TS転生者だけど絶対に唱(うた)ったりしないんだから!   作:桜霧島

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はじまりの歌

 

 

 みんな、好きなマク●スは?

 

 

 そうだね、マ●ロス7だね。異論は認める。だがⅡは認めない。

 

 

 熱気バ●ラさんに憧れつつも女の子にモテたくて入った高校の軽音楽部。

 ギターのアイツやドラムのアイツがヒョイヒョイ彼女を作る中、ボーカルの俺には一切彼女が出来る気配が無かった。

 

 

 何でだよぉぉぉぉぉ!!!! どお゛じでぞんな非道いことできるのぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

 

 

 顔も悪くないじゃん!

 

 お洒落だって気をつけてるじゃん!

 

 成績だって上から数えたほうが早いじゃん!

 

 ドラムなんて地味なポジション(ひどい偏見)なんかよりずっと目立つじゃん!

 

 

「えっと、言いにくいんだけど、キミは優しいんだけど『良い人』止まりなのよね。女の子はもっと火遊びがしたいのよ」

 

 

 そう言われてもどうしろと!?

 

 

 何故モテる男とモテない男が存在するのか。

 

 

 我々取材班はその謎を解明すべく、アマゾンの奥地に旅立つ―――こと無く、死んだ。

 享年17歳。短い人生だった。

 

 

 その日もメンバーのベースに彼女を紹介され、悲しみに暮れつつも学校から帰るところだった。

 

 折しも雨が降り、眼の前には横断歩道。南米への最短のルートをスマホで検索しながら世界への呪詛を脳内で3ダースほど浮かべたころ、赤信号が青信号に変わる。

 

 一歩、二歩、踏み出す。ふと右側を見ると到底白線では止まれないようなスピードで突っ込んでくるトラックがあった。

 

 隣を歩いていた小学生の首元を引っ掴み後方へ投げ飛ばす。痛いかも知らんが、すまんな。後で俺が生きていたら苦情は聞くよ。

 

 投げ飛ばした反動で俺は動けない。『ああ、これで終わりなんだな』と他人事のような感想を持ったまま、全身がバラバラになる痛みで俺は意識を暗闇に放り投げた。

 

 

 

 

 

♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬

 

 

 

 

 

 そんなこんなで俺は転生してしまったようだ。ばぶぅ。

 

 こんなこともあろうかと!

 無職転生を観てて良かったと思ったが、どう見ても現代日本です。本当にありがとうございました。

 

 やることも無いのでミルク飲んでクソして寝るだけ。

 

 生まれて少し経った頃、ようやく目もちゃんと機能するようになった。

 家具とかを見た感じそこまで困窮しているということも無いし、金髪美人の母親も甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。

 ついぞ父親の姿を見ることは無かったが、母はその事について一切俺の前では口を開かなかった。

 

 しかしそんなことより何より重要なのは、お股のお友達が居なくなったことだ!

 

 どうして……どうして……

 

 どお゛じでぞんな非道いことしゅるのぉぉぉぉぉぉぉ!!!!(2回目)

 

 いや、なんかスースーするなとは思ってたけど!

 

「うぉぉぉぉぉん!!!」

「あーよしよし、アリアはお腹すいたのかなー。……ちょっと泣き方がおかしいけど」

 

 ママミルク(直喩)をちゅぱちゅぱしながら今後の事を考える。『生まれ変わったら可愛い彼女と付き合うんだ』作戦は初手で頓挫。でもいいんだ。女子だって女子を好きになる権利はあるのだから!

 

 そして! アリアという可愛らしい名前が今生の俺の名前だ!

 

 だが安心してくれ。鏡を見た感じピンク髪では無いから風穴の女ではない。ママ譲りの美しい金髪だ。

 あんな死と隣り合わせの日本なんて真っぴらだぜ!

 

 

 それから時は暫く経ち、俺は3歳になった。

 

 どうやら家は東京郊外のマンションであり、やはりそこそこに裕福な家庭らしい。

 ママは俺が2歳になる前に復職していった。どうやら大学の考古学者のようで、書斎には世界中の言語の本が置いてあった。悲しいかな、背が届かないので内容はわからない。

 

 ママが居ない間は通いのお手伝いさんが俺の世話をした。『そこそこに裕福』と推定したのはこのせいだ。

 彼女について特筆すべきものはあまり無い。母が出かける頃にやってきて、俺の昼食と夕食を準備し、夜になる前に帰る。俺が乳幼児だからかあまり口数も多くなかった。

 俺自身も手のかからない子どもを()っていたから、彼女にとってはありがたかっただろう。

 彼女の気になる点として強いて挙げるなら、赤髪褐色肌の綺麗な女性であったことだ。

 

 やはりアニメ世界なのか?

 

 確かにママとお出かけする際に気になったのは、やけに明るい色をした髪の人が多かったことだ。

 俺も立って歩けるようになったので、ママやお手伝いさん――名前はダリアさんだそうだ――の居ない隙を見て新聞やテレビで情報を収集する。

 

 最初は普通の現代日本だと思ったが、それにしては国際関係が異なっているし、日本の地名や有名人なども少し異なる部分がある。

 残念ながら魔法は無かったが、その代わり少しばかり技術水準が高くなっているようだ。

 

 ははーん、さてはギャルゲかエロゲだな?

 

 俺は美少女(予定)なので、主人公や友人ポジの男に狙われるに違いない。

 だが俺は安い女じゃないぞ? 男に食われるなんて以ての外だし、何ならヒロインだって他の男に食われる前に食ってやる。

 ママのママはデカい。ということは私も将来性豊かな胸を以て目指せハーレムだ!

 

 勝ったな、ガハハ

 

「アリアちゃん」

「?」

 

 そんな妄想に浸っていると、ママに呼ばれた。この頃になるとカタコトを演じてママとお話するのが夜の日課だった。

 

「ママ、ちょっと遠くまで行かなくちゃならないの」

「とおくってどこ?」

「インドっていう、大きい国よ」

「かれー!」

「よく知ってるわね……。で、ママが居ない間、ダリアと仲良くしててほしいの。出来る?」

「や!」

 

 そう、俺はNOと言える日本人なのだ。聞くところによるとダリアはママの古い友人らしい。だけど無口無表情だから何考えているのかわからないのだ。

 あと、ちょっと怖い。

 前世でも女子とのコミュ力を磨いてこなかった俺としては、あまり仲良くない女性と二人きりなんてゴメンだ。まぁ、最悪は話さなくていいのかもしらんが……。

 

「そんなこと言わないで。帰ってきたらいーっぱい甘やかしてあげるから♪ ……そうだ! アリアの大好きなケーキも!」

「けーき!」

「早ければ一週間くらいで帰ってくるわ。……だから、良い子で待っていてね」

「……うん!」

「よしよし、アリアは良い子だにゃー♪ じゃ、今日は寝るときにアリアの好きなお歌を歌ってあげるね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ママが亡くなったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『特異災害ノイズ』

 

 俺はその名に聞き覚えがあった。ここはシンフォギアの世界だったのか。

 ハッ! ……知っていてもクソの役にも立ちゃしねえ。これなら武偵にでもなっていたほうがマシだったかもな。ある意味、どこよりも死が近い世界だ。

 

「アリアちゃん、聞いてくれる?」

 

 ダリアさんと俺はいきなり家に押しかけてきた茶髪の女性と筋骨隆々の男性の話を聞く。

 

「……」

「アリアちゃんのママはね、ちょーっと、事情があって帰ってこれなくなっちゃったの」

「……」

「……ダリアさん」

 

 未だに頭の中を整理できない俺ではダメだと思ったのか、男性の方がダリアさんに水を向ける。

 うるせぇ、聞こえてるよ。脳ミソお花畑だった自分を殺したいくらいには冷静だ。

 

「アリアくんにはいくつかの選択肢があります。彼女の親類に保護を頼むか、政府の用意する施設に入所するか……」

「無駄です。カノンには頼れる親類が居ません」

 

 カノンというのはママの名だ。

 宝泉カノン……たぶん28歳、考古学者、ダリアと友達、甘いものが好きな金髪美人で、俺にはデロデロで甘々なママ……それくらいしか知らねえ。何なら前世の弟よりも付き合いは短い。

 だけど何だろうな、このポッカリと胸に空いた喪失感は。

 

 

 ―――ああ、これは前世の業か。

 

 

 ごめんな、母さん。母子家庭なのに一生懸命育ててくれて。素人の音楽なんて一文にもならないことを続けさせてくれて。

 きっと、こんな気持ち―――いや、それ以上の悲しみを背負わせてしまったんだろう。

 

 そう、此処は賽の河原。罪を(あがな)うまで彼岸には渡れない。

 子どもを一人救った?きっとあの子は俺が何もしなくても生きていたんだろうさ。

 此処は少女に世界を背負わせる大人(オニ)たちが支配する地獄だ。クソったれ。

 

「もう一つ、選択肢があります」

「風鳴さん……」

 

 風鳴ぃ? もしかしてこのオッサン、あの風鳴弦十郎か?

 ということは隣の女史は……

 

「うちに来るか?」

 

 いやいやいやいや、オイオイオイオイ。そうはならんやろ。なっとるやろがい!

 脳内で色んなキャラが渋滞している。

 

「……いいえ、アリアは私が育てます」

「宜しいのですか? 失礼ながら、それほど長い付き合いでは無かったのでしょう?」

「カノンには恩があります。とても、とても大切な恩が。それに―――」

「それに?」

「それに、死ぬにあたって親友に子どもを託すことが出来る、カノンは幸せな女性であったと―――そういうことにしたいのですよ。アリアを不幸せになんてしたりしません」

 

「だりあ……うぅ……」

 

 すまん、少しだけ胸を貸してくれ。そして、少しだけ泣かせてくれ。

 最高にかっけぇよ、アンタ。

 ごめんな、無口無表情とか思ってて。

 

「了子くん、そういうことのようだ。政府にはそのように報告するとしよう」

「そうですね、風鳴さん。……ダリアさん、私はカノンとは短い付き合いだったわ。ただの共同研究者。だけど、困ったことがあったら何時でも相談して。出来る限り力になるわ」

「私もだ。この風鳴弦十郎、身命を賭して君たちを守ると約束しよう」

「……ありがとうございます。それで、カノンの遺骨はどのようになっているのでしょうか」

 

 ダリアが聞くが、おそらくママの遺体は炭化して消えてしまったのであろう。特異災害とはそういうものだ。

 普通に海外で亡くなったとしても、検疫などの関係で戻せないこともあるというが。

 

「―――申し訳ありませんが、宝泉カノンさんの遺体は引き取ることが出来ませんでした。遺品も……」

 

 やはりな。

 だが、遺品の一つや二つ、無いものだろうか。この家とこの街だけがママとの思い出というのも……辛すぎる。

 

「風鳴さん、コレ」

「了子くん、それは……!」

「良いんじゃない?あの子が発掘したものだし、()()私達には必要無いもの」

「それは……?」

「カノンがモヘンジョ・ダロで発掘した―――宝石みたいなものよ」

 

 

 

 

 

♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬

 

 

 

 

「アリア、元気そうじゃない。何ならウチの子になってもいいのよ?」

 

 バカめ、お前の家になど行ったら『痛みだけがわかり合える手段』とか言って折檻(ご褒美)されるだけじゃねぇか!

 

「いやー遠慮しておきます! じゃ、風鳴さんにも宜しくお伝えください!」

 

 

 あれから10年。

 

 公式には日本で最初の特異災害による犠牲者であるうちのママ―――宝泉カノンのことは小さなニュースになった。

 幼稚園では皆から遠巻きにされたし、友達と言える友達なんて小学校に入っても出来やしなかった。

 ダリアさんもマスコミに追い回されたりしたらしいし、俺の前では気丈にしてるけど『遺産目当ての人でなし』と罵声を浴びることもあったそうだ。

 

 ―――本当にこの世界はクソだ。

 

 だけど、ママやダリアさんから貰った暖かいものが無くなるわけではない。

 

 小学校高学年に上がる頃から私はギターを片手に街中を放浪し、人気のない公園や橋の下で一人歌うことが多くなった。

 アコギは高かったが、ダリアさんにおねだりしたら珍しく買ってもらえた。

「やっぱり母娘なのね……」などと言っていたから、ママも昔はギター片手に「私の歌を聞けぇッ!」とやっていたのかもしれない。

 

 そうやって私が歌っていると、先ほどのように櫻井了子女史や風鳴弦十郎氏が前触れ無くやってくることもある。

 どうやら私は政府―――正確には特異災害対策機動部二課の監視対象になっているのだろう。

 

 そりゃそうだ。誰だってそうする。俺だってそうする。

 

 まあ、ママの件でかなりの額の『見舞金』が我が家に入ったらしいし、それくらいなら見逃してやろうというものだ。

 

 ママといえば、遺品であるあのペンダントは肌身放さず付けている。たぶん、何かの聖遺物の欠片なんだろうな。だからこそ監視されてると気づいたという面もある。

 もちろん、ただの妄想かもしれないが、あの櫻井了子と風鳴弦十郎が持ってきたモノだ。その辺の石というわけはあるまい。

 

 まあ、聖遺物の欠片だからといって何かあるわけでもない。10年経っても未だにただのペンダントだし、俺の中に聖詠が浮かび上がってくることもない。

 

 

 

 

 絶ッッッ対に唱ったりしないんだから!

 

 

 

 

 

「ただいまー! ふぇ〜今日も疲れたよぉ……」

「おかえり、アリア。手を洗っておいで。うがいもね」

「晩ごはんは?」

「唐揚げよ」

「ダリア、大好き!」

 

 服を着替えて食卓に着くと、テーブルの上に何やらチケットが一枚置いてあった。

 

「ダリア、これは?」

「ああ。今日、風鳴さんがお見えになって『良ければアリアに』って置いていかれたの。姪っ子さんのライブなんだって」

 

 チケットには『ツヴァイウィング』と印字されている。

 

 あ、コレやばいやつだ。

 

 

 

 

 

 

 

 絶ッッッ対に唱ったりしないんだから!

 

 

 

 

 






アマプラでシンフォギアシリーズが放映されていたのでGまで一気に観てしまいました。

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