第三新東京市のNERVと戦略自衛隊は、第六の使徒出現を察知した。早期警戒を磨き上げて早期発見を実現する。NERVはエヴァ弐号機、戦略自衛隊はジェット・アローン(重装備)の出撃を命じた。
二度の使徒戦を通じて協同は強化されている。NERVと戦略自衛隊の上層部がバチバチと火花を散らしても、現場は「そんなこと知るか」と言わんばかりだ。エヴァがATフィールドを中和して近接戦を挑む。そのエヴァをジェット・アローンが豊富な火器で支援する。もちろん、その時とその時に応じて、ジェット・アローンとエヴァンゲリオンのコンビネーションによる格闘戦はあり得ることだった。
「それにしても、ヘンテコな使徒が来たね」
「今までとは全くタイプが違う。うかつに動けない」
しかし、第六の使徒は第四と第五と全く違う。その姿は正八面体のプリズムだ。今までの使徒がヒト型や化け物らしい姿をしていた。今回の使徒は数学的な正八面体であり、人間の美の観念を理解しようとしているかもしれない。
「無人砲台は?」
「いつでも砲撃できる。ただし、NERVがエヴァ弐号機の発進を決めたから」
「わかった。無人砲台は温存してもらえると、ありがたいな」
戦略自衛隊も無人砲台も黙っていた。使徒に対して実弾の通常兵器は通用しない。しかし、迎撃や防御に意識を割かせる時間稼ぎにはなる。エヴァやジェット・アローンの戦闘中は誤射の恐れが呈された。戦場を離脱するまでは黙ってもらえると、一先ずはありがたいのである。
「時田博士のために頑張らないと」
シンジ大尉は、使徒殲滅の主役はNERVと認識した。大嫌いな実の父親に花を持たせることになることは受容する。己をだしに使われる格好だが、公私混同は回避しなければならない。
ただし、最後の最後には一花咲かせる覚悟だ。
「これはっ!」
「使徒に超高エネルギー反応を確認したけど…何をするつもり?」
その時である。
正八面体を堅持して侵攻する使徒は、ピタッと静止したかと思えば、自身の身体を大砲に変えた。使徒中心部にある赤い球体の「コア」に凄まじい超高エネルギー反応を検知する。何をするのか予想できないが、十中八九は碌な事が起こらないはずだ。
「まさか、エヴァを狙っているのか!」
裏山に潜伏するジェット・アローンは勢いよく飛び出した。大砲と化した使徒の砲口が向く先は裏山の反対側である。そっちにはエヴァ弐号機が飛び出すはずだ。つまり、使徒はエヴァの発進をいち早く知って迎撃を試みている。
「避けてっ!」
ミサトの叫びが響いた頃は時すでに遅かった。地上にエヴァ弐号機が射出されたと同時に使徒の咆哮が撃ち放たれる。直ちに装甲ビル群を展開して減殺を図るものの、圧倒的な火力の前に溶解していった。指揮所は通信を介して弐号機パイロットことアスカの苦しみが響き渡る。
エヴァンゲリオンは、単なるロボットでない。これは口酸っぱく言われることだ。エヴァパイロットには「フィードバック」というダメージが存在し、エヴァ本体が受けるダメージがパイロットの心身へ直結してしまう。パイロットがエヴァのダメージを負うことになり、かすり傷程度ならともかく、弐号機は使徒の咆哮を真に受けていた。
胸部を集中的に焼かれる痛みは想像を絶している。
「戦自のジェット・アローンがっ!」
「使徒にとっても優先順位はエヴァなのね」
「彼ならやってくれる。なんとか、使徒の意識を外して!」
すると、戦略自衛隊のジェット・アローンが飛び出した。使徒は唯一の弱点であるコアを露出させる。コアを露出しないと攻撃できなかった。そこで、まずは挨拶とミサイルの斉射を見舞う。両肩部に三連装ミサイル発射機を装備したが、初期は多連装の短距離用小型ミサイルだった。大改装を経て中距離の対艦ミサイルに変更され、6発すべての威力はN2兵器に及ばなくとも、実弾兵装の中では高い方に該当する。使徒はコアを守るため、砲撃を中断せざるを得ず、迎撃に移行した。
これによって弐号機は解放される。しかし、パイロットの生命反応は弱まっている。神経パルスも危険な領域に突入している。これ以上の戦闘は不可能と判断した。地上射出用のエレベーターのロックを緊急爆破して強制的に撤退させる。
「医療班は急いで!弐号機の修復は後回しで!」
モニターで繰り広げられるジェット・アローンの孤軍奮闘に目を向ける余裕はなかった。
「そういうことか。近接戦に勝ち目は薄いと考えた。エヴァとジェット・アローンを近づかせない策に出ている」
正八面体の姿をしている理由がわかった。
第四の使徒と第五の使徒は近接戦により撃破された。使徒も学習している。近づかせないことを考えた。近接戦をかなぐり捨てて圧倒的な火力を吐き出し、超火力の弾幕を展開することで、エヴァもジェット・アローンも寄せ付けない。
「でも、コアが丸見えだ!」
ビルをジャンプ台にして大きく跳躍して183mm砲弾を撃ち込んだ。リボルビングライフルのため弾倉を回転させる。183mm砲弾はHESHを採用して破壊力は十分にあった。
「そんな防御があるのか」
使徒は砲弾の迎撃は不可能と見て姿を盾に変貌させる。盾にATフィールドを纏わせてHESHの炸裂に耐え切った。通常兵器が効かないことは承知している。それにしても、不条理な防御で驚きを通過して呆れてしまった。
「これはダメだな…」
「碇大尉、聞こえますか!」
「ミサトさん?なぜ、この通信に…」
「それは後回し!NERVは弐号機の収容に成功しました。アスカも保護しています。もっとも、ここで戦略自衛隊のアナタを失うわけにはいきません。戦略自衛隊のジェット・アローンに撤退を命じます」
通信に割って入るは、なんと、NERVのミサトさんだ。普通はオペレーターを兼任するマナから指示が入る。NERVと戦略自衛隊で通信が分けられている。ここに割って入ることはできないはずだ。
とは言え、今は非常事態で気にすることはナンセンスである。
戦略自衛隊とNERVが結んだ使徒戦に関する協定により、ジェット・アローンの撤退が命じられた。使徒戦に限ってNERVが優先的な指揮権を有する。戦略自衛隊は指揮権を委譲しており、NERVが「やむを得ず、必要がある」と考える場合は、戦略自衛隊に対して命令を発せられた。
「わかりました。撤退のために攻撃だけは継続させてください」
「認めます」
リボルビングライフルと無反動砲を活用して第六の使徒を拘束する。
そして、ジェット・アローンは潔く撤退した。
NERVのエヴァンゲリオンが初めて完敗を喫した日となる。
あたし一人じゃ何もできなかった。誰かに認められなくても、エヴァに乗って使徒を倒すことが、あたしの生き方なのに負けている。手も足も出ないなんて、人生最悪の日かもしれない。
「そんな日もあるんじゃないかな。僕なんて、いつも最悪だよ。母さんを知らなくて、父さんから捨てられた。身を寄せた先は軍隊で、数多もの不条理に遭ってきた」
え?
なんで、あんたがこんなところに
「なんでだろうね。僕にもわからないや。でも、僕はここにいる」
気持ち悪い
「そんなこと言わないでよ。それより、一人だけじゃできないことがあるなら、二人でやってみよう。二人でもダメなら、三人でやってみよう」
嫌よ
一人だから…
「一人じゃ何もできないのに?」
うっ…
「だから、皆でやってみよう。最悪は僕が自爆するから…犠牲になるのは僕だけでいい」
あんたが犠牲に…
続く
第六の使徒を撃破するため、葛城ミサトは秘匿兵器に注目した
そして、NERVは戦略自衛隊との結び付きを強める
碇シンジ大尉もNERVへの移籍が現実味を帯び始めた
「チャンス到来ってね」
裏では、NERVと戦略自衛隊の攻防が激化する
表では、第六の使徒撃破が加速する
次回 「人の作りしモノ」
「大丈夫。僕が犠牲になるから」