銀狼哀歌~逸般人が征くホロライブラバーズ難易度『オーディション』ゆっくり実況プレイ~ 作:LR44(ゆっくり)
書き溜めもいい感じに溜まって来たので、1~2週間に1本くらいのペースでのんびり投稿していこう……かと思ったのですが。
内容的に、沙花叉嬢の卒業までに間に合わせたいという事で、今月の休日・祝日は毎日投稿で行こうと思います。
《2025/8/19 追記》改めて読み直してみたところ、魔力喰いについての説明部分が非常に分かりづらいものとなっていました。
ここに関しては、今後重要になる場所なので加筆修正を行う事に致しました。ご了承ください。
部活動を作るのは、学園物のお約束①
「
空間魔力を喰らい成長する特性上、放置すると土地の魔力枯渇を引き起こすため発見次第優先討伐対象となる」
とある日の昼下がりを少し過ぎた頃。教師の都合で入れ替わった生物学の授業中。
魔力喰いという存在についての授業が行われているのだが……どうにも、退屈で仕方ない。
何故ならば、この授業で扱う内容は、世間一般的に広まっている“誤りを含む”内容であり。魔力喰い関連の依頼を受ける際にフィクサー協会で受ける事前講習に比べると、幾分か劣っていると言わざるを得ないものだからだ。
「物理攻撃の効きが悪い上に、法術にも耐性を持ち。その上、核を潰さなければ決して死なない。
そんな厄介な存在だが、最近目撃証言が増加している。協会が腕利きのフィクサーに調査を依頼したそうなので、近いうちに原因究明がされるだろうが、用心に越したことは無い。
これからする話をよく理解し、特性を把握して万一の邂逅に備えるのだ」
そして、俺が丁度今話に出た“魔力喰いの調査依頼を受けたフィクサー”であり。つい先日、
……いや、まぁ。決して俺は自分が“腕利きなフィクサー”だと言いたいわけではないのだが。俺の切り札の性質と、魔力喰いの
それ故に、俺が調査を任される事となってしまったのである。
「こいつら魔力喰いは魔物の一種とされているが、その身体構造は一般的な魔物とは大きく異なっている。
身体の中心に持つ“核”が本体であり、それを魔力により構成された“殻”によって保護している。スライム種の魔物に似ているが、『吸収した魔力により“殻”を成長させる』という、独特な特性を持っているのだ」
世間一般的には、魔物の一種とされている魔力喰い。だがしかし、その実態は魔物ではないどころか、生物かすらも怪しい存在と言われている。
その起源は今より約750年前――新西暦300年ごろに、[大破壊]によって空いた穴より現れた異世界の存在。
魔力を喰らい“殻”を成長させるのだが……成長には、環境によって
現在は6種類――一般的に知られているのは5種類――確認されているのだが、魔力喰いの研究を専門に行っている奴曰く、珍しい環境に置いてやる事で未知の進化を誘発できる
「成長段階は下から順に、『ジェリー級』『ラルバ級』『コクーン級』『イマーゴ級』『ギガント級』。
イマーゴ級は、更にソルジャー種、ビースト種、フロート種の3種類に分けることが出来る」
ジェリー・ラルバ・コクーン・イマーゴ・ギガント。それに加えて、一般には秘匿されている最上位種『ディアボロ級』。
この6種類が現在確認されている魔力喰いの種類であり、イマーゴ級とディアボロ級は更にいくつかに細分化することも出来る……という訳である。
「ジェリー級は半透明な粘液状になっている段階だ。
核の位置が外からでも確認できるため、非常に倒しやすい。恐らくお前ら生徒でも余裕だろうな」
“核の位置が分かりやすいため、非常に倒しやすい”……確かにそれ自体は間違っておらず、勝つだけならば9級であろうと余裕で出来る、のだが。
こいつの最も恐ろしい所は『顔に取りついて窒息させようとしてくる』点にある。故に、実力者程警戒する相手となっている。
「ラルバ級は、虫の幼虫を思わせる形態だ。甲殻を獲得し、“殻”が堅固になったためそう易々と倒すことは出来ない。
攻撃力もそれなりにはあるため、お前らの中でも腕に覚えのある者が数人集まって何とかといった所だろうな」
フィクサー協会では、最低でも7級フィクサーが3名以上で当たるように言われている形態。
ジェリー級からの戦闘力の上がり幅を見れば分かるように、魔力喰いは形態が一つ進むだけで圧倒的な戦力差を見せるのだ。
「更に成長すると、サナギ状のコクーン級となる。攻撃能力を失った代わりに、非常に堅固な外殻を獲得している。
お前らの攻撃では、毛ほども傷を与えられないと思え」
一般的なフィクサーの場合、最低でも5級は無ければまともにダメージが通らない、防御に特化した形態。
攻撃能力は一切ないため倒すだけならばそれほど苦労はしないが……問題は、この形態が“サナギ”である事。
コクーン級が羽化し、イマーゴ級となった瞬間、並大抵のフィクサーでは手も足も出ない存在となる。そのため、早期の発見と駆除が要求されているのだ。
「さあ、お次はイマーゴ級、そのソルジャー種だ。
最大の特徴は人型になった事。それにより人間の武器を利用しだしたことだな。
純粋な強さで見るとビースト種に劣るが、対処の難しさとしてはイマーゴ級でもトップだぞ」
イマーゴ級。成虫を意味するその名の通り、魔力喰いが成長しきった状態。
火力、装甲、機動力。その全てが並大抵の魔物を凌駕しており、コレが出現したとなると最低でも戦闘特化の3級。安定択を取るならば1級が動員される事となる。
中でもソルジャー種は下手な奴を送って返り討ちに合うと、その装備を奪って強力になるため不測の事態にも対応できる人員が求められるのだ。
「動物型のビースト種は純粋な強さで言えば随一だ。とは言え、変な事をしてこない分最もやりやすい相手でもあるがな。
厄介なのがフロート種だ。こいつらは飛行能力を持つイマーゴ級の総称なのだが、高所と言うアドバンテージを存分に生かした戦い方をしてくる。
高所への攻撃能力が無ければ手も足も出ない、ある意味もっとも強力な相手だな」
ビースト種の動きは、基本的にモデルとなった動物に依存する。純粋な戦闘力で言えば最も高いのだが、最もやりやすい相手でもあるのは先生の言う通りだ。
実際、フィクサー協会ではイマーゴ級討伐の依頼を始めて出す相手には、必ずビースト種の討伐を依頼しているのだとか。
……何故伝聞調なのかと言うと、俺が魔力喰い相手に非常に相性が良く。その結果、最初からイマーゴ級の大軍を討伐させられたからだ。当然、最初は
最も面倒なのがフロート種。翼を持つ獣、空を泳ぐエイ、未確認な円盤。形状は何であれ、飛行能力を持っていればここに分類される。
戦闘において、高所と言うのは純粋にアドバンテージの塊だ。それを常に取ってくるとなると厄介極まりない。
同じように飛行能力を持つ存在か、強力な遠距離攻撃手段を有する者でなければ対処は不可能であり。対処できる人員が限られるというのは、協会側としても非常に厄介であるようだ。
「ギガント級は、イマーゴ級が更に成長し巨大化した形態だ。
観測された中で最も小さい個体でも、人間の10倍程。観測史上最大の個体は1キロにも及んだそうだ。
フィクサーの基準で言えば、1級が複数人がかりで対処する案件だそうだ。万が一であった場合は諦めて死を受け入れた方が賢明かもしれんな」
ギガント級。ここまでくるともはやサイズ以外に大した違いはなく。故に3種が全て一つに統合されて呼称される事となる。
巨体と言うのはそれだけで脅威なのだが……何よりも恐ろしいのが、ここまで成長するために取り込む魔力量だ。
こいつが生まれたという事は、それすなわち周囲数キロが数十年は生物の住めない不毛の地に変貌するという事。生まれた時点で手遅れな存在なのだ。
更に、その上を行く“ディアボロ級”。現在7体確認されている、七大罪の悪魔の名を冠する最強の魔力喰い。
混乱を避けるため、その存在は一般には秘匿されており。フィクサー協会では3級以上の者のみがディアボロ級に関する資料を閲覧する事が許されている。
その強さは、特色フィクサー【緋色の十字】と、彼と親交のある1級フィクサー ドンファンの2名が『ディアボロ級――ベルゼブブ』を相手にし、ギリギリまで追い詰めるも逃げられたという話からもよく伝わると思う。
「まあ、説明を聞けば分かると思うがお前らのようなひよっこでは手も足も出ない相手だ。
授業の初めにも言ったが、フィクサー協会からは最近増えているとの連絡があった。
小遣い稼ぎに依頼を受けるのは構わないが、くれぐれも注意する事。万が一であった場合は必ず逃げる事だ。分かったな」
このクラスの――と言うよりも、この学園の1年生の平均的な強さはフィクサーにして9級から7級程度といた所。
先生の言う通り、魔力喰いに出会った場合には逃げるしかないだろう。
空間魔力を喰らう性質の影響で周辺一帯を不毛の地に変えてしまう故、フィクサー協会としても、発見次第早急に対処したいところだが……大きな壁として立ちはだかるのはその強さだ。
ジェリー級でも、戦闘を生業としていない一般人が遭遇すれば致命的。イマーゴ級ともなれば相当な腕利きでも無ければ対処不可能。
“どの段階が出現したか”という基本調査のレベルですら、最低でも3級。最悪を想定するならば1級を派遣する必要がある。
とは言え、そこまで高位のフィクサーとなるとそう簡単に動員できるものでは無く……
故に、こういった仕事は俺に押し付けられるのだ。
『指名依頼も少なく、基本的に暇で』『最低限の戦闘力はあり』『万が一が起きたとしても生きて帰るくらいは出来る』。成程、確かにこれ以上なく都合のいい相手だな。
その上、“魔力で構成した殻で核を守る”生体の魔力喰い 相手では、俺の“魔力を対消滅させる”天候は相性抜群だ。それこそ、普通であれば特色クラスが出ることになるギガント級の相手すら出来てしまう程に。
「はぁ。退屈だなぁ」
既知の知識しか流れてこない授業が退屈になり、ぼんやりと窓の外を眺める。
ここで思い出してほしいのだが、俺の席は最後尾の窓際。そして今は5限目。
心地よい太陽が、眠気を誘ってくる。
それに加えて、ここ最近魔力喰いの調査で徹夜続きだったのもあって、流石に眠気が抗いがたいレベルになってきた。
……もう、寝てしまおうか。
◇
キーンコーンカーンコーン、と。夜逃げして以降まともに聞いていなかった、どこか懐かしさを感じる音が鳴り響く。
欠伸を噛み殺しながら時計を確認すると、5限目の終わり丁度の時間であった。
……大体、20分ほど寝ていた計算になるのか。
「くぁっ……眠っ……」
「眠じゃないよ、瑞樹君。授業中に寝るなんて」
「先生、カンカンに怒ってたよ?」
机をドンと叩かれ、頬杖をついていた右腕が外れ顎を強かに打ち付ける。
声の聞こえてきた方向──机の右側に視線を向けると……よく見知った下手人二人とは別に、少女が二人。
どこかで見た気がするが……と記憶を探るが、すぐには思い当たる相手が出てこない。
じろじろ眺めるのも失礼かと思い、俺はフブキとミオに視線を戻し……抗議の視線を向けながら、口を開く。
「何するんだよ。酷いなぁ」
「授業中に寝てるそっちが悪いんでしょ」
「ぐうの音も出ねぇ……で、その二人は?」
「あ、紹介するね。こっちが──」
「──猫又おかゆだよ~。よろしくね~」
ミオに手で差された紫髪の猫獣人は妙に間延びした口調でそう名乗った。
体つきを見るに、恐らく獲物は徒手空拳と法術のハイブリット……腕や足の付近に魔力の滞留が残っているのを見るに、多分魔力で武器や防具を作り出すタイプ。
魔力消耗が作成する最初の1度で済む上、状況に応じて性質を変える等器用な立ち回りも出来る。面倒な相手だ。
「それでこっちが──」
「──戌神ころねだよ~。ゆびゆび~」
「……ゆび?」
どこかの訛りと妙な挨拶が特徴的な、茶髪の犬獣人。
明らかに何かしら格闘技を……多分、ボクシングをやっている体つきだな。
つまりは、“体内魔力の循環による身体強化”なんて希少技術をマスターしてる訳で……純粋なフィジカルで押してくるタイプとか、本っ当にめんどくせぇ。
「で? わざわざその二人を連れて来たって事は、何か用事があるんだろ?
一体何の用なんだ?」
フブキとミオの二人だけなら何も変なことは無い。席も家もすぐ近くなのだから、むしろ自然なくらいだ。
だが、猫又と戌神までいるとなると話は別だ。わざわざ他クラスの、この二人を連れてきてまで話しかけてきたとなると、何かしら特別に用事があると考えるのが普通だろう。
「そうだよ、瑞樹君!」
きっと俺は、生涯忘れないだろう。
この時の、楽しそうに輝くフブキの水色の瞳を。
「一緒に、部活やろうよ!!」