僕は戦略自衛隊の碇シンジです   作:5の名のつくもの

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適任者は誰なんだ

~行きつけの喫茶店~

 

「はい?私にエヴァンゲリオンの適性があると?」

 

霧島マナは葛城ミサトと面会を求められた。遂にスパイ活動がバレたかと腹を括るが、全く予想していない言葉が連続して、素っ頓狂な声を上げても仕方のないことである。なんせ、霧島マナに「エヴァンゲリオンのパイロット適性がある」と言われた。

 

確かに、戦略自衛隊では、パイロット候補と将来を有望視される。あいにく、不慮の事故で内臓を悪くし、パイロットへの道は閉ざされ、超新星の碇シンジ大尉に譲った。そして、彼を陰から支援するオペレーターの役割に専念した。

 

「あなたにはNERVの予備パイロットになって欲しいの」

 

「そう、言われましても…」

 

「大丈夫よ。戦自とは私が直接交渉するから」

 

(そういう問題じゃない)

 

ミサトに「NERVの予備パイロットになって欲しい」と頭を下げられる。現在のNERV本部は零号機のレイ、および弐号機のアスカの2機体制が組まれた。これに初号機が加わるものの、現在はパイロット不在のため、自律戦闘が可能なダミーシステムの完成を待っている。

 

「バチカン条約は保有数を制限しているだけであり、エヴァパイロットの人数は縛っていない。だから、別に3人や4人になっても、な~んにも問題ないのよ」

 

「仮に適性があるとして、私はどれに乗れば」

 

「まぁ、弐号機になっちゃうかな」

 

「お断りします」

 

「ウソ!ウソ!ウソ!」

 

軽く漫才を挟んでいる。

 

霧島マナの適性は関係なく弐号機が最も充当し易かった。初号機は未知数のために除外された。零号機は極初期型のエヴァンゲリオンに該当する。正規の綾波レイが辛うじて安定稼働を維持した。初号機の未知数と零号機の危険性を鑑みて、必然的に弐号機に絞られている。エヴァ弐号機は正規の真っ当に建造され、いわば、標準のエヴァンゲリオンだ。つまり、パイロットを選ばないのである。

 

とはいえ、霧島マナと式波・アスカの関係は、お世辞にも良好と評価できない。中学校生活において、頻繁に衝突していた。取っ組み合いの喧嘩に発展しないだけマシである。マナとアスカの間で喧嘩が起こると、すぐに碇シンジが仲裁に入った。なお、クラスメイトは「碇シンジの正妻の座を巡る戦い」と理解する。したがって、マナにとってアスカの弐号機に乗ることは、プライベートの危機管理から避けたく思われた。

 

「とにかく、碇シンジ大尉のジェット・アローンと共闘できる」

 

「私は内臓が悪いんです。あの激しい動きをすれば、体調が悪化する」

 

マナは葛城ミサトを相手取り、冷静に努めて淡々と事実を述べた。変に私情を挟むこともなかった。彼女は諜報員と鍛え抜かれ、ミサトも内心は手強いと認める。マナもスパイ活動を勘付かれているとわかった。

 

戦略自衛隊のスパイ活動があれば、NERVもスパイ活動を展開する。可笑しい話としてお互い様だ。NERVは彼女を通じて戦略自衛隊の動きを把握でき、彼女との関係性を悪化させることは、戦自の情報を仕入れ辛くなることを意味した。

 

「あぁ、そこはね。うちのエヴァンゲリオンは超万能な液体を使うから」

 

「LCLですか?」

 

「そう、それが緩衝材の役割をしてくれる。だから、特に衝撃で身体を痛めることは無いわよ」

 

エヴァのパイロットは謎の液体を介している。それは『LCL』と呼ばれて水と決定的に異なった。LCLは衝撃を吸収する緩衝材となり、肺への酸素の供給を担う時点より、パイロット保護の観点から素晴らしい。これに機械的な観点も追加された。指揮所のオペレーターはパイロットの肉体的と精神的な状態を把握できる。双方向的も確保された。なんと、指揮所からLCLを介してパイロットの生命維持が可能である。

 

つまり、内臓の悪い霧島マナでも問題なかった。

 

「なるほどです。悪い話ではないことに安心しました」

 

「そうでしょ。なんか、彼共々に引き抜こうとしているみたいで…」

 

「いや、現に引き抜いているじゃないですか」

 

「すいません」

 

再び漫才が繰り広げられる。

 

彼女が指摘する通りであり、ミサトは返す言葉も無かった。戦略自衛隊が意地と拵えたジェット・アローンは、想像以上の活躍を見せる。NERVはエヴァという切り札を相対的に弱められた。確実に主導権を握るためにライバルを潰すことが手っ取り早い。しかし、戦略自衛隊はNERV司令の息子を有し、ライバル潰しは現実的でなかった。

 

本人が希望する格好の「引き抜き」が最適と見る。碇シンジ大尉を高給やレイとアスカ、実父との和解で釣り上げた。主にエヴァパイロットの絆のおかげで、かなりNERV側に引き寄せられている。最後の外堀を埋めることも兼ねて霧島マナも一緒に抱き込みたい。

 

ここで周囲の人間がNERVに靡くと本丸は丸裸になった。

 

「前向きに検討なんて言いません。私はオペレーターで終わることが嫌でした。なので、ミサトさんや職員の皆さんがオーケーと言うなら、精一杯にやらせてください」

 

「お、決断が早くて助かる~」

 

マナはシンジと戦場で共闘することに加え、彼女が抱いたパイロットになる夢を捨て切れなかった。正直言って、戦略自衛隊に固持する理由はゼロである。保護してくれたことには感謝しているが、結局のところ、体よく子どもたちを利用しているだけだった。

 

「専用機を用意できたらね。どうしても、バチカン条約が邪魔でたまらない。なんなら、ジェット・アローンをエヴァと同視してくるしでさ~」

 

この後はポッドのコーヒーが尽きるまで愚痴を聞かされる。

 

ミサトさんも非常に苦労しているようだ。

 

~その頃~

 

「流れるプールは身を預けるもんじゃないの?」

 

「碇君は流れに逆らっている」

 

碇シンジとレイ、アスカの3名はいつもの仲良し組だ。休日でも一緒に過ごすことが多く、今日は市民体育館のプールを貸し切っている。レイとアスカはシンジの水泳を眺めるが驚きを隠せない。プールは流れる仕様であるが、彼は流れることなく、真反対に逆らって泳いだ。まさか、流れるプールの流れに逆らって泳ぐことは知らない。

 

「はぁはぁ…」

 

「頑張り過ぎよ。あんたバカでしょ」

 

「これが戦自仕込みさ。陸上の所属でも水と共にあるんだから」

 

訳の分からないことを言っているが、碇シンジはプールから上がり、肩で息をして当然だった。水泳は短時間でも相応に体力を消費させられる。健康増進には丁度良かった。

 

「はぁ、ちょっと、休憩しよう」

 

「ヘトヘトのクタクタなくせにね。レイ、動かすわよ」

 

シンジは疲労から脱力し切った。アスカとレイは仲良く共同して碇シンジを床からマットへ移動させる。彼は柔らかいプールマットの上に置かれても、動かないのではなくて動けなかった。

 

「これはダメそう」

 

「そう言うことをするおバカさん。お仕置きしないと」

 

「同意する」

 

碇シンジがクタクタで動けないことを良いことに据える。レイとアスカはお仕置きとは名ばかりの行動に出た。レイは彼の左側にアスカは彼の右側に抱きついた。2人はシンジと一緒に寝る格好となる。しかし、問題はシンジは両腕から豊かな感触を得ることだ。先にアスカが女の武器と押し付け、レイも見よう見まねで押し付ける。

 

(あの時と同じだ。僕はこれにとことん弱いなぁ)

 

所詮は年頃の中学生な故に大きな弱点を抱えた。彼は何も言わないことを不服に思った2人は抱きつきを強めている。これが強まれば強まる程に豊かな感触を覚えた。

 

碇シンジは自ら降伏を宣言する。

 

「わかった、わかったから。僕が悪かったよぉ」

 

「じゃぁ、このままを維持させてね」

 

「作戦は成功」

 

一時の平和を存分に楽しんでいる。

 

この後の地獄を知らなかった。

 

続く

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