TS転生者だけど絶対に唱(うた)ったりしないんだから!   作:桜霧島

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翔悟さん、へたれ勇者さん、にゃんた2525さん、黄鬼さん、一般学生Cさん、◯◯さん、評価ありがとうございました。

っていうか、更新してない時間にものすごいアクセス伸びてるんですけど、知らない間にランキングとか載ってたのかしら……ありがたや。
拙い文章ですけどお付き合いいただけたら幸いです。かしこ。



大切なもの

 

 

 司令部に警報が響き渡る。

 

「アウフヴァッヘン波形を検知! ―――反応、『イチイバル』です!」

「クリスちゃんが……?」

「司令、これは!?」

「どうした!?」

「アリアさんが交戦している模様です!」

「なんだとぉ!? アリアくんはシンフォギアを使えないんだぞ!」

「私、行ってきます!」

「響くん、頼む!」

 

 クリスちゃんとアリアさんが戦っている。―――止めなくちゃ。

 シンフォギアを纏い、すっかり夕闇の帳が降りた街へ駆け出していく。

 

『響さん、イチイバルの反応はロストしました。ですが、アリアさんの容態がわかりません。至急、現場へ向かいアリアさんを捜索してください』

「了解です! うぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

 ビルの上をぴょんぴょんと飛び跳ねながら目的地へ向かって最短で進む。

 

 アリアさん―――ちょっぴり怖いけど、頼れて、可愛くて、優しい装者としての先輩。身体がボロボロになってまでガングニールの意味を教えてくれた。

 クリスちゃんはいつも何かに追われてるように必死。何度か戦うことになっちゃったけど、ちゃんと会話はしてくれるし、本当はわかりあえる人だと信じてる。

 そんな二人が戦っているなんて―――嫌だ。二人に傷ついてほしくない!

 

 公園に到着した。―――あっちだ。木々がへし折れたり地面が抉れているほう!

 

「アリアさん! アリアさん!」

 

 泥だらけで眠ったように気を失っているアリアさんを見つけた。外傷は……枝葉で切ったであろう傷と、擦り傷くらいだ。

 身体を揺すると彼女は薄目を開け呟いた。

 

「……起こさないでくれ、ようやく寝つけたところなんだ」

「こんなところで寝たらダメですよぉ! 司令部へ連れて帰りますからね!」

「安全運転で頼む……」

 

 酔っ払ったお父さんみたいなことを言って! ―――でも少し安心した。良かった、生きていてくれて。

 アリアさんを横抱きにし、来た道を引き返す。

 

 

 

 アリアさんと初めて出会ったのは2年前、ツヴァイウィングのライブ会場でノイズに襲われたとき。徐々に薄れ行く意識の中、二つの青が私を守ってくれたのを私は見つめていた。

 その片方がアリアさんだと気づいたのは学校のカフェテリアで憧れの翼さんと仲睦まじげに話しているアリアさんを見たとき。2年前の既視感に思わず立ち上がっちゃって、あの時は絶対変な子だと思われただろうな~。

 アリアさんが同い年と聞いた時は色んな意味でびっくりしたなぁ……

 

 私が装者になった時は二人が颯爽と駆けつけてくれて、すっごく格好良かった。翼さんの日本刀のような美しさと、アリアさんのロックミュージックのような激しさに思わず見とれてしまった。

 

 だから私も2人みたいになりたい、未来や大事な人たちを守れるようになりたい、って思ったんだけど……アリアさんを怒らせちゃった。その後、翼さんにも厳しい目を向けられた。

 当然かもしれない。私は2人にとって奏さんがどういう人で、どういう気持ちで私たちを命懸けで救ってくれたのか、全然知らず、想像もせず、結果的に2人を傷つけるような言葉を選んでしまった。

 

 アリアさんが意識を失っている間、師匠が教えてくれた。

 お母さんをノイズにやられ、もう一人の家族をあそこで亡くしたこと。天涯孤独の身であること。奏さんが亡くなった後、翼さんと二人三脚でいろいろ乗り越えてきたこと……私、全然わかってなかった。

 

 シンフォギアをまとう意味、それは守るための力。わかり合うための力。

 

 だからこそ師匠に特訓をお願いした。未来を、そして翼さんとアリアさんを守るための力、それが欲しかった。

 

 アリアさんは私や翼さんの髪を撫でるのが好きだ。まるでお母さんのように、暖かい手で包んでくれる。私はたまにガシガシとやられるけど、なんだか口調もあってお兄ちゃんが出来たみたいに思ってる。

 

 さ、腕の中の温もりを(ひや)してしまう前に、早く連れて帰らなくっちゃ!

 

 

 

♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬

 

 

 

 ふぁ〜……久々にぐっすり寝た。やっぱり歌と暴力(運動)は身体に良いってハッキリわかんだね。

 お、翼とビッキーじゃん、おはよー。

 

「『おはよー』じゃない、このバカ! 何をやっているんだ!」

「ぐえっ!? それは完全にwet clothes(濡れ衣)ですたい……俺は巻き込まれただけ、被害者……」

「病人が夜中にうろちょろするからだろう!」

 

 翼に首元を締めあげられる。

 

 ちっくしょー、クリスの奴め。響に腹パンされたからって俺にやり返さなくてもいいだろうに……。花の乙女が危うくキラキラをぶちまけるところだったじゃない。食欲がなくて助かった。

 俺はただ歌ってただけなのに問答無用で、しかもギアを装着しての腹パンなんて酷いじゃないか。

 次はもう少しマシな寝かしつけ方を学んでいてもらいたい。具体的には膝枕かおっぱい枕。

 

 ん? ただ歌ってた…… 歌って……

 

「あぁぁッ!?」

「今度は何だ!」

「俺のギターが……」

 

 前世で使っていたモデル……今は2045年だから、即ち約20年前の代物だ。

 ちょっとしたヴィンテージ品なんだぞぉ! 高かったんだぞぉ、雪音クリス!

 

「次に会ったら絶対弁償させてやる……ッ!」

「お前はどうしてこう、いつもズレているんだ……!」

「まぁまぁ、翼さん。アリアさんが無事で良かったじゃないですか〜……アハハ……」

 

 響が場を和ませようとしているのか、明らかに愛想笑いを浮かべている。

 

「響ちゃん、助けてくれてありがとー。……ところで、何かあった?」

「いえいえ、なぁんにもありませんよ!」

「嘘だね」「嘘だな」

 

 俺と翼がジト目で響を睨みつけると、観念したように話しだした。

 

「……お二人は仲良しなんだなぁって。喧嘩とかしないんですか?」

「するよ」「したぞ」

「えぇ!?」

 

 異口同音に俺と翼が言うと、響は驚いた顔をしている。

 

 俺と出会った当時の翼は14,5歳。奏さんを亡くして間もなく、頼ったり相談したりできる同世代の人間もいなかった。周りの大人も彼女に遠慮していた。親はねぇ……悪いが俺はノーコメントだ。風鳴家は特異すぎる。

 ということで、出会った時の翼はそりゃあもうツンツンしていたし、わけわかんないタイミングで落ち込んだりもしていた。

 

 俺は俺で装者になって間もなく、戦闘は控えめに言って素人、毎度毎度翼に助けてもらってどうにかこうにか生き残ってきた部分もある。

 

 そんな二人がぶつからないはずも無い。

 奏さんを救えなかった無力感、風鳴の家を背負う責任感、装者として命懸けでノイズと戦う緊張感、アイドルとして人々を慰撫する忙しさ、そういったものが思春期の女の子に()し掛かっていたのだ。

 そんな中でズブの素人が奏さんのポジションに収まろうとしている……翼にとっては許し難いことだっただろう。ちょうど、原作の響がそうであったように。

 

「まぁ、昔は―――と言っても高々2年くらい前の話だが、私たちは夫々(それぞれ)に余裕が無かった。相手を思いやる余裕が無かったのだ」

「翼の言う通り。酷いときは1ヶ月くらい口を利かなかったこともあったなぁ。1ヶ月というのはケンカだけが原因じゃなくて、翼のコンサートのスケジュールとか色々と重なったりしたことも原因ではあるけど」

「……どうやって、仲直りしたんですか?」

「どちらかが謝って、話し合って、一緒にご飯食べて、かな」

 

 だいたい謝るのは俺だった気がする。俺としては実年齢+前世分があるから年長者として頭を下げなければ、という気持ちであったが、翼としても実年齢で年上として振るまいたいという思いもあっただろう。それが切っ掛けでケンカすることもあった。

 

「立花、ケンカするというのは必ずしも悪いことではない。重要なのは、お互いをわかり合うために話し合うことだ」

「お互いを、わかり合うために……」

「響ちゃんがわかり合いたいのは小日向さんとクリスだろ?」

 

 俺が聞くと、響は少し悩んでからコクリと首を縦に振った。

 

「人と人がわかり合うことは難しい。現に俺はクリスと話をしたが、わかり合うことは出来なかった。だから戦いになった」

「そんなっ!」

「最後まで聞いてくれ。何故あの娘が俺の話に怒ったのかは―――だいたい、わかっているつもりだ。きっと、彼女には彼女なりに大事なものがあって、それが俺の大事なものとは違うというだけのことだと思う」

「大事なもの、ですか……?」

「そう、お互いの大事なものについて話し合う、認め合う、尊重し合う。それが『わかり合う』ってことだ」

「―――立花、アリアはこう小難しく言っているが、それほど難しいことではない。今は上手く行っていなくても、時間が解決してくれるだろう。あるいは、何か一つの切っ掛けで解決するだろう。その時を待てということだ」

「ありがとうございます、お二人とも。私……ダメダメですね。未来(みく)にもあれだけ言われたのに。自分なりに覚悟は出来ていたつもりですが、何かあるとすぐ迷っちゃって……」

 

 響は真面目な娘だ。明るくて、前向きで、いつも真剣に誰かと向き合っている。その真っすぐさで皆が救われ、挙句の果てには世界まで救ってしまうのだ。

 

 一方で響と向き合っていると、自分の愚かさが際立ってしまい、いつも虚しくなってしまう。

 その真っすぐな視線でいつか俺の秘密(ズル)がバレてしまうのではないか、いつかその秘密を自分から打ち明けてしまうのではないか、その様な恐怖がいつも彼女と話していると浮かんでくるのだ。決して彼女のような人に対して浮かんできて良い感情ではない。

 今にして思えば、だからこそ響を『お嬢ちゃん』扱いして距離を置くようにしていた部分もあったのだろう。

 

「響ちゃん、いくら迷ったっていい。最初から上手くいく人間関係のほうが少ないんだから。だけど一人で抱え込んだり、隠したりするのはダメ。そんなコトされちゃうと悲しいよなぁ、翼?」

「フッ……そうだな」

「私、もう一度クリスちゃんと―――未来(みく)と向き合ってみます」

「おう、頑張れ。足りない勇気は俺たちがくれてやる」

「全く、アリアは何を偉そうに……」

 

 俺は果たして彼女の大切なものに入るのだろうか。

 

 この阿漕な愚か者にも少しばかりの勇気を―――。

 

 





【閑話】

「―――そう言えば翼。ケンカした仲直りにって俺、カフェテリアのランチ、2回奢ったな」
「私は13回奢らされた!」
「しっかり数えてんじゃねえよ!」
「アリアが先に言ったんだろう!」
「……よぉし今から模擬戦だ! 今日という今日は翼に(つち)ペロさせて『アリアさんごめんなさい』と言わせてやっから!」
「上等だっ! アリアが泣いても止めないからな!」
「二人とも、やめてくださいよ~!!」

 その後、模擬戦で襤褸雑巾にされた俺は、更にその後司令に殴られた。解せぬ。

――――――

追伸。
前話後半及び本話前半は原作時系列で言えば7話のクリスが夜の公園で兄妹を助けたあたりの話です。後半は9話あたりで、8話のクリス放浪編は泣く泣くカットとなりました。
分かりづらくてスミマセン……

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