僕は母さんのことを知らなくて、父さんからは事実として捨てられた。碇シンジの名を持っているけど、正直言って、戸籍とか書類上の名前に過ぎない。父さんが生きているから、脱すること不可能だった。父さんから「後で迎えに行く」どころか「来い」なんて、冗談にもならないよ。
だから、僕は完全に父さんから逃れた。
独りで生きていくために決断した。
「碇大尉、訓練はこれで終わりです。流石の対応力です。パイロット競争に負けたのが悔しく思えなくなりました」
「ありがとう。マナ」
僕は戦略自衛隊に入隊した。完全に世間から断絶された軍隊生活を送っている。戦略自衛隊を選択したことは、自立して生活できることが大きい。それに父さんが取り返しに来ても問題なかった。これは後で知ったことだけど、戦略自衛隊と父さんの組織は犬猿の仲らしい。常に対立関係にあるから、門前払いしてくれる。
もっとも、建前だけの協調姿勢を打ち出しているけど。
保護してもらうためには、相応の地位を手に入れないとダメだ。最初は義務教育と基礎中の基礎を叩きこまれた。特に身体は強くなかったけど、独りで生きるために強くなるしかない。上官や先輩は優しくて応援してくれた。一通りの課程を修了すると、僕の関係性を知ってか、上層部からお互いに旨味のある提案を受ける。
「ジェット・アローンは、父さんのNERVに負けないよ」
「碇大尉なら勝てるよ。さて、シミュレーションをシャットダウンするからね」
「後で時田博士にレポートを提出しないとな…」
僕は、有人操縦のロボットであるジェット・アローンのパイロットになった。戦車や戦闘ヘリを運用する軍隊にロボットは、SFの世界に聞こえるけど、戦略自衛隊は本気で作っている。平時は必要ない兵器でも、人間同士の戦いではなく、バケモノを相手するには通常兵器が心許なかった。本来は触れることのできない機密情報へのアクセス権を与えられている。セカンド・インパクトの真実など、世界の理を知った。
シミュレーターから出ると、同期と言い張る(彼女の)マナがいた。マナとは入隊の時期が同じぐらいで、隊内では教育課程で一緒になる事が多い。いわゆる、クラスメイトで一緒に過ごした。上官が気を遣って一緒になるよう配慮してくれている。隊内の規律がどうとか、とやかく言われることは少くなった。だって、僕たちは14~15歳の青春の真っ只中にある。皆が言うには「こんな世界だから、少しでも、幸せになって欲しい」と。
「レポート手伝おうか?」
「大丈夫だよ。既に書き上げてあるから、後でメールで送るだけだから」
「仕事が早いなぁ。本当に14歳なの?」
「そんなこと言われても…」
今日の訓練を終えたけど、僕たちは特別で特殊に該当する。
だから、偉い人から直接に呼び出されることは日常茶飯事だった。
直上の上官を飛び越えるものだから驚かれるよ。
(碇大尉と霧島中尉は来てください…)
「何かあったのかな」
「さぁ?また、ジェット・アローン改装について意見を求めるとか?」
「とりあえず、行ってみよう」
寮までの道のりから外れて、偉い人の部屋に進路変更した。道中で他の隊員や技術者とすれ違う。特に顔見知りでもない。お互いに見て見ぬふりをした。技術者はともかく、普通の隊員にとって、特別扱いされる僕たちを依怙贔屓と見る。別にどうだっていいよ。僕は、戦略自衛隊に自分の居場所を見つけた。大切な人のマナもいる。
「碇シンジ大尉と霧島マナ中尉。只今参りました」
「入りなさい」
「失礼します」
流石にお偉いさんの前では改まった。意識を切り替えて、服装の緩みを直して、戦略自衛隊仕込みである。入室を許されると、お偉いさんが待っていた。いきなり、話に入るのではなく、敬礼しようとした。
「敬礼は要らない。これからは比較的に自由の幅が利くからね」
「それは…」
「碇シンジ大尉と霧島マナ中尉に非公式の辞令が出た。2人は第三新東京市の中学校に編入してもらう。そして、これからはNERVと連携する方針を行動に打ち出すことになった」
「つまり、表向きは中学生として、NERVの動向を探れということですね」
「端的に言えば、そういうことだ」
遂にこの時が来たらしい。僕の出自から父さんのNERVを探る諜報員に抜擢された。ただ、諜報のメインはマナが務めた。僕は、あくまでも、ジェット・アローンのパイロットである。NERVと共同作戦を展開する。あわよくば、NERVの機密情報を掬い取ることが込められている。
「2人に真っ当な学生生活を送って欲しい気持ちもある。戦自は戦争のプロフェッショナルを育成している。2人みたいな子どもが戦争のプロというのは頂けない。長い人生の中の僅かな青春を真っ当に過ごして欲しかった。もちろん、密命を帯びた学生生活であるが、楽しめる時は存分に楽しむように」
「はい!」
僕が戦略自衛隊に入って良かったと思えることは、本当に極限られた周りの人間に恵まれたことだ。さっきの見て見ぬふりをする人は、ある種縁戚であって、近しい人はとっても優しくて気遣ってくれる。日本国直轄の組織であるが故に僕たちが国の犬となることを嫌ってくれた。
「戸籍などの書類や生活の住居は、こちらで手配しておいた。表向きは予備隊員として、非常時のみに招集する。自分で行ける場合は、自力で移動してもらう。遠方や急迫の際は、こちらから車やヘリを回す。その時はよろしく頼むぞ」
「わかりました」
「ここまで聞いて質問はあるか?」
密命の特命を帯びる僕たちには、相応のガワが支給される。怪しさ満点でも確立されたガワがあれば、そう簡単に追求することはできないはずだ。従来の対立姿勢から協調姿勢に転換した以上、下手な手出しは軋轢を生じさせて無差別の介入を招きかねない。
「ジェット・アローンの火薬庫改装は間に合うんですか?」
「火薬庫か。的確な表現だな。改装は何とか間に合うだろう。ジェット・アローンは近接格闘戦に向かない。大尉のレポートだね」
「はい。原子炉を動力源にするため、被弾は厳禁でした。よって、敵と距離を置くことが求められ、実弾兵装を満載することが最善です。NERVのエヴァンゲリオンと協調すると聞き、中距離支援を担うことがジェット・アローンの役割と分析します」
「14歳にここまで言われるとは。むしろ、気分がスッと楽になるよ。時田博士は遠隔操作が好ましいと言っていたが」
「確かに、そうだと思います。しかし、遠隔操作は操作元が潰されるか奪取される危険があります。ハッキングや暴走の危険を鑑み、有人の操縦が非常時の対応力に勝りました。最悪は自爆で道連れにすることもできます。僕はいつでも自爆する覚悟です…」
最後に付け加えた覚悟が余計だったかもしれない。
思い切り、左手をつねられ、痛みを堪えた。
「私は国家の犬と呼ばれる軍人でも、未来のある子供に自爆しろなんて、言えるわけがな。NERVや国家を裏切ることになっても認めない。ともかく、我々は君たちのために最善を尽くすことを約束する。今までの堅苦しい生活は忘れなさい。自由な青春を謳歌しなさい。これは命令だ」
「はっ!」
こうして僕たちは新たな生活を迎えることになった。
父さんから逃れて忘れるため、戦略自衛隊を選んだ結果は、父さんと関わることになった。
結局のところ、僕は何かの定められた運命に縛られているのかもしれない。
まぁ、気にするだけ無駄だな。
「お前の送った手紙は握りつぶされたようだ。さて、どうするつもりだ」
「問題ない」
「そうか。ユイ君の魂を使って惹き付けるつもりだろう」
「…」
続く
戦略自衛隊の碇シンジです。
僕は新生活を始めることになりました。
だけど、初っ端から大変なことに。
ついに、使徒が現れたんです。
父さんのNERVと協力して撃破しなければ。
次回、『ジェット・アローン初陣』
「中距離支援が僕の仕事だ」
ジェットアローン二号機
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格闘戦特化型(ハンマーのやつ)
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火力支援特化型(ヘビーアームズ的な)
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バランスよく汎用機に