本当は後編として書いていたのですが、長くなりそうだったので中編としました。たぶん後編ができたら前編とまとめます。
キャラクター募集もまだまだしていますので、良ければご参加ください。
どうやらルイナは
その実験が成功し、強大な魔力を手に入れたルイナは、代償として感情や欲求といったものをすべて失い、挙げ句の果てには更なる実験を施されようとしていたらしい。
そんな折、管理者の令を受けた世界各国の政府が自国の軍を動かして現行中のすべての魔力強化実験を中断させ、被験者を全員救出。関わっていた人間は全員殺され、彼らの努力の結晶たる研究結果も微塵も残さず消却された。
そうして救出されたルイナは“全属性持ち”という天賦の才と、強化されすぎて暴走しやすい魔力が相まって、行く先々で事故や問題を起こしていたらしい。
その結果、引き取ることすら躊躇されるようになったルイナは最終的に
単純な話、俺はルイナの面倒を見切ったのだ。
いや、俺だけじゃない。ルイナと寝食を共にした孤児院の全員が、
今になってみればいい思い出だ。
言わなければずっと起きたまま、飲食しないままで何日も過ごすし、魔力の暴走で何度も孤児院が火事や氷漬けになるし、感情がないから暴力沙汰になったら一切の容赦がないし、そのせいで孤児院の何人かがルイナに怪我をさせられたし。
まあ、でも、それでも子供たちはルイナを見捨てなかった。見捨てず、それどころかルイナが暴走しないよう手助けするほどだ。
何処までも優しくて、家族想いな子供たち。そんな立派な人間に育ってくれて、お母さんは嬉しいよ。
だが、今年はそんな子供たちのうちの一人が巣立っていく日だ。
巣立っていく雛鳥の名はもちろん、ルイナだ。
今年で20歳になるルイナは学業をしっかり修めた立派な大人だ。
管理者から職を与えられる条件を満たしている。
そして、そんなルイナが与えられた職は──
「⋯⋯また傭兵ですか」
傭兵──それはこの世で最も独立した存在。
個人、企業、国家問わず、ありとあらゆる所から出される依頼を熟し続ける戦闘のプロフェッショナル。
個人事業主やフリーランスに近い職業のため、何を為すにも自分でやらなければならない。それはつまり、戦場で戦う時ですら一人であるということ。依頼によっては味方がいるかも知れないが、それでも傭兵という職業の殉職率は高い。
はっきり言って、子供たちになって欲しくない職業ランキング第一位だ。ちなみに二位は軍人、三位は警察。
だが、これらは昨今の情勢を吟味してのことだ。
「三大超大国が争い合ってる今は死亡率が倍ぐらいに跳ね上がってるでしょうね。はぁ⋯⋯」
クリエ王国、メイン連邦、ブレイ帝国。
この三ヶ国のことを総称して三大超大国と呼ぶのだが、現在の世界はこの三大超大国が武力衝突を起こしている真っ最中。陣営もほぼ完成されつつあり、世界大戦が間近といった感じだ。その上で傭兵になるということは、世界の全てを敵に回すことと同じだ。
さっきも言った通り、傭兵は個人、企業、国家問わず、あらゆる所から依頼を受ける。
そのため傭兵は「昨日と今日とで敵・味方の判別が変わる」ことで有名だ。しかし、居合わせた現場の人間からしたら「つい先程まで戦友を殺していた人間がいきなり味方になった」と言われて納得できるはずがない。
その結果、仇討ちに走った軍人が傭兵を殺したり、組織ぐるみで個人の傭兵を殺そうとしたりする。
だから俺は傭兵という職業が嫌いなんだ。
特に昨今の世界情勢ではなおさら。
なので、俺としてはルイナを傭兵にはしたくない。したくはないのだが、これは管理者が直接与えたもの。逆らえばどうなるかは目に見えているし、今の生活を手放せるほど俺も自暴自棄にはなってない。
「はぁ⋯⋯仕方ない」
ならせめて、俺があげられるだけの餞別をルイナに与えよう。たぶん──というか絶対、ルイナは一人じゃ何もできないから。
中身空っぽの伽藍堂からプログラムを組まれたロボットに昇格したとしても、ルイナは一人じゃなにもできない。そんな子のために必要なものは──
「門外漢ですし、詳しいことは専門家に聞くとしましょうか。となると、誰がいるかしら⋯⋯」
◇◇◇◇◇◇
ルイナの餞別を考え始めてから数日後。
専門外のことはその道の専門家に聞いた方が良いと判断した俺は、孤児院の入り口で本を読みながらその専門家を待っていた。
椅子に腰掛け、時折り吹くそよ風に髪を揺らしながら読書する俺の姿は、まさに“大人な女性”そのものではないだろうか。我ながらなかなか良いシチュエーションだ。
そうして大人な女性を気取りながら本を読んでいると、ようやくお目当ての専門家が姿を現した。
「よぉ婆さん! 元気してたか? てか、前より小さくなったんじゃねぇか? もっと筋肉つけなきゃダメだぜ?」
相変わらずの鎧姿。相変わらずの図体のデカさ。相変わらずの減らず口。金髪と橙色の目を持つ筋骨隆々な彼の名前は──レオナルド。
17年前に管理者から傭兵の職を与えられながら、現在まで生き延びてきたベテランの傭兵。そして何より、俺の可愛い子供たちのうちの一人だ。
てか、前々から言ってるが婆さん呼びはやめろや。せめてお母さんにしろ。こちとら不思議なことに外見だけはまだまだ若いんだからな。
「久しぶり、レオナルド。あなたが五体満足で嬉しいわ」
とは思いつつも、我が子との久しぶりの再会に俺は歓喜している。しかも五体満足で帰ってきてくれたのだ。母として、これ以上嬉しいことはそうそうない。
「はっ! そんな柔な鍛え方してねぇからな! ⋯⋯で、俺の力を借りたい用事ってのは何なんだ?」
「その前に、ひとまず中に入りましょうか。ココアとコーヒー、どっちがいい?」
「コーヒーで頼む。アイスのブラックで」
「あら、随分大人になったわね」
「婆さんは相変わらず婆さんだな」
「ふふ、減らず口を」
そうして孤児院の中に入った俺とレオナルドは、ココアとコーヒーを飲みながら用事について──ルイナが傭兵になる件について話し合った。
ちなみに、ココアは俺が飲んでいる。粉末をたっぷり入れた濃いめのホットミルクココアは大好物だ。
「へぇ、あのルイナが傭兵になぁ⋯⋯」
「ええ。でも、あの子が一人で出来ることは限られてくるから。だから、あの子をサポートしてくれるような人が必要なの。例えばあなたとか、ね」
ルイナは一人じゃ何もできない。
確かに俺や子供たちのお陰で一般人並みの生活を送れるようになったが、それは決まった時間に決まった行動を取っているだけ。
プログラムを組まれたロボットがプログラム通りに動くように、ルイナもあらかじめ教えられた行動を時間通りに行なっているに過ぎない。
そんな状態で傭兵という臨機応変が求められる仕事なんて出来はしないだろう。
だから俺はレオナルド含め、長年傭兵をやっている何人かの子供たちに声をかけ、助力を求めたのだ。しかし、直近で都合が良かったのはレオナルドだけだった。
「なるほど、事情は分かった。しかしだ、婆さん」
コーヒーを一口飲んだレオナルドは、真剣な眼差しで俺に言った。
「俺だって傭兵だ。常にルイナの側にいてやれる訳じゃない。それに、自分で言うのもなんだが、俺は要領が良い方じゃない。ルイナの身の回りの世話なんて
⋯⋯まあ、そりゃそうだよな。
レオナルドだって傭兵。しかもベテランだ。
その肩書きがレオナルドの傭兵としての格を表しているから、きっと
今日だって忙しい合間を縫って来てくれたに違いない。
でも、だとしたらどうすれば──
「そこでだ、婆さんに一つ提案がある」
考え込んでいたせいでいつの間にか下がっていた目線を上に戻す。するとそこには、自信満々に人差し指を立てたレオナルドが、これまた自信満々に言ってきた。
「ルイナに専属オペレーターを付けてみたらどうだ?」
「専属オペレーター?」
「ああ。専属オペレーターならサポートはもちろん、仲介組織の人間だから依頼だって適当に見繕ってくれる。つまり、ルイナは戦いにだけ集中できるって訳だ」
「でも、流石に身の回りの世話までは⋯⋯」
「大丈夫だ。専属オペレーターの中には四肢を失くした傭兵を世話する奴までいる。つっても、その傭兵は義肢を付けて今も稼ぎまくってるがな」
なるほど、専属オペレーターか。
そんなに詳しくないから聞き齧った程度の知識しか知らなかったが、そこまでしてくれるのなら、俺のポケットマネーを使ってルイナに付けて──
「⋯⋯言っとくが、金はルイナに出させろよ? あいつも一応大人なんだからな」
「あら、鋭いじゃないの」
「はぁ⋯⋯だろうと思ったよ。俺の時もそうだったけど、婆さんはいい加減子離れを覚えるべきだ」
「黙りなさい。親にとって子供っていうのはいつまでも子供なのよ」
「はぁぁぁぁ⋯⋯」
おい、なんだそのデカいため息は。図体や筋肉だけでなく、ため息までデカくなったのかおまえは。
今回はシキDXさんのレオナルドが登場しました。ご参加、ありがとうございます。
キャラクターもどしどし募集中です。