第四の使徒から約2週間が経過している。
NERVは第五の使徒出現を感じ取った。即座に緊急避難命令が発せられ、第三東京市は、使徒迎撃の厳戒態勢に移っている。前回の反省として、使徒出現を感知してからエヴァとジェット・アローンが出撃するまでの時間が長すぎた。したがって、NERVと戦略自衛隊は時間稼ぎと迅速な出撃に努める。
両組織の努力が実り、エヴァは住宅地に隠れ、ジェット・アローンは後方の裏山に潜んだ。前回と一緒と言えば、一緒であるが、互いに使徒用の火砲を携行する。いくらなんでも、使徒相手に徒手空拳で挑むことは無茶苦茶なため、今回は武器が用意されていた。
しかし、火力が足りているか保証されていない。
「エヴァはアサルトライフルを携行している。ジェット・アローンは203mm自動砲を携行している。使徒にどれだけ通用するか分からないけど、無いよりかはマシってね」
「念のために言うけど、自動砲は僕が希望したんだ。ミサイルと違って、砲弾のある限りは戦闘を継続できるから」
「NERV製品を使わせて欲しいと思わない?」
「まぁね。暫くは戦略自衛隊の在庫処理だよ。在庫処理だ」
オペレーターのマナと会話するのも束の間だった。使徒はズンズンと侵攻している。その侵攻ルート上にはエヴァ弐号機が待ち伏せた。僕はNERVのミサトさん達と協議の場に出席する。エヴァは近距離格闘を担当し、ジェットアローンは中距離支援を担当することに合意した。僕の中距離支援には外装の武器が必要になる。倉庫に貯まっている弾薬の処理も兼ねて、旧式化した榴弾砲を流用した自動砲を選択した。
「接敵した!」
「あれは…ダメそうだ」
待ち伏せていたエヴァ弐号機は、使徒にアサルトライフルの掃射を見舞った。高度な技術力を有するNERVの謹製は非常に強力を誇る。便宜的にアサルトライフルと呼ぶ武器は、厳密には、パレットライフルであり、口径209mmの劣化ウラン弾を電磁力で発射した。要は超連射レールガンになるだろう。極めて高い貫徹力を有する劣化ウラン弾の一射撃は、残念ながら、ATフィールドに阻まれてしまった。使徒は反撃と光の鞭を伸ばしてライフルを溶断する。
「暫く返事できないよっ!」
ドウン!ドウン!ドウン!
重々しく砲撃音が3つ響いた。
「どんな砲弾を使っているの?」
大モニターに大きく仰け反る使徒の姿が映っている。使徒は地に足のついた格闘戦を望み、安易に近づけない対策として、溶断性能の高い光の鞭を用いた。アスカの操縦する弐号機は、パレットライフルを犠牲に回避する。しかし、鞭は2本あって片方が外れても、もう片方がしなって襲い掛かった。原始的な武器だが威力は侮れない。
しかし、使徒が鞭を動かす直前に3発の砲弾が襲いかかった。
「あれは203mmのHESHと思われます」
「HESH?」
「High Explosive Squash Head。日本語にすると『粘着榴弾』です。着弾時に潰れるので粘着と言われました。本来はコンクリートの障害物破壊に用いられますが…」
ジェット・アローンは203mm自動砲から粘着榴弾の砲撃を与えた。弐号機が一時離脱して態勢を立て直す時間を稼いでいる。粘着榴弾はC4に代表されるプラスチック爆薬を充填された。敢えて粘着榴弾をつかわずとも、普通の榴弾を使用した方が良いのではないか。どうせ、使徒の外殻にまともなダメージを与えることは難しいのだから。
「おそらく、周囲に与える影響を最小限に留めるため。榴弾に比べて破片は飛び散らない」
「だったら、徹甲弾や対戦車榴弾を使った方が…」
「NERVのエヴァに花を持たせたいんでしょう。まったく、スマートな軍人ね」
戦略自衛隊の保有する武器と弾薬は総じて優秀である。在庫処理というが、APFSDSやHEATFSなど、高貫徹力の砲弾を使用しても悪くなかった。なぜ、HESHを使うのか分からない。やはり、本人が述べる「主役はNERV」なのかもしれない。
「それを汲み取っているのかどうか。アスカは好調みたいね」
「シンクロ率は安定しています。テストよりも良い感じなのが…」
「まさか、実戦の方が実力を発揮できるタイプ?」
エヴァ弐号機は近接の格闘戦に移行した。やはり、適材適所である。アスカは格闘戦が得意なパイロットだ。光の鞭はリーチに優れてトリッキーな攻撃を可能にする。もっとも、正確に見切れられると当たる気がしない。逆に小さなナイフで切り刻まれた。
そうしてジェット・アローンを忘れた頃にHESHが飛んでくる。
HESHの通常の榴弾に比べて破片が飛ばない点は、弐号機の機動を制約しないことも評価された。単発ずつの砲撃であるが故に高精度を発揮する。弐号機は支援砲撃の誤射を完全に排除できた。
まるで、往年のコンビだが、中学校で同じクラスなだけである。単なるクラスメイトで生活を共にしていなかった。仮に同じエヴァンゲリオンなら、ある程度は協同できて当然だろう。しかし、彼と彼女はNERVと戦略自衛隊と所属する組織から異なった。さらに、エヴァンゲリオンとジェット・アローンという搭乗機も異なっている。
(例の引き抜きなんだけど…)
(今は違うでしょ)
(だって、アスカと彼のコンビネーションが抜群過ぎるんだもん)
使徒が人類を圧倒する日は何処へか消え去った。鞭は斬撃だけでなく突きも可能らしいが、弐号機に悉く回避されてカウンターを受ける。弐号機が着地を失敗するなど、僅かな隙を見せると、どこからともなく砲撃がプレゼントされた。当人同士で意思疎通していることは間違いないが、あまりの連携力の高さにNERVの面々は本格的に引き抜きを検討せざるを得ない。
「弾切れか…」
ついに弾切れを起こした。弾薬運搬車を地上に持ってくるわけにはいかない。HESHを使徒戦に用いてメリットとデメリットを確認できた。これは収穫と前向きに捉える。エヴァ弐号機が全面的に信頼してくれ、効果的な支援砲撃だったと自負しよう。
しかし、弾切れでは支援のしようがない。
「これにミサイルがあればなぁ。使徒に近づかれた時は効果的な迎撃できる」
使徒は煩わしい支援砲撃のジェット・アローンを標的に変更した。エヴァと近接格闘戦を繰り広げられることに飽きた。その判断は正しくもあり、間違いでもある。中距離支援を担当する敵は「格闘戦が苦手である」と予想しても何らおかしくない。
今回はミサイルを外す代わりに203mm自動砲を装備した。僕の本望はミサイルと携行兵装の同時装備である。開発責任者の時田博士にはレポートを通じて要望を送ったけど、あいにく、重量のバランスから検討に留まっている。
使徒は2本の光の鞭をビュンビュンさせながら突進した。使徒の姿に恐怖を覚えるわけがない。僕は子供じゃないんだ。14歳の子供と侮られたり、馬鹿にされたり、甘く見られたり、等々を心底嫌った。
僕が父さんから逃げたことは消せない過去だった。その過去を抱えるが故に戦略自衛隊のジェット・アローンのパイロットを志願している。僕は父さんに指図されて動くような、誰かに定められたような、そんな人生はまっぴらごめん。
だから、ここで無様な姿は見せないよ。
「これが僕の生き方だ!」
光の鞭を掠らせながらゼロ距離まで近づいた。
そして、右手を使徒の仮面を掴んで馬力任せにビルへ叩きつける。
「三枚おろしを希望するよ」
「三枚おろしね。任せなさい」
続く
第五の使徒戦は完勝で終わった
碇シンジ大尉の名声は高まる
NERVは彼の自由な出入りを認めていた
シンジはパイロット同士の交流の一環に訓練を見学する
ライバルの存在は良い方へ向かった
次回 『切磋琢磨の行く先は恋心か』
「せっかくの青春なんだし、碇シンジ大尉と付き合ったら?」
「はぁ!?」