TS転生者だけど絶対に唱(うた)ったりしないんだから!   作:桜霧島

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愛と憎しみ
再生と破壊
相反する二つの言葉を
つなぐものは
人と人の絆




初陣とこれから

 

 

 ママ、ダリア、ありがとう―――大好き。

 

 でも、俺、許せないんだ。ノイズ達を。こいつらを操って人の生命を弄ぶ奴らを。

 

 何より―――自分自身を。

 

 この世界に生まれたと知った時、つまりママが死んじゃった時、思ったんだ。結局、自分は傍観者であるだろうと。傍観者でありたいと。

 でも、そんな風に世界は甘やかしてくれなかった。

 

 正直、唱うのは怖いよ。戦うのだって怖いよ。

 

 前世も含めて30年ほど生きてきたけど、大人になったと思ったことは無いかな。責任感ってやつ?

 まあ、働いたこともなければ恋人が居た試しも無いからしょうがないっちゃしょうがないけどね。

 

 でもさ、俺がやんなきゃいけないときって何となく分かったのさ。今が生命を燃やす瞬間だと。

 カッコつけてるわけじゃないんだ。でも、母さんならわかってくれるよね?

 あの雨の日、俺がトラックに轢かれたとき、小学生を咄嗟に投げ飛ばしたあのとき―――それに近い感情が抑えられないんだ。

 

 うん、ママも、ダリアも、きっと同じような気持ちだったんだと思う。天羽奏さんも。

 

 だから、俺、唱うよ。

 

 戦い方? ママがくれたコイツが教えてくれるさ。

 

 大丈夫。この為に前世の記憶なんて珍妙なモノを持ってるんだから。

 

 

 

Prajatroi Mahesvara tron...

 

 

 

 

 胸の中に浮かんだ聖詠()……

 

 へぇ、マヘーシュヴァラっていうんだ。

 薄々そうじゃないかとは思ってたけど、しれっと原作に無いギアじゃん。何、どこの聖遺物よ。あ、インドだっけ? 後で生きてたら調べてみよう。

 

 光に包まれ手、脚、胴体、頭にギアが装着される。

 全体的に青を基調として黒と金の装飾が施されている。いいね、俺の好みだよ。

 白の挿し色がある翼の青いギアとは青の色味が違う。これは青というより『藍』に近い、濃い青だ。

 

 手を包むギアは、右手に白の珠を、左手に黒の珠が嵌め込まれている。手首のファンは排熱機構か。

 脚はシンプルに膝下まで覆われ、たぶんガングニールと同じようにふくらはぎ、踵がブースターになってそうな感じ。

 腰と肩にもブースター、背中には3対6枚の白い羽……羽の枚数って何か意味あったよな……あ、これ武器にもなるの?

 っつーかこれ、機動力マシマシでとりあえず突撃しろってコト!?

 

 羽もあって全体的なシルエットはシュルシャガナに近いなって印象だけど……げぇっ! へそ出しじゃん! やめてよぉ!

 

 なんやかんやで装着完了。たぶん0.1秒もかかってないと思う。

 万能感がヤバい。手脚を空手の型のように動かし、馴染み具合をみる。

 意外と重さを感じないが……ナチュラルに変身バンクをやってしまった。

 

 ええい、恥ずかしいが誰も見ちゃいない!

 

「いっくぞぉぉぉぉぉぉッ!」

 

 恥ずかしさを紛らわせるために叫びながら、敵に向かって突貫!

 脚部のギアが開き、ブースターが点火される。前傾姿勢を保ち、拳を握り込んで……抉りこむように打つべし! 打つべし!

 拳の一振りで2,3体のノイズを打ち消す。だがまだまだ足りない!

 

「何か武器は!?」

 

 俺がそう叫ぶと腰のハッチが開き、槍が出てきた。

 

三叉の槍(トリシューラ)……イカす!!」

 

 槍の使い方なんて知っちゃいねえ。無双シリーズでもやってりゃよかったな。なんかビームとかも出せそうだし。

 

 兎に角、出てきたそれを構え、突撃をかます! 最短で、真っ直ぐに、一直線にッ!

 あの娘がシンフォギア装者になったら突撃の極意を教えてあげよう。

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 槍を使った突撃と薙ぎ払いで3分の1くらいは削れたか。何か広域攻撃が出来れば……

 あ、羽があるわ。

 

「行けッ!」

 

 掛け声と共に羽を飛ばそうと意識すると、意を汲んだかのようにセミオートで羽が動き、ノイズを攻撃する。ビームを出しながら縦横無尽に動き回る。

 

 ……ファンネルじゃん! とうとう俺もニュータイプになったか。

 

「危ない!」

 

 何だ!?―――後ろからノイズの突撃か! 攻撃ばかりで周りの観察が疎かになっていた。声を掛けてくれたのは……翼だな。

 飛ぶように、宙を駆け上がるようにノイズの攻撃を躱す。チッ……まだまだニュータイプへの道は遠いな。

 

 それにしても、もう話せるまで立ち直ったのか……強い娘だ。惚れちゃうじゃないか。

 

「ありがとう、翼!」

「私の名を……?」

 

 あ、やっべぇ。でもバレバレだからいいじゃん。むしろよくバレてないもんだと思ってたよ、昔から。

 あと、出来たら手伝ってほしいんだけど……。

 

「翼、剣を取れ!」

 

 追加で現れたノイズの大部分は撃ち消した。だがデカいのが一体、残っている。アニメでもよく出てきた、巨大なイモムシみたいなやつだ。

 俺の言葉に彼女は戸惑っているが、ギアに慣れていない俺の攻撃力であのデカブツの装甲を撃ち抜けるかは微妙だ。

 

「奏さんの想いをッ! 紡ぐのはッ! 翼しか居ないだろうッ!?」

「……!」

「聞かせてみろ、風鳴翼の歌をッ!」

 

 周囲の中小ノイズを掃討しながら彼女に発破をかけると、目に光が戻ってきた。いいねぇ、さすが主人公の一人だ。

 

「翼、あのデカブツに仕掛けるぞ! 合わせろ!」

「お前! 私に命令するなッ! ―――喰らえ、『蒼ノ一閃』!」

「『パーシュパターストラ』!」

 

 トリシューラの槍先にエネルギーを集め、全力全開の突撃をかます! えぇい、ファンネルの火力も一緒にもってけぇッ!

 力こそパワーだ!

 

「いっけぇぇぇぇ!!」

 

 俺の突貫がデカブツの腹に大穴を開け、翼の斬撃がデカブツを両断する。

 

 デカノイズは光と爆音を発しながら、周囲の残っていたノイズを巻き込んで爆散した。

 

 

 

 

 

 ―――終わった。

 

 

 念の為、周囲を警戒するが、ノイズらしい影は見当たらない。そうこうしているうちに最初の救助ヘリがやってきた。

 

 ビッキーが心配だ。原作より少しばかり搬送に時間が掛かってしまったかもしれない。

 

「おい……お前は……」

「謎の装者、じゃあダメだよな」

 

 俺はギアを収める。ライブに来たときのまんまの服装に戻った。

 

 ―――うん? 穴のあいた服は、ズボンは? 傷跡も治ってる……?

 

 あ、やべぇ。目眩がする。

 

「……ごめん、体力が、限界、みたい。目が覚めたら、いっぱい話そう。俺のことは、多分、風鳴弦十郎が知ってると……思う……から……」

「おい! しっかりしろ!」

 

 立ったまま意識を手放そうとする俺を翼が抱きかかえてくれる。

 参ったなあ、女の子と抱き合うなんて初めてだよ。

 

 ありがとう、ママ、ダリア。この翼の温もりを守ることが出来たよ。

 

 だから次に会うときはいっぱい褒めてね。明日か、明後日か、何年後かはわからないけど。

 

 

 

 愛してる。

 

 

 

 

♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬

 

 

 

 

 

「知らない天井だ……」

 

 すみません、人生で一度くらい言ってみたかったランキング5位くらいのセリフなんです。1位は何だろ……止まるんじゃねえぞ、とかかな。

 

 きっと防衛省の息のかかった病院、あるいはリディアンの地下なのだろう。俺は病院着に着替えさせられ点滴と心電図、脳波測定器に繋がれている。

 手足を拘束されていないのが救いだ。なにせ、寝相悪いからな。

 

「気がついたかしら?」

「はい」

「あれからまる1日ほど経ってるわ。どこか、痛む箇所はある?」

 

 櫻井了子がベッドの脇に立ち、目が覚めた俺からテキパキと点滴やコード類を俺の身体から外していく。

 

「―――パッと見た感じ無いと思うけど、動いてみなきゃわかんないです、了子さん」

「意外と冷静ね」

「そんなことありません。……ライブ会場であったことが夢であるということは?」

「残念ながら、純度100%の現実よん♡」

「―――たぶん、俺、これから取調べとか検査とかが続きますよね」

「そうね」

「あと1日―――いや、半日だけ貰えませんか?」

「それは……いえ、そうしましょう」

 

 櫻井了子が暖かく微笑む。

 

 少しだけ、涙を流す時間が欲しいんだ。

 

 俺は深く布団に潜り込み、ダリアを想いながら、声を押し殺して泣いた。

 

 

 

♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬

 

 

 

 あと半日、と了子さんには言ったが、泣き疲れた自分は加えて何時間か寝てしまったようだ。

 目を開けると了子と弦十郎がベッドの横に座っていた。弦十郎は体の見えるあちこちに包帯を巻いている。

 

「おはよう、寝坊助さん♡」

「あい」

「それで、色々とお・は・な・し、したいんだけど♪」

「ここで?」

「ええ。その前に聞きたいことがあればそちらからどうぞ」

「スタジアムの生存者は?」

「……脱出出来た人を除けば、あなたと翼、あなた達が守ったあの女の子だけよ」

「ダリアの遺体は?」

「発見出来なかったわ」

 

 そうか、やはりノイズに瓦礫ごと呑み込まれたせいか。大丈夫、覚悟はさっき決めた。

 

「そうですか……。いや、あの娘が無事で良かった」

「―――アリアくん、この度は本当にすまない。俺がライブのチケットを渡したりしなければ……ダリアさんも……」

「後悔先に立たず、です。俺としてはその事よりも、ママが亡くなったあとでした約束を果たさなかったことを謝って欲しいですね」

「身命を賭して守る、ということが出来ずに……大人として恥ずかしく思う。すまない」

「……まぁ、恨み言を言いたい気持ちはありますが、愚かだった俺も悪いんです。取り敢えずこの件は手打ちにしましょう」

「すまない―――ありがとう」

「ですが……あのペンダントは一体?」

 

 俺が聞くと、嬉々として櫻井了子がシンフォギアについて説明しだした。だいたいはアニメで聞いていた通りだったが、唯一、ママのくだりは初めて知ることも多かった。

 

 ママ―――宝泉カノンは考古学会では有名な女史だった。大学に在学中から独自の理論を掲げ、世界中の聖遺物について研究していた。それが櫻井了子の目に止まり、共同研究に至ったそうだ。

 そして最初の発掘がインド、というかパキスタンのモヘンジョ・ダロであり、そこで発見されたのがマヘーシュヴァラの欠片だそうだ。

 そして突如発生したノイズに襲われ、宝泉カノンは生命を落とした。

 

「―――本来、あのペンダントは日本政府の管理下に置かなければならないの。特に、こうして私達がその性能を見ちゃった後ではね。だから―――協力、してくれる?」

「私からもお願いする。どうか、我々の仲間となってノイズと戦ってはくれないだろうか」

「……いくつか、お願いがあります」

 

 櫻井了子が「お願いってなぁに?」とあざとく聞く。

 

「俺を強くしてください。俺は……弱い。差し当たっては槍術と格闘術、あと護身用に銃を」

 

 この世界は物騒だ。味方面してても後ろから撃たれることもあるし、そもそもノイズを倒さなけりゃなんにもならねぇ。

 ノイズ死すべし慈悲はない、いのちだいじに、が今後の俺のモットーだ。

 

「……わかった。槍術と格闘術については私が時間のあるときに教えよう。だが、銃の携帯については内部で協議する」

「お願いします。―――次に衣食住の確保です。ママの遺産はありますが、成人するまでに耐えうるかはわかりません」

「その点については心配無用だ。この話を呑んでくれた時点で君は政府の保護下にある。……それに、ダリアさんについての『見舞金』も出るからな」

「出来れば、あの家の物は、とっておきたいのです」

「……了承した。君の住まいは別に用意するが、出来る限り協力しよう」

「ありがとうございます。最後に―――ママとダリアのお墓を」

 

 俺がそう言うと、二人とも顔を下げ、沈痛な表情を浮かべた。

 風鳴弦十郎の方は心からそのような表情を浮かべているのだろうが、櫻井了子、フィーネはどうなのだろうか。演技だとすれば非常に上手い。だけど……。

 

「―――わかった、引越し先の近くに建てられるよう善処する。だが逆に私達からも要請がある」

「聞きましょう」

 

 その後、俺がリディアン女学院に編入すること、編入にあたり寮に入ること、マヘーシュヴァラの研究に協力すること、二課の一員としてノイズと戦うこと等が取り決められた。

 

 

 

 

 

 ―――えっ、女学院?

 

 

 





アリアちゃんのイメージをAIで作成してみました!
めちゃくちゃぴったり!可愛い!しかも俺っ子なんですよ…!


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