僕は戦略自衛隊の碇シンジです   作:5の名のつくもの

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前回のあとがきにて次回は番外編としましたが、普通に本編を更新したいと思います。


僅かな希望に賭けられるか

「最悪のタイミングで最悪の使徒がお出でなすったわね」

 

「光すら歪ませるATフィールドなんて。衛星の爆雷投射は全く効いていない」

 

パターン青の使徒出現を感知したNERVであるが、驚くべきことに、使徒は衛星軌道上に出現した。今までは地球のどこかに出現して地上侵攻を仕掛けている。しかし、今回は特例らしく、宇宙から地球へ侵入を図った。大気圏突入時の灼熱はATフィールドで防ぐが、そのATフィールドは史上最強クラスと見られ、無敵の光すら歪ませた。

 

「使徒の落下予測地点は…」

 

「…」

 

「当然、ここよねぇ」

 

そして、使徒出現のタイミングが絶妙過ぎることも災いとなる。現在のNERVは葛城ミサトが臨時的に全権限を掌握した。というのも、NERV司令官の碇ゲンドウ並びに副司令官冬月コウゾウは月へ視察に出かけている。人類が古来より思いをはせた月は、高潔にして神聖であるが、本物の神を創造する建造施設を抱えた。

 

したがって、司令官と副司令官が不在の中で独断専行を強いられる。通信は光を歪ませるATフィールドの副次効果により使い物にならなかった。最新の情報も数分前の攻撃衛星からの連絡は途絶える。ここで最高位の職員は葛城ミサトに定まった。

 

「市民の避難は?」

 

「警報を発する前に政治家たちが我先に逃げ出しましたよ。勘付いた市民も第三新東京市から脱出を開始し、戦略自衛隊が輸送機と輸送船を出したことで、全市民の退避は順調です」

 

「こういう時は頼りになるのよ。分かっていると思うけど、総員戦闘配置について。エヴァ弐号機と零号機は、いつでも出撃できる用意だけ整える。碇シンジ大尉にも同様でね」

 

「何か策でもあるの?」

 

「そんなの、今から考えるしかないじゃない。関係者は会議室に集まってちょうだい」

 

NERVがドタドタと動いている間に市民の避難は進んでいる。警報を発する前に政治家や役人が我先に逃げ始めた。これを察した市民が脱出を試みるが、統制の取れない退避は、どん詰まざるを得ない。戦略自衛隊が即座に避難と誘導を開始し、輸送船と輸送機が市民を乗せ、第三新東京市から退避していた。高速道路も解放されて四方八方へ逃げている。

 

最終的に第三新東京市に残ったのは、NERVと戦略自衛隊に限られた。

 

彼らは死して人類を守り切る。

 

~会議室~

 

「ひとまず、第八の使徒と呼称する使徒は、自らを大質量の爆弾にしています。マヤ…」

 

「はい。第八の使徒が第三新東京市に落下した場合をシミュレーションしました。少なくとも、第三新東京市とNERVはおろか、リリスを収容するセントラルドグマが丸裸にされます。何度もMAGIがシミュレーションを行いました。結果は一度も変わりませんでした」

 

「NERVの防衛とエヴァが厄介だから、一度に一遍に全部吹き飛ばす算段ってこと」

 

第八の使徒は、自らを大質量の爆弾に変えた。礼儀正しく真正面から攻めない。行儀悪い方法で攻めた。第八の使徒が第三新東京市に着弾した際は、核兵器やN2兵器を上回る破壊を与えられる。NERVのメインコンピューターであるMAGIの行った計算から都市は丸ごと吹っ飛んで消えてなくなった。地下の大帝国のNERVも例外なく蒸発して、NERVが命を賭して守る秘密の存在が暴露されてしまう。

 

「使徒も学習している。身を以て経験しています」

 

「そうね。使徒の進化は恐ろしい」

 

「それで、ミサトの策は?」

 

「予想着弾地点にエヴァを滑り込ませ、ATフィールドで受け止めさせる。使徒を受け止めている間にコアを潰すしかない。使徒が着弾するまでの時間稼ぎにシンジ大尉のジェット・アローンを投入しましょう」

 

しれっと、碇シンジ大尉が作戦会議に参加した。彼は外部の戦略自衛隊の性質を帯びる。非常事態にはNERVだけでなく戦略自衛隊の声も欲せられた。両組織の中位に位置する彼が所見を述べる。

 

第八の使徒の殲滅は、極めて原始的な作戦が採られた。エヴァを投入することは普段通りであるが、エヴァを着弾地点に滑り込ませ、ATフィールドを展開し素手で受け止める。使徒を受け止めている間に唯一の弱点であるコアを潰した。

 

本作戦では着弾地点を正確に予想しなければならない。NERVのMAGIがフル稼働し、秒単位で最新予測を提供した。予測から逆算してエヴァが間に合うかの保証は無い。よって、碇シンジ大尉のジェット・アローン二号機を時間稼ぎに投入した。多種多様な実弾兵装を集中的に吐き出し、無敵のATフィールドを破らずとも、1秒はおろかコンマでも時間を稼ぎたい。

 

「大尉からは何かありますか」

 

「それなら、一つだけあります。あの使徒のATフィールドを破れるかもしれません。N2爆雷を一点に集中すれば、もしかしたら、突破の可能性があるかな…」

 

「人類最強の矛と使徒最強の盾による頂上決戦かしら」

 

「はい。使徒が矛盾を知っていたら、通用しないこともあり得ますが」

 

彼の述べた事は単純な博打である。光すら歪ませる盾をN2兵器で突破することは叶わない。しかし、それは満遍なく広く薄くに撃つ故にだった。N2兵器を一点集中に撃ち込むことで、極々僅かな隙に干渉が可能である。このように考えてみたが、マヤが即座に反論した。

 

「MAGIは総じて99.9%不可能と示しました」

 

「なら、残りの0.1%がある。僕は確立ほどに意味のない数字は無いと思います。もちろん、学問的には必要ですが、実際の世界では100%か0%です。0.1%でもある以上は賭けてみる。それが人ではないでしょうか」

 

「他に代案がないもの。こればかりは大尉の言う事が正しい」

 

それしか手段が無い時に確率は無意味だろう。様々な手段の中から確立の高い策を選ぶことは至極当然だが、それ一つしか無い中で確立を考えることは全くの空虚だった。たとえ、成功する可能性が0.1%だろうと行動に移すしかない。なお、数学はもちろんのこと、学問おける確率が大きな意味を持つことは否定しない。

 

「ということで、これで行くわよん」

 

やると決まった事に疑義を挟まなかった。

 

~仮設発進所~

 

「はぁ?それって自爆と一緒じゃない!」

 

(そんなこと言われたって、N2爆雷を至近距離から叩き込むしかない。二号機は気休め程度に追加装甲を張るからさ)

 

「そう言う事じゃないでしょうがっ!」

 

アスカは仮設発進所の弐号機に乗り込む直前になって、碇シンジ大尉と最後のすり合わせを行った。電話口に「N2爆雷を集中投入して突破口を開く」と聞かされる。彼女は彼を心配するが故に怒鳴り散らした。

 

N2兵器は汚染の恐れこそ無い代わりに通常兵器の中で最強の威力を誇る。至近距離のゼロ距離で炸裂を被った場合は、凄まじい爆風に熱を一身に受け、いかに頑丈な装甲も溶けかねない。ジェット・アローン二号機は上半身に追加装甲を張った。

 

「エヴァが手で受け止めることよりも馬鹿じゃない!」

 

(もう決まったことだから。ミサトさんがゴーサインを出したし)

 

「まったく、あんたは自分を大事にしなさいよ」

 

まったくの正論でぐうの音も出なそうだ。あいにく、碇シンジ大尉は自己犠牲を厭わない。そもそも、自分の事を大事にしない人間のため、言うことを聞かなくて当然だ。

 

「ミサトもミサトよ。この配置が女の勘って」

 

(まぁまぁ、死線を掻い潜って来たのはミサトさんも一緒だよ。女の勘でも当たる時は当たる)

 

「はぁ~」

 

深いため息を吐くのも何もかもが仕方ない。なんせ、エヴァの配置も勘から導かれた。着弾地点の予測は一定範囲に収まっている。しかし、大気圏突入によるズレや使徒の展開次第が呈された。ピンポイントにどこへ落下するか分からない。葛城ミサトの女の勘で配置が決められた。

 

(僅かな希望でも賭けてみようよ)

 

続く

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