この世界に転生して68年が経った。
男から女に変わってたり、科学文明から魔法文明に変わってたり、ある程度の自由があった社会からガチガチの管理社会に変わってたりと、色んな変化があり過ぎて当初は困惑し続けていたが、68年も生きていれば流石に慣れるというもの。お陰で今では、孤児院の院長として働きながら毎日を楽しく過ごすことができている。
と言っても、孤児院の院長に関してはやりたいと思ってやってる訳じゃないがな。
さっきも言った通り、この世界はガチガチの管理社会。管理者と呼ばれる存在が太古より人類を統制し、管理し、人類はそれを当たり前のものとして受け入れている。
そんな世界に選択の自由なんてものがあるはずもなく、人は管理者が与える職に従事し、管理者が与える住居に住まいながら、管理者が与える恩恵を享受する。
そんな、どこにいっても管理者、管理者、管理者な世界では、生き方も、死に方も、すべては管理者様次第だ。
だが、俺はこんな世界も悪くはないかと感じている。
何故なら、何も考えなくて済むからだ。
考えるということは前世で十分にやった。
少ない給金でどう生活していくか。
日々の浪費をどれだけ抑えられるか。
稼ぐにはどうすればいいか。
老後のためにどれだけ金を貯めておくか。
年金はいくら貰えるか。
今にして思えば金のことしか考えてなかったが、それでも、そんな無駄な心配を今世ではしなくていい。考えなくていい。それだけで、俺は解放された気分だ。
だから俺は、こんな世界も悪くはないと⋯⋯いや、寧ろその逆だな。俺はこの世界を痛く気に入っている。
ならばこそ、この世界には是非とも俺が死ぬまで存続し続けてほしいと、そう願い続けている。
それは、新しい孤児を出迎えている今も変わらない。
変わらない⋯⋯のだが──
「俺の願い、打ち砕かれそう⋯⋯」
どこまでも虚ろで、全てを飲み込んでしまいそうな目。虚ろゆえに中身が無く、主体性もない。きっと、どこまで行っても受動的なのだろうその子は、その性格とは裏腹に絶対的な強さと才能、才覚を併せ持っている。
まるでブラックホール。あるいはゲームに登場する主人公のような絶対的存在。それが目の前の男の子だった。
「将来絶対やらかすな⋯⋯」
ホムンクルスと男の子には聞こえない程度の呟き。
聞こえたら悪印象が残るので困るが、それでも言わずにはいられなかった。
管理社会の崩壊──あり得ない話ではないが、目の前の男の子はそれを引き起こしそうで怖い。
だが顔に出すわけにもいかない。
ここは孤児院。親を失った子供たちの最後の寄る辺、あるいは新たな我が家となる場所なんだから。
目前までやってきた男の子と目線を合わせるために膝を折った俺は、今度は優しく微笑みかけながら問いかけた。
「初めまして。私はマリア。あなたの名前は?」
「⋯⋯⋯⋯ルイナ」
長い沈黙の後に紡がれた言葉。その名前を胸に刻みながら、俺はルイナの手を取った。
「ようこそ、ルイナ。私たちはあなたを歓迎するわ」
後編で応募キャラクターが出せそうだったら出します。