
無我夢中で気がつかなかったけれど、どうやらその際に新しい魔法を習得してしまったみたいだ。
「それにしても……幼い個体とはいえ、サキュバスを使い魔にしちゃうだなんて……ローエンス、あなた本当に何者なの? 人型のモンスターを使い魔にする魔法使いなんて、前代未聞よ?」
「そ、そういうものなんですか?」
「普通はできないわよ。自我の強い人型モンスターなら尚更ね。心の底まで屈服させない限りは、契約なんて成立しないんだから」
「はい。あたしキャディは、ローエンス様に屈服してしまいました……心も体も♡ ぴと♡」
「わっ」
「あああ!? なにドサクサにまぎれて抱きついてんのよサキュバス!」
キャディがうっとりした顔で僕に抱きついてくる。
幼い体に見合わない大きな胸がむにゅううと押し潰れる。
うわあ、こんなにちっさい体になんて凶器をつけているんだこの子は!
「お願いしますローエンス様! どうかあたしをお側に置いてください!」
瞳に涙をいっぱいに溜めて、キャディは僕に懇願してくる。
「あたし、もともと変わり者のサキュバスで、どこにも居場所がなかったんです! このまま里に戻っても、落ちこぼれ扱いされて虐められるだけです! どうか、あなた様のためにこの力を使わせてください!」
「キャディ……」
「騙されちゃいけないわローエンス! 言ったでしょ! 人型のモンスターは言葉を巧みに使って人間を欺くって!」
「……いいえ。師匠、この子は嘘を言っていません」
「え?」
「使い魔として契約をしたからでしょうか……わかるんです、魔力を通して、この子が嘘を言っているかどうかが……それに、この子がどう過ごしてきたのかも」
わずかだが、キャディの過去が脳内に浮かんだ。
同族のサキュバスにバカにされ、貶され、ひどい仕打ちを受けている。
サキュバスのくせに男が怖いとは、未熟者め。サキュバスの恥曝しめ。と。
キャディの言うとおり、彼女は故郷で居場所がなかったんだ。
僕が、あの村で迫害されていたのと同じように。
……なんだろう。僕とキャディはどこか似ている。
だからだろうか。僕に必死にしがみついてくるキャディのことが放っておけなくなってしまった。
「……師匠。彼女は僕が責任を持って管理します」
「ローエンス!?」
「キャディ、誓うんだ。人間に決して手を出さないと」
「はい。ここに誓います。サキュバス、キャディはローエンス様のご意思に従うと」
互いの刻印が光る。
誓約の魔法が起動したのだ。
もしもキャディが契約に反する行為をしそうになったら、彼女の命はその瞬間に終わる。
ここに、契約は成された。
もうキャディは人を襲うことはできない。
生存に必要な精気と魔力も、契約のおかげか、触れ合わなくとも常時供給できるようだった。
これなら人間を襲う必要もなくなる。
「……なんてことなの。人型モンスターを本当に無力化させるどころか、仲間にしてしまうだなんて……ローエンス。あなたって子は……」
師匠はどこか遠いものを見るような眼差しを向けていた。
「……やっぱり、あなたは広い世界に出るべきね。今回のことで、確信したわ」
「師匠?」
「ローエンス。ギルドに行きたいって言ったわね? ……許可します」
「え?」
師匠は寂しげな目を浮かべて、僕に言った。
「あなたの力を、存分に試してらっしゃい」