TS転生者だけど絶対に唱(うた)ったりしないんだから!   作:桜霧島

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ようやくGXまで観終わったぜ。。。




装者たち

 

 

 リディアン音楽院は表向き私立学校という建付けだが、実際には政府の息がかかった半官半民の教育施設である。

 それは(さて)置いて、ここで問題です。公欠扱いとなった生徒に対しての救済措置ってな〜んだ?

 

 そうだね、レポートだね。

 

 あれから約一週間、ようやく我が家へ帰宅することが出来た。

 帰宅しただけで学校に行けるような体力はまだ戻っていないが、まぁそれもあと2、3日といったところだろう。

 最近の俺は大学生やサラリーマンも斯くやという枚数のレポートを作成している。音楽院といえど一般科目として英語や数学など音楽以外の科目は当然にあるので、約10日分の宿題が溜まっているのだ。数学みたいに問題集を解いておけというなら比較的楽でよいのだが、他はほとんどレポートだったり追試だったりする。

 

 あー疲れた。気分転換に歌うか。

 アコギを取り出してかき鳴らす。この部屋はしっかり防音仕様だから安心だ。

 まあ、秘密モリモリの装者をその辺のアパートや寮に住まわせるなんて出来ないからな。ひびみく?知らない子ですね……。

 

 デュランダル襲撃事件は原作通り発生し、無事に守ることが出来たようだ。デュランダルは響にしか―――というより、聖遺物と融合した者しか安定して扱うことが出来ないという非常に難儀な代物だ。

 戦闘データを見たが、やはりデュランダルが起動している。この瞬間、響の出すフォニックゲインもまた急上昇しているのだが、この出力に耐えられるのも融合症例ならではということであろう。

 

 ということで、どこぞのエチチなお姉さんが自らネフシュタンの鎧と融合するのだが、そうなると間もなく用済みの拾われた仔犬(クリス)が捨てられるパティーンだ。

 変に関わるとややこしくなるし、司令や未来(みく)さんにお任せしよう。

 

 しかし暴走状態―――果たして計算に入れていいものかどうか。マヘーシュバラが暴走するとどうなるのだろうか。絶唱すら制御しきれていない今の自分では、良くてチリになって消える結末しか思い浮かばない。

 

『ピンポーン♪』

 

 人が折角いい感じにノリノリの歌*1を歌っていたのに誰かやって来たようだ。

 コンコンとドアがノックされ、呼び鈴が鳴らされたのでとりあえず返事をする。

 

「はーい? どうぞー!」

「入るぞ」

「お、お邪魔、します……」

 

 翼と、影に隠れるように花を抱えた響が入ってきた。

 

「どうだ、アリア」

「絶好調であーる。翼がこの部屋に来てくれるのも珍しいね」

「退院したと聞いてな。全く―――うちの相棒は無茶ばかりするから」

「うへぇ。お小言はベッドの上で聞き飽きたよ……」

 

 入院期間中、司令、りょーこさん、翼の3人からはとてもキツいお叱りの言葉を受けてしまった。

 翼には申し訳無いことをしちゃった。喧嘩別れみたいになるところだったし、奏さんのトラウマがモリモリに蘇ったろうな。

 だが反省はしても後悔はしていない。翼がボロボロの瀕死になることを回避できたのだ。差し引きプラスだ。

 プラスだよな?プラスになったことにしよう。

 

「ほら、立花」

「あの……アリアさん……退院、おめでとうございます」

「おう、ありがと―――まぁ、二人とも座ってよ。お茶でも出すからさ」

「ああ」

 

 響から花を受け取り、花瓶は……とりあえずガラスのコップでいいか。

 お湯を沸かしながら二人をダイニングの椅子に座らせ、俺は勉強机から椅子を引っ張ってくる。3人分のカップとティーバッグを出し、お湯を注ぐ。沸騰する直前でだすのがポイントだ。

 

「お見舞いに来てくれたのかな、ありがとう」

「私……ずっとアリアさんに謝りたくて……。あの時、無神経なことを言ってごめんなさい! アリアさんだけじゃなく、翼さんの思いも踏みにじるようなことを言ってしまいました……」

「―――いいんだ、()()()()

 

 響がぱっと目を見開き、こちらを見つめる。

 

「それより、俺も叩いたりして悪かった。ごめん」

「アリアさん、私の名前を……」

「俺の居ない間、響ちゃんが翼の隣で戦ってくれたのだろう? それに、司令に弟子入りしたと聞いている。弱くても、拙くても、守りたいものを守るために強くなるというその心―――それこそが翼の言う『防人の心』だ」

「その通りだ。アリアの言う通り、立花は立派に務めを果たしているぞ。なんなら、そこの不良少女よりも真っ直ぐな分、伸びが早い」

 

 む、意外にも翼の響に対する好感度が高い。デュランダル強奪未遂事件で共闘したのと修行パートが効いているのか、嫌悪感は取り去られているようである。

 響も満更じゃないのか「えへへ〜♪」と顔を赤らめて頭をかいている。

 

「響ちゃんには感謝してる。翼を一人にしないでくれて」

「アリアさん……」

「それより響ちゃんさ、翼を見てどう思った?」

「どうって?」

「印象というかさ」

「そうですねぇ。―――最初は強くって、アイドルで、何ていうか『完璧』って感じだったんですけど、話してみたら意外と『普通』なんだなーって思ったり」

「響ちゃんは翼の部屋に行った?」

「翼さんの部屋? 行ってないですけど?」

「びっっっくりするほど汚いんだ」

「な、な、何を言うんだ、アリア!」

 

 顔を真っ赤にして反論する翼だが、残念ながら真実のため効果的な否定はできない。

 

「疑うなら今から隣の部屋に行ってみる?―――完璧で究極のアイドルに見える風鳴翼でも意外な欠点はあるんだと思うと安心しない?」

「そう、ですね……」

「あの風鳴翼でさえ完璧ではない。だからこそ俺は翼を支えたい、翼が舞うことを邪魔するものを決して許さない」

「アリア―――」

「アリアさん―――」

 

 無言がその場を包み込む。湯気の立たなくなったカップに口を付け、俺は切り出した。

 

「……さ、辛気臭い話もこの辺にして、3人で『ふらわー』でも行こうか! 俺の快気祝いってことでさぁ!」

「いいですね! ……あっ! ……あの、私の友達も連れて行ってもいいでしょうか?」

「もちろん! いいよね、翼?」

「ああ、あそこのお好み焼きは美味しいからな。だが行くのはアリアがちゃんと治ってからだ」

「「ええー!?」」

「当たり前だ。だから、早く治せよ、アリア」

「むーーー!!!」

「アリアさん、早く治しましょう! 楽しみですねっ!」

 

 しょーがねぇなぁ。でも、楽しいからいいか。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬

 

 

 

「やる気、どっかその辺に落っことしたかなぁ」

 

 夜の公園の草むらに腰を下ろし、愛用のギターを撫でる。

 

 

 またクリスの襲撃があった。

 

 今回の襲撃では単独で襲来したクリスに対し、響と翼が応戦。数の利もありネフシュタンの鎧の一部破壊を達成したものの、イチイバルに着替えたクリスの反撃を許してしまった。

 だがフィーネの横槍が入り、クリスを庇った響が負傷、クリスは戦場から離脱した。

 フィーネ(終わり)を名乗る謎の女が現れたという報告は司令部に少なくない驚きをもたらしたが、俺にとっては謎でも何でもない。

 原作の細かいところはもう覚えちゃいないが、翼も健在だし響も戦力になってきたことで、もはや俺が居なくちゃ回らないという状況じゃない。

 

 そうするとどうなるか。 

 

「アリアくん、メディカルスタッフのOKが出るまでシンフォギアの使用は禁止だ。それから、本部への出入りも最小限にしておきたまえ」

「何でぇ!?」

「ごめ〜ん、アリアちゃん♡ でも貴女、ここにいると()()()しちゃうでしょう?」

「そんなぁ……」

「貴女が倒れたときの翼ちゃん、はっきり言って見てられないくらい憔悴してたのよ。だから貴方の復帰には万全に万全を期すことが必要なの。わかって?」

 

 ヒゲ親父とりょーこさんに言い包められ、とぼとぼと帰宅する。俺ってやられキャラだったのか……?

 まさかりょーこさん(フィーネ)が適切な治療と分析を怠ったのではと一瞬疑ったが、そういうところで手を抜く女じゃないと俺は知っている。意識を失ってから2週間近くは経つが、おそらく本当に数値が良くないのだろう。

 自覚症状? 自力で睡眠がほとんど取れなくなったことくらいですかね……テヘペロ。

 

 というわけで学校と寮を往復する毎日なのである。だが寮に帰ってもやることがないし、精々が翼のお世話くらいだ。

 彼女は優しいから色々と声をかけてくれる。どんなノイズが出たか、響がどれくらい成長しているか、クリスとどんな会話をしたか、とか。彼女自身も居場所を無くしているであろうクリスのことが気にかかるらしい。

 

 寝られない、というのは万病の元である。大抵の心身の綻びは充分な睡眠と、充分な栄養と、適切な治療(投薬)で治る。それが出来なければ外科手術のように直接的な原因の根絶を図るのだが……俺の直接的な原因はたぶん、生命の根源と繋がってしまったことだ。

 

 ただでさえ死の間際というのはエンドルフィンやドーパミンなどホルモンが過剰に分泌される。俺の場合は瀕死という極限状況に加え、生命の根源、輪廻転生の一端に触れてしまったことで、それら過剰になった物質が更に過剰になり、後遺症として残っているのだと思う。

 

 もちろん、睡眠薬やその他自律神経を整えるための薬ももらっているが、体感ではあと1,2週間はこのままだろう。

 そういう意味ではやる気云々以前の問題でもある。

 

 さて、今日は何を歌おうかな。住宅街からも離れたこの公園なら邪魔も入らない。

 

「~♪」

 

 小一時間ほど歌っていた頃だろうか。

 

「おい」

 

 暗がりから現れた乱暴な口調の女の子に話しかけられた。

 

「……なんです?」

「お前、シンフォギアの装者だろ? こんなところで何をやっているんだ」

「……何の話でしょう? 失礼ですが、人違いでは?」

「お前はあたしを知らないかもしれないけど、あたしはお前を知ってるんだ」

 

 あ、うん。雪音クリスさんですね、俺も知ってますよ。知ってはいるが、とりあえず惚けておく。

 やっぱり間近で見ると可愛いなぁ。凹凸のはっきりしたスタイル、整った顔立ち、美しい髪。というか何でこんな人気の無いところに……あ、とうとう追い出されたのか。

 

 とりあえず会話をしてみよう。

 

「俺はただの一般人で、ただ下手くそな歌を練習しているだけですよ」

「……そうでもないと思うぞ」

「ありがとうございます?」

 

 下手か。

 

「―――お前は何のために戦うんだ」

「守りたい人を守るために。守りたい世界を守るために」

「その為に犠牲になる人が出てもか」

「出て欲しくないとは思ってる。でも正義の反対は悪じゃない、また別の正義なんだ。それらがぶつかったら、犠牲も出るだろうな」

 

 なにかのセリフを引用しながら彼女に返答する。個人的にこの意見は正しくもあり、間違ってもいると思う。俺なりに解釈すれば、正義の反対は『自由』だと思うから。

 だがその返答は彼女にとって気に食わなかったようだ。

 

「だから世の中から争いがなくならないんだ! お前みたいな、力を持った奴がいるから!」

「 “Si vis pacem, para bellum.(汝、平和を欲さば戦への備えをせよ)”とはよく言うだろう?」

「何言ってんのかわかんねぇよ!」

 

 

 

Killter Ichaival tron

 

 

 

 うお、マジかよ!

 ちょっと原作にないことやらないでよぉ。なお自分の言動にはノーコメントだ。

 

「さぁ、お前もシンフォギアを纏え!」

「出来ない!」

「何でだ! お前もあたしをバカにしてぇ!」

 

 クリスが銃器を構え、連射してくる。さすがに黙ってハチの巣にされる趣味は無いので公園内の林に逃げ込む。

 どうだろう、変身したとして30秒くらいは保つだろうか。

 今のところクリスも手持ちのガトリングだけで動きを止めようとしてくるが、ランチャーとかミサイルとかを出されたらおしまいだ。

 

「早くお前も変身しろって言ってるだろうッ! あたしと戦え!」

「だから出来ねえっつってんだろうがッ!」

 

 仮に変身出来たとして、その後俺がどうなるかはわかったもんじゃない。また何日か意識を失うのか、チリとなるのか、それともマヘーシュヴァラが失われるのか。どれも本当の意味で死活問題だ。

 俺は安全マージンの取れない選択肢は嫌いなんだ。

 

「隠れてないで出てきやがれ! それともあたしとは戦う価値すら無いって言いたいのかよッ!」

「自分の、都合ばっか、押し付けてくるんじゃ……ねぇ!」

 

 木立の間を縫うようにしてクリスから逃げまどう。あ、とうとう重火器を持ち出しやがった……!

 

「ちょっせぃ!」

「やばっ!?」

 

 恥も外聞もなく逃げまどうが、生身の身体で装者には敵わない。爆風に追い出されるように土まみれ泥まみれで転がりながら脱出を試みるが、転げ出た先にはクリスが待ち構えていた。

 

「おらぁ!」

 

 鳩尾(みぞおち)にアッパーカットを喰らい、意識が暗転する。

 

 ―――今日は睡眠薬が無くても寝られそうだ。

 

 

*1
暗い日曜日





幻想の龍巫女さん、七草なしろさん、ヴィヴィオさん、餃子協賛さん、評価ありがとうございました。

今更ながら補足ですけど、
風鳴翼:18歳(になる歳。以下同じ)
雪音クリス:17歳
立花響、宝泉アリア:16歳
です。

みなさんの好きなシリーズは?

  • 無印
  • GX
  • AXZ
  • XV
  • 未視聴
  • パチンコ・パチスロしかしらない
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