TS転生者だけど絶対に唱(うた)ったりしないんだから!   作:桜霧島

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Beyond the Time

 

 

「月の欠片の軌道計算、出ました。地球への直撃は避けられません……」

 

 藤堯(ふじたか)さんが冷静に軌道計算結果を皆に告げる。その声を聞き、俺と響は月の方へと歩みを進めた。

 

「アリアさん、響さん、何処へ!?」

「……たかが石ころ一つ、マヘーシュヴァラでバラバラにしてやりますよ」

「無茶な!」

「人と人は繋がることが出来る。こんな時だからこそ、人の心の光を見せつけなくちゃいけないだろう? ―――なぁ、響?」

「そうですね、アリアさん!」

「響!」

 

 未来ちゃんが叫ぶと、彼女に向かって響が返答した。

 

「何とかする! ―――生きるのを、諦めないで」

「んじゃ、ちょっと行ってきますわ。未来ちゃん……まぁ、何だ。俺たちゃ死んでも生きて帰ってくるよ。だから、頼むな!」

 

 笑顔で彼女らに別れを告げると、俺と響は宇宙(そら)へ向かって駆け出した。

 

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

Emustolronzen fine el baral zizzl

Gatrandis babel ziggurat edenal

Emustolronzen fine el zizzl

 

 

 絶唱し、俺は黄金を身に纏う。

 二人で成層圏を抜けようかという頃、俺と響を(からか)うような声色の念話が聞こえてきた。

 

「そんなにヒーローになりたいのかぁ?」

「私達を仲間外れだなんて、水臭いじゃないか。アリア、立花」

「翼―――それにクリスまで!」

「翼さん……クリスちゃん……」

「こんな大舞台で挽歌を歌うとはな。アリアと立花には驚かされっぱなしだ」

「ま、一生分の歌を歌うにはちょうどいいんじゃねーか?」

 

 ははッ! 揃いも揃ってバカばかりだ。

 

「帰れないかもしれないぞ?」

「正直に言えば心残りはあるが……だが、こんな舞台で歌うも悪くない。奏も、こんな気分だったのかもな」

 

 翼が微笑む。本来なら悲壮感を漂わせる場面なんだろうが、俺は少しばかりウキウキした気分になっていた。目の前にはわかりやすいヒーローになるための条件が迫ってきているし、何より隣には翼がいる。

 

「ごめんなさい……翼さん、クリスちゃん」

「ばーか。そうじゃねぇだろ!」

「―――だな。ありがとう、みんな。死んでも帰るぞ! 俺たちの居場所へ!」

「はいッ! ―――じゃあ、行きましょう! ハートの全部でぇッ!」

「「「おうッ!」」」

 

 マヘーシュヴァラの絶唱は2回目。1回目はボロボロになったが、それはアームドギアをトリシューラ1つだけしか展開しなかったからだ。

 俺は機械仕掛けの腕(ブレイキアム・エクス・マキナ)にヴァジュラとチャンドラハースをそれぞれ握る。ヒンドゥー神話においてチャンドラハースは別名『月の微笑』とも呼ばれる三日月刀だ。まさにこのシチュエーションのためにあると言っても過言ではないだろう。

 背中越しに光輪(チャクラム)を展開し、(なま)の両手でトリシューラを握る。これで俺の準備はバッチリだ。とっておきの、とっておきを叩ッ込んでやる。

 

「翼ッ!」

「なんだ、アリア?」

「『月が綺麗ですね』」

「―――! ああ、『お前と見るからこそ』な!」

 

 ふふっ。一遍やってみたかったんだよ、この遣り取り。察してくれた翼も流石だな。

 

 クリスは背中の射出機を横に大きく伸ばし、大型ミサイルを100ほど展開する。

 また、翼は剣を最大限に大きくさせ、全てを砕く一撃を準備している。

 響は腰だめに両の拳を構え、腕に装着された衝撃機構を最大まで後方に引っ張っている。

 

 俺たちは目線で合図を送ると、それぞれが一つになって月の欠片に飛び込んでいった―――

 

 

 

 

♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬

 

 

 

 

 月に向かって響たちが飛び立って3週間。風鳴司令からは彼女らのステータスがMIA(作戦中行方不明)からKIA(作戦中死亡)に切り替えられたと聞いた。

 

 今日は梅雨と夏の狭間のジメジメとした空気に当てられたのか、朝から雨が降り続いている。山の上の墓地に向かってバスに揺られる私は、窓の外を眺めながら一人彼女らのことを想う。

 

 月の一部破壊という人類史上に比類無い暴挙の責任を政府が問われている現状、彼女らの墓は建てられたものの、名前などは彫られることは無かった。

 

 響……また会いたいよ。流れ星を一緒に見るって約束したじゃない……。

 

 翼さん、クリス、アリア……短い時間だったけど、一緒に過ごした時間は入学してから―――ううん、今までの人生でも一番濃い時間だった。

 

 寂しいよ……。

 

 

「きゃぁ! 助けてぇッ!」

「―――はッ!?」

 

 誰も眠っていないお墓の前で泣き崩れていると、何かがぶつかるような大きな音がし、女性の悲鳴が聞こえた。

 急いで声のした方へ駆けつけてみると、車が電柱にぶつかって中破しており、道路の左右からノイズが奇妙な音を鳴らしながら迫ってくるところだった。

 

「こっちへ!」

 

 半分無理やりながら、呆然と立ち尽くす女性の手を取り、駆け出す。

 二課の人たちと避難誘導をやった経験が活きている。しかし逃げ場は左右になく、私は女性と一緒に山の上の方へ駆け出していった。

 

 だけど元陸上部の私はともかく、女性はすぐに息が上がり、道の真ん中で倒れ込んでしまった。

 

「私、もう……!」

「お願い! 諦めないで!」

 

 ノイズが目の前に迫ってくる。女性はその光景を見て気絶してしまった。

 私は彼女の前に立ちふさがり、精一杯の抵抗を見せる。

 

 ―――生きるのを、諦めないで!

 

 

 

 

 

 

サンダーボルトスクリュー!

 

 

 

 

 

 目を見開き最期の瞬間まで抗うと心に決めた時、ノイズを蹴散らしながら謎の掛け声とともに誰かが降ってきた。

 

 

「あの飛び蹴りはサンライズボンバーでは無かったか……?」

「いや、バーストキックじゃねぇか……?」

「アリアは暇にかまけてアニメばっかり観てたからな……」

 

 

「ゴッドハーンドゥ! スマァァァッシュ! ……成敗ッ!」

 

 濃い青と金のシンフォギア、金色の髪をした少女が決めポーズでそこに居た。

 そして向こうの坂の上には響やクリス、翼さんもいる……!

 

「わーはっはっは! 天空宙心拳を修めた俺はまさに無敵! 未来ちゃん、言ったろう? 俺たちは『死んでも生きて帰って来る』って! 親友のお届け一丁あがりッ!」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

【おわり】

 





ここまでお付き合い頂き、誠にありがとうございました。
途中、心折れそうになりましたが感想、評価、お気に入り登録して頂いた皆さん、通りすがりに読んで頂いた皆さんのお陰で続けることが出来ました。

後は不定期に設定集や閑話等を投稿するつもりですが、シンフォギア二次創作についてはとりあえずここまでにして、アニメ(まだAXZを観ている途中)と、余命幾許もないアプリを楽しみたいと思います。
続きを書くつもりは一応ありますが……。

他の拙作、『ようこそ実力至上主義の教室へ』と『魔法科高校の劣等生』を題材にしたものも宜しければご覧頂けたりすると嬉しいです。魔法科高校の方は鋭意続きを書いています。
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