TS転生者だけど絶対に唱(うた)ったりしないんだから! 作:桜霧島
カルマが私の世界を焼き尽くすなら
灰の中から蘇ってみせよう
みんなの願いが零れそうになるなら
生命を燃やし 救(掬)ってみせよう
ふーんふふふーんふーん♪ふふふふふん♪ふふふーんふーんふーんふーん♪ふふふん♪
講堂から校歌が聞こえてくる―――春だねえ。
いくら寝ても寝たりねえや。若草は寝転んでも痛くないし、心なしか空気さえ蒼く澄んでいるようにも感じる。
俺は愛用のギターと共に学院内を散策し、この場所を見つけた。
今日は快晴、春日和。お天道様も寝てろと―――
「なーにサボってんのよ、アリア」
「りょーこさん」
見つけるのはえーよ。つけてたのか?
「高等部入学というハレの日にサボるとはいい度胸してるじゃない」
「りょーこさんこそ、本部に詰めてなくていいんですか?」
「私はいいのよ。これから出張だ・か・ら♪」
「今日は何処へ?」
「防衛省よ。ま、夜には戻ってこれるでしょ」
「相変わらず市ヶ谷のアホ共の相手ですか、ご苦労様です。俺なら金を払ってもごめんしたいところですよ」
「半分くらいはあなたのせいなんだから……もう! あのジジイども、『どこにマヘーシュヴァラを隠してたんだ』とか『あの少女を査問せよ』とかうるさかったのよ?」
「お手数おかけします。お詫びに帰ってきたら何でもしますよ」
「ほんとにぃ? あーんなことや、こーんなことまでしちゃうかもよ♡」
わきわきと両手を動かす了子さんだが、御年34歳。そろそろ体面的には厳しいお年頃だ。
「いいですよ、りょーこさんなら。だいたい、この2年で俺の体のことはりょーこさんのほうが詳しいくらいなんですから」
「……ほんと、生意気になっちゃったわよねぇ。あの頃のアリアが懐かしいわぁ」
「どの頃の話ですかね……昔からこんな感じでしたよ。っていうかヨチヨチ歩きの頃から俺のことを知ってるじゃないですか」
講堂では俺たち私立リディアン音楽院高等部1年生の入学式が始まっている。
立花響も、小日向未来も、今日から新生活を迎えるべく期待に胸を膨らませている頃だろう。
だが俺はこの2年でだいぶスれてしまった。
「こちとら必死に命賭けて戦ってるのにさ、つまらねえことばっかり言いやがって……俺たちを政争の道具にするんじゃねえっての」
「そう言わないの! 貴女たちに救われてる人だって、確かに居るんだから……」
「
「人生一度きりよ! 恋せよ乙女、さもなくば私のようにいいオンナになれないぞ♡」
「あいー」
空を仰ぎ見たまま、片手を振って別れを告げる。
人生一度きりか。二度目の俺は一体何なんでしょうね。
他のみんなは人生二回目なら上手く立ち回れるのだろうか。フィーネなんて人生何千回もやってそうだけど、なかなか下手くそだと俺は思うぞ。
だけど俺もさ、アニメで観てた限りではフィーネってアホだなぁって思ってたけど、いざこの世界で生きてみたら、これでも下手なりには意外と上手く立ち回っている方だと感心する。から回ってるのは否定しないけどね。
まあ確かにノイズ使って人の生命を無駄に消費するのは許せないけど、ノイズに遭遇するのは確率で言えば通り魔に遭うのと変わらないって聞くし、そういう意味では誤差って言っても差し支えのない範囲とも思う。
アレだけ性格ねじ曲がるのは、フィーネくらい長く生きて人間の醜さを間近で見せつけられ続けたら「そらそうよ」ってレベル。
俺だって生まれてこの方15年で悪意を100ダースほど公私で浴びてきたし、暖かいのは二課の人らとその周辺くらいよ。あとフラワーのおばちゃん。
まあ、アッツアツのが今さっき入学してきたんだけど。
フィーネなんて、言ってしまえばその動機が「こっぴどく振られたから」じゃん? ぶっちゃけ可愛いもんだよね。他のラスボスの方がイマイチ何やりたいのかはっきりしなかったし、むしろ無意味に人殺してるのはこっちの方。
え? ダリアのことは良いのかって? 良いワケ無いじゃん。でもあれは俺も共犯。「ダリアの仇だー」ってフィーネを殺しに行くのなら、同じく俺も死に値すると思ってるよ。本来なら避けられた事故だもん。
だから彼女とはこんな感じでナアナアな関係を維持するしか無いんだよ。
「はぁ」
これから暫くは忙しくなるんだろうなぁ。
「こら、不良少女」
声で誰かは分かったが、一応顔を向けてみる。翼だ。
「やほー、美少女」
「『やほー』じゃない! それから誰が美少女だ、たわけ!」
「知ってた? 『たわけ』って『田んぼを分ける愚か者』って意味なんだって」
「なら愚か者、主役のお前が入学式に出席せずどうするんだ!」
「ははっ。ほとんどが内部進学組だし、あんまり変わり映えしないからねぇ。それにもう終わっちゃったし、翼だって学校を抜け出してるじゃん」
「私は主役じゃない―――いいから、とっとと戻りなさい!」
「ほほーう?」
ニヤニヤしながら翼の顔を覗き込む。
彼女とはこの2年ですっかり仲良くなってしまった。『翼』と呼び捨てにさせてくれるのもその証だろう。
どうも戦闘中は呼び捨てになっちゃうんだよね。私生活に切り替わっても偶にそうなるもんだから、翼も「そのままでいい」って言うし、翼と呼んでいる。
何やかんや、彼女は奏さんにそう呼ばれていたから、懐かしいというか落ち着くというか、そんな気持ちもあるのだろう。
時に背中を預け合い、時にぶつかり合い、それこそあーんなこと*1やこーんなこと*2まで一緒にした仲だ。
非常に残念ながら、あーん♡なことはやっていない。
「な、なんだその顔は……!」
「そんなこと言うと、翼ちゃんのお部屋がどうなるかわかってるでしょーね……?」
「くっ、卑怯な……!」
原作では緒川さんがやっていたようだが、よく考えなくても問題なので、俺が2、3日に1回、翼の部屋の様子を見るがてら一緒にご飯を食べたりしている。
だがまるで成長していない……。性徴はしたくせに……。
「はぁ。翼だって俺が集団生活が苦手なの、よく知ってるでしょう?」
「それとこれとは話が別だろう……それに、苦手だからといって逃げてばかりでは」
「それ、家事から逃げてばかりの翼が言う……?」
「むぅ……アリアはいつも意地悪だ。そんなところまで奏に似なくてもいいのに……」
「ごめんよ、
すっと立ち、翼のさらさらの青い髪を撫でる。
「―――俺は嬉しいんだ、風鳴翼の隣に立てることが。色んな意味でね」
「私も、アリアと一緒ならまた……」
その役目は多分た優マさんに譲るかな。あの人たち、今頃何してるんだろう。
現状、装者はよっぽどのことがないと海外には行けないからね。それこそフロンティア事変が終わるまでは
まぁ、アレが手に入った今、
「さあ、翼も迎えに来てくれたことだし、そろそろ行きますか! 今日の訓練はなんじゃろなー」
「……今決まったぞ。今日は私と模擬戦だ」
「ヒェッ!? ……手加減してくれたりとかは?」
「ノイズが手加減してくれるとでも?」
「ノイズは三次元軌道で刀を使って襲ってきたりしないよ!! お
「安心しろ、峰打ちで済ませてやる」
「むしろ峰じゃないと死んじゃうよ……」
♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬
剣戟が響く。翼の一の太刀を剣で受け止め、鍔迫り合いをする。力ではあちらのほうが有利……なら!
「ファンネル!」
「ほほう、少しは剣の腕も上達したじゃないか」
「そりゃあ! お手本が! 毎度毎度本気で!
上に意識を向けさせ、隙をついて剣を打ち込むが簡単にいなされてしまう。
俺が剣を使っているのには理由がある。マヘーシュヴァラの主武装は
とは言え、黙って受けてくれる翼ではない。バク転で俺から距離を取ると、そのまま攻撃の動作に移ってくる。曲芸師かよッ!
「逆羅刹ッ!」
脚の筋肉量は腕の3倍ほどある。但し逆立ちで攻撃など普通なら踏み込みが甘くなる分、腕を使った打ち込みと変わらないかそれ以下の威力しか出ないが、ギアを纏った状態なら話は別だ。一撃一撃が必殺の力を持っている。それに剣筋が見えづらい。
俺は持っていた剣を勢いよく投げつけ、翼の勢いが少し衰えた隙にトリシューラに持ち替える。
それを見た翼は改めて間合いを取り、大きく跳躍した。
「千ノ落涙!」
ちょっと! 翼、殺意高すぎない!?
……チッ! この技は範囲攻撃、受けさせるのが目的だ。なら翼の着地点に向かって迂回しながら回避―――って、先回りされた!?
「甘いぞ!」
「させるものかよぉッ!」
間一髪、イナバウアーのように上体を曲げ、横振りの剣を避ける。
受けてばかりじゃジリ貧だ。何とか攻めの手段を考えないと!
「インドラの雷ッ!」
「チャージなんてさせるものかッ!」
かかった! チャージの姿勢をすぐに解除してエネルギー波を打ち込む。翼の軌道を限定して、トリシューラを突き出す!
「……こんなのアニメでしか観たことないんだけど」
「安心しろ、現実だ」
これは一本取れたかと思ったが、突き出したトリシューラの柄に乗るというニンジャ顔負けの技により俺は完全敗北した。
「一本!」
「痛ぇ!?」
ショッギョムッジョ。
♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬
「アリアくん、翼、ご苦労だった」
「疲れましたよ、司令……。可愛い姪っ子さんに手加減と家事を覚えるように指導しておいてください。お嫁に行けなくなっちゃいますよ?」
「減らず口を……! 私は防人、家庭に入ることなど無い!」
「じゃあ俺が翼の嫁になるということでよろしいですかな?」
「よろしくない!」
「……仲が良いのは悪いことではないが、まずは反省会だ。アリアくんは、かなり武器の扱いにも慣れてきて、そこは良い部分だ。だが、足を止めて打ち合うことが多くなった分、長所である機動力をスポイルしてしまっている」
「やっぱそうですよねー。あとは技の引き出し方もまだまだって感じです。翼が今日やったように回避、攻撃、機動力で圧倒、と一連の流れで複数の工程を踏めるのがベストなんですけど」
「その通りだ。そのためにはまだまだ基礎体力、筋力が足りていない。きちんとトレーニングも、学業も、怠らないように」
「うへえ、りょーかいです」
今日のサボりも含めて釘を差されてしまった。
しかし何かいいアイデアは無いかなー。
槍キャラ、あるいは武器いっぱい使うキャラって『かませ』が多い印象なんだよな。アニメやマンガの主人公ってだいたい刀か銃か無手だし、それ以外は特殊能力で何とかするタイプの気がする。
「―――そう不貞腐れるな、アリア。剣筋も悪くないし、特にファンネルを使った上下の攻撃は捌くのが大変なんだ。事実、この何ヶ月かは手加減する余裕がなくなっている。私もアリアに追いつかれないために必死なんだ」
司令のコメントに俺が考え込んでいると、落ち込んでると思ったのか、翼が声をかけてくれた。
「―――ありがとう、翼。大丈夫だよ」
「二人とも今日の訓練はこれで終わりだ。解散してくれて構わないぞ」
「わかりました」
時刻は夕方5時。今日は授業が無かったから始まるのが早かったしね。
「ねえ、翼。反省会の続きは『フラワー』でしない?」
「うむ、それはいいな。シャワーを浴びたら一緒に行こう」
「いえーい! 豚玉ー♪ エビ玉ー♪ モダンー♪」
「まさか全部食べるのか……?」
入学式が終わったということは、戦の足音が近づいているということだ。
だが、今は一時の幸せを翼と分かち合ったって罰はあたらないだろう。
投稿するつもりは無かったんスけど、大阪ダービー勝利でうひょぉぉぉってなったので投稿します。
それから感想欄の人たち、すごく……すごいです(NTR感)
元ネタとか一発で当ててくるし……指摘も的を得てるし……
もう少しマイナーなネタや設定を持ってくるしかありませんな(ゲス顔)
剣、杖、光輪の名前、あと技名を募集します。
感想かどこかにぶち込んでもらえたら採用したりしなかったりします。
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