TS転生者だけど絶対に唱(うた)ったりしないんだから!   作:桜霧島

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いくつもの愛かさねあわせて 果てることないスペースライツへ
So like a... I, I, Melting into the image of GALAXY with you



いくつもの愛を重ねて 後

 

 フィーネが召喚したノイズはまさに鎧袖一触、エクスドライブモードの俺達にあらかた殲滅された。

 だがその隙をついてフィーネはソロモンの杖を自らの腹部に突き刺し、ネフシュタンの鎧の再生能力を使って同化しようとしていた。

 

「フッ……ぐぅッ!」

「ノイズに、取り込まれてる……?」

「そうじゃねぇ、アイツがノイズを取り込んでんだ!」

 

 召喚したノイズを自身のもとに呼び戻し、或いは新たにソロモンの杖から喚び出しながら、フィーネだったモノはどんどんと膨れ上がっていく。

 

「来たれ、デュランダル!」

 

 取り込んだノイズをゲル状に使役し、フィーネはカ・ディンギルの最下層からデュランダルを取り出すと、ノイズと同様に自らの体内に取り込んだ。

 最初は人型だった塊は際限なく大きくなり、ついにはカ・ディンギルと比肩するほどの大きさとなった。

 

「あれは……」

「『黙示録の赤き竜』……!」

「『黙示録の赤き竜』?」

 

 俺の呟きに響が聞き返す。

 赤き竜とは新約聖書『ヨハネの黙示録』にその記述が見られる、エデンの園の蛇の化身にして大魔王サタンの化身である邪竜だ。フィーネ……神に恋い焦がれ悪魔にまで堕ちてしまったか。

 

「……! まずい、みんな避けろぉッ!」

 

 赤き竜が顔のように形成された部分にエネルギーを集め、荷電粒子砲を撃ってくる。

 なんとか逃れることが出来たが、着弾した箇所からキノコ雲が立ち昇っている。直撃したら今の俺達でもヤバいかもしれない。月を穿ちかけたカ・ディンギルの砲撃と動力は一緒だからな。

 

「なんて威力だ……」

「街が……!」

 

 (さか)(うろこ)に触れたのだ。相応の覚悟は出来ておろうな?

 

 さらに極太の荷電粒子砲が俺達に襲いかかってくる。

 

「うわぁぁッ!」

「ギリギリで避けるのはダメだ! エネルギーの渦に……ぐッ!」

 

 赤き竜はエラのような部分を広げ、無数のホーミング機能付きのレーザーを俺達に飛ばしてくる。

 

 それぞれが反撃しようとするもクリスのミサイルは竜の鱗に止められ、翼の斬撃や響のパンチでさえ、当たり次第回復されている。

 

「くッ……! 固いし強い……!」

「いくら限定解除されたギアであっても、所詮聖遺物の欠片から作られた玩具。完全聖遺物に対抗できるなどと思うてくれるな」

 

 ―――相手が完全聖遺物だろうと、勝ち筋はある。原作通りに響へデュランダルを託すことだ。

 

 だけど俺自身がフィーネと決着をつけたいと思ってしまっている。この12年間の思い出と、何よりこの世界で、装者として生きていくんだという思い、もう傍観者では居たくないという気持ちに、決着をつけたい。

 

「翼、響、クリス、頼みがあるんだ」

「どうした、アリア?」

「俺に……俺に彼女との決着をつけさせて欲しい」

「おま……なに言ってんだよ!」

 

 クリスが驚いて叫ぶ。

 

「……俺は生まれてこの方、家族というものに乏しかった。生まれてすぐにママを亡くし、育ての親も2年前に亡くした。俺は天涯孤独になった」

 

 俺の唐突な独白にクリスは驚きの表情を浮かべ、翼と響は心配そうな表情をしている。

 

「彼女は……りょーこさんはいつも俺を見守ってくれた。二課のメンバーに迎えてもらってからも、風鳴司令と共にいつも家族のように接してくれた。翼は言うまでもなくだけどね」

「お前……」

「こんなことになっちゃったけどさ、俺はあの人が大好きなんだ。だから、手を伸ばしたい。助けてあげたい。だって……だって、家族だから!」

 

 また赤き竜からホーミングレーザーが飛んでくるが、俺達は分散しつつ急上昇して回避する。

 

「やりましょう、アリアさん!」

「響ちゃん……」

「手を伸ばし続ければ、いつかきっと想いは伝わる、人と人はわかり合える。―――そう信じてます!」

「……ありがとう!」

 

 響の真っ直ぐな視線と俺の視線が交錯する。

 いつの間にかこんなに凛々しくなったんだな。『男子3日会わざれば刮目せよ』というが、この娘の成長曲線からすれば微々たるものだろう。

 

「―――ったく……気持ちはわからねえでも無いけど、勝算はあるのかよ?」

「いみじくも彼女が言っていた。『聖遺物の欠片から作られたシンフォギアでは勝てない』と。だったら……彼女の手が入っていない俺のギアなら、可能性はあると思う。だけどあっちにデュランダルがある限り無尽のエネルギーが彼女を守る。だから―――」

「デュランダルを奪い此方のものにすることによって、完全聖遺物同士の対消滅を狙うわけだな、アリア?」

 

 翼が俺の意を汲み狙いを共有する。

 

「うん。でも俺にはデュランダルを直接扱うことは出来ない。だから―――」

「ふぇ? ―――何だかわかりませんがやってみますッ!」

 

 響ちゃんの方を見遣ると「え、わたし?」みたいな表情をしていたが、雰囲気を察したのか勢いよく返事をしてくれた。

 

「私と雪音で露を払う、アリアと立花は渾身の想いを彼女にぶつけることに集中しろ」

「手加減ナシだぜぇッ!」

「はい、翼さんッ!」

「ありがとう、翼、クリス、響! みんなの命、俺が預かる!」

 

 

蒼ノ一閃・滅破

 

 

 翼が身の丈を(ゆう)に超える剣の一撃を繰り出すと、赤き竜の土手っ腹に僅かに穴が開き、その中にクリスが突っ込んでいった。俺はチャクラムでクリスの進路を援護しながら祈りつつ見守る。

 クリスが体内に飛び込んだ後、内部からの攻撃を嫌ったのかフィーネが神殿状の体内への入り口を開くと、翼も中に飛び込み、デュランダルを奪取した。

 

「そいつが切り札だ、アリア!」

 

 

 勝機を零すなッ! 掴み取れッ!

 

 

「ちょっせえッ!」

「しまった、デュランダルをッ!?」

 

 翼がデュランダルを此方へ投げると、クリスが銃で更に此方へ弾き飛ばす。

 

「響、手を!」

「ハイッ!」

 

 俺は二人が決死の覚悟で奪取してくれたデュランダルをキャッチすると、右手にそれを握りしめ、左手を響と繋いだ。

 

 デュランダルを握った瞬間、どす黒い破壊衝動が俺に襲いかかってくる。

 

コロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセ

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉッ!」

「アリアさん!」

「アリアッ!」

 

 響の手を介してデュランダルの力が引き出されると同時に憎しみが胸の内に広がっていく。

 ママを殺したノイズが憎い。ノイズを生み出した先史文明の愚か者共が憎い。ダリアに向かって売女と中傷したアイツが、俺に向かって『あなた死ねばよかったのに』と言ったアイツが、憎い!

 

 

 ―――あとはキミがどれだけ世界を愛せるかだね。

 

 愛する……この世界ごと……!

 

 ―――キミの歌は、もう世界にだって届くんだから。

 

 世界に、俺の歌を、響かせる……!

 

 

「正念場だ、アリアッ! 踏ん張りどころだろうが!」

 

 風鳴司令の声が聞こえる。アンタにゃ一生言ってやらないが、父親代わりには思っていたよ。

 

「ぐぅ……がッ……ヒビキ……ッ!」

「アリア……さん……ッ!」

 

 響と繋がる左手に力が籠もる。ありがとう、こんなバカに付き合ってくれて。もう少しだけ、俺に力を……!

 

「お前を信じて、お前に全部賭けてんだ! お前が自分を信じなくてどうするんだよ!」

 

 クリス……信じてくれてありがとう。君も彼女と決着をつけたかったろうに。誰よりも思い遣り深く、強い娘だ。

 

「屈するな、アリア。私に聞かせてくれ、相棒の歌を」

 

 ありがとう、翼。俺は君の心を僅かでも埋められただろうか。この2年間の感謝はいくら言葉にしても尽きないや。たとえこの身が朽ちたとしても、君のことを愛してるよ。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉッ!」

「姦しいッ! 黙らせてやる!」

「チッ! こいつ(アリア)が気張ってんだ、邪魔はさせねえよ!」

「この、クソみたいな、衝動に……俺の歌が塗りつぶされてなるものかよッ!」

 

 デュランダルは大神オーディンの持ち物だ。持ち主も違えば神話も異なる俺のマヘーシュヴァラとは相性が悪い。

 ギアの暴走に伴う破壊衝動とマヘーシュヴァラとの反発を精神力のみで押さえつける。

 

「ぐッ……があああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁッ!」

 

 

 ―――愛してるわ。負けないで。

 

 ―――アリア、私たちの娘……!

 

 

 ママ……? ダリア……?

 

 

 ―――そうか、この暖かさを身に纏えば良いのか!

 

「よっしゃぁぁぁぁぁぁッ!」

 

 掛け声一発、デュランダルを御すと同時に俺のギアが金色に輝く。

 

「その力……何を束ねた!?」

「響き合うみんなの愛がくれた、シンフォギアだぁぁぁぁぁぁッ!」

 

Synchrogazer

 

 デュランダルの一撃が赤き竜を両断すると、右手に握りしめたデュランダルは力を使い果たしたかのように剣先から砂のように崩れ落ちた。

 

「今だ、行け! アリア!」

「うぉぉぉぉぉぉッ! 全力全開!」

 

 身体中のバーニアを噴かせて、爆発しつつある赤き竜の体内に突っ込む!

 

「まだだ! まだ終わらせないッ!」

「なッ……!」

 

 俺は驚くフィーネを引っ掴むと、突入してきた時以上のスピードで脱出する。

 駆け抜けたと同時に、今までで一番大きな爆発が起きた。

 

 

 

♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬

 

 

 

 すっかり日が昇りつつある。朝焼けとはこういうものを言うのだろうか。

 前世でもあまり見なかったが、中々どうして絵になる光景だ。海と山と街、そして人々を赤い陽が照らし出す。

 

 二課のメンバーや未来ちゃんたち影の功労者、翼、クリス、響が待つ場所に背に負うたフィーネと共に戻ってきた。

 

「アリア……何を馬鹿なことを……」

「もう終わりにしよう、りょーこさん。これ以上、あなたと戦いたくはない」

「私は、フィーネだ……」

 

 彼女を地面に下ろす。

 

「でも俺にとっちゃ、りょーこさんなんだよ。それ以上でも、それ以下でもない。わかり合える人間同士だよ」

「ふん……。ノイズを作り出したのは先史文明の人間。統一言語を失った我々は手を繋ぐことよりも相手を殺すことを求めた。そんな人間がわかり合えるものか」

「俺達はあんたほど急ぎ過ぎてもいなければ、人類に絶望もしちゃいない。今日にわかり合えなくとも、明日にわかり合うために、俺達は歌い、戦い、手を伸ばし続けるんだ」

「ふっ……だが私にはこの道しか選べなかった」

 

 彼女は自嘲するように呟く。

 

「人が言葉よりも強く繋がれること、わからない私達じゃありません」

「…………。」

 

 響が語りかけると、彼女はこちらに背を向け少し距離をとった。

 

「でやぁぁぁぁぁッ!」

 

 皆の意表を突くように彼女はネフシュタンの鎧の棘鞭を無限に伸ばし、月の欠片へと突き刺すと渾身の力でそれを引き寄せた。

 

「私の勝ちだぁ! やぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

「何をするッ!?」

「月の欠片を落とす! 私の悲願を邪魔するものは、ここでまとめて叩いて砕く! この身はここで絶えようと、魂までは絶えないのだからな! 聖遺物の織り成すアウフヴァッヘン波形がある限り、私は何度だって世界に蘇る! 何処かの場所、いつかの時代、今度こそ世界を束ねるために! 私は永遠の刹那に生き続ける巫女、フィーネなのだッ! ハハハハハハハハハ!」

 

 狂ったように高笑いする彼女を見て、決して俺は憐れんだりすることは無かった。

 彼女は、彼女なりに人類の未来を想い、そして彼女なりの愛を天に伝えるために、ここまでの執念を賭けてきたのだ。

 ―――何千年も、一人で、孤独に。

 

 俺はそっと彼女の腰に手を回し、語りかけた。

 

「―――貴女が生き続けるのであれば、どうか伝えて欲しい。世界を一つにするのに力なんて必要無いってこと。言葉を超えて、俺達は一つになれるってことを」

「私達は未来にきっと手を繋げられるということ。私達には出来ないから、了子さんにしか出来ないから」

「まさか……!」

 

 ―――響、君も行くのかい?

 ―――もちろんですよ!

 

 短い時間でアイコンタクトを交わす。

 

「本当にもう……あなた達は放っておけない娘なんだから……」

「また会おう、りょーこさん。俺が生きている間か、死んだ後でも」

「あら、私はずっと生き続けているかもしれないわよ?」

「いいんだ。それでもいつか、星の煌きの導く彼方で会えるよ」

 

 お別れの時間だ。

 

「胸の歌を信じなさい」

「うん、またね、りょーこさん。大好きだよ」

「―――私もよ」

 

 りょーこさんを抱きしめると、何時ぞやのように彼女は俺の額に唇を落としながら、風に吹かれて彼女の身体は朽ちていった。

 

 

「うぅ……ひぐっ……あんたは、あんたはいつも勝手だ……! 勝手だ……バカ……!」

 

 

 





むにえるさん、ドムドムバーガーさん、玖遠さん、評価ありがとうございました!

先日、トイレ借りに入ったパチンコ屋でオスイチ11連しました(自慢)。クリスクリス翼クリス翼で絶望したけど翼が白文字の勝機を零すなで仕事してくれました。C時短も引けたし上位ゾーンにもぶち込んだし、やっぱウマ娘といい、二次創作するとヒキが上がるんよなぁ。
でもシンフォチャンスの高速変動はちょっとねぇ……。上位ゾーンを強調したかったんだろうけど、駆け抜けた時のヤれなかった感が強くなるだけだと思うわけですよ。
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