銀狼哀歌~逸般人が征くホロライブラバーズ難易度『オーディション』ゆっくり実況プレイ~ 作:LR44(ゆっくり)
「じゃあ……さようなら」
空間が爆ぜる。視界が火に包まれる。体に伝わる熱は、その光景が現実のものであることを痛烈に感じさせていた。
爆発そのものによる被害もさることながら、このまま戦えば最初に気絶させた男まで一緒に始末されかねない。そうなってしまえば無駄骨もいい所だ。
故に、この場で選ぶべきは
「──
達磨にした男の残りのパーツを放り投げ、双魚宮の目の前で爆ぜさせる。
先ほど逃げ出した男とは異なり、こいつはここの構成員には情も思い入れもない。
硬直させる効果は期待できないだろうが……目くらましにはこの上なく効果的だ。
「……多分、ソコ」
効果的だと、思ったのだが。流石というべきか、何と言うべきか。
こちらの移動先に当たりをつけて、爆発で妨害してくる。その爆発の強さに、思わず
……ならば、それを利用しよう。
「……逃げる方、優先。かな?」
半ば賭けだったが、双魚宮は俺を追うことを優先してくれたようだ。
爆発、爆発、爆発。双魚宮が放つ爆発がそこかしこを破壊し、俺の足も緩めざるを得なくなる。
当然、そうなれば双魚宮に追いつかれることになり、槍斧による攻撃も挟まれることになる。
「いい加減……沈めッ!!」
横薙ぎに振るわれる槍斧。そもそも
ゲリラ戦のような形を取れれば多少は不利を覆せるのだろうが……このような建物の中で、それも追われている盤面であれば不可能に近いだろう。
ならば──
「【制限解除】」
──尋常の外の手法を取るしか無いだろう。
体のリミッターを一時的に外す。爆発的に跳ね上がった身体能力任せに、一気に双魚宮との距離を離す。
当然、そんなことをすれば体が悲鳴を上げるのは当然で。終わった後のことが怖いが……今を生き延びることに比べれば安いものだ。
「
拾っておいた瓦礫を後ろに放る。許容量を超えた振動に瓦礫が破裂し──それと同時に空間が爆ぜた。
「予想通り、錬金術か」
「案外頭が回るみたいだね。で、それが分かったからどうするの?
その、制限解除の強化施術が切り札なんでしょう?」
錬金術。物質の組成を組み替えたり、“侵食”する形で物質を増殖させることに特化した魔術系に分類される法術。
物理法則を利用しているため消耗は軽いものの、魔術以上に物理法則に囚われることとなる。
生産系としてのイメージが強い錬金術だが、使いようによっては戦闘も十二分にこなせるものなのだ。
空気中には様々な元素が含まれている。窒素、酸素、それと水蒸気などの形で水素、二酸化炭素の形で炭素、等々。
これらを組み合わせてやれば、“ニトログリセリン”や“トリニトロトルエン”のような
後は、適当な魔法か魔術かで衝撃を与えてやれば大爆発だ。二酸化炭素の少なさも錬金術なら増殖できる故大した障害にはならない。
錬金術を利用している故、魔法で同じ規模の爆発を起こすよりも消費が少ない。その上、魔術よりも高威力な爆発が引き起こせる。
非常に優秀な手法だが、当然ながらデメリットも存在している。
魔法のように『爆発という現象そのもの』を引き起こしている訳でも、魔術のように『物理現象としての爆発』を引き起こしている訳でも無い。自らが起爆する前に相手に衝撃を与えられてしまえば、無駄撃ちに終わってしまう。
「タネが割れた所で……私の有利は覆らない!!」
そう言いながら双魚宮は爆発を自らの背後で発生させ、爆風による加速で無理やりこちらの速度に追いついてくる。
攻撃に使えないと見るや即座に切り替えてくるその判断力は流石という他無いが……それは既に予測済みだ。
「
自分からこの惨状を引き起こした俺と、巻き込まれただけの双魚宮とでは、対応に雲泥の差が生まれる。
落下を利用して上手く距離を取った俺に対して、双魚宮は瓦礫に巻き込まれ少なからずダメージを受けたように見える。
だがしかし、相手はカーディナルサイン。この程度で死ぬような相手ではない故……次の手だ。
「
掌に生み出した極小の地震。それを内臓に打ち込まれれば如何な実力者でもどうなるかは、語るまでも無く水風船だ。
腹いっぱいに飲み干した火薬へ火をつければという有様で、
「う……があぁぁァァァっ!!」
仮に義体であったとしても、並大抵のモノであれば木端微塵に粉砕できるはずの述技が、予想通りの結果を
大ダメージを受けこそすれ、未だ戦意は衰えないその姿は、常識の範疇で考えて良い相手では無いことを雄弁に物語っていた。
「墜……ちろぉっ!!」
ほら、その証拠に。動けるはずがないというのに、俺を殺すべくその槍斧を振るってきた。
鋭さは幾分か失われているものの、それでも脆弱な人間を一人殺すには十分すぎる威力を秘めていた。
こちらが策を弄した所で相手を殺すには至らず、逆に相手は一撃当てるだけでこちらをいとも容易く殺してのける。本当に嫌になる。
故にこそ──
「
──即座に次の手を打つ。加速する鼓動、増幅する振動。
握りしめた銀の牙が甲高い声で
光速で反復運動を繰り返す振り子のように、【振動操作】を用いて強制的に自分の
ありえない二重加速。常識外の実力者と言えど、即座に反応することは叶わず。故に一度限りの切り札──初見殺しの札としてよく機能してくれる。
今回もそうだ。もはや敵の瞳に俺の姿は影をも映らず。
可能ならば一閃で首を掻っ切りたい所だが、槍斧がそれを邪魔する以上それは不可能。
戦闘能力を奪うべく、右腕を斬りつける……のだが
「舐め……るなぁぁァァッ!!」
本当に馬鹿げているとしか言いようがない。
根元から寸断されるはずの双魚宮の右腕には、深い切傷が刻まれてはいるものの、変わらず武器を振るうことが可能な様子であった。
つい先日のジェミニももうだったが、本当にカーディナルサインの奴らの耐久性はどうかしている。あの時は一級フィクサーの手があったが、
そして、あやめが今もこちらに迫っている以上切ることが出来ない
「もう……いい。何が何でも、潰す」
そして双魚宮はまだ手札を残していたようで。
発動した法術は二つ。片方は強化魔術、それも魔力という外からの力で筋肉を無理やり動かすタイプのもの。
効果量が大きい上、現在の体の状態に関わらず同じパフォーマンスを発揮し続けられる。更に、思考と行動のラグも無くなるという優れものだ。
その代わり、反動も相応に大きい、文字通りの諸刃の剣。あいつの切り札だったんだろう。
その証拠に、ついさっきまで両手で持っていた槍斧を、右腕一本で軽々と振るってるじゃぁないか。
発動したもう片方は──空間魔法。
小さく開いた時空のひずみから引きずり出されるは、一本の短剣。
黒塗りで小さい片刃、
だが、全身の全感覚が警鐘を鳴らす。第六感がアレはダメだと訴えかける。
それはまるで、双子宮が持っていた純白の大剣に感じたものと同じ感覚で。
「刃金に満ちよ、我が祈り──」
それはつまり、双子宮と同じく。尋常の法の外にある魔剣であることを表していた。
詠唱するだけで身体能力を引き上げ、それに加えて特殊な能力まで発動する。
まるで魔法のランプのような夢の武器だ。
……笑えるくらい絶望的な状況だが、ここまではあくまでも予想通り。
デュラハンが『初見殺し性能であれば双子宮が最強格』と言っている以上、何かあると考えるのは当然。
双魚宮の持っていた武器と同種の何かを持っていること、そしてそれを使われれば俺に……否、
だからこそ──
「希望の
「一太刀ニシテ修羅ノ業……
一太刀ニシテ羅刹ノ火! 」
──使われれば勝ち目が無いのなら、使わせなければいい。
あやめがタイミングよく来てくれるか。こちらの意図を組んでくれるか。そしてあやめの攻撃が双魚宮に通用するか。
完全に賭けではあったが、それに俺は勝利した。
「二刀一閃──!
「──照らす……た、め?」
一閃。あやめと、あやめの式神である
もはや人間相手に放つことすら過剰に思える必殺の斬撃は、双魚宮の胴体を背後のビルごと真っ二つにしてのけた。
格下だと思っていた相手に、思いもよらぬ伏兵にあえなく殺害された
実は決着はもう一話引っ張る予定でしたが。早くホロメンを出したいので少し巻きで終わらせました。
本作に登場させるスキル募集 詠唱募集を行っています。
気が向いたら、是非。
<没ネタ供養>
百鬼嬢の『鬼神斬り』、実は
鬼 神 斬 り
みたいにするつもりでした。
ただ、グラデーションが思ったよりきれいじゃ無かったのと、筆字系のフォントを使った方が雰囲気が出ると思い、本編では使いませんでした。
<今回のネタ解説>
・瑞樹君の諸々
元ネタは『シルヴァリオ・ヴェンデッタ』の『ゼファー・コールレイン』の使う技。
ゼファーさんの戦い方、シルヴァリオシリーズのキャラの中でも特に好き。
・双魚宮の魔剣
《Ⅱ型魔剣 : ルンペルシュテルツヒェン》。
相手に魔剣としての咒を告げられない限り、1の結果を100に書き換える魔剣。
実質的に人に対しては使えないが、効果が機能する限りは非常に強力。
・鬼神斬り
元ネタはホロライブオルタナティブの漫画『ヤマト神想怪異譚』。
16話で百鬼嬢が使用していた攻撃。かっこいい。