剣の世界のハーフエルフ   作:はなみ

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プロローグ

 日に日に活性化する魔物たち。そして、時々現れる魔族。

 それを蹴散らして、村と森を守るのが私の仕事だ。

 

 いつからか森は迷宮化したけれど、熟練の狩人の私は迷うこともなく、獲物には困らない。

 完全に迷宮になった森の最奥部分には魔法で境界線を敷いた。森に入れなくなったら村の人たちが薪や堆肥に困るし、森の入口付近は誰でも立ち入れるようにしてある。

 

 そんな慣れた森から、私は仕留めた数匹の獲物を肩にかけて、木々の枝から枝へと飛び移りながら、ゴキゲンで帰ろうとしていた。 

 

 

「────────あれー? この辺に今ならいるって聞いたんだけど……」

「……ル、そこで止まって下さい。この森は半分迷宮化しているらしいので、それ以上踏み込んではだめです」

「また、分断されて迷子になるつもり?」

「やっぱり、家の近くで待っていたほうが良かったんじゃないのか」

 

 

 村までもう少しという辺りまで来ると、森の中をキョロキョロと見回す四人の人影が見えた。

 ヒューマンが二人とエルフ、あのガッシリして小さいのはドワーフかな?

 随分と凸凹な四人組。

 

 

「何か探しているの?」

 

 ひょいと彼らの前に降りて、私は首を傾げた。

 

「金髪で青い瞳のエルフ! 聞いてた通りだ────えっと、ウルカって狩人は、君であってる?」

「ん? そうね。この村で狩人のウルカと言ったら、多分私のことだと思うけど」

 

 

 水色の髪の人間の青年の言葉に私は頷く。

 

 私の名前はウルカブルーメ。

 今は亡き両親がつけてくれた名前だが、女王の花という意味らしい。

 長い名前なので、村の人達からはウルカと呼ばれることが多い。

 

 

「うーん?? おかしいな。ねえ、あなたもエルフ……だよね? 何か……違う……?」

「魔力が私の十分の一にも満たないですね……意図的に魔力を抑えているにしてもこれは……」

 

 銀色のツインテール髪のエルフと、眼鏡をかけた長身の人間の青年が私を見て首を傾げている。

 

「あぁ……私、魔力はあんまりないの。だって、ハーフエルフだし」

 

「「「「ハーフエルフ!?」」」」

 

 異口同音。四人とも固まってて、私はちょっと笑った。

 

 そして、続いたこの四人組の名乗りという自己紹介を聞いて、私はようやくこの世界が『葬送のフリーレン』であると知った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────私はいわゆる転生者である。

 

 読者・視聴者として葬送のフリーレンを見ていた、かなり偏った知識嗜好を持った観測者(なお、うろおぼえ)の記憶持ち。

 そして、お約束っぽい転生チートを持った"ハーフエルフ"だ。

 

 

 この転生チートらしきものは、ソード・ワールドRPG(しかも1.0の旧ルール)の職業スキルも扱えるというもの。

 もちろん、最初から全部使える訳では無いし、自分の成長に合わせて使えるスキルが増えていく仕様っぽい上、ソード・ワールド特有のダイスロールによる自動的失敗(いわゆるファンブル)も再現されてるらしい。

 ぽいとか、らしいとか……はっきりしないのは、私は神様転生だったわけではないから神様に会ったことがないわけで、転生チートって言ってるものも実際そういうものかはわからない。

 

 ただ、このチートっぽいものに気が付いたときに、最初に思ったのはこの世界ってフォーセリア? だった。それじゃ、ここはどの大陸? どこの国?ってなったんだ。

 でも、聞き覚えのある大陸名も国名も街名も、当たり前に信仰されているはずの神様の名前も出てこない。何十年か前、まだ両親が存命の頃に数年、村を離れて聖都まで旅もしてみたけれど、記憶にあるどこの国でもなかった。ここで都市名の聖都『シュトラール』で気がつければよかったんだけど、私は葬送のフリーレンについては、完全にうろ覚えだから都市名ごときじゃ分からなかったんだよ……

 

 だから、さすがにロードス島や魔法戦士リウイ等のソード・ワールド系、クリスタニアも含めてフォーセリアが舞台の世界ではないなとは思っていた。何せ、少なくともこの世界独自の魔法も使えるし、フォーセリアだとハーフエルフは嫌われることも多かったしね。

 とはいえ、この世界は現在進行形で魔王がいて、やっぱり世界の危機がそばにあるだろって言われたらその通りではあるけれど、それはそれとして数多に名乗り出てる勇者がきっと何とかするだろうと呑気にしていたし。

 まさかのラクシアとか2.0以降の世界とかD&DやT&Tといった他のTRPG世界だったら、さっぱり知識はないし、ウィザードリィやウルティマといった昔懐かしいRPG(DQやFF、テイルズは絶対違うと確信していた)、ロード・オブ・ザ・リングや果てはゴブリンスレイヤー何ていう世界では、いや、もしかしたらやばいと噂の異世界おじさんとか全く知らない世界……? と無駄に危惧していた私の数十年以上に渡る時間を返してほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 父さんはエルフの狩人(自称)だった。自称なのは、弓だけじゃなくて長剣も魔法も使えたってことと、たぶん父さんが一番得意な武器は長剣だったこと。ただ、死を覚悟するまで剣を持とうとはしなかったし、私には剣の扱い方は教えてはくれなかった。そんな魔法よりも弓よりも剣が得意な変なエルフ。

 

 おそらく、父さんの職構成はソード・ワールド風に表すならファイターがメインでレンジャーとソーサラー、そして一般技能であるハンターを持ってる感じだったと思う。

 そんな父さんからは、私はレンジャー技能とソーサラー技能、ハンター技能を習った形になっている。

 

 かなり若い頃(千年とかそういう単位の昔らしい)窮屈だったというエルフの村を飛び出して世界を見るために旅人になったのに、短命のヒューマンの母さんに恋してわざわざこんな辺鄙な田舎の村に定住した変わり者。

 

 まあ、そんな父さんと子供を作った母さんも割とおかしい人だったらしいけど。

 

 なにせ、女だてらに吟遊詩人として一人旅をしてて、短剣と身体強化魔法の使い手。稼ぎ場所である酒場でガラの悪いのに絡まれても、たおやかな見た目と声と裏腹に腕力に任せて鎧袖一触で叩き出し、酒豪でザルを超えてもはや枠。酒精の強いものを飲んだり飲まされたりしても、酔ったことはほぼなかったそうだ。

 

 そんな物騒な女に一目惚れして無理やり旅に着いてって。

 十年と少し一緒に旅をして……なんだかんだ絆された母さんとそういう仲になって、この村で私がお腹に宿ったから定住を決めたらしい。

 

 きっと、母さんの職構成はバードとシーフにソーサラーとセージ。

 実際、母さんからはバード技能とシーフ技能、ソーサラー技能、それからセージ技能を習った形になってるぽい。

 

 母さんの美貌と歌声、竪琴の音色は素晴らしかったと父さんは酔うといつも言っていた。でも、申し訳ないが私が覚えているのは晩年の年老いた母の姿だ。

 母さんが亡くなったのは私が四十歳を超えた頃だったかな。風邪をこじらせて、呆気なく亡くなってしまった。

 そして、父さんは……今から二十年くらい前に村と私を守るために魔族と相討ちになった。

 

 

「……まあ、そんなわけで、こんな見た目だけど百二十歳になるわ。立派なお婆ちゃんよね」

 

 ソード・ワールド的技能云々は私の脳内にさておき、簡単にハーフエルフの私が生まれた奇跡……いや、軌跡? を話しながら、村の中の私の家で4人にお茶を出した。

 

「えぇ……でもまだ百二十歳でしょ? エルフなら子供じゃない」

「うわぁ、生きてた頃の父さんと同じ反応。父さんも百五十歳超えるまでは、まだ子供だってよく言ってたなあ」

 

 エルフ……フリーレンの言い方に父さんと同じものを感じて、また笑ってしまった。

 

「エルフの成人年齢って百五十歳なんですか?」

「うーん、感覚的に人間の十倍から百倍くらい……なんじゃ? 父さんいわく、そんなこと言ってたけど……あの人はだいぶヒューマンナイズされてたし、一般的なエルフとかけ離れてたみたいだから──それが正しいかわからない。

 それに、私は人間社会で育ったハーフエルフだし、精神的には多分、人間と同じなんだと思うよ。身体的には二十歳越えたあたりから、さっぱり変わらないけどね。まあ、最近は時間が流れるのが早く感じてちょっと困ってるかな」

 

 眼鏡の青年……ハイターの質問にそう答え、私は自分の分のお茶を口にしてから本題に移った。

 

 

「────それで。私の仕事はこの森の迷宮を案内すればいいのかな? 森の中なら、誰にも負けない自信はあるよ」

ソード・ワールドの詳しい説明いりますか?

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