TS転生者だけど絶対に唱(うた)ったりしないんだから!   作:桜霧島

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槍の鼓動

 

 

 紅茶とコーヒー、どちらが好みかという話は海外でも『アイスブレイク』としてよく使われている。二課の給茶機には両方あるが、俺はコーヒー派だ。

 ミルクあり、砂糖はスプーンに半分。これがここのコーヒーの最適解だとばっちゃ(櫻井了子)が言ってた。

 

「なーんか最近、きな臭くないッスかねえ」

 

 そんなこだわりの一品を啜りながら、オペレーター陣と俺は駄弁っている。

 

「と、言いますと?」

「いえね、藤堯(ふじたか)さん。出撃の頻度の話ですよ」

「それは仕方ありません。翼さんには学業に加え、歌手としての活動があるのですから。アリアさんには負担をかけて申し訳ないとは思いますが」

「それもそうなんですけど、なーんか気に食わないんですよね。何と言うか、誘い出されている感覚があるというか」

「興味深いわね、アリアちゃん。どうしてそう思うの?」

「そうですね……例えば友里(ともさと)さんが兵士で、何処かの拠点を攻め落とそうとしているとします。その時、まずは何をしますか?」

「そうね……。まずは敵軍の数、防衛設備の状況、索敵範囲とかを調べるかしら」

「Exactly. そして最近のノイズの出現パターンの解析は?」

「ここにあるわよ。でも、特に不審な点は見当たらないわ」

「何かパターンがあるとかは?」

「特に無いわね」

「つまり、そこなんですよ」

 

 原作ではこのあたりは特に描かれていないところだ。散発しているノイズ被害に対し、風鳴翼が心と身体を痛めつけながら孤独に戦う姿が描かれている。

 だが、これはフィーネによる二課のエマージェンシースピードの測定や装者の疲労を狙った攻撃という一面もあったのではないかと、ふと思ったのだ。

 ただソロモンの杖が起動したのがいつ頃のことかハッキリしないから具体的にどのノイズの発生がそれかはわからないし、単に俺の考えすぎなのかもしれない。俺がフィーネならそうするというだけの話だ。

 

「本来なら『特異災害』たるもの、規則性や法則性があってもよさそうなもの。地震雷火事おやじ、発生のメカニズムや法則性はある程度絞られている。しかしここまで分散してるのは、何か他の要因があるのでは無いかと、そう思ったのですよ」

「……時折、アリアちゃんは鋭くなるわね」

「酷いなあ。俺はいつも真面目にしてますよ? りょーこさんの実験だってアレだけ貢献してるのに」

「ところでアリアさん、また学校サボりましたね……? というか現在進行系で……」

「いや、まぁ、はい、そうッスね」

 

 今日は平日の午前中。つまり俺がここに居ていい時間ではない。

 

「ダメじゃないですか」

「仕事はしてますよ。成績も悪くないですし」

「学校で友達作って、勉強して、遊んで、青春を過ごすのも立派な子どもの仕事よ?」

 

 ぐうの音も出ない。

 

「俺、集団に受け入れられた経験ってほとんど無いんですよね。幼少期はママのアレでハブられてたし、中学時代もツヴァイウィングのアレで……結局、ね。まぁ俺には翼が居るから大丈夫ですよ」

 

「つべこべ言ってないで学校に行きなさい。その翼だって今日は学校にいるんだから」

 

 不幸オーラを出せばいけるかと思ったが、一刀両断された。

 

 ぐう。

 

 

 

♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬

 

 

 

「―――アリアが珍しく学校にいると思ったら、そういうことだったのか」

「まぁ、お昼ごはんにはちょうど良かったですしお寿司」

「今日のメニューに寿司は無いぞ?」

 

 ということで、翼を愛でる会、カフェテリアに緊急招集だッ!

 イカれたメンバーを紹介するぜ! 俺! 以上だ!

 

「言葉の綾だよう」

 

 俺が翼と会話していると、ヒソヒソと周囲の声と視線が集まってくる。

 はいはい、有名人様とその金魚のフンが通りますよーっと。

 おらッ! どけッ! サイン? 俺のをくれてやる!

 

「おい、アリア。そんなに周りを威嚇するんじゃない。―――大丈夫、ここにお前の敵は居ないさ」

「……ママぁ」

「誰がママだ」

 

 翼とアホみたいな会話をしていると、俺たちを遮る人影が。すわ躾のなってない翼のファンかと思ったら……そっくりそのままそうだったわ。

 

「あ、あの……」

 

 そう、これが翼と立花響のセカンドコンタクトだ。

 ご飯とお箸を持ったままプルプルと震えている。翼も原作に比べたらツンツンしてないほうだと思うんだけどな。まぁ命の恩人で、かつ日本が誇る歌姫が目の前にいりゃあ、そらそうなるか。

 

 おやぁ? 響の視線が俺と翼を行ったり来たりしているぞ? ―――ははーん、さては俺があの日、戦っていたことに気づいたな?

 

「なんだい、お嬢ちゃん? 口元に『お弁当』がついてるぞ♪」

 

 そう言うと響はアワアワして黒髪の少女――あれが小日向未来か――のところに戻っていった。

 

「……アリア、あの娘はお前の同級生じゃないのか? お嬢ちゃんとは……」

「翼。あの娘たぶん、俺たちと奏さんが守った少女だよ」

 

 ハッとした表情で響の方を振り返る翼。

 

「そう、か……。ちゃんと生きていてくれたのだな」

「たぶん、俺たちがあそこで戦っていた装者だと気づいたのさ。視線が俺と翼の両方を行ったり来たりしていただろう? ただのマナーの悪いファンなら、ああはならないよ」

「アリアはよく気づいたな」

「何となくあのボケっとした顔に見覚えがあったのさ。まぁ、あの場で騒いでたら茶碗の中の米を全部口に叩き込むところだったけどね」

 

 苦笑いしながら誤魔化す。そりゃあ知ってたからね。

 ……あれ、ちょっと待てよ。

 

「そう言えば、翼の新曲の発売日っていつだっけ?」

「ダウンロード版もCD版も今日だが、どうかしたか?」

 

 やっべ。今日から始まるのか。立花響の装者としての物語が。

 

 

 

 ―――可哀想に。

 

 

 

 

♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬

 

 

 

 放課後。

 

 友達の居ない―――

 いや、友達が居ない―――

 いや、友達を作らない―――

 

 もとい、放課後、一人だった俺は特に何をするでもなくリディアン地下の本部でぐだぐだしていた。ちなみに翼は歌とダンスのレッスンに行っている。

 べ、別に一人が好きっていうだけなんだからね!

 

 今、手元にあるのはただの水だ。コーヒー飲んで出撃して、おトイレ行きたくなったら悲惨だからね。

 知ってるか? カフェインの神は乱数の神と同じなんだ。つまり、そう、その正体は悪魔なんだよ。

 

 閑話休題

 

 たぶん今日の夜から響が合流するから、そろそろフィーネとの向き合い方をきちんと考えなければならない。

 

 まず直近では雪音クリス(ver.ネフシュタンの鎧)の襲撃だ。目的は聖遺物との融合症例一号……つまり立花響の誘拐だ。だが今のクリス程度なら恐らく翼が問題無く勝つだろう。絶唱すら使わないかもしれない。俺のせいで原作よりもギアを用いた対人戦において翼は強くなっているからな。

 その後、クリスはフィーネからお仕置き(ご褒美)されるわけだが、実はこの後、ネフシュタンの鎧とフィーネが融合することで響誘拐の必要は実質無くなる。

 

 次に広木防衛大臣暗殺事件と、デュランダル強奪未遂事件だ。前者は俺が何しようとあまり関係無いし、後者は放っておいてもフィーネが響を守る以上、これも放置しておいて良い。

 

 あとはクリス加入イベントと決戦フェーズだが、クリスの加入には風鳴司令と未来による餌付があって、デレたクリスによりカ・ディンギルの情報がもたらされ、何やかんやで学院が占拠されて響が暴走する。

 

 ……あれ? やること無くない?

 

 ハハ、まさかそんな……ねぇ? 合間合間にノイズやクリスの襲撃はあるが……いや、むしろ動かないほうが良いまであるな、これは。

 やることがあるとすれば、立花響の特訓に付き合うくらいか?

 

 むむむ。

 

 

 

 

「警報ッ!?」

 

 誰かの叫びと共にビービーと警報音が鳴る。

 

「装者の状況は!?」

「アリアさんは本部で待機中、翼さんはリディアン音楽院です!」

「ノイズの反応あり! 場所は市街地ですが、これは……反応移動中! 位置が特定出来ません!」

「アリアくんは出撃準備! 翼を呼び戻せ! だが出撃は敵方の位置を特定出来次第だ!」

「了解!」

 

 ついに始まった。これから彼女を地獄へお連れしなければならないと思うと気が滅入るが、もはや賽は投げられた後だ。

 

「状況は!?」

 

 数分の後、翼が戻ってきた。まぁ、ほぼ垂直方向への移動だし早いわな。緒川さんも一緒だ。

 

「現在、位置を絞り込み、反応を絞っています」

「くっ……!」

「翼、バイクの準備。俺も乗っけていってくれ」

「アリア……わかった!」

 

 更に何分後か、オペレーターの藤堯さんが声を上げる。

 

「反応が絞り込めました。位置、特定!」

「ノイズとは異なる高質量エネルギーを検知!」

「波形の照合急いで!」

「まさかこれって……アウフヴァッヘン波形!?」

 

 照合の結果がモニターに映し出されると、司令部は悲鳴混じりの驚愕に包まれた。

 

「【ガングニール】だとッ!?」

「新たなる適合者……」

「だが一体どうして……」

 

(何で!? だってそれは奏の……!)

 

 ちらりと翼を見遣ると、驚愕の表情を浮かべていた。無理もない。

 

「……マヘーシュヴァラ、天羽々斬、出撃する! 翼、出るぞ!」

「……わかった!」

 

 

 

♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬ ♪♫♬

 

 

 

 海岸通りをバイクで疾走する。もちろんすれ違う車など無いし、信号も消えているから現場までほぼノンストップだ。

 

「敵位置は?」

『臨海工業地域で固定、避難の状況は不明です』

「敵規模は?」

『おそらく数100体から1000体規模と思われます』

「ハッ! 俺と翼なら余裕だね! だが問題は……」

『ええ、装者の二人はガングニールの確認も優先してください』

「了解してますよ」

 

 俺が後部シートで本部と通信、翼が運転。いつものパターン。

 全開で走れば俺のほうが速いかもしれないが、エネルギーは有限だ。

 

「翼、緊張してる……?」

「それは、そうだろうッ! 何故失われたガングニールが、奏のガングニールが!?」

「叫びたい気持ちはわかる―――だけど、ノイズ殲滅とアレの正体の確認が先決だよ。『防人たる者、何時如何なる状況でも明鏡止水の心』といつも言っていただろう?」

「しかし!」

 

 翼の心がいつにもまして、ささくれ立っている。無理もない。

 

「……翼、もしこの戦いで俺が死んじゃったらどうする?」

「アリア、何を―――」

「こうやって翼に2ケツさせてもらうのって結構好きなんだ。風の冷たさと、翼の温もりを感じられて。安心して命を預けられる。死んじゃったらそれも楽しめなくなる。だから俺は帰ってくる」

「……くっ!」

「俺の命を預ける、そんな翼が自分を見失いそうになっている。じゃあ俺は何処に帰ればいいの……?」

「……」

「翼は片翼では飛べない。俺は奏さんの代わりにはなれない。だけど―――俺は翼と、翼の夢を守ってみせる!」

「―――私も……アリアを乗せるのは嫌いではないぞ!」

「翼も意地悪だなぁ。そこは『好き』って言ってくれなきゃ」

「フッ……だったら大人しく帰って来い、()()!」

 

 よぉーし、パワー全開! いっちょやったりますか!

 

 天よ地よ、この世界の主人公たちよ、俺の歌を聞けぇッ!

 

 

 

 

Prajatroi Mahesvara tron...

 

 

 

 

Imyuteus Amenohabakiri tron...

 

 

 





【ボツネタ】

アリア「待てぃッ!」
ノイズ「!?」

 いつの間にか給水塔の上に現れたアリアがギターを掻き鳴らすと、どこからかトランペットの音がする。

アリア「悪の暴力に屈せず、恐怖と戦う正義の気力! 人、それを……『勇気』という!」
響、女の子「「カッコいい……」」
ノイズ「!?」
アリア「貴様らに名乗る名前は無い!」シュバッ

〜アリアの聖詠が流れる〜

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