TS転生者だけど絶対に唱(うた)ったりしないんだから!   作:桜霧島

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※私なりの原作解釈が入っています。



Da Capo dell'amore

 

 はい、どうもアリアです。今、緊急で動画を回してるんですけどもね、どうやら米国政府が我が国に対して侵略行為を行っているみたいなんです。

 巻き込まれるのも嫌なんでね、陰から見守っておりますが、そろそろ落ち着いた頃なんでちょーっと突撃してみたいと思います。

 

「しっずかっな湖畔の森のっ陰っから♪ おっとこっとおんなっのこっえがっする〜♪ いやーん♪ ばかーん♪ そこーはだーめよー♪」

「……何だそのアホみたいな歌は、アリア」

「やほー、りょーこさん。今日は随分と刺激的な格好をしているね。どしたん? 話聞こか?」

「巫山戯るな。私の名はフィーネ、悠久の時を生きる神代の巫女である。もはや櫻井了子ではない。それより、一体ここへ何をしに来た?」

「……お別れを言いに、かな?」

「お前……勘づいて居たのか」 

「そりゃそうだよ。貴女がりょーこさんでも、フィーネでも、大好きな人に変わりはないから」

「……本当に不思議な子。でも、私の計画にあなたは邪魔。悪いけど、消えてもらおうかしら」

「もうすぐクリスも機動部の人たちも来るから止めておいたほうがいいんじゃないかな。ケガもしているみたいだし、クソみたいなアンクルサム(米国政府)の相手をしたばかりで面倒くさいでしょ?」

 

 櫻井了子はフィーネという古来から転生を重ねる巫女である。今生ではカ・ディンギルの塔建設、或いはシンフォギア研究資金のため米国政府に通じ、ガングニールや日本の国防情報についてF.I.Sなどに横流ししていた。

 そう言えばただの優しいマリアさんに今頃ガングニールが届いた頃かな。とりあえず放置してるけど。

 

 そんな中、中々シンフォギアの開発情報を寄越さないフィーネに対し、痺れを切らした米国特殊部隊―――おそらく広木防衛大臣を暗殺した部隊と同一だが、彼らにより襲撃された結果、現下の俺と彼女の周りの血と肉の塊が無造作に転がっている惨状を生んだ。転がっている連中にやられたのであろう彼女の脇腹の傷は、まだ治りきっていないようだ。

 

「そうか、なら書き置きでも遺しておくことにしよう」

「うん」

 

 相槌を打つと俺はフィーネに歩み寄り、静かにハグをした。

 

「さよならの時間よ、アリア」

「……嫌」

 

 彼女の胸に顔を埋めながら答える。

 

「あなたはズルい。俺にも、クリスにも、居場所を与えるだけ与えて後は知らないだなんてあんまりじゃないか……」

 

 俺の髪を撫でながら彼女は話を続けた。

 

「……ただの手慰み、暇潰しよ。本気にする貴女達が悪いわ」

「釣った魚に餌をあげないだなんて、悪い女だね」

「あら、言ってなかったかしら?」

「……フィーネの目的は?」

「カ・ディンギルの塔による月の破壊。これによりカストディアン達から掛けられたバラルの呪詛からルル・アメルを解き放ち、統一言語を用いて真に人類が分かり合える時代を築くこと。即ち、過去の超越」

 

 彼女の目的も、動機も、それがすれ違いであることも知っている。

 言うのは簡単だ。だが俺はシェム・ハやエンキたちカストディアンがどうして争わざるを得なかったのか、エンキがどのような想いで月の施設を起動したのか、証拠となるようなものは一切持ちあわせていない。場合によっては彼女を混乱させ、怒らせるだけの結果になるだろう。

 言わないでおくと、彼女は彼らの真意を知らぬまま、ただ寂しい女として俺達と戦うことになるだろう。

 

「月を破壊したら、地球が滅びてしまう―――かもしれない。或いは、統一言語を以てしても争いは無くならないかもしれない」

「そうね。でも、私の気持ちをあの人に伝えるためにはこれしか方法が無いの」

 

 言ってしまうべきなのだろうか。それとも言わないべきなのだろうか。

 逡巡している俺の両肩を、フィーネはポンと押して距離を置く。結局、俺は彼女を納得させる有効な言葉を持ち合わせていなかった。

 

「―――そっか。じゃあ、止めるね」

「やってみるがいい、紛い物の装者よ」

「うん、やってみる。またね、りょーこさん」

 

 彼女は目を細めコンマ何秒かこちらを見つめるとネフシュタンの鎧を纏い、書き置きを遺して去っていった。

 

 たとえこのシンフォギアが紛い物だとしても、貴女への気持ちは本物だと思うから―――。

 

 

 I Love You, sayonara

 

 

 

♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬

 

 

 

 フィーネを見送ってから1時間ほどした頃だろうか、銀髪の美しい少女が少しばかり風通しが良くなってしまった広間に入ってきた。

 

「何が……どうなってやがるんだ……?」

「此処はもう用済みということさ」

「はっ!?」

 

 玉座に座る俺の気配には気づいていなかったのか、独り言に返答してやるとクリスは驚いた様子でこちらを向き、構えた。

 

「お前、なんでここに居る!? それにどういう意味だ!?」

「どうもこうも、そのままの意味だよ。ねぇ、風鳴司令?」

 

 広間の入口へ視線を向けながらそう言うと、クリスは驚いて振り返った。そこには風鳴弦十郎が立っており、その後ろから二課の実働部隊と思しき連中が武装して突入してきた。

 

「―――なぜアリアくんが此処に居るんだ」

「偶々見つけた敵の首魁たるフィーネを追跡したら、偶々わけわからん連中と交戦をしていたんでね。ドタバタが終わった後、フィーネの説得を試みたんですが……振られちゃいました」

「独断専行だな」

「司令に言われたくないですよ」

 

 風鳴弦十郎は「やれやれ」と言いながらため息をついている。

 

「俺はいいんだ。大人だからな」

「大人―――あたしは大人が嫌いだ! 死んだパパもママも大嫌いだ! とんだ夢想家で臆病者……私はあいつらと違う。戦地で難民救済? 歌で世界を救う? いい大人が夢見てんじゃねえよ!」

「大人が、夢を……」

「戦う意志と力を持った奴を片っぱしからぶっ潰していけば、世界は平和になるだろう!? それが一番合理的で現実的だ!」

 

 クリスは大人に裏切られ続けてきた。両親の夢に従った戦地での暮らしはとてもじゃないが幸福で満たされたものではなかっただろう。命のやり取りの最前線で両親を亡くし、その後の捕虜生活でも幸せとは程遠い生活を送っていた。

 フィーネに飼われてからはソロモンの杖の起動装置として、ネフシュタンの鎧の実験道具として生きる(すべ)を見出され、現在は用済みとして捨てられた。

 当たり前に命の危険が無く、衣食住が満たされた生活を殆ど送ってこなかったのだ。

 

「クリス……それは違う」

「何だと!?」

 

 俺は玉座から降り、クリスへと近づく。すまんな、弦十郎くん。君の役目を奪うよ。

 

「じゃあ聞くがな、それで世界は平和に近づいたのか?」

「それは……!」

「力だけではダメなんだ。想いだけでも」

「だったらッ!」

「クリスは両方持ってるだろう?」

「……!」

 

 俺は両手をクリスの肩に置き、目を見つめて言った。

 

「夢は誰もがみていいものだ。大人も、子供も。―――俺も、クリスも」

 

 そしてフィーネも。

 

「確かに紛争地帯へ子どもを連れて行くことは褒められたことじゃないかもしれない。だけど雪音雅律とソネット・M・ユキネ―――君のご両親は見せたかったんじゃないか?」

「何を見せたかったって言うんだよッ!」

「夢を、叶えるところを」

「……!」

「クリス、もういいだろう。赦してあげよう? 君のパパもママも、そして、子供だった君を」

「お前が……あたしの何をわかるってんだよ……」

「……フィーネのことを憎むか?」

「当たり前だろう! あいつは、あたしを使って悪事を働いて! 挙句の果てにあたしを用済みって言って捨てたんだ!」

「そうだね。でも、それだけかな?」

「どういう意味だ!?」

「あのまま君がここに居たら、きっと今君が目にしている凄惨な光景に巻き込まれていただろう」

 

 血の匂いが薄れてきた――或いは慣れてしまった――せいで忘れそうになるが、かつて人間だったモノが俺達の周りには無数に散乱している。ノイズにやられたのではない、生々しい光景だ。

 クリスも気づいたのか、周りを見回し、顔色を悪くしている。

 

「フィーネが真の悪だったら、そうだな……君からイチイバルを奪い、殺す。不確定要素だからね。或いはホルマリン漬けにして米国政府に売り渡したっていい。それから……爆弾を埋め込んで市街地で爆発させてもいいな。良く出来たブービートラップになるだろう。あわよくば、他の俺達シンフォギア装者を巻き込むことが出来るかもしれない」

 

 ガイゾック*1ならするだろうな。

 

「でも、そうしなかった。クリスが自らの手を汚すようなことをしないでもいいように。生きて、次の居場所をちゃんと見つけられるように」

「ワケ、わかんねぇよ……」

 

 肩に置いた手を解き力無いクリスを胸の中に抱く。あともう一息だな。

 

「俺は父親を知らず産まれ、母親をノイズに殺された。親類・知人は居ない。クリスと同じ、天涯孤独の身だった」

「そんな……!」

「だけど、育ての親や風鳴司令、そして翼が居場所をくれた。……櫻井了子さんも」

「同じ、なのか……?」

「君のパパもママも、君を愛していた。間違い無い。君は愛された記憶を持っているはずだ」

「あ、あたしは、あたしは……うぅ……」

 

 クリス、君だっていつかは誰かを愛することが出来るだろう。だって、君は愛されることを知っているのだから。

 

 俺は彼女が落ち着くのを待って、風鳴司令にクリスを引き渡した。

 

「後は大人の仕事、ね」

「ああ、そうだな」

「んじゃ、俺は先に車で戻ってますから」

「帰ったらお説教だ」

「りょーこさんと一緒なら受けてあげてもいいですよ」

「……相変わらず減らず口を」

 

 ここがポイント・オブ・ノーリターン(回帰不能点)だ。ダル・セーニョを付けたって、ダ・カーポを付けたって、ここへはもう戻れない。もはや俺達はFine.(終わり)に向かって演奏し続けるしか無いのだ。

 

「クリス!」

「何だよ!?」

「待ってるぞ!」

「うるせえ!」

 

 さぁ、間もなく決戦の刻―――。

 

*1
無敵超人ザンボット3の敵役。正確にはその司令官であるキラーザ・ブッチャーによる人間爆弾作戦





Q.結局アリアは女の子が好きなの?
A.どっちもイケる。だけどもう色々と手遅れ。


NGLさん、yutaka110721さん、フォルステライトさん、グルグル乳酸菌さん、ゴロー小五郎さん、Aitoyukiさん、うみさるさん、なーだーいさん、評価ありがとうございました。

フィーネがCV.沢城さんなのって、色んな意味で合ってますよね。

みなさんの好きなシリーズは?

  • 無印
  • GX
  • AXZ
  • XV
  • 未視聴
  • パチンコ・パチスロしかしらない
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